神精樹。
そしてそこからとれる果実、神精樹の実は、言わずと知れたドラゴンボールチートアイテムのひとつである。
言わずと知れるほど有名かはさておき、 食べるだけで戦闘力が無限に増えていくという最強のドーピングアイテムである。さらに、上がり幅も、場合によっては圧倒されていた状況も覆しうることもある。しかも、それによって起きるデメリットもない。まさに、ノーリスクハイリターンのチートアイテム、というわけだ。
「なんでこんなところに‥‥‥」
いや、実際犯人も動機も分かっているのだ。だが、思わず口にしてしまった。
神精樹の実だけをとって言えば、ノーリスクハイリターンのチートアイテムなのだが、神精樹自身はそうもいかない。 流石に無から強力な 実を生み出せるわけではなく、あるエネルギーが必要なのだ。植物である以上、ここまでは分かる。
だが、必要なそのエネルギーは、その星のエネルギー。それもあるだけ全部。エネルギーを吸われた星は、豊かな自然もなくなり、赤茶けた砂漠の、まさに死んだ星になってしまう。
神精樹は無限に星を喰らい尽くす悪魔の植物であるのだ。
そして、この木は星に根付いてしまっているため、表面からは物理的に取り出すのはほぼ不可能といえる。そもそも一国程度なら覆い尽くせそうな巨体でもあるから、相当なエネルギーが必要なことは間違いがない。だからこそ、今は後回しだ。
集中し気を探知すると、やはり思った通り少し大きめな気が五つ、それよりも大きい気が一つ存在していた。
「ターレス‥‥‥だよな」
その神精樹の実を扱う者こそが、宇宙の暴君、ターレスというサイヤ人とその仲間、クラッシャー軍団と呼ばれる者たちである。極端に言ってしまえば星単位での強盗である。先に挙げた神精樹の実で、自らを永遠に強化しつつ、砂漠と化した星で、その地から奪ったもので騒ぎ立てる。一応はフリーザ軍に属しているらしいが、自由行動も多い。これも神精樹を根付かせているので、勝手な行動だろう。
「ちっ‥‥‥」
だが、今は考察をしている場合ではない。ここに来ることこそ、俺達にとってはイレギュラーだが、そもそも俺達自身がイレギュラーだ。映画以外で存在した部分なのだろう。それに、予想だにしなかったのはここに来てしまったことだけだ。人数も6人と、映画と同じである。カープのような場合ではないのが助かった。
地面に狩った猪を置き、すまねぇ、と心の中で謝った後、カリフ達に合流すべく、全力で飛翔した。
*
向こうも危険を察知したのか、留守番をしていたシルをつれて、カリフも俺に向かって飛んで来ていた。そのため思ったより早く途中で合流し、そのまま敵の本拠地に向かっていった。
奴らがいるのはこの木の少し上だ。相手はスカウターを持っているから、こちらを探知できるだろう。それでも動かないのは、単なる余裕だろう。まぁ油断してくれているのはありがたいことだ。意図的に戦闘力を落としている甲斐があるってもんだ。
「シルはここで待っていてくれ」
木の上を進む前に、シルに呼びかける。シルはサポート役だ。戦闘に巻き込まれたらひとたまりもないだろう。だからと言って遠くに居すぎると、肝心な時に助けに行けない。1番ここがいいだろう。
それを伝えると、シルは少し不満そうだったが、自分の役割を理解しているのだろう。結局そこで待機していることになった。
シルに見送られ、上へと登る。
そして予想どうり、少し木の上を進んだところで連中の姿が見えた。
巨体で長い髪を後ろで結わえている力士みたいなのが、アモンド。キザな感じを醸し出しているモヤシ野郎がダイーズ。全身を金属で囲っているロボットが、カカオ。そんで紫のチビ2人がラカセイとレズン。
「やっぱりか‥‥‥」
そして、黒色の戦闘服を身に纏い、怪しく笑みを浮かべる褐色の肌の男。尻には自分がそうであると示す、尻尾が生えている。顔は言わずと知れたこの物語の主人公、孫悟空と瓜二つの外観。
俺の呟きは聞こえていなかったのか、あるいは無視したのか。
そのサイヤ人の男、ターレスはこちらを向きながら、興味深そうに呟いた。
「ほう‥‥‥サイヤ人か」
こちらを探るような声音。だが、別にそこはどうでもいい。至極当然のことであるからだ。
それよりも、初めての生の野沢さんボイスがこいつとはな‥‥‥。まだこちとら原作キャラに会ってないってのによ。あの人ってドラゴンボールだけでも結構役やってたよね。確か7役ぐらい。まぁクズロットが生まれたのもそれが原因でもあるし。
「お前もサイヤ人のようだな・・・」
「そうだ。俺の名はターレス。クラッシャー軍団っつうチームのリーダーでもある・・・」
ターレスは自己紹介をすると、続けてこちらに獰猛な笑みを浮かべ言葉を続ける。
「小僧‥‥‥。俺と一緒に来る気はないか? 宇宙を気ままにさすらって、好きな星をぶっこわし、旨いモノを食い旨い酒に酔う!
