サイヤ人になりまして。   作:畦道

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ターレスVSレン

「来たか・・・」

 

ターレスのスカウターが、向かってくる戦闘力に反応を示す。

その方向に顔を向け、ターレスはたどり着いたレンを見下ろす。

 

「追いついたぜ……。さぁ、決着をつけようか!」

 

レンはすぐにでも戦闘が出来るようにと油断なく構える。

対するターレスは少しも揺るがない自信を示すが如く、依然として腕を組んだままレンを見下ろしていた。

どちらも様子を伺う中、先に口を開いたのはターレスだった。

 

「最後の忠告だ。神精樹の実を食べ続けてきたこの俺に……勝てると思うか?」

 

口からは出るのは、自分が負けるとは微塵も感じていない圧倒的な自信を孕んだ問いだった。

そして溢れ出る、絶対強者の覇気。

しかしレンも、そうやすやすと諦めるような性格はしていない。

 

「少なくともその実に依存して、サイヤ人の誇りを忘れたような奴に負ける気はしないな」

 

「減らず口を……。誇りだと?それを貴様が語るのか?奪うことを忘れた、サイヤ人の面汚しめ!」

 

「そのサイヤ人の面汚しに二度も出し抜かれたのはどこのどいつだったっけ?」

 

「……ふっ。やはり従う気はないか……。ならば、この俺に挑んだことを後悔しながら死ね!」

 

瞬間、空気が震えた。

 

大地はひび割れ、木々は靡き、風が吹き荒れる。

ターレスを中心とし、辺りに重圧が広がる。

言うまでもなく、ターレスが本気を出したのだと理解する。

 

確かに言うだけの事はある。一筋縄では行かないだろう。

だが、それがどうした。先程まで戦ったカリフと比べると、恐怖感も強者感もまるで足りてない。

無論、威圧感はカリフに劣っているわけではない。

ただ、覚悟はした。

もう既に生死を分けた戦いは経験した。

なればこそ、もう一度それに恐怖することはない。

 

 

「はっ!」

先手はレンがとった。

気合いと共に全力で飛び、ターレスに目掛けて拳を振るう。

 

ターレスはそれを片手でガードし、もう片方の拳で殴りつける。

対してレンはそれを反対に避けることで躱し、続けざま蹴りを加える。

ターレスは今度は受け止めず、身を屈めることで蹴りを回避した。

そしてそのまま腕を伸ばし、レンに照準を合わせる。

掌に浮かぶのは、青白く光る球体の気弾。

 

回避された蹴りの遠心力で向きを直そうとするレンに目掛けて、ターレスは悪魔のような笑みを浮かべ、それを発射する。

「ふっ!」

しかしレンもそれに反応する。対応するように右手に気弾を生成し、飛来してきたターレスの気弾にぶつけ相殺した。

 

ドォォン、と轟音が響き、ぶつかりあった気弾は爆発を起こし、二人を煙が覆った。

 

煙で両者は姿が隠れ、一瞬両者の攻撃は止まる。

 

しかし、見えずとも互いに位置は把握していた。レンは持ち前の気のコントロールによる探知で。ターレスはスカウターによって。

そして、次はどちらが動くのか、というところで。

 

仕掛けたのは、またもやレンだった。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

ターレスに向かって一直線に突貫する。

右手を突き出し、全力で振りかぶり、正面に殴りつける。スピードも加えた、渾身の一撃。

「だりゃぁ!」

だがターレスはその拳を片手で難なく受け止めた。

 

凄まじい衝撃と同時に風圧が発生し、覆っていた煙を瞬時に吹き飛ばす。

 

そうして見えた二人の姿は、ターレスが左手でレンの右拳を掴み、睨み合っている様子だった。

 

レンは手を離そうとするも、想像以上の力で掴まれていたため、そう簡単に離すことが出来ないでいた。

片腕を拘束された状態では満足に動くことはできず、ならばとレンはもう片方の腕でさらに殴った。

 

そんな攻撃をターレスは予想していたのか、難なくもう片方の手で受け止め、右手と同じく掴んだ。

両者が至近距離で睨み合う形になる。

 

