かつての英雄に祝福を!   作:山ぶどう

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第18話 土下座をしても許さない。

駆け出し冒険者の街アクセル。

 

その正門前には数十人もの冒険者が集まり、一人の首なし騎士ベルディアの姿に注目していた。

 

とても同情的な視線で。

 

「う、う、う、うううう・・う・・ちくしょぉ・・・うう・・」

 

肩を落とし小刻みに震えるベルディア。

その自らの頭を持った左手をだらりと下げ、そこからポタポタと落ちる涙が地面を濡らしている。

 

俺達のせいで住まいを無くした爆裂魔法の被害者の姿がそこにあった。

 

悔しさを滲ませてしゃくりあげながら泣く、家を無くした子供のような姿に俺の良心が激しく痛む。罪悪感が半端ない。

 

どうするよ、という意味を込めて隣のめぐみんを覗くとあちらもちょうど、青ざめた顔で俺の方を見た。

 

目と目を合わせて俺達は通じ合うようにコクりと頷きあった。

 

そうだよな・・・こうなってしまってはもうやることなんて一つしかない。

 

「「どうもすみませんでした!!」」

 

そして頭を地面にこすりつけて二人仲良く土下座をした。

 

「うううう・・・お前らが・・やったんだな?・・」

 

「はい!この度はウチのアークウィザードの爆裂バカが本当に大変なことをしでかしてしまい、誠に申し訳ございません!!」

 

「本当にごめんなさい!私の強大な最強爆裂魔法が跡形もなくあなた様の城を消し飛ばして爆炎が全てを燃やし尽くし、あなた様の大切なものを全て消し炭にしてしまって・・・」

 

「うう・・アンジェリカ・・・アンジェリカ・・・・」

 

「おい!ちゃんと謝れ!被害者の悲しみを追撃して増大させるような言葉は慎め!

本当にすいません!この爆裂ロリを生贄に捧げますのでここはどうか・・・・」

 

「あ!なにを勝手に人を生贄に捧げているんですか!?事件現場にいたカズマももちろん共犯ですよ!私の士気を高めるようなことを言ったり、最後は私をおぶって現場から立ち去ったじゃないですか!連帯責任です!いえ、むしろ色々とアドバイスをしてくれましたし、監督的な責任があるのではないでしょうか?」

 

「は!?、ふざけんなよ!10:0の割合でお前が悪いに決まってんだろうが!俺は単なる目撃者Aだよ!法廷に呼ばれたらお前の犯行を洗いざらい暴露してやるからな!覚悟しておけ!」

 

「ひどい!昨晩は廃墟爆破記念パーティとか言って盛大に祝ってくれたのに!酔っぱらってとても滑稽で面白いダンス“爆裂音頭”を私のために披露してくれたじゃないですか!なんでしたっけ、“廃墟がドッカーン”でしたっけ?廃墟が吹き飛ぶ様を笑いながら表現していたじゃないですか」

 

「・・・・・・っ!」

 

「こらやめろぉ!被害者の憎しみの矛先を俺に向けさせるのはやめろ!あの時は知らなかったんだからしょうがないだろう!お前は完全なる加害者で実行犯なんだからもう少し反省しろよ!」

 

「と言われても、私は土下座以上の反省の表し方を知りません・・・」

 

「じゃあ脱げよ。」

 

「!・・・この男、仲間に向かって躊躇なく脱げと言いましたよ!?こんな大衆の面前で!ダクネスじゃあるまいしいくら私が悪くてもそんなことできるわけないでしょう!」

 

「スティール!よしビンゴ。どうかこれで穏便に・・・」

 

「ひゃあ!?ちょっ!返してください!人のパンツを勝手に捧げないで!返してください!!」

 

俺がめぐみんからスティールしたパンツを献上すると、ベルディアは恐る恐る近づいてきてそれを受け取る。

 

「もういい・・・」

 

「「え?」」

 

うそぉ・・まさか、パンツで許してくれたの!?

