サイヤ人になりまして。   作:畦道

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何か文章が微妙だったので、会話を多くさせてみました。多分、以前の話より読みやすいこではないのかな、と思います。作者も成長するんですよ。
‥‥‥え?文章力?語彙力?表現力?そんなものは(ry

では、どうぞ。


新たな誓い

「■■、■■■■■■!!!」

 

 

暗闇の中、誰かの声らしきものが聞こえる。

 

何度も聞いたことのあるような、記憶の底から何かを思い出させるような、懐かしい声。

 

だが、音にはノイズが混じり、何を言っているのか、内容までは分からない。

 

 

 

ただ、必死に何かを叫んでいるというのは理解できた。

 

 

 

「■■■、■■■■■■!!!」

 

 

幾ばくかたっても、その声は留まることを知らず、むしろ大きくなってきていた。

 

 

 

そしてさらに時間がたった後、暗闇に光が差し始め、ぼんやりと何があるのかが理解できるようになってくる。

 

 

目の前に映るのは、赤。

真っ白のキャンパスに赤色の絵の具をぶちまけたような、赤一色に染められた世界だった。

 

 

 

そして、景色が変わる。

赤一色に染められた世界に、ところどころ色が見えてくる。

 

ぼやけてよく見えないが、銀色や金色などの複数の色が、まるで空に映る星のように輝いていた。

 

「―――――――――――――――――!!」

 

声を出そうとするが、それは音にならず、赤色の景色に消えて行く。

 

 

そして、さらに視界がはっきりしてこようとするところで、自分の意識が遠ざかっていくのがわかった。

 

テレビで映像を見ているような感覚。だが、それも今から失われようとしていた。

 

 

「■■!!!」

 

意識がなくなる直前に、また声が聞こえた。

 

 

 

 

だが、それもノイズがかかって、何と言ったかは分からなかった。

 

 

 

 

「知らない天井だ‥‥‥」

 

寝起き特有のざらっとした感じの口で呟く。

 

どうやら、俺の芸人魂はオートで発動するらしい。自分から進んで芸人をやっているつもりはそこまでないのだが。

 

 

寝ぼけなまこの目に映ったのは、現代の日本の家にあるような白い天井。

背中には、柔らかい感触。恐らくベッドあたりだろう。そしてこの感触と、仰向けに寝転がっている状況から、俺は寝ていたんだな、と理解する。

 

近くに窓があるのか、心地よい風が吹いてきていて俺の肌を撫でていく。

 

 

起きるのも面倒臭く、そのまま寝転がっていることにする。

 

なにより、あの夢を見た後では、何か考えずにはいられなかった。

 

あの夢は何だったのだろうか。

寝起きのぼやけた思考で思いだそうとする。

 

只の夢にしては、何か気になる内容だった。

 

赤一色に染められた世界。そしてところどころに映る違う色。

夢の中では違和感は覚えなかったが、改めて考えるとやはり色々とおかしい。

はっきりと覚えているわりには、抽象的すぎる。

何かの暗示、というやつだろうか。

夢のようなもので未来予知と言えば、思い出されるのはバーダックだ。

メディカルマシーンの中や、気を失っていたときに見ていたという記憶がある。

 

だが、彼は元々そのような能力を持っているわけではない。

確か、たった一人の最終決戦でカ‥‥なんとか星人の攻撃を受けたからだったはず。星人の名前なんて一々覚えていない。

まぁ、つまるところ俺には全く心当たりはない。

 

‥‥‥いつか見たアニメのシーンかね。

 

そう俺は納得する。だってこれ以上考えてもわかんないし。

正直言って、今のは只の夢だ。

俺は予知夢なんて持ってないし、あんなぼやけまくっているものを見たとしても対策なんてしようがない。

 

 

 

それよりも、今考えなくてはならないのは、ケープのことだ。

 

今こうして俺が生きているっていうことは、助かったのだろう。

 