「ぐっ……」

「どうした、もう終わりか?」

単純に力負けしているのか、両手は一向に拘束を外せる気配がなかった。

さらに、レンの拳は子供であるため、ターレスの拳よりもはるかに小さい。

そんな体格の差も相まって両手を掴まれたまま、レンはどうすることもできなかった。

 

そしてターレスはそのチャンスを見逃すはずもない。

回避も出来ない状態で、超至近距離のレンに向かって膝蹴りを食らわそうとした。

 

そんな危機的状況の中、レンはニッ、と笑った。

 

刹那、ターレスの頰に衝撃が走った。

 

「がっ!」

 

背後から隙を伺っていたレンの分身が、両手を使うことが出来なかったターレスの隙をついて殴り飛ばしたのだった。

普通ならば対応ができたのだろうが、皮肉にもターレスは拘束をすることに両手を使ってしまっていた。

そんなターレスは為す術もなく、モロに攻撃をくらい、その反動で掴んでいた手を離した。

 

そして晴れて自由となったレンは、追い立てるように体勢を崩したターレスを蹴り飛ばした。

 

ターレスは少し吹き飛ぶものの、大して威力はなかったようで、すぐにブレーキをかけ自らの運動を止めた。

そのまま口から出た血をぬぐい、ターレスは問いかけた。

 

「小僧、今何をした……」

 

「さぁな」

 

レンは自らの手の内を晒すはずもなく、しらばっくれる。

ターレスは再度向き直りながら、構える。

 

「面妖な技を使う……。だが、纏めて吹き飛ばしてくれる!」

 

「やってみろ!」

 

そして再び攻防が始まった。

 

拳を振るい、蹴りを繰り出し、気弾を打ち込む。

だが先程とは違い、ヒットアンドウェイのような戦法で距離を取りながら戦いをしていた。

 

先のやりとりでレンは、近距離では不利であると判断を下した。

体格の差が激しいため、レンはターレスが一歩で済むところを二歩分の時間を使って攻撃しなければならなかった。

故に相手の土俵で戦うことは避け、自分の土俵である遠距離戦に持ち込むことにした。

 

レンはターレスに気を使った技量では圧倒的に優っている。

片や気弾は打ち込むだけ、片や変形など工夫を凝らして気弾は強化して使う。

どちらが優勢であるなど明白であった。

 

さりとて、ターレスもただ負けているわけではない。

技量は劣ろうとも、彼には戦場で培った確かな経験があった。

 

ターレスはレンに有利な状況を作らせまいと踏み込む。

 

レンはそれに対して拳をぶつけ相殺しつつ、反動で距離をとり、その間に気弾を放つ。

ターレスはそれを弾きつつも、さらに踏み込んでゆく。

 

先程からこのやりとりが続いていた。

 

レンにとって、自分から向かっていくのは不利だが、相手から来るのであれば距離を詰める必要もないためさほど不利ではなくなる。

ターレスも手数では劣るが、特に致命傷を負うわけではない。

 

だからこそ、問題はそれではなかった。

 

ラチがあかない。

 

二人はそう感じる。

レンは遠距離戦に持ち込むのはいいが、決定打に欠けていた。ターレスは決定打はあるが、それを打ち込めず、どうしても後手に回らざるを得なかった。

 

ならば、と。

 

レンは膠着した状況を打破するため、切り札を切った。

 

もう二桁はいったであろう衝突の後、レンは距離をあけ、毎度パターンを変えている気弾を連射する。

ターレスはそれを弾き、再度こちらを見据える。

 

何度も繰り返された、刷り込まれたこの行動の瞬間。

意識がこちらに向く、一瞬の隙に。

 

一つの影が、ターレスに突貫する。

 

今度は拳ではなく、高密度の気弾を伴って。

レンの分身がそれを叩き込もうとした。

 

そして、目と鼻の先まで近づいた時、

 

ターレスは踏み込もうとしていた身体を後ろに傾け、その攻撃を回避する。

そしてカウンターとばかりに気弾を分身に叩き込んだ。

躱されるとは思っていなかった分身に気弾が直撃し、呆気なくその姿を煙に変えた。

 

「二度は効かねぇぜ……」

 