 

涙目で俺に襲いかかってきためぐみんと一緒に固まる。

 

「もういい、いくらお前たちが謝ったところで、あの花は・・・彼女の愛したあの大切な花が返ってくることはもうないのだ・・・」

 

そう言ってめぐみんのパンツを空中に放る。

 

「だから・・・」

 

地面に突き刺していた大剣を抜き、目にも止まらぬ速さで一閃させる

 

「断じて、許すつもりは・・ない!」

 

無残に切り裂かれたパンツの布切れが宙を舞う。

 

「わ、わたしのパンツが・・・」

 

「しー・・あいつの中ではシリアスな場面なんだ。例えパンツを切り裂いて悦に浸っているようでもな・・・」

 

俺が超小声で注意する。

幸い、ベルディア本人には聞こえていないのかシリアスな展開が続く。

 

「もう、とっくに、謝られて許すことのできる段階は過ぎたのだ。こうなってしまってはもう、戦うしか道はない。」

 

そう言ってベルディアは大剣を肩に担いで仁王立ちする。

 

さっきまで泣き叫んでいたやつとは思えないほどの強敵としての風格を漂わせていた。

 

 

「元聖騎士としての誇りが邪魔をして今まで散々迷っていたが、心に決まったよ。お前たち冒険者は全員、我が悲願を叶えるための犠牲となってもらう。幸い、邪魔なあのジジィは今、戦闘不能の状態だしな・・・」

 

「「「「!!?」」」」

 

ベルディアの発言に俺たち四人は顔を引き締めて武器を構え、戦闘態勢に入る。

 

「てめぇ、師匠に何をしやがった!!」

 

「お爺ちゃんは今どこにいるの!?」

 

「まさか、あのナル爺が!?」

 

「く・・ナルトさんの身柄を解放しろ・・・さもないと・・」

 

殺気立つ俺たちとは裏腹に、ベルディアは微妙そうな雰囲気で深いため息をつく。

 

「はぁ、俺にあの怪物をどうにかできるわけないだろ・・・ただ・・・」

 

「ま、待つってばよ!俺が、相手だ!!」

 

どこからともなく響き渡る師匠の声。

 

それを聞いて湧き上がる冒険者たち。

 

「よっしゃあ!アクセル街の最強のお出ましだ!!」

 

「いつもみたいにあの首なし騎士をボッコボコにしちまえ!」

 

「ああ、今回は少しかわいそうだけども、俺たちを皆殺しにするとか怖いことを言っちゃてるからな!殺っちゃってくれ爺さん!」

 

「お願い!またあの逆ハーレムの術というのを見せて!毎日夢に出てきて胸の鼓動が止まらないの!お願いよ!」

 

「ぼ、僕としては・・二回戦目の・・ガチホモボディビルダー地獄という技が、見たいんだなぁ・・・」

 

「黙れホモ野郎!ナルトさん後生だ!プリプリ女体天国のミヤビちゃんに会わせてくれ!例え中身がアンタだとしてもあの控えめな笑顔に惚れちまったんだ!」

 

「ふ・・勝ったな・・」

 

「ああ、我々の勝利は確実だ・・・」

 

「でも、ちょっとは手加減してあげてね・・・お爺さん・・」

 

「そうよ。どう考えてもそこの頭のおかしい子が悪いもの。可哀想だわ。」

 

「はん!女共は甘ったるいねぇ!構うことはねぇナルトの爺さんよ!ぶっ殺しちま・・・・・・・・・・んん?」

 

「「「「「あれぇ?」」」」

 

 

ベルディアに向かってプルプルと震えながら一歩ずつゆっくりと進んでいく師匠。

傍らにはクラマが寄り添っていて、伸ばした尻尾で献身的に師匠を支えている。

 

その姿を街の冒険者たちは愕然として見送っていた。

 

普段の実年齢より三十は下に見える活力に満ちた元気な師匠が今は見る影もなく・・・・

頬が見るからに痩せこけ、荒い息を吐いて杖をつきガクガクと足を不安定に揺らしている、年相応の今にも昇天しそうな老人の姿がそこにあった。

 

「おおおぉ・・・この街はぁ・・はぁはぁ・・俺が守る・・てばよぉ・・・」

 

「いや、無理すんなって・・・どう考えても戦える状態じゃねぇよ・・・」

 

おぼつかない足取りでベルディアに向かっていこうとする師匠に大きな尻尾が巻き付いてその歩を止まらせる。

 

「今はチャクラもろくに練ることができないんだから、大人しくしてろ。」

 

クラマが師匠を心配そうに見上げて言う。

 

