白夜の兄貴分が帰って来るそうですよ?〜凍結(リメイク執筆中)〜 作:☆シュレリア☆
prologue
白夜の兄「prologue」
暗い・・・暗い場所だった。
そこは人が踏み入ることが出来ない遥か地下深く。
どういう原理か、洞窟のようになっているその場所で、一つだけ僅かな光が灯っていた。それは蝋燭の火よりも小さく儚げで、今にも消えてしまいそうなほどに弱々しい灯り。
ヂャリッ・・・
その近くで、金属が擦れるような音が鳴る。
「ーーーぅーーーーーくぅーーー」
更には人と思われる声も聞こえた。
そこにいたのは、両手両足を鎖で繋がれた見た目は少年と青年の中間くらいの男だった。
体は汚れ、服もボロボロ・・・というよりも僅かに布切れが残っている程度の状態で、もし人間がこの光景を見ていたならばフィクションの中で描かれる奴隷などを思い浮かべていただろう。
しかし一つだけ異様だったのは、男の目には強い意思を思わせる光が宿っている事だった。
普通このような場所で鎖に繋がれて何日も放置されていたのならば、精神が崩壊するか発狂して自ら命を絶ってしまっていてもおかしくはないのである。
「・・・・・今日で・・・・どれくらいの年月が経ったんだろうな・・・・・」
男は自分以外誰もいない事は分かっていたが、それでも声に出さずにはいられなかった。
男が言う年月がどれほどのものかは窺い知れないが、それでも相当な時間をここで過ごしているのは彼の状態を見れば一目瞭然だった。
「いったい・・・後どれくらいこうしてればいいのやら」
また独りごちる。
別に眠いわけではないのだが、無理やりにでも寝てしまおうかと目を瞑ろうとした時、男の目を眩い光が覆った。
暗闇に慣れてしまっていた男は、あまりの眩さに咄嗟に目を閉じてしまうが光はすぐに収まったようで、恐る恐る目を開くと、自分の元に舞い落ちてくる一通の封書が目に入るのだった。
「封書・・・?一体誰が・・・」
男はその封書を繋がれた腕を強引に伸ばして掴み取ると、差出人の名を探すが見当たらない。封書の裏には『
しかし差出人に心当たりがない。
封書には鎌を持ったフードを被った人物が描かれた封蝋がされていたが、それにも心当たりがないのだった。
「ま・・・中身を読めばわかるか?」
そう言いながら男・・・黒夜は封を切り、中に入っていた手紙を読み始めた。
『突然の手紙で申し訳ありません。訳あって、まだ名を名乗る事は出来ませんが、今回の手紙は決して貴方様の害になることはありません。現在、貴方様の故郷である箱庭において非常に悪い事態が進行しております。私たちはその事態に対抗するべく、こうして貴方様に手紙をしたためました。つきましては一度、私たちの本拠へお越しいただきたく存じます。詳しい説明はその時にさせて頂きますので、もし来ていただけるのであればこの手紙を読んだ後で『我が魂は箱庭と共に』とおっしゃってください。よろしくお願いいたします』
黒夜は目を見開いた。自分は箱庭を追放された身だ。それをそう簡単に呼び戻せるとは思わない。だがこの手紙の内容が本当だとするならば、もう一度あの世界へ帰れる。帰れれば、あの可愛い我が義妹にもう一度会う機会もあるかもしれない。
黒夜は手紙の差出人がなにをさせるつもりなのかはこの際一切考えずに、ただただ義妹に会いたい一心でその言葉を紡ぐのだった。
「我が魂は箱庭と共に・・・」
その瞬間、黒夜の意識は一瞬失われるのであった。
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黒夜が目覚めたのは、少し不気味な作りをした建物の中だった。
配色は全体的に薄暗く、壁には骸骨やら動物の首なんかが飾られておりどこぞのRPGの魔王城のような感じだった。
黒夜は一瞬嵌められたかと思うものの、奥から現れた人物に思考を一旦停止させた。
その人物は黒を基調としたローブを纏っており、赤紫の髪を腰まで伸ばした女性だった。手には身の丈よりも大きな鎌を持っており、その佇まいは多くのものが死神を連想させるだろう。
女性は黒夜の近くまで近ずくと、膝をつき鎌を置いて頭を下げた。