「くそ、やっぱスカウターが邪魔だな……!」

 

今度は、一人で陰から攻めるのでなく、4人で正面から立ち向かう作戦に打って出た。スカウターがある以上、どうしても不意打ちはできない。それならば、初めから全員で立ち向かった方が良い。

 

ターレスを4人で囲み、攻撃する隙を与えず、果敢に攻める。

それに、攻撃しているのは全員自分自身。思考パターンは理解しやすく、コンビネーションも抜群であった。

そして、極め付けは、狙っているのがターレスではないということ。狙っているのは、スカウターである。

ターレス自身を狙うのであれば、戦場で鍛え上げられた直感や経験で全てを裁くこともできたのかもしれない。しかし、狙いがスカウターであったり自分であったりと、予測が上手く出来ず、またしても後手に回らざるを得なかった。

一撃の重さよりも速度、手数を重視した攻撃に、ターレスは次第に追いつかなくなる。

「ちっ……」

 

今度は、ターレスが距離を取ることとなった。

本物が分からない以上、攻撃をしても無駄になる可能性が高い。そう判断し、仕切り直すためにも後ろに下がった。

 

しかし、その距離はレンの射程距離内、得意分野である。

 

「かかったな!」

「なにっ!?」

 

見事にターレスを誘い込むことに成功したレンは、分身全員で全力で気弾を連射しまくる。

 

「「「「だりゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!!」」」」

 

相当な威力を持った気弾は確かな手応えとともにターレスを押し、地面に叩きつけた。

爆発の熱風が吹き荒れる中、それでもしばらくの間地面に向けて気弾を連射し続けた。

 

「はぁ、はぁ・・・どうだ・・・」

 

体力を消耗し、肩で息をする。これでやったとは思わないが、それなりにダメージは通っているはず–––––––––。

そう思った矢先、煙が晴れて、見えたのは。

 

「な!?」

 

「少しは効いたぜ……」

 

多少の怪我こそ負っているものの、そのダメージを全く感じさせないくらいに悠然と立っている姿だった。

何故、気を感じ取るとターレスと俺との戦闘力の差はそんなにないはず、とその様子に疑問を抱かずにはいられなかった。

考えたのは少しの間。その急激な成長に覚えがあり、すぐに思い至った。

「っ!神精樹の実を食いやがったのか!」

 

その言葉にターレスは返答せず、代わりとばかりに、戦闘態勢をとった。

 

「次は俺の番だ……」

 

その言葉を聞いてレンも油断なく構える。

 

ターレスが動く。

 

(速い!)

 

その速さは、先ほどまでとは段違いだった。一瞬の隙にレンの分身まで距離を詰め、反撃される前に拳をたたき込み、分身の一体を瞬時に潰した。

その速さを見て冷や汗をかくと同時に、反射的に陽動として分身をいくつか増やした。

速さでは完全に敵わない。どうにかして、隙を作り出すしかない。

レンはそう結論付け、ターレスが向き直ると同時に再度構えた。

 

「本物は見分けにくいか……。ならば」

 

その言葉の後、またもやターレスの姿が搔き消え、気づいたら分身の一体が潰されていた。

 

「全て潰せばいい話だな」

 

「くそ!」

 

一人、また一人と分身が即座に潰されていく。

レンもそれに対応しようと攻めるが、ターレスには届かず数を減らされていくしかなかった。

無闇に分身を増やすことは悪手だと分かっているが、それ以外にはできることがない。

やられた側から分身を増やす。

だが当然限界もある。

分身は気を分け与えて作るものなので、強さによってはごっそりと気を削られる。中途半端に作れば足止めもできず無駄になる。だからといって強いのを作れば数が作れず、叩きのめされるのは目に見えている。

結局どちらともとれない微妙なラインで分身を作っていたのだが、ついに最後の分身が本体を庇って消え去った。

 

「貴様が本体か……」

「はぁ、はぁ、はぁ」

「……その技、相当体力を消耗するようだな。まぁ少し手こずったが……その分、すぐ楽にしてやる」

「がはっ!」

 