俺達四人も、見るからに弱りきった師匠を心配して駆け寄った。

 

「一体何があったんです!?」

 

俺が声をかけると力なく笑う師匠。こんな弱りきった姿を見るのは初めてだ。

 

「お爺ちゃん大丈夫!?」

 

アクアがヒールをかけるがあまり効いた様子ではなかった。

 

「うう・・今にもこの世から旅立ちそうです・・・どうか死なないでくださいナル爺!約束したじゃないですか!私の爆裂魔法の行く末を見守っていてくれるって!・・・うう・・ナル爺・・」

 

めぐみんが泣きそうな顔で師匠の手を握る。おい止めろ。今にも死んでしまいそうな雰囲気をかもしだすな。他の冒険者たちがなんか誤解して泣いているだろうが!

 

「おのれ!ベルディア!貴様・・ナルトさんに何をした!?」

 

ダクネスがいつになく鬼気迫る表情で鋭くベルディアを睨みつける。

 

「俺はなにもしとらんわ!そのジジィが勝手に毒キノコを食って自滅しただけだ!!」

 

毒キノコ?

 

「くそぉ・・・美味しかったんだけどなぁ・・・トグロダケ・・・」

 

悔しそうに言う師匠。・・・ただの食中りかよ。

 

「トグロダケ!?あの毒キノコを食べたんですか!?私たち家族がいくら食べるのに困っても決して手を出さなかったあの殺人キノコとして名高いアレを!?」

 

めぐみんが恐れおののいている所を見るに結構危険なキノコらしい。

 

「危険度Sランク、死亡率100%のキノコじゃないか!むしろ生きているのが奇跡に近いぞ!?」

 

ダクネスがワナワナと震えている。どうやら相当にヤバイキノコらしい。え?死なないよな・・・

 

「安心しろ。下痢はひどいが死ぬほどではない。ベルディアから貰った薬のおかげだな。ありがとうよ」

 

クラマが親しげにベルディアに笑いかける。

 

へ?薬?ベルディアがくれたの?どういうことだ?

 

「やめろ・・・あの時とは状況が変わった。俺は、もう甘さを捨てたのだ。修羅となりこの街を蹂躙する。そう心に決めた。だからその生き長らえさせた老人を斬ることに最早ためらいなど・・・・」

 

「うぐぅ!!・・・・は、はらがぁ・・・また・・きやがったってば・・よ・・」

 

「おいっしっかりしろ!今、便所に連れてってやる!それまで持ちこたえろ!・・・あ、ベルディア。少し席を外す。じぁあ、またあとで。」

 

そう言ってクラマは師匠を尻尾で抱き上げて慌ただしく正門から街へと消えていった。

 

 

「・・・・ぐぬぅっ・・・・」

 

シリアスな雰囲気を師匠にぶち壊されたせいか、ひどくご立腹な様子の首なし騎士。

 

「ま、まぁいい・・・余計な横槍が入ったが、戦いをはじめるとしよう。いや、一方的な殺戮か・・・」

 

「ええと・・・お薬をくれたのよね?」

 

アクアが確認をするようにおずおずと尋ねる。

 

「だからどうした?ただの気まぐれの施しにすぎん。・・・まさか俺が実は優しくて良いやつだとかいう都合の良い妄想をしているわけではなかろうな?」

 

「クラマと仲がいいですよね?」

 

「だからなんだ!関係ないだろ!?そんなのお前らに手心を加える理由にはならないんだからな!」

 

「あの、さっきは誤解して睨んだりして済まなかった。ナルトさんの命の恩人に対して私は・・・」

 

「だからやめろ!戦いづらい雰囲気を作るな!もっと殺伐としろ!お前らが何を言っても絶対にぶっ殺してやるからな!絶ッ対に!」

 

そう怒鳴りつけて大剣の刃先をこちらに突きつけるベルディア。その体から湧き出る禍々しい魔力。

 

その様子に気が緩んでいた冒険者達に緊張が走る。

皆、改めて自分たちの置かれた危機的状況を把握する。

そう、頼みの綱のナルト師匠はいないのだ。

魔王軍幹部相手に低レベル冒険者である自分たちだけで挑まなければならない。

しかも向こうは皆殺し宣言までしている。本気で怒っているし手加減なんて望めないだろう。

 