「この度は召喚に応じていただきましてありがとうございます。私はラグスムエナと申します」
「ラグスムエナか・・・知ってるとは思うが、俺は黒夜だ。それで?説明してもらえるんだよな?」
「はい、しかしその前に出来れば湯浴みと着替えをしていただければと思います。黒夜様をいつまでもそのお姿にしておく事はできません」
黒夜の格好は未だにボロッボロの布切れが大事な部分をなんとか隠しているだけである。
「俺は出来れば先に説明して欲しいんだが・・・」
「そ、その・・・このコミュニティには男性が少なくてですね・・・私も、男性の素肌を見るのに慣れていなくて・・・その///」
ラグスムエナは真っ赤になって顔を覆いながらしどろもどろに説明を始めた。先ほどまではどうやら無理に冷静さを装っていたようで、今は完全に素で恥ずかしがってしまっていた。
「あぁ・・・その、すまん。もう長い間この格好だったから気づかなかった。湯場へ案内頼めるか?」
「は、はい・・・こちらです///」
黒夜はなかなか赤面が抜けないラグスムエナに案内されながら風呂に入り、ついでに伸び放題になっていた髪をバッサリ切ってサッパリすると、ラグスムエナが用意していてくれた服に着替えた。
ラグスムエナが用意してくれた服は、彼女が着ているようなローブではなく黒を基調とはしていたが、シャツにジーンズのような物にパーカーといった感じで意外と近代的だった。
2人が最初の部屋に戻ってくると、そこには食事が用意されており全体的にとても美味しそうだった。
黒夜はその内の一つを口に運ぶと、見た目以上の美味さに目を見開いた。
「かなり久しぶりの食事だったんだが・・・美味いな。これは誰が?」
「え・・・私ですけど」
「へぇ・・・ラグスムエナは良い嫁さんになれるな」
「お、お嫁!?・・・い、いえ・・・私は死神ですので貰い手はいないでしょう」
「あ、ホントに死神だったのか。けどそんなのどうだって良いだろ?なんなら俺が貰ってやるぞ?」
「な!?冗談はやめてください!///」
ラグスムエナはまた顔を真っ赤にして俯いてしまったが、そこに黒夜が「冗談じゃないんだけどな」と追い打ちをかけたことで少し気を失ってしまうのだった。
ラグスムエナは初心である。
30分後・・・ようやく意識を取り戻したラグスムエナは、改めて黒夜に説明を開始した。
「改めて、私は745外門に本拠を構える"魂を導く者"のメンバー、ラグスムエナと申します。この度、黒夜様をお呼びしたのはあるお願いがあるからなんです」
「手紙にも書いてあったな。悪い事態がどうこうって・・・」
「はい・・・現在、箱庭では複数の魔王たちが手を組み結成したとあるコミュニティによって各地で大きな被害が出ています。彼らは魔王のゲームを仕掛けながら、新たな仲間を集めてもいて・・・更には上層の者でも発見出来ないほど巧妙に本拠を隠しているのです」
「へぇ・・・相当強い連中が集まってるみたいだな」
「はい・・・下は5桁クラスから始まり、上は推定ではありますが2桁以上の魔王が関わっていると思われます。しかも実働部隊は高くても4桁クラス程で、やられそうになっても助けることはせず切り捨てる冷酷さも持っています」
「ふむ・・・まぁ仮にも魔王なんだし驚くことじゃないだろ。それで、お前たちは俺にその・・・魔王連盟とでも言っておこうか。そいつらを見つけ出せとでも言いたいのか?」
つまらなそうにそう言った黒夜に、ラグスムエナは慌てて首を振りながら否定した。
「ち、違います!!連中を見つけるのはもっと上層の方々が血眼になって行っています!私たちが黒夜様をお呼びしたのは、一つの推測が現実となった時のためなんです!」
「推測?」
「はい。ここ最近の連中の動きを照らし合わせて行くと、近い将来"階層支配者"を狙い始めるのではないかと予想しています。しかし、私たちもそうですが他の上層のコミュニティも自分たちの事と捜索で手一杯の状態で・・・。そこで、あの白夜王の義兄である貴方様を箱庭へ呼び戻してはどうかとうちのリーダーが提案したんです」
「なるほどね・・・確かに俺なら2桁クラスの魔王が相手でも下層を守りながら戦えるだろう。・・・だが、気にくわねぇな」
