サイヤ人になりまして。   作:畦道

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急展開過ぎるかもしれませんが、是非みてください。それでは、どうぞ。


旅立ち

「うああああああああああ!!!」

 

ざあああと、バケツをひっくり返したような大雨が降り続ける。

俺は、その雨の中、一人叫んでいた。

 

「俺が、いたから!」

 

俺は、そう言いながら、拳を地面に叩きつける。何度も、何度も、何度も。

地面が陥没し、叩きすぎて血が出てきているが、関係ない。

 

「俺が、気づいてれば!」

 

けど、もう遅かった。じいちゃんは、生き返らない。

知っていたはずだ。分かっていたはずだ。いつかは、俺より先に終わりが来るって。それでも、何も出来なかったのは、結局俺がまだこの世界のことを舐めきっていた、ということだろう。

 

「俺が、俺が、俺が!!!」

 

いつかは、変わると思っていた。俺がやらなくても、誰かが変えてくれると思っていた。あるはずもないのに、滑稽な希望にすがっていたのだと、今更ながらに気づいた。

今更、後悔しても遅いってことはわかってる。けど、どうしても叫ばずにはいられなかった。

 

 

俺がじいちゃんと会って3年。

 

――――――――――じいちゃんは、死んだ。

 

 

 

 

 

 

「う、嘘だろ?」

仕事から帰ってまず見たのは、床に倒れているじいちゃんの姿だった。

俺は急いで、じいちゃんに駆け寄る。

 

「じいちゃん、しっかりしろよ!」

ヤバイヤバイヤバイ。いきなりこんなことになるなんて。確かに、最近は調子が悪かったが、いくらなんでも、これは急すぎる。どうすればいい?そ、そうだ脈は?い、息はあるか?

 

「良かった、まだ息はある」

取り敢えず、生きていると分かって安心した。だが、まだ油断はできない。何故こんなことになっているかは全然想像ができないのだ。見たところ外傷は無いようだから、単に病気が悪化しただけか。良かった、別に俺に恨みを持った誰かから襲われたりしたわけではないのか。

 

「って、何も解決してねぇんだよ!」

 

こんな一人茶番をやっている場合ではない。取り敢えずは、布団に寝かせておく。適切な処置が分からない以上、こうしておくしか方法がない。だ、大丈夫だよな。そんな簡単に死んだりしないよな。

 

 

 

 

 

「すまんな‥‥‥‥‥‥」

そうこうしているうちに、じいちゃんは目を覚ました。

 

「大丈夫だよ、こんくらい。それより、どっか痛いところはある?」

 

俺は靴を履きながらそう言った。

 

「‥‥‥‥‥‥‥どこへいくのじゃ?」

 

「どこって、医者を呼びに行くに決まってるだろ」

 

「‥‥‥‥‥‥‥そうか‥‥」

 

「ああ、じゃあ、行ってくる」

 

そう言ってドアを開けようとして、

 

「いや、行く必要はない。」

 

じいちゃんから声がかかった。

 

「大丈夫だって、こんくらい。大した手間でもないし、さっさと帰ってくるよ」

 

助けてくれるかどうかは別として、呼んでくるだけなら手間はかからない。

靴を履き、ドアに手をかけたところで、じいちゃんから呟いた。

 

「‥‥‥‥‥行っても、意味はない。どうせ医者何か来ん」

 

ピタッと、ドアを開けようとしていた俺の手がとまった。

 

「‥‥‥‥‥‥わかんねーよ、そんなの」

 

俺は、無意識に語尾を強めて言っていた。

 

「いや、どうせ来ない。こんな時間帯で、こんな場所にある家じゃ。しかも、サイヤ人が住んでいる家ときた。ほぼ、来る確率はないじゃろう」

 

「じゃあ、どうしろって言うんだよ!?なにもせずに死を待つだけか!?いくらじいちゃんでも、そんなの俺は許せねーぞ!」

 

じいちゃんに当たっても意味は無いと分かっていても、叫ばずにはいられなかった。今まで、俺はじいちゃんに対して、こんなに怒鳴ったことがあっただろうか。

が、じいちゃんは至って冷静に、

 

