キャラブレブレですいません。
カリフは尻尾を切断され、元の人間のサイズに戻っていた。
「よっと」
無事カリフを元に戻した俺は、カリフを抱えて飛ぶ。
カリフは見た限りでは、まだしばらくは起きなさそうだ。
やはり大猿化していたからだろうか、目立った外傷は見当たらなかった。しかし、無事とも言い難い状態でもある。
何にせよ、シルと合流をするのには変わりはない。
シルは作戦の関係ですぐ近くにいたので、合流は大した手間でもなかった。
俺はそのままカリフを木にもたれかけさせ、立ち上がる。
「シル、カリフを頼んだ」
「・・・レンは?」
「俺は勿論、奴を追う」
正直言って、今は一分一秒でも惜しい。
今奴は神精樹が戻っていくところを見て、種を回収しに行っているのだろう。
流石にこの大きさの木である。まだ巻き戻しは終わっていなかった。
しかし、巻き戻しが終わると同時にターレスはもう一度神精樹の種を蒔くだろう。
そうなったら正直まずい。
まず、神精樹を元に戻すことも難しくなる。
カリフを倒すために神精樹を戻すというある意味切り札と言えるものまで切ってしまった。
現状、神精樹をどうにかするのは正直厳しいと言えるものがある。
いや、神精樹を切り落とすだけなら多分出来ないことはないのであろうが、やはりここで面倒なのは神精樹の星のエネルギーを喰らい尽くすという特性である。
原作では元気玉によって神精樹が倒されたことにより、そのエネルギーが戻っていった・・・らしい。
厳密な仕組みなどは分からないが、俺たちは元気玉なんぞ使えるはずもないので、やはり打つ手はない。
何より今この状態で神精樹の実だけを回収して、また種を蒔きさらに神精樹の実を増やすことが起きかねない。
実ができるまでどれくらいかかるかは知らないが、こんな成長スピードが異常な植物である。多分出来るのも早いのであろう。
そうなると、ただでさえ勝てるかどうかさえ分からないターレスが更に強くなってしまう。
俺だって先ほどのカリフとの攻防で戦闘力を多少なりとも上げたとはいえ、神精樹の実の戦闘力上昇率は馬鹿に出来ないものがある。一抹の不安はある。
そうはいっても、ターレスがすぐに種を蒔くとは限らない。
用心深い奴の性格である。すぐに行動に移すのかは分からない。
なんだかんだ言ったが、可能性は五分五分だ。
だから、この可能性を少しでも上げるためにすぐさま行動を開始しなければならなかった。
「ん、了解。こっちも出来るだけ早く終わらせてそっちに向かうね」
「頼んだ」
シルもこの状態を分かってくれたのだろう、カリフの治療に専念し始めた。
短いやりとりをかわし、上空へ飛び上がる。
もうすでにターレスの居場所は掴んでいる。
俺はそこに向けて、全速力で飛翔した。
*
一方、ターレスは神精樹の異常を察し、巻き戻される木の動きに合わせて根元を目指して飛んでいた。
木は未だ巻き戻しの途中にある。
「チッ、ガキのどもが・・・。調子に乗りやがって・・・」
衰退していく神精樹、早送りのように一瞬で成長していく木々を見て、ターレスは悪態をつく。
彼の手に神精樹の実はない。急いで戻り、状況を確認するため悠長に実を取ってくる暇はなかった。今もこうして根元を目指しているのが証拠だ。
「しかし、あの小僧ではないな・・・。なら、もう一人のガキの方か」
そんな中、怒りがこみ上げるものの、ターレスはいたって冷静に分析をする。
思い出すのは、二人のサイヤ人とは違い、共にいた銀髪の少女の姿。
恐らく、彼女の特殊な能力でこのような事態が起きたのだろうと仮定する。
そして、ターレスにはその特殊能力の効果がイマイチ分からなかった。
巻き戻したのは見たが、あれを何度もやられると神精樹をいくら蒔いてもいたちごっこになるだけだと考える。
「しかし、この戻す能力か・・・。色々と使えそうだな」
ターレスは元に戻った星の美しい緑の姿を見て、考察を始める。
あの巻き戻しの能力の詳細までは知らないが、こうして元に戻すチカラがあれば、神精樹を蒔き実を回収して、また元の自然に戻す。そして再度神精樹を放ち、実をつけさせる。