誰が助けてくれたか、それとも見逃してくれたのかは定かではないものの、五体満足でこうしていられるのは素直に安心べきだ。

 

だが、奴のことを考えると、やはり不安が無いとは言い切れない。

 

 

もしかしたら俺の知っているドラゴンボールの歴史とは違ってきているのかもしれない。

そもそも、俺というイレギュラーが何故存在しているのかも謎なのだ。

これは、トランクスの時のように、本来はいなかったはずの存在が出てきたことにより、歴史が変わってしまっていくというあれなのだろうか。

‥‥‥いや、それは流石に考えすぎか。

しかし、そこら辺の類いだとは思うんだがなぁ。

 

「ああ~もうわっっかんねぇぇ!」

 

思うように考えが纏まらず、寝転がったまま、頭を抱えて叫ぶ。

もう、あれだ。考えるの止めよう。こんなことやってても、ドツボにはまっていくだけだ。

 

そう俺は考えを改め、ベッドに潜り直そうとしたところで、ドアが開いた。

 

 

 

 

「起きてるか見に来たら‥‥‥思ったより元気そうだな」

 

そこに立っているのは、何日か前から行動を共にしているサイヤ人だった。

 

 

「‥‥‥カリフか」

 

俺がそう問いかけると、カリフはおう、とだけ言い、俺の寝ているベッドに腰を下ろした。俺はそれを片目で見ながら、上半身を起こす。

 

カリフは少し考えた後、こちらを見て話しかけてきた。

 

 

「リンゴ、食べるか?向こうの台所にあるんだが」

 

腹が鳴るほどではないが、多少空腹感はあったので、素直に頷く。

 

「ああ。そう言われると腹が減ってきたな」

 

「じゃあ、後から持ってくるわ」

 

「出来れば今持ってきて欲しかった。手ぶらかよ」

 

「言ったろ、様子を見に来ただけって」

 

「だけとは言ってないな」

 

 

そうだっけか?そうだよ、というやり取りが続き、俺もカリフも口を閉じた。

 

少しの沈黙が流れる。

何か言葉を発そうとするが、何も言葉が出てこない。この感じが酷く既視感があり、そして何故か不快感があった。

風が吹いてくる音だけが、この場を包んでいた。

 

 

「なあ‥‥‥俺、どれくらい寝てたんだ?」

 

結局、口を開いたものの、口から出たのは、核心には触れない質問であった。

 

「1日ぐらいだ」

 

それにカリフは、俺の聞いたことだけを答える。それ以上の情報を付け加える訳でもなく。ただそれだけを。

 

正直言って、それは俺にとってありがたかった。やはり、あの場で何が起こったのかは知りたいとは思う。けど、まだ心の準備が出来ていないのだ。もしかしたら、あの場で俺達以外の犠牲者が出たのかもしれない。何の犠牲もなく見逃してくれるほど、奴は、ケープは多分、甘くない。

 

視線を下に落とし、ぐっ、と拳を握り締める。

 

カリフはそんな俺の行動を見て、何を思ったのかは分からなかった。けれども、何か、彼なりにも感じているのだろう、とはわかった。視線に力が籠っていた。

 

カリフは少し、こちらを窺っていたが、ふっと息を吐き、視線に力を籠めるのをやめた。

緊張していた空気が弛緩し、俺は顔を上げた。

 

「そんなに思い詰めなくていいって。犠牲者は0。特段大きな被害も出てない。まぁ、あっちも隠密行動中みたいな感じだったしな」

 

カリフは俺の肩をポンポンと叩きながらそんな軽い口調で言ってきた。そして、さらに付け加え、言葉を発した。

 

「まぁ、お前も頑張ったしな。今回のMVPは譲ってやるとしよう」

 

「MVPって何だよ‥‥‥。てか、俺一人の力じゃないだろ。皆がなんとかしてくれたんだろ?誰かは知んないけどさ」

 