こんな楽しい生活はないぜ‥‥‥」
「丁重にお断りする」
俺の答えはNO 。誰がんなものに手を貸すか。元日本人の正義感舐めんな。
しかし、テンプレで返せて満足した俺に対してターレスは不機嫌を滲ませながら言葉を続ける。
「俺達は生き残ったサイヤ人の僅かな仲間・・・。お前達もこの星を侵略していたのだろう?そう邪険にするなよ・・・」
「生憎、興味ないんでね」
「もうすぐでこの美しき緑の星も赤茶けた砂漠の星に生まれ変わる、、、。見ろ、あの大樹を。あれはな、」
「神精樹・・・だろ?」
「ほう・・・.知っているのか。ならば尚更俺達について来ようとない?このまま犬死なりたいのか?」
「そんなつもりは毛頭ない。別に犬死にもなりゃしねぇよ。さっき言ったように興味もないしな。そうだな、それにあえて加えて言うなら、俺がそれが正しいことだと思ったからだ。この星も侵略なんかしてない。少なくとも、お前らみたいな悪党とは違う。だから、お前達にはついていかない。いや、この場で倒させて貰おう」
「誰の倅かは知らないが、随分と頭のおかしいガキに育ったもんだ・・・。サイヤ人ならサイヤ人にふさわしい生き方をしろ!」
ターレスは怒りを孕んだ声で尚も告げる。それに対して答えたのは、カリフだった。
「これは俺の、俺たちの意思だ。サイヤ人とかじゃなくてさ・・・。だろ?レン」
カリフの質問に頷く。それを見たターレスは、さらに怒りを露わにした。
「身の程知らずのガキどもが・・・。いいだろう、この星もあと数時間の運命だ。この星と同じ運命を辿るがいい!!」
「へっ、そう簡単にはいかねぇぜ!」
「口の減らない生意気な野郎だ・・・。戦闘力もさほど高くない。わざわざ俺が出張る必要もない。力の差を思い知れ!」
ターレスが言い終わった次の瞬間、後ろに控えていたクラッシャー軍団の5人が纏めて飛びかかってきた。
そのままやられるつもりも毛頭ないので、しっかりと手をクロスさせ、攻撃を防御する。カリフも襲われているようだが、同じ様に防御していたのだろう、少し後退しただけでピンピンしていた。シルは・・・大丈夫だ、狙われていない。気は特別に変化していない。下に置いてきて正解だったな。
「少しはやる様だな」
「伊達にサイヤ人やってねぇよ」
驚いたというダイーズの言葉に、素っ気なく返す。実際戦闘力は落としていたからな。
無論、それだけで攻撃は終わらず、二撃、三撃と立て続けに殴ってくる。俺はそれを防御し、反撃の機を伺う。そんな中、ターレスがこちらに背を向けた。
「さて、俺は高みの見物といこうか」
そう言葉を残すと、 ターレスは飛び去ってしまった。何故逃げたのかは分からないが、元凶を倒さなければ恐らく神精樹は止まらない。元凶を叩いても止まらなさそうではあるが、連続して種を蒔かれないようにしなくてはならない。
「カリフ!ここは俺が止める!お前は奴を追え!」
「了解!」
一瞬で俺の意図を汲み取ってくれたカリフは、気をさらに解放し、殴りかかっていた連中を吹き飛ばす。その間に、すでに飛び去ったターレスの姿を追いかけた。
「逃がさんぞっ!!」
ターレスの背中を追ったカリフを撃墜しようと、アモンドが気を放つ。
俺はカリフの背を守るようにし向き合い、気弾を手で弾き飛ばす。
「お前達の相手は俺だ!余所見してんじゃねぇぞ!」
さて、引き止めをやってやろうじゃないか。、
*
見える。
拳が、蹴りが、気弾が、動きが。
5体1の状況であるにも関わらず、全員の行動が全て分かる。
ダイーズとカカオが放つ割と素早い攻撃を左右に回避しながら距離を詰め、隙をついて反撃をする。
その間に、アモンドが背後をとっていたようだが、それは知っているため少し遠くに飛び、回避する。勿論攻撃も忘れずに。
「!!?」
隙をついた攻撃だったため、アモンドも回避できなかったようだ。