何とも合理的なループが出来るわけだ。
尚、実際は何度も同じ対象を巻き戻すことはできず、同じ対象には1日一回しか発動しないのだが。
しかし、そんなことを露ほども知るはずのないターレスはほくそ笑んだ。
「何にせよ、まずはガキどもを倒すことからだな・・・」
結論を出したところで、神精樹の実巻き戻しが完全に終了した。
いや、実際は終了しておらず、巻き戻しが続くことによって自力で再度芽が出ることを防いでのだが、ターレスはそれに気づくことはなかった。
ターレスは地面に着地し、誰にも取られないようにするために、種の状態になった神精樹を回収しようとする。
実をかがめ、その手が種を掴みかけた時だった。
「ッ、何!?」
突然影から気弾が飛び出し、バシッとターレスの手を弾いた。
手から離れた種は地面に転がり落ちる。
ターレスは身構えながら後ろに飛び、態勢を立て直した。
そして木々の影から出て来たのは、特徴的な服を着た青い半魚人だった。
「やれやれ・・・。些か油断が過ぎるようだな。侮るのは分かるがな。サイヤ人よ」
「貴様は・・・」
「私はクウラ機構戦隊のケープというものだ。貴様も名前ぐらいは聞いたことがあるのではないか?サイヤ人」
「クウラ機構戦隊・・・」
その名はターレスの記憶に引っかかった。
クウラ機構戦隊。
それは仮にもフリーザ軍の所属であるターレスは、知って当然の名称だった。
フリーザの兄、クウラのエリート戦士たち。実力はあのギニュー特戦隊に勝るとも劣らないものだったか、と思い出す。
「思い出したぞ・・・。貴様は確か、『欺騙のケープ』だったか」
「・・・間違いではないな。最も、そんな2つ名など求めちゃいないがね」
ケープは悠然と近づきながら、地面に落ちてある種を拾った。
それに対してターレスは動かず、行動を見ているだけであった。
一見隙だらけに思える行動だが、全く警戒は怠っておらず、迂闊に手を出せば反撃を食らう恐れがあった。
ターレスはスカウターでケープの戦闘力を測る。
スカウターが示す数値は、ターレスと比べるまでもないほどの低いものであった。
しかし、これがアテにならないのがケープという人間であり、その2つ名の理由でもあったことをターレスは知っていた。
『欺騙のケープ』
何故、そんな2つ名が彼についたかというと、彼の戦闘力数と強さが全く一致しないからであった。スカウターが示すのは並みの兵士にも劣るような酷い数字。しかし、実際に戦うとなると、クウラ機構戦隊の名に恥じぬようなスピードとパワーを出すという。
スカウターの数値を欺き、本当の実力を隠す。
それによって付けられた名であった。
だからこそ、ターレスは迂闊に手を出せなかった。
そんなことを思い出してる中、このような特徴に何か引っかかるものをターレスは感じた。
実際に彼と会うのは初めてであり、お互いに認識はない。しかし、これと似た感覚を感じたことがあったような気がした。
そして彼の、サイヤ人、という言葉から思い出した。
「そういうことか・・・」
感じた既視感。それは、つい今さっき感じた感覚とほぼ同等のものであったのだ。カリフと呼ばれるサイヤ人と戦った時に驚いた、彼等の技術のことだった。ターレスは確信を持って語りかける。
「貴様、戦闘力をコントロールしているな」
種を拾った後、今まで視線を合わせようともしなかったケープが、ターレスの方を向いた。
「流石にそれを分からないほど無能ではなかったか」
「へっ。奇妙な事に、それを使う奴を最近見たんでね」
「なるほど、それはまた偶然だな」
「・・・しらばっくれてんのか?」
「何の話かね?」
「ちっ、分かってる癖によ・・・。あいつらだ。俺以外のサイヤ人のガキどもだ」
「・・・」
「単刀直入に聞く。貴様らはどういう関係だ?仲間か?」
今まで見たことがなかった、戦闘力のコントロールという技を偶然にも使う相手が一気に現れた。さらに、どちらともこちらと敵対するような態度を見せている。仲間という説も否定は出来なかった。
「まさか、彼等と俺が仲間なぞあるはずがない。顔見知りではあるがね」