そんな軽い口調に、俺は少し呆れた表情で返す。

俺自身は何にもしていない。力が及ばず、ただ相手に打ちのめされてただけだったはずだ。

そんな俺が、一体何を残したというのか。

あの場で被害が出なかったとしても、負けたのだ。もしかしたら、死んでいたのかもしれないのだ。

MVPとか、大それたことはしていない。

 

「いやいや、あれは凄かったろ。圧倒とまではいかなかったけど、まぁまぁ食らいついてみせたじゃないか?」

 

食らいつく‥‥‥?いや、まぁ確かになんか死にかけでも頑張って立ち向かったけどさ。あれはその、何て言うか食らいつくというよりもへばりつくという方が正しくないか?

 

「‥‥‥あれはなんか、違うだろ。もっと惨めで情けなくて、見ていられないようなもんだっただろ‥‥」

 

 

俺の言葉にカリフは少し驚くような素振りを見せ、少し疑問を孕んだ視線をこちらに向けてきた。

カリフは何度か口を開いたり閉じたりを繰り返した。まるで、何か言葉を選んでいるかのように。

そして、恐らくひとしきり考えた後、質問をしてきた。

 

 

「レン、お前‥‥‥覚えてないのか?」

 

 

 

 

「いや、覚えてないって、何が?」

 

質問の意味が分からず、思わず聞き返した。

 

「あれだよ、何か目が赤くなって、すんげーパワーアップしたやつ」

 

「は?なんだよそれ。どこのうちは一族のこと言ってんの?中二病にも程があるだろ」

 

またもやカリフの訳の分からない質問に聞き返す。

そもそも、そんなものがあるのならとっくのとうやっている。あのリオレウスモドキの時に。

 

「いや、マジで。ほんとに覚えてないのか?」

 

カリフの言葉は真剣そのものだった。少なくとも、冗談を言ってないのはすぐに分かった。

 

その言葉を受け、俺はもう一度思考の海に沈んだ。

 

 

じゃあ、あの時、俺は何を考えていた?何を思った?

 

 

 

確か、あの時は、無我夢中で、意識が朦朧としていて‥‥‥。

 

 

んで、力が欲しいとか何とか思ったっけ‥‥‥あっ。

 

 

 

「‥‥‥どうした。いきなり頭を抱えて」

 

「やめろ、なにも聞くな触れるなそのままにしてくれ」

 

 

何だよ、力が欲しいって、誰も救えないって、弱肉強食って!

 

 

 

 

 

 

めっっっっちゃ中二病じゃねぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁ!!!

 

叫びたくなった。というか、死にたくなった。

この世界に生まれて5年。こんなにも死にたくなったことはなかった。

いくらこの世界が超能力とかがあるものだとしても、流石にこれはない。元々大の大人だっただけに、結構心に来るものがある。

 

カリフはそんな頭を抱えて踞った俺を、少しの間軽蔑を含んだ視線を送って来ていたが、ふと何かに気づき、そして何かをこらえるかのように、肩を震わせた。そして一言、呟いた。

 

「『ああ、力が欲しい。』って‥‥‥今時古くないか?」

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!心を読むなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

俺はついに堪えきれなくなり、寝起きであることも忘れ、大声で叫びながら布団に潜った。

マジでやめろ、ほんとに。冗談でも止めてくれ。止めてください。止めていただけませんでしょうか?