気弾が胸元で炸裂する。
ちょうど近くにいたチビ2人も巻き込めた。しばらくは動きを封じれるだろう。
そう思った束の間、さっき攻撃をしたダイーズとカカオの2人が飛び出してきた。見るところ対したダメージも受けていない。
「やっぱ5体1とか面倒いっ、なっ!」
1人1人にかける攻撃がどうしても軽くなってしまう。相手の方が手数が圧倒的に多いため、こちらは自ずと回避に専念してしまう。よってどうしても決定打にかけてしまうのだ。
戦闘力はおそらくこちらの方が上だが、面倒くさいな。
ていうかこんな子供相手に5体1のリンチですか。大人気ないな。
まぁこちらが足止めしてる状態であるからしかたないのだけれども。追う相手も子供なのは置いておいて。
どうでもいいことを考えつつ、攻撃をいなす。カカオが拳を抜けば、それを躱し、その隙にダイーズが攻撃するなら左右にいなす。その繰り返しだ。
だが、いい加減防御も疲れた。
俺の役目は一応足止めだが、別に攻撃ひてはいけないわけではない。ここらで一髪かましとくか。
カカオとダイーズの連撃の隙間を縫って、高速でかがんで躱し、身を絡ませる。
「どこにいった!?」
ダイーズ達は、身長の低い俺に対して拳を当てるために、上方向に向いていた。そのため、急に下に行くとあたかも消えたようにみえるだろう。
そして同時に手のひらに気弾を生成し、俺を見失ったカカオの顔面に、スカウターごとぶち当てた。
「っっ!」
カカオは驚くまもなく、気弾に押され遠くへ吹き飛んだ。そして、姿が見えなくなったところで、大爆発。
さながら気分はスローイングブラスターだ。
そしてそのまま後ろを向いているダイーズの腹を蹴り飛ばし、拳をいくつか振るい、最後に顔面を蹴飛ばし遠くに叩きつけた。
「隙ありでっせぃ!」
と、直後両腕を掴まれた。
見るとレズンとラカセイが俺を捕まえている。拘束され、身動きが取れない俺に、頭上から声が聞こえた。
「ぬぅぅぅん!」
アモンドが両拳を握りしめ、叩きつけんと俺に迫ってきていた。
さっき避けたから避けられないようにするためか。
なるほど、これは攻撃を食らうしかないーーーーーーーーーーーーわけでもない、
俺は極めて冷静に、両腕を勢いよく正面に移動させる。
その行動により、拘束をしていたレズンとラカセイの頭が勢いよくぶつかり、2人の手が離れる。
自由になった俺は、レズンの顔面に気弾をぶつけ、ラカセイの顔面を蹴り飛ばし吹き飛ばした後、後方に回避した。そしてまたもや攻撃を外したアモンドに近づき、攻撃後の隙をつき、正面から一発。
その衝撃に、アモンドがガハッと肺の中の空気を全て吐き出す。
だがそれで終わりではない。続けてもう片方の手で顔面を、殴り飛ばし、吹き飛んだところを追いかけ、頭上から顔面へ拳を振り抜き地面に叩きつけた。
「どうした、その程度か」
この様子だと、わざわざあれ使わなくて済みそうだ。別にどっちでもいいけどな。しかし、そうなると俺でなくても良かったわけか。
まぁいい。
とりあえずこいつらを気絶させて、カリフのところに向かうとするか。
「この星のエネルギーを吸いとった、神精樹の実さえあれば‥‥‥!」
ラカセイが這い蹲りながら、苦し紛れに呟く。
「残念だが俺は、態と取りに行かせてやるほど、お人好しじゃねぇ」
俺はそれを聞きし、無慈悲に言い放つ。
サイヤ人といえども、こちとらちゃんと実利を考える方だ。好き勝手されてパワーアップされたら堪ったものじゃない。それに、俺の一存では決められない、借りている星の運命だ。俺が破壊していい資格なんてない。借りたものはきちんと返す様に。小学生でも知っていることだ。
「さぁ、そろそろ終わりにしようか 」
満身創痍の敵を見やる。敵は4体。こいつらを気絶させなければ・・・って、後もう一体はどこにいった?