消えたと思った瞬間、鳩尾に衝撃が走った。

何が起きたのか一瞬理解出来ず、その痛みと衝撃により口から血を吐き出した。

 

目で追えないほどのスピードで肉薄したターレスは拳を全力で叩き込んだのだ。

 

そしてその隙を利用しない筈もなく。

ターレスは左足で膝蹴りを繰り出す。

 

「くっ!」

 

レンはそれにギリギリで反応し、その方向に腕を立て、かろうじて防御をする。

しかし完全には受け止められず、体勢を崩した。

 

そして、ターレスはもう片方の足で回し蹴りをし、レンを吹き飛ばした。

 

「がっ!」

 

当然、体勢を崩したレンには防ぐ術はなく、クリーンヒットした攻撃は彼を地面へと叩きつけた。

痛む身体をどうにか立ち上がらせ、ターレスを睨む。

 

「食うだけでそんなレベルが上がるとかチート過ぎんだろ……」

「どうした?その程度では拍子抜けもいいところだぜ」

「言ってくれる……。けど、まだこれからに決まってんだろうが!」

 

再度突撃する。

しかしそこに先ほどまでのキレはなくなっていた。

最早限界に近い体力と、痛む肉体。動けるのは辛うじて、というレベルである。

当然、そんな見え透いた攻撃にターレスは当たるはずもなく。

レンの拳を片手で掴んだ。

 

「それが貴様の限界か?……興ざめだぜ」

「んだと……!?」

「……もっとやると思ったが、所詮は搦め手に頼るガキか。これならさっきのガキの方がまだ楽しめたぜ」

「っ、るせぇ!」

 

力任せに蹴り上げるが、ターレスはそれを難なく躱す。

そして空いた両手を胸の前に持って来て、円形の気を貯める。

輪っかの形をしたその気は次第に大きさを増していき、一度ターレスが押さえ込んだかと思うと、上半身ほどの大きさまで膨れ上がった。

 

「こいつで終わりだ。……キルドライバー!」

 

放たれる。

しかし、レンにはそれを防ぐ手段はない。

躱すこともできず、呆気なく飲み込まれた。

 

「うわあああああ!!」

 

光が弾ける。

気の輪が回転しながらレンの身体にダメージを与え、吹き飛ばす。

爆風が起こると同時に、レンは遠方の地面に叩きつけられた。

 

「くそ、が……」

 

辛うじて生きてはいるものの、身体を動かすことはできないほどの傷は負ってしまっていた。

起き上がろうとするも、腕の一本も上がらず、全身が動くことを拒否しているかのようだった。

それどころか、意識も朦朧としてきて、精神的にも限界がきていた。

今にも気絶しそうなのを、全身の痛みがギリギリで意識を保たせている状態だった。

 

(ああ、またか……。こうやって完膚なきまでに叩きのめされるのは)

 

強くなったはずだった。実際、ケープと戦った時よりは強くなっていた。

けど、またもや及ばなかった。

また、地面に這いつくばるしかなかった。

 

やれることはやったつもりだ。

それは胸を張って言える。

しかしそれでも、願わずにはいられなかった。

 

(俺に、もっと力があれば……)

 

その時、ドクン、と。

心臓が強く鼓動した。

 

(なんだ……?)

 

ついで全身に力が戻って来る。痛みを覆い隠すほどの高揚感が、全身を巡っていくのが分かった。

その謎の現象に、レンは思い当たる節があった。

 

(ああ、そういえば……前も、こんなのだったな)

 

意識が朦朧とする中、思い出すのは、ケープとの戦いで最後に意識が途切れた瞬間と、カリフが語っていた内容。

そして、祖父が死に際に語ってくれた内容。

 

そこから、どうやら自分は化け物にでもなるのかもしれない、と予想するのは容易だった。

 

しかし、それを知っていても。

決断は以前と変わらなかった。

(あいつを倒せるなら……鬼にでも、悪魔にでもなってやる)

 

「うぉぉぉぉぉぉぉああああああ!!!」

 

咆哮する。

全身を焼くように蝕む傷は無視をし、立ち上がる。

 

目線が、ターレスのいる方向を捉えた時。

 

そこでレンの意識は途絶えた。

 

 

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