 

「殺せ‥‥‥もういっそのこと殺してくれ‥‥‥」

 

布団に潜り、呻き声を出す。

カリフはそんな俺を見て、溜め息を吐きながら、言葉を出した。

 

「折角、生きて帰って来たんだから冗談でもやめようぜ。そんな殺すとか、物騒な単語はよ」

 

‥‥‥確かに、あんまり縁起のいいもんじゃないし。冗談にもなっていないし。

俺は少し反省し、謝った。

 

「‥‥‥まぁ、そうだな。うん。悪かった」

 

 

「いいってことよ。カリフ様の寛大な心に免じて許してやろう」

カリフはそう言いながら、自分の胸をトントン、と叩く。

 

「それはどうもありがとよ‥‥‥。って、何で俺が悪いみたいになってんだよ!勝手に人の心読んだのお前だろうが!」

 

「ちっ、バレたか‥‥‥。貴様は俺の手のひらで転がされるだけの存在であったのになぁ‥‥‥」

 

「んだよ、そのラスボス感はよ!てめっ、何もせずに見てただけじゃあないだろうなぁ!そん時お前は何してたんだよ!」

 

「ギクッ」

カリフは分かりやすく動揺する。

 

「おお!?図星か!?まさか図星なのか!?」

 

「ふっ‥‥‥何を言っている、赤き目の力を求める者よ‥‥‥そんなに叫んでいては器が知れるぞ」

 

「てめぇ、喧嘩売ってんのか!?売ってるんだな!?よし、上等だ。買ってやるよてめぇの喧嘩を!」

 

俺は叫びながら、カリフの襟を掴み、体を揺さぶる。

 

気づけば、心の中にあった悩みは吹き飛んでいた。

ただ、数日前のあの雰囲気に戻ったみたいで、ちょっと懐かしく感じ、当時に嬉しくもなった。

 

 

 

 

「‥‥‥やれやれ‥‥‥さっきまで寝こんどった癖に、随分と元気じゃのう」

 

お互いの髪がボサボサになるくらいの取っ組み合いをしていると、聞いたことのある声が扉から聞こえた。

一旦攻撃を中止し、扉の方を見ていると、またもや見知った顔があり、思わず何度目かも分からない大声を出した。

 

 

 

「龍仙人!?」

 

「レンよ、久し振りじゃのう。まぁ、数日間振りぐらいだけどのう」

 

龍仙人は俺の声に対し、律儀に挨拶をしてきた。俺もそれを聞き、挨拶を返す。

 

「お久し振りです‥‥‥。龍仙人。ところで、どうしてここに?」

 

 

「うむ。そこら辺は後で話すとして‥‥‥。レンよ、体は何とも無いか?ああ、面倒臭いから、敬語はいらんぞ」

 

そう言われて、俺は自分の体を動かし、別に異常が無いのを確認し、答えを返す。

 

「別に、何ともないですよ‥‥‥、いや、何ともないな。むしろ前よりスッキリした感じがするけども」

 

「スッキリか‥‥‥。お主、あの時、何があった?」

 

龍仙人は、俺の答えを聞き、少し考えた後、もう一度問いかけてきた。

あの時、というのは、カリフが言っていた、赤い目になったことだろう。

‥‥‥てか、何でこの人そんなこと知ってんだ?カリフから聞いたのか?それともその時その場にいたのか?

 

俺が少し疑問に思っている間、カリフがそれに対して答えを返した。

 

「レンは、その時のこと覚えて無いんだってさ。そもそもそんなものがあったかも知らなかったようだし」

 

「そうか‥‥‥。まぁ、分からんことを考えても仕方あるまい。この件は保留にしておくとするかの。‥‥‥さて、ワシが何故ここにいるかじゃったか。まぁ、答えは単純。ここがワシの家だからじゃからのう」

 

 

‥‥‥へぇーここ、龍仙人の家だったんだ‥‥‥。へぇー。

「‥‥‥思ってたよりもリアクションが薄いのう‥‥‥」

 

しょんぼりしたような声で龍仙人は言う。

あ、こんな反応もするんですね。ちょっと親近感が沸いた。

 

けどなぁ‥‥‥。

 

「正直言って、龍仙人が出てきた時、何となく察しはついてた」

 

 

いや、まぁね?何となくだよ?でも、ちょっと分かるよね。あのタイミングというか、この場で出てきたら。

 