「はっはぁ!油断したなぁ! 」
声のした方向を見ると、レズンがシルの首をロックしてこちらに向かってニヤッとした表情を向けていた。
しまった。下に叩きつけたことでシルが見つかってしまったか。一応スカウターは壊したはずだが、たまたまか。
沈黙を好機と受け取ったのか、レズンはさらに脅しを続ける。
「くっくっくっ・・・。貴様は許さんぞ・・・。だが、ターレス様の頼みだ。我らの仲間になるならこいつを助けてやろう・・・ 」
俺がいい倦んでいるその隙に、倒された周りの仲間達と続々と立ち上がり、こちらを囲う。
はたから見れば、人質を取られ、うまく動けず、四方を囲まれているという、絶対絶命な状況。
向こうもそれを知っている。だからこそ、ニヤニヤと笑みが止まらないのだろう。
だが、1人だけ違った。
囚われているシルが、シルの目が、こちらをじっと見ていた。それは、信頼の視線だろう。その視線を浴び、俺は言葉を発した。
「・・・仲間になれば、本当に、命だけ助けてくれるのか?」
「ああ、約束してやろう。俺たちは仲間に優しいからな。仲間になればの話だがな。まぁ、この状況では致し方あるまい。」
ラカセイは、俺の弱々しい質問に対し、抵抗する気力をなくしたと思ったのだろう。続けて勧誘をする。そして、最後の忠告、という風に言葉を続けた。
「さぁ、言え!お前は、俺達の仲間になるんだ! 」
「だが断る」
最後の忠告を、バッサリと一言で切り捨てる。
「お前らは、俺が本当に何もしてないと思っていたのか?それだったら舐めすぎにも程があるな」
俺の挑発に苛立ったのだろう。完全に切れたレズンが、シルを殺そうと行動を起こそうとする。
まぁ、そりゃそうだわな。圧倒的優位な立場に立ったと思ったら、相手はそれを全く意に介さず、要求を拒否する。それは頭に血が上っても仕方がないだろう。
つまり、隙が出来たわけだ。
「オラァ!」
「ガハッ!!」
次の瞬間、レズンはシルを掴んでいた手を離し、吹き飛んだ。
飛んできたのは、俺の分身。
調達用に出していたうちの1人である。
まぁ、分身の詳しい説明は後でするが、俺はコンタクトを取り、この場に呼んだわけだ。これがやろうとしていた「あれ 」である。俺の方が多対一に向いている理由でもある。こちらは多少制限はあるが、人数が増やすことができるからだ。数には数だ。
まぁ、この展開は少々予想外ではあったが。
スカウターを潰しておいてよかった。
ともあれ、シルを解放したことで、俺が躊躇う必要はなくなった。態々近寄ってくれた残りに、瞬時に拳を叩き込む。
「がッ!」
「ぐはっ!」
「ダっ!」
「ぐぉっ!」
そして、全員肺の空気を吐き出し、崩れ落ちた。
レズンは遠くで崩れ落ちており、誰もが直ぐに立ち上がる気配はない。
「ふぅ・・・」
終わったことに安堵し、ため息をつく。シルは分身が保護しているようだった。シルは終わったのを確認すると、俺に近づいた。
「・・・お疲れ様」
「おう」
会話はこれだけ。
だが、元々口数が多い娘ではない。労ってくれたしいいだろう。
それに、まだ終わっちゃいない。まだ中ボスが終わったところだ。今からカリフに手を貸し、ターレスを倒し、神精樹を破壊しなくてはならない。
やることはまだまだあるのだ。今はこうしている場合ではない。
休憩は終わりだ。今から向かうとしよう。
「よし、シル。今からカリフのところに向かうぞ」
「ん。了解」
そして、カリフの気を探り、飛び立とうとしたところで、カリフの気に違和感を感じた。
「・・・?」
「どうしたの?」
突然止まった俺を心配してくれたのか、シルが声をかけてくれる。
「ああ、いや、なんでもない・・・といいんだが」
違和感といっても、少し変な感じがしただけだ。言葉にしようとすると、大した差ではないと思うほどに小さなことではある。だが、それは決して無視は出来ないのだ。
「気が大きくなってるな・・・」
俺の知っているカリフの気の量より多い。それがどうも気になる。そして、それは現在進行系で起こっている。
実力を隠していたのか。それとも界王拳みたいな大技か。推測はいくらでも出来るが、嫌な予感がする。
・・・ターレスか作中で行った行為といえば・・・。
そして、ふとそれを思い出した。
「まさか!」
結論に達した直後。
遠くから、獣の雄叫びが聞こえた。
ターレスが作中で行ったのは・・・
大猿化、である。