その問いにケープは肩を竦めて否定する。
その態度にターレスはイラつきながらも、本題に入ることにした。
「・・・ちっ。それで、要件はなんだ」
「そうだな。端的に言うと、貴様と取引がしたい」
「取引だと・・・?」
ケープほどの実力者なら、認めるのは癪だが、無理矢理奪い取ることも可能ではあるだろう。
さらにクウラ機構戦隊といった悪党なら尚更だ。わざわざこちらの都合なんぞ気にする筈もないのだ。奪いたければ奪うような弱肉強食の掟があるだろう。
最も、簡単に奪われてやるつもりは毛頭ないが。
「貴様、何を考えている」
だからこそ、ターレスは疑った。仮にも相手は欺騙の通り名を持つ者である。何を騙してくるのか理解出来ない以上、警戒するのは当たり前だと言えた。
「特に何もだ。力ずくというのは私の流儀に反するのでね」
それに対する答えは、無。あえて言うなら己の流儀に従っただけ。あまりに悪党らしくない答えにターレスは不信感を募らせながら話しを進める。
「へっ、そうかよ。じゃあその取引の内容は何だ」
「何、悪いものじゃない。私が手に持っているこの種を渡して貰おうか、ということだどうせまだ持っているのだろう?」
確かに、まだ種ならある。流石に一度で全てを使い尽くすような真似はしない。
しかし、それを知っていて尚それだけしか求めないのはやはりおかしい。自分達からしたら価値はあるものの、少し数が減ったぐらいでは大した損失ではない。
だからといって、おいそれと神精樹の実を渡すわけにもいかなかった。自分達にとっては少ない数は無くなってもいいとしても、それが他人に渡るのなら別だ。
それがクウラねら尚更だ。持ってない者から見ればこれは貴重なものであるし、何よりこれ以上クウラを強くさせたくはなかった。それに万一そこからフリーザに漏れる可能性もある。
そうなればこの実は全て取り上げられるだろう、とターレスは踏んでいる。
対価はそれ相応のものが求められる、とターレスは考え、聞いた。
「対価は何だ?」
「・・・先ほど取ってきたこの木に実っていた実が数個だ」
そういってケープは懐からいくつか神精樹の実を取り出した。
「・・・・・・」
ターレスはそれを見て少し考える。
確かに、ここで実を取れることは有益である。こんなにも豊かな星だ。さぞかしエネルギーが溜まっているのだろうと考える。
だが、やはり簡単に神精樹の実を渡すわけにはいかない。
何より、相手の思い通りにいくことが癪であった。
しかし、ここで断れどうなるかを考える。流儀に反するとは言え、流儀を押し通すは考えにくい。寧ろ今が最高にこちらに譲歩しているのだから、これを否定すれば最悪持ち逃げされる可能性もあった。
いや、逃げるだけならまだマシだろう。実力行使も厭わない可能性もある。
–––––––––-ちっ、何が流儀だ。結局脅しているだけじゃねぇか。
ターレスは内心で不快感をさらに募らせる。そしてそれを隠そうともせず、答えた。
「・・・了解した。その取引に応じるとしよう」
「・・・・・・まぁ、貴様に拒否権などある筈もないがな」
だろうな。
流儀だ何だと宣う癖に、結局は脅しで奪い取る。
そもそもこんな取引を持ち出した時点で気に食わなかった。
力ずくで奪い取ればいいものを、わざわざ回りくどい方法であくまで平和的に解決しようとする。しかし、暗に実力による脅しをかけ、肯定の意しか示さないようにさせる。
気に食わねぇ野郎だ、とターレスは吐き捨てる。
サイヤ人は力づくで奪ってなんぼの種族だ。強い癖に戦闘を避けようとするその心を理解はできても、共感は全く持って出来なかった。さらに、クウラにそのまま従っている態度も気に食わなかった。
ケープは神精樹の実を投げ、ターレスはそれをキャッチする。
「・・・これで用は済んだ。ではな」
そしてそのまま、ケープは姿を消した。
ターレスはそれを黙って見つめながら、もう一度チッ、と舌打ちを打ち、手に持った神精樹を見る。
「必ず、俺が・・・。この宇宙を支配してやる」
ターレスは呟くと、神精樹の実を口に運んだ。
スカウターが反応を示した位置に向き直りながら。