これって、本気でヤバイ状況じゃ・・・・

 

冷や汗をかいて剣も抜かずに立ち尽くしている俺の横でアクアが自信たっぷりの顔で仁王立ちする。

 

「ふん!可哀想だから見逃してあげましょうかと思っていたけど、敵対してくるならしょうがないわ!ひと思いに浄化してあげる!“ターン・アンデッド”!!」

 

そうか!コイツは曲がりなりにも女神だった。ウィズから聞いた話だがアクアは対アンデットに対して絶対的な力を持つのだという。あのリッチーをいつも泣かせているコイツの力なら、いくら魔王軍の幹部といえど・・・

 

白く輝く光の塊がアクアの掌から放出される。

 

それをベルディアは避ける素振りも見せずに、大剣を担ぎ上げ余裕そうに待ち構えていた。

着弾すると眩い神聖な光がベルディアを包み込む。

 

「や、やったか?」

 

「いえ・・・まさか・・そんな・・」

 

光が収まり、姿を現したベルディアの体からはプスプスと黒い煙が上がっていた。

恐らくまるで効いていないわけではないだろう。しかし、声も上げず、身じろき一つせずに依然と禍々しく存在するこの首なし騎士は確かに不死身の怪物を思わせた。

 

「そんな・・・私のターンアンデットがまるで効いていないわ!」

 

「いいや、大したものだ。流石はあのジジィの仲間というだけはある。この耐聖魔法の鎧を着た俺に僅かばかしとはいえダメージを与えるとは。ククク・・・まぁ、少し俺の動きを止めるくらいには使えると思うぞ?」

 

余裕そうに笑うベルディアによほど腹が立ったのだろうか。眉間に皺を寄せてヤンキーみたいな顔で拳の骨をポキポキと鳴らすアクア。おい、やめろよそれ・・・どう見ても女神の顔じゃないぞ・・・

 

「そう・・・それは良いことを聞いたわ・・・このクソアンデットが・・!」

 

「おい、止めておけってアクア・・・」

 

「止めないでカズマ・・・これは私とコイツのタイマン勝負よ。手出しは無用だわ!」

 

「いつからそうなった!?いいから落ち着けコイツに無闇に突っ込んでも・・・」

 

「まぁ見ていなさいよ。このひと月で力を付けたのはなにもカズマだけじゃない・・・・私だって強くなったんだから!」

 

「へ?」

 

「ふふん・・・見せてあげるわ・・・おじいちゃんから教えて貰った極意によって進化を遂げた私のゴッドブローを!」

 

そう言ってベルディアに向かって真っ直ぐに突っ込むアクア。

馬鹿!カエル相手とはわけが違うんだぞ!斬り殺されちまう!

俺が助けるために足にチャクラを集中させて駆けようとすると、ダクネスが俺の肩にそっと手を置いて止める。

 

「まぁ、少しだけ見ていてくれ。前までのアクアとは確かに違うんだ。」

 

訳知り顔で笑うダクネスを見て少しだけイラッとくる。こいつ、付き合いが長いくせにアクアのことを何も分かっていないな・・・・あいつがこういう行動をする時ってのはな・・・・・

 

「ふふん・・・動きを少しだけ止めるくらいには使えるんでしょ?“ターン・アンデット”!」

 

「ぐ・・・」

 

ベルディアに接近して至近距離からターンアンデットを食らわせるアクア。

 

「これであなたは隙だらけ。攻撃し放題ってわけよ!ふーーっ・・・・」

 

体を硬直させるベルディアの前でゆっくりと構えながら深く息を吐く。

 

そんなアクアの両拳に高密度のチャクラが集中するのが見える。あれは・・

 

「パンチを繰り出すときは一撃一撃、魂を込めるようにして・・・打つべし・・・喰らいなさい・・・ゴッド・ソウル・ハリケーン!」

 

ベルディアのボディに突き刺さるアクアの拳。そこから展開される超高速の嵐のような乱打。それが反撃の暇を与えることなく敵を飲み込んだ。

 

「うらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらううらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうら!!!」

 

残像を残して繰り出されるパンチの弾幕は徐々に速度を増していき、やがて、拳が霞んで目で追えない程の逃れようのない猛攻に変貌していく。

それを受けるベルディアは反撃の隙すら与えられず、まさにサンドバック状態。

 

「そらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそえらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらぁ!!!」

 

草原に響き渡る非情に暴力的な荒々しい打撃音。

永遠に続くかと思われた機関銃のように絶え間なく繰り出される凶悪な拳の連打は、強烈な最後の一撃とともに突然に止まった。

 

 

一瞬の静寂。

 

「ふぁ?」

 

さっきから一歩も動かずにつっ立ったままのベルディアが気の抜けた声を出す。

 

そうして燃え尽きたようにうずくまるアクア。

 

「う・・・うぅ・・・痛っったぁ・・!・痛いよぉ・・・・」

 

アクアさんは血が滲む両手を摩りながらポロポロと泣きじゃくっていた。

 

まぁ、いくらチャクラを込めたといっても鎧の上から叩いたわけだし・・・しょうがないね・・・

そのベルディアといえば・・・実は全くのノーダメージ・・・・

あの鎧って相当頑丈なんだな・・・

 

「あ、あぁー・・うん・・見事なパンチのラッシュだった!うん!きっとこの自慢の鎧がなければタダでは済まなかっただろう!その・・・鎧も今ので相当、傷んだと思うし・・・あの・・」

 

気を使ってんじゃねぇかベルディア!!

 

そして俺の影分身に担がれて安全な後方に運ばれていくアクア。

 

「め、名誉の負傷というやつよねっ!私は後ろの方で傷を癒しつつ、応援に回るわ・・・・け、結構なダメージを与えてやったと思うから、きっとあと一息で倒せると思うの!だから、ガンバ!」

 

そう言い残してアクアは戦線を離脱した。

あなたと違って向こうは全然ピンピンしているようなんですが、アクアさん?

 

まぁ、こうなる気はしていたんだよな・・・・ああいう時のアクアが上手くやった試しってないし・・・

 

「前までのアクアと何が違うって?うん?ダクネスよう?」

 

「ぐ・・・打撃に耐性のある鎧だったか・・・お、おのれ!アクアの敵は私が取る!」

 

そう言って勇ましく剣を構えるダクネス。どうせ当たらないんだから余計な体力を使わないほうが・・・

 

微妙そうな俺の顔を見て、ダクネスはムッとする。

 

「なんだその顔は!私だってこの一ヶ月ただ遊んでいたわけではないのだ!土木工事の重労働の果てに編み出した我が必殺剣を見せてやる!!」

 

やだ、この子、恥ずかしい。仕事中に必殺技のこととか考えてたの?いい歳して中学生みたいなことを・・・・

だいたい、それってちゃんと当たるのか?

 

「ほう、今度はそこのクルセイダーか。いいだろう。聖騎士が相手ならば少しは楽しめそうだ・・・」

 

さっきの二重の意味で痛い女神は忘れることにしたのか、ベルディアさんはボスっぽい感じで不敵に笑う。

 

「ふん・・・調子に乗らないことですね・・・さっきのは我がアクセル街四天王でも最弱の存在・・・・お次は我が四天王が誇る“the・M”の異名を持つ変態クルセイダーが相手です!」

 

「おい、めぐみん、それってもしかして私のことか?」

 

「さぁ、行くのです!ダクネス!この前、こそこそと紙に書きながら考えていた例の必殺技を出すのです!なんでしたっけ?“ゴールデン・クラッシャー”でしたっけ?それとも“ダイヤモンド・ブレイカー”でしたか?」

 

「おい止めろぉっ!!私が技名で悩んでいたことを敵の前で暴露するな!だいたいそれはボツにしたやつだからな!」

 

わざわざ、隠れて必殺技の名前まで考えていたなんて・・・朱に交われば赤くなるとはいうが、こいつはめぐみんの影響でどんどん厨二っぽくなっていってるな・・・・

 

「おい、技名などどうでもいいからさっさとかかってこい!そこの・・・“the・M”だったか?あんまり頭のおかしいことを叫んで切りかかってくるなよ?笑ってしまうかもしれんからな」

 

「そんな異名などない!・・・おのれ・・馬鹿にしおって・・・ぶっ殺してやる!」

 

ブチ切れてベルディアに向かって突進するダクネス。

 