「落ち着け」

 

と言った。

 

「‥‥‥何で、そんなに冷静なんだよ‥‥‥死ぬかもしれねーんだぞ」

 

「そうじゃな、恐らくワシはもうそろそろ死ぬ」

 

「だったら!」

 

「だから、落ち着けといっておる」

 

叫ぼうとしていた俺の声は遮られた。

 

「ほれ、こっちにこい」

じいちゃんはそう言って手招きする。断っても仕方ないので、それに素直に従う。

 

シーンと、辺りが静まる。それにつられ、だんだんと、熱くなっていた、俺の頭が冷静に生っていく感じがした。夜中なのか知らないが、辺りが静かになっていることに、初めて気づいた。ただ、聞こえるのは、俺が拳を握っている音だけだった。

 

少しの間、俺もじいちゃんも黙っていた。

が、いきなりじいちゃんが切り出した。

 

「お前さんは、なにがしたい?」

 

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

俺は、何も答えられなかった。何故か?そんなことは分かってる。あれだけ時間が欲しいと言っておきながら、結局は流れに身を任せるだけで、自分から動こうとしなかったからだ。結局やっても意味はない、もしかしたらもっと状況は悪くなるかもしれない。そんな考えが、いつも頭から離れなかった。

多分俺は怖かったのだ。この世界から拒絶されるのが。まだ可能性はあると、自分に言い聞かせて続けて、自分の状況と向き合おうとしなかった。こんな臆病な俺が、強くなんてなれるわけがない。

 

どうしようもなく、自己嫌悪に襲われた。歯を食い縛り、これまでの過ちを悔やむ。そんな中、おもむろにじいちゃんが、声を発した。

 

「ワシはな、冒険をするのが大好きじゃった」

 

俺は何も言わないが、それでもじいちゃんは続ける。

 

「自分の知らない世界に触れての、どんどんと新しいことを知っていった。それは、とても楽しかった」

 

知っている。だって、いつも楽しそうに話を聞かしてもらったから。

 

「時には、仲間も作ったりしてな。一緒に強敵に立ち向かったりすることもあれば、ケンカもしたりした」

 

じいちゃんは続ける。

 

「それでも、ワシはアイツらと一緒におって、楽しかった」

 

知っている。一人でいるのは、とても辛いことだから。

 

「あと、大きな壁にぶつかったりもしたな。あれは辛かった。冒険なんてやめようかと思ったこともあった。けど、諦められなかった。未知を知り、強くなって、友といるのは、何よりも楽しかったからの」

 

知っている。それは、俺が憧れた、あの世界での出来事でもあるから。

 

 

気づけば、俺は知らず知らずのうちに、涙を流していた。

 

「さて、もう一度聞こう。」

 

いつも聞いていた、優しい声がきこえる。

 

 

「レン。お前は、なにがしたい?」

 

 

「‥‥‥‥‥‥俺は、」

 

もう答えは出ている。迷う必要なんてない。

 

「俺は、」

 

今まで臆病だった俺が、初めて踏み出す一歩。

 

「俺は、

 

 

―――――――――――――――――――――――冒険がしたい。」

 

 

「そうか」

 

じいちゃんは、ただ一言だけいった。その一言が、とても大きなものに聞こえた。

 

「なら、冒険をしろ。お前の人生だ、後悔は残さないように生きろ」

そう言うと、大きく咳をした。

 

「お、おい!」

俺はあわてて駆け寄る。口から血が出ている。

けど、そんなこともお構い無しに、じいちゃんは続ける。

 

「そこの机の引き出しの奥に、ワシが昔着とった胴着がある。子供用だから、お前も着れるじゃろう」

 

「いいか、お前には強くなれる素質がある。何度だって挫折してもいい。失敗してもいい。だが、後悔だけはするな。胸を張って語れる人生にしろ」

 

「・・・分かった。俺は、後悔はしない」

 

「ああ、それでいい。・・・ああ、そういえば最後に一つ伝えなくてはならないことがあった」

 