てか、別にそんなことを聞きたい訳じゃないんだ。

 

「いや、そういうことじゃなくて‥‥‥この件に関係してるのか?」

 

 

偶々と言ったらそれで終わりだが、ちょっと出来すぎじゃないか、とは思う。

流石に世界狭すぎだろ。

 

 

 

「まぁ‥‥‥そのことなんだけどよ‥‥‥。正直言うと、俺達は利用されたというか、元々仕組まれてたみたいな‥‥」

 

 

「‥‥‥?」

 

 

カリフは要領の得ないような感じで、言葉を濁す。

俺はそれが分からなかったので、疑問符を浮かべてしまう。

それを見て少し悟ったのか、カリフは頬をポリポリかきながら言葉を続ける。

「あー、あれだ、課題あったろ?あれが元々あいつ‥‥‥ケープと戦うものだったんだってよ」

 

 

「‥‥‥へ?」

 

思わず、情けない声を出してしまった。いきなりのことすぎて混乱してしまう。

 

 

え、いや、どういうこと?課題ってあれだよな?HENTAIのお願いごとだよな?

 

 

 

龍仙人の方を見ると、にやっとされた‥‥っておい。

 

 

そのまま、カリフは続ける。

 

 

「元々、あの課題って言うのは真っ赤な嘘だったらしいんだ。なんか、ドラゴンと戦っている俺達を見て興味が沸いたらしくてさ。んで、その時は偶この星に来たケープ達を追っていた途中らしくて。俺達の実力を見る上でも戦わせたんだってさ。それをさせるための、あいつらの目的である少女を助けてこいっていうことを言ったらしいんだよ」

 

 

 

 

なん‥‥‥だと‥‥‥?

 

 

じゃあ、あれは全て仕組まれてたのか?龍仙人は全てを知った上で、あえて俺達に課題という名の戦闘を託し、あの銀髪の少女を助けさせようとのか?

 

その事実にたどり着き、愕然とする。

 

なにそれ怖い。全部龍仙人の手の中だったってことかよ。ただの変態って思っちゃってすいませんした。

 

龍仙人はそんな俺の考えを知ってか知らずか、説明を付け加える。

 

「まぁ、それだけではないんじゃがの。他にも、奴等の目的を探るとかいう理由があったんじゃがの」

 

ふーん。そうなのね。

 

 

「ふーん。で、そのケープは結局どうなったんだ?倒したのか?」

 

騙されていたことには、もう怒りというよりも感心をしてしまうほどには、何とも思っていなかったため、先程から疑問にっていたことを聞く。

 

正直言って今はこっちの方が興味がある。

 

「いや、逃がした。流石に倒すのは難しいってよ」

 

カリフはそう言う。

 

なるほど。

 

ここまで計算しているのなら、何かしら追い詰めるとか、そういう展開があったと思ったが、どうやらそう簡単に事は運ばなかったらしい。

やはりクウラ機構戦隊は相当強いらしい。

まぁ、龍仙人がそこでまた出来ないと言わない辺りが、なんとも凄いところだとは思うが。

 

「‥‥‥そうか」

 

とりあえずは大まかな事情は分かり、特段被害も出てないとわかったので、ほっとする。

 

だが、何か忘れているような、変な感覚があったので、少し考えて、元々の目的でもあった重要なことを思い出して、慌てて問いかけた。

 

「そ、そうだ!あの娘‥‥‥あの銀髪の娘はどうなったんだ!?」

 

ケープが去ったとは言え、彼女が無事とは言われていない。

そもそもが彼女を助けようとして起きた出来事でもあったので、彼女の安否は心配だった。

 

 

「ああ‥‥‥それなら‥‥‥」

 

龍仙人はそう言いながら、扉に向かってちょいちょいと手招きをする。そこで初めて気付いたが、少し空いた扉の隙間からジーっとこちらを見ている目があった。

 