「おい!ダクネスは本当に大丈夫なんだろうな?」

 

その姿がどうも先ほどのアクアと被ってみえてしまって、隣のめぐみんに問いかける。

 

「ふふ・・・まぁ見ていてください。なんだかんだ言ってダクネスの必殺技は強力ですよ?・・・もしかしたらこの私の出番もなく終わらせてしまうかもしれません。」

 

「マジか・・・土木工事の仕事でどうやってそんな技を・・・?」

 

「ダクネスは私やアクアのようにナル爺から特別な指導を受けたわけではないのです。毎日、毎日、ただ直向きにツルハシで土石を掘り続けました。ただ、以前と違ったところは余力をまるで残さないほど常に全力で労働に励むようになったことです。

修行によってボロボロに疲れ果てたカズマを見て、きっと何か思うところがあったんでしょうね・・・・労働をしつつ己を鍛え上げ、少しでも強くなることを目指したのです。不器用な彼女はただ全身全霊にツルハシを振るい続けました。手から血を滲ませても、筋肉が軋んでどうしようもなく痛んでも、疲労によって骨が折れそうになっても、親方から休めと言われても、ダクネスは振るうのを止めませんでした。

・・・・これが堪らないんだというような恍惚とした表情を浮かべて。

・・・・・暴走したドМほど怖いもの知らずで恐ろしいものはありませんね・・・・

とにかく、そうして過酷な労働に励んでいるうちに、いつしかツルハシを振るうという単純な動作そのものが必殺技の域にまで昇華して行ったのです。まぁ、女騎士らしい華麗な技とはとても言えませんが・・・・」

 

俺が修行をしている間にそんなことが・・・・

 

というか、スキルポイントで技を習得していた俺なんかよりもよっぽど苦労して会得したんだろうな・・・・少年漫画の主人公のようなダクネスに胸が熱くなる。

ぜひとも、ダクネスの努力が報われて欲しい。

しかし、一つだけ気掛かりがあった。

 

・・・・ちゃんと、命中するのか?

 

「うおおおおおおおおお!我が必殺剣を受けてみよ!!」

 

「ふん、大層な自信があるようだな。その誇りを正面から打ち砕いてくれる!」

 

ベルディアに迫り、雄叫びを上げるダクネス。

剣を最上段に構えながら助走をつけ、跳躍する。

 

空中で剣を振り上げ、大剣を構えるベルディアに斬りかかった。

 

腕の筋肉が僅かながらに膨張し、俺の中の女騎士という幻想を少しだけ壊した。

 

チャクラが剣に収束し、キラキラと輝いている。

 

「はああああああああ!!!エクス・・・・カリバーーーーーーッッ!!!」

 

とある有名な聖剣の名を叫びながら、ダクネスがそれをうち下ろした。

 

――――――ズドンッッ!!

 

という凄まじい轟音が大地を揺らした。

 

余りの威力に土埃が巻き上がり、視界を妨げる。

 

なんつー威力だ・・・これが当たったとしたら流石のベルディアもひとたまりもないだろう。

 

初級魔法のウィンドブレスで土埃を吹き飛ばして視界を晴らす。

 

そこには、大きなクレーターを中心に跪くダクネスと・・・その前に立つベルディアがいた。

 

「ふぁ?」

 

「・・・・・・・・っ」

 

先程から何も変わらない姿勢のまま、呆然として立ち尽くしているベルディア。

 

やっぱりな!!案の定、外しやがったよ!!

 

その近くでダクネスが顔を真っ赤にしてプルプルと恥ずかしそうに震えていた。

 

そりゃぁ、そうなるよな・・・得意げに必殺技を叫んでそれを外したとなっちゃ・・・・俺だったら引きこもっちゃうよ。

 

「ゆ、油断した・・い、今のは危なかった・・本当に・・・しかしなぜ、当たらなかったのだ?・・・俺は一歩も動いていないというのに・・・まさか、この俺に情けをかけたとでも?

答えろ聖騎士よ!なぜ、今の一撃を外したのだ!!」

 

なにやら、誤解してダクネスに問い詰めるベルディア。

 

やめてベルディアさん!外したんじゃなく外れたんです!その子はただ、人一倍不器用なだけなんです!許してあげて!もう勘弁してあげて!屈辱すぎてその子もう涙目になっちゃってるから!