「・・・最後って、まるで死ぬみたいじゃねぇか」

 

じいちゃんは俺の言葉には反応せず、どこか遠くを見つめながら言った。

 

「お前さんが他の住民から煙たがられていたのは、サイヤ人だからじゃないのじゃ。普段はどんな人間だろうと、優しく接することの出来る奴らじゃからな。理由は、他にあった」

 

「・・・分かったから、もう喋るなって!本当に死んじまうぞ!」

 

またもや口から血を吐き、もう喋るのも辛そうだった。本来なら安静にしてなければいけないはずの容態であるはずだ。しかし、じいちゃんはそれでも口を閉じなかった。

 

「・・・これだけは、伝えなくてはいけないからの。・・・お主は、一度だけ暴走したことがあった。サイヤ人がなると聞く大猿ではなく、な。そのままの状態で辺りを暴れ回ったのじゃ。力つきるまで、な。・・・それはそれは、もう荒れたよ。死者も何人か出た。・・・原因は分からぬ。ただ、普段と違って目が赤くなっていたことだけは確かじゃ」

 

「・・・」

 

初めて聞く内容だった。

もしかしたら、あの上司の関係者を、俺が殺してしまったのかもしれない。

そう考えると、今までの扱いに納得がいく。

・・・いや、いつ暴走するか分からない爆弾を近くに置いておくだけでも怖いのに、態々働かせてくれていたのは、逆にありがたいと感じる。

 

「・・・ワシから伝えたいことはこれで最後じゃ。だが、お前さんがそれを機に病む必要はない。・・・普通に生きてくれれば、それだけで満足じゃ。・・・まぁ、辛いこともあったけどの。それでも」

 

そこまで言うと、じいちゃんはゆっくりと瞼を閉じていく。

 

「待てって、おい、待てよ!」

 

お前と会えて良かったぞ。

 

それが、じいちゃんの最後の言葉だった。

 

 

 

 

どれくらい、泣いていただろう。5分、あるいは一時間、もしかしたらもっと長かったかもしれない。それくらい、俺はショックだった。周りに味方はおらず、一人きりだった俺と、いつも一緒にいてくれた。慰めてくれた。話をしてくれた。いるだけで、安心できた。けど、もういない。

 

「グスッ‥‥‥っく」

 

これからは一人で生きていかなくてはいけない。けど、まだ終わったわけじゃない。むしろ、ここからがスタートだ。後悔なんてものはしたくない。さっき、じいちゃんに託されたんだ。じいちゃんは、恐らく天国で見てくれている。ならば、サイヤ人として、じいちゃんの孫として、精一杯生きていこう。それが、俺に託された道だと信じて。

 

 

もう、涙は止まっていた。

 

 

 

泣き止んだ後、じいちゃんに言われたとおりに引き出しをあけると、青色の胴着がはいっていた。このサイズでこの色は、原作にはなかったな。ちょうどいいや。そう思って、俺は服をきる。

 

「ちょっと大きいかな」

流石にピッタリでないだろう。まぁ、これから身長も伸びるんだし、これくらいがちょうどいいだろう。

 

「さて、他に持っていくものは‥‥」

今俺が持っているのは、胴着などの衣類と、多少の食料、そして、それを入れる鞄だ。

 

「あ、あれ忘れてた」

そう言って取ってきたのは、緑色のリストバンド。どうやら、じいちゃんが作ってくれていたらしい。というか、何でそんな大事なもん忘れてんだよ、俺は。

 

「よし、行くか」

これから行くのは、今までよりももっと困難で、辛い道だろう。けど、後悔はしない。そんでもって、死んでたまるか。目指せ、超サイヤ人。打倒、ビルス様!見ていてくれ、じいちゃん。

そう思いながら、家を出た。いつの間にか、雨は止んで、虹がでていた。

 

「行ってきます」

 

さよなら、じいちゃん。そして、行ってきます。

 

 

 




今まで3日連続で投稿してきましたが、これから、ペースは落ちると思います。それでも、見てくださると嬉しいです。決して失踪はしないと思うので、よろしくです。
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