その目の持ち主は、言われてビクッとした後、ゆっくりとだが、扉を空けて中に入ってきた。

 

 

そしてそこから出てきたのは、美しい銀色の髪をした俺達と同じぐらいの少女‥‥‥もとい幼女だった。

顔の形とかは俺達サイヤ人‥‥‥まして地球人とほぼ一緒であった。

肌の色も、少し白くはあるが、俺達と大した差は無い。

 

詰まるところ、普通に可愛かった。

 

 

 

彼女は最初の方は遠慮がちの態度だったが、か細い声で自己紹介をした。

 

 

「えっと‥‥‥シル‥‥‥。よろしく‥‥‥」

 

それだけ言うと、後ろの方へ逃げていってしまった。

 

片言で、本当に短い言葉だったが、確かに守れたものもあると思えて、少し嬉しくなった。

 

 

 

ただ、何故か、彼女の顔を見たときに、少し違和感があった。

具体的に言うと、何処かで見たような‥‥‥会ったことのあるような感じがしたのだ。

無論、彼女とは初対面であろう。あの態度からしても、そうだと思う。

 

ただ、考えても仕方がなかったので、この事に関しての思考は放棄した。

会っていても、どちらでもよい。どうせこれから付き合う機会も多くなるのだし、その時にのんびりと考えて行けばよいのだ。

 

 

「さて、ワシらもそろそろ出ていくとするかの。目が覚めたと言っても、まだ体は本調子ではあるまい。そのままゆっくり休んどきなさい。ああ、それと修行のことじゃがの。お主の怪我が治ったら、つけてやるからの。安心せい」

 

龍仙人はそう言葉を残し、出ていった。

次いでカリフも、

 

「早く治せよー」

 

とだけ言い、部屋から出ていった。

 

バタン、と扉の閉まる音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らが来る前の、静かな雰囲気にもどる。

 

「ああ、もう疲れた‥‥‥」

 

ぐでーっとしながら呟いた。

 

今日はいきなりのことが多すぎて、頭が混乱しそうだった。いや、現在進行形でしているか。

 

まぁ、平和に片付いて万々歳、ってとこかな。

 

そう考え、その後にうつぶせにベッドに倒れこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥ははっ」

 

しばらくぼけーっとした後、無意識に、自嘲を含んだ笑いが出た。

 

 

 

 

嘘だ。

万々歳な訳あるか。

結果的には、龍仙人の思惑通りになったが、そんなことでいいわけがない。

俺は、彼女を、助けられなかった。ケープに、文字通り手も足もでなかった。

 

そんな中通じたのは、発動条件も何もかもが謎の不思議な力のみ。

 

 

 

情けない。本当に、情けない。

 

死にかけて、人に助けてもらって、それで見逃してもらって。

 

後から後から、温泉が沸き出るように、悔しさが込み上げてくる。気がつけば、また俺は拳を握りしめていた。

 

 

 

 

‥‥‥俺は、強くならなければならない。

誰の為でもなく、自分の為だ。

 

結局、遅すぎたのだ。自分から行動を起こすのが。何だかんだで流されたままだったが、もっとやれることはあったはずなのに。

甘えていたのだ。いずれこうなることは分かっていたのに。

仕方ないと、自分を誤魔化し、流されることが今を守れることだと、正しいことだと信じて。

あんなものは修行とは呼ばない。自分はやっているんだ、という自己満足だけだったのだ。

それがこの様だ。

 

本当に、俺は何をしていたのだろうか。

 

 

 

無力感が体を襲い、瞼が重くなってくる。

 

 

 

‥‥‥この怪我が治ったら、死に物狂いで頑張らなきゃな‥‥‥。

 

もう何にも届かない、ということがないように。

 

そう思いながら、俺は眠りに入った。

 

 

すでに、その時には、夢のことなんて記憶から抜け落ちてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 




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