 

「・・・ちょっと、目にゴミが入って狙いを外しただけだ!・・クッ・・・運のいいやつめ・・・」

 

涙を拭き、唇を噛みながら苦しい言い訳をするダクネス。

 

「え?・・・つい昨日どっかの馬鹿に自分の城を爆破されたんだが・・・

・・・そんな俺が運がいいと?」

 

ああ・・ダクネスそれは禁句だよ。だってそのお方、絶対にアクア以上の不運だし・・・

 

怒りが再燃したのか、ゆらりと大剣を構えなおすベルディア。

 

「ヤバイですカズマ!早く、ダクネスを助けに行ってください!」

 

「へ?」

 

「あの技を使った後は激しい筋肉痛でしばらく動けなくなるのです!」

 

「はぁ~~~~~~っ!?それを早く言え!!」

 

なんだその爆裂魔法と同じような欠陥技は!ノーコンなダクネスにとってはデメリットしかない技じゃねぇか!

 

動けないダクネスに大剣を振り上げるベルディア。

 

くっ、間に合え!

 

影分身を手裏剣に変化させてそれを素早く投擲する。

 

「むっ・・・」

 

ちょうどダクネスとベルディアに挟まれるような位置に手裏剣が突き刺さる。

 

ボンという音と共に姿を現せたのは・・・・・

 

「やめてよぅ・・・・おねぇちゃんに酷いことしないで・・・」

 

金髪碧眼の可愛らしい幼女(俺)

 

それが両手を広げてダクネスを庇うように立ち、涙を零しながら訴える。

 

「ふぁ!?・・・ま、まて!泣くんじゃない!俺は別に何も・・・」

 

しどろもどろに狼狽えるベルディア。ちょろい。

 

「本当に?おじちゃん、おネェちゃんのこと許してくれる?」

 

「あ、ああ、もちろん。こいつには何かされたわけでもないし・・・・」

 

「ありがとう!おじちゃん!」

 

「!・・・ふふふ・・いいさ」

 

ニッコリと無邪気に笑う幼女にベルディアは気持ちの悪い笑みを浮かべる。

 

その隙に他の影分身を使ってダクネスを救助する。

 

「助けてくれてありがとう。・・・しかし、あそこまで巧みに童女の真似事ができるとは・・・頼むから詐欺まがいなことはしないでくれよ・・・」

 

微妙そうな顔で俺の肩に掴まりながらダクネスが言う。

 

するわけないだろうそんなこと。・・うん、多分。

 

変化はその応用力の高さから犯罪に使えてしまいそうで困る。

金に困った時に魔が差して凶行に走らないように気を付けないとな。

 

「おかえりなさい。無事で良かったです!」

 

心配していたのだろう。めぐみんがホッとした顔で出迎える。

 

ベルディアは未だに俺が変化した幼女と楽しくおしゃべりをしているようだ。

デレデレしてすっかり骨抜きの様子。それを気持ち悪そうに眺める冒険者たち。

その気持ち悪さの半分くらいは幼女になっている俺に向けられている気がした。

 

くそっ、なんだその目は!?俺が食い止めているおかげで被害がないんだぞ!

もっと、俺を讃えてくれよ!幼女モードでオッサンの相手をするのがどれほどの精神的苦痛だと思っていやがる!

 

それにしてもベルディアさんは何なんだ。情緒不安定すぎるだろう。

 

なんかさっきまでの怒りが嘘のように今は笑いながら、幼女に一発芸を披露しているんだが・・・・

俺たち冒険者など、もう眼中にないようだった。

 

というか、このまま幼女(俺)がベルディアにお願いすれば素直に帰ってくれるのではないだろうか?

意外にこいつ、ロリコンの毛があるし。

 

 

 

・・・・・あ、しまった。躓いて転んだ拍子に幼女影分身が解けた・・・

 

・・・やっべ・・・・

 

 

 

「よくも俺を騙したなあああああああ!!!これが、お前たちの、やり方かああああああああ!!」

 

純情を弄ばれたロリディアはそれはもう、お怒りでした・・・・

 

 

 

 




今日はここまで。

ベルディア戦はまだまだ続きます。

果たしてベルディアは死亡フラグを折って生き残ることができるのか・・・・
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