黒夜は殺気を放ちながらラグスムエナ・・・ではなく、さらに上を見上げながら呟いた。
ただそれだけだと言うのに、ラグスムエナはいっしゅん自分の首が飛んだ錯覚に襲われて吐きそうになる。それに気づいた黒夜は慌てて殺気を抑えた。
「すまん・・・大丈夫か?」
「す、すみません。大丈夫です・・・ですが今の殺気・・・3000年も封印されていたとは思えませんね」
「え・・・俺3000年も封印されてたの?そりゃ俺でも精神壊れかけるわ・・・危うく外界が消滅するとこだったんだぞ?」
黒夜の言葉にまたラグスムエナは顔を青くして震え始めた。もしも黒夜がその気になれば、外界の星など一瞬で消し飛んでしまう。数日もあれば外界を消し去るなど容易にできてしまうだろう。
「まぁ結果的にそうはならなかったしいいか。とりあえず、俺の返答はNOだ。なぜ俺の可愛い義妹を殺そうとした連中を守らなきゃいけない?むしろ俺は魔王連盟側に付いてもいいんだ」
「その義妹様を敵に回しても・・・ですか?」
「なに?」
ラグスムエナの一言に、今度は黒夜が固まる番だった。
「義妹様・・・白夜叉様は現在東側の階層支配者をなされています。魔王連盟に入るということは、白夜叉様とも敵対すことになります」
黒夜は額を押さえて天を仰いだ。
「なぜ・・・そんなことになってる?」
「私も又聞きでしかないのですが・・・人類史において天動説が否定されたのと、白夜叉様が仏門に下ったことが直接の理由だと聞き及んでいます」
「・・・そっかぁ。それは・・・まぁ仕方ないか。・・・ったく、なら俺はなにがなんでも上の命令に従う道しか最初から用意されてなかったってことだな」
「その・・・すみません」
ガックリとこう垂れてしまった黒夜に、何故かラグスムエナが頭を下げていた。
「お前が謝ることじゃないだろ?・・・とりあえず、俺はこれからどうすればいい?お前んとこのコミュニティに入れば良いのか?」
「いえ、しばらくの間は私と共にあるコミュニティに入っていただくことになります」
「お前も?」
「はい。流石に黒夜様に丸投げでは・・・ということで、私が黒夜様の部下という形で同行することになりました」
「どうせお目付役というか監視役なんだろ?それなら願い下げだ。少なくとも義妹絡みで俺が裏切ることは無いから放っておけと上には伝えろ」
黒夜は監視付きの生活などゴメンだと突っぱねたのだが、ラグスムエナもこれだけは譲れなかった・・・というわけではなくかなり私的な理由で食ってかかった。
「嫌です付いていきます!それとここだけの話、私はろくに監視も報告もするつもりはありません。私個人が、黒夜様のお役に立ちたいのです。私はお邪魔・・・ですか?」
上目遣い+涙目で訴えかけるその姿は、並の男ならコロッとやられてしまう破壊力を持っていたが、黒夜には通じなかった。
「はぁ・・・まぁいい。その代わり、俺のためと言うのなら俺に隷属しろ。そしてその事は上には言うな。お前は生涯を俺のために使い、俺のものとして生きると今ここで誓え」
通じは・・・しなかったが、それ以上の要求をしてきた。黒夜は流石にここまで言えば付いては来ないだろうと思っての発言だったのだが、ラグスムエナは立ち上がるとそのまま黒夜の前に移動し・・・そして跪いた。
「お、おい?」
「このラグスムエナ・・・今この時より黒夜様に隷属し、生涯を黒夜様のために捧げると誓います」
そして黒夜の靴に口づけをするラグスムエナ。それによりラグスムエナの左手の甲に隷属の証となる模様が刻まれたのだった。
「あ〜ったく!どうなっても知らないからな!?」
「大丈夫ですよ。ひとまず、私たちが入るコミュニティについて説明しましょうか」
満面の笑みのラグスムエナに何も言えなくなってしまった黒夜は、若干疲れた頭を振って彼女の説明に耳を傾けるのであった。
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説明を聞いた黒夜は現在、当てがわれた部屋で考え事をしていた。
(ひとまず、箱庭に戻ってこれたのは素直に嬉しいな。しかし・・・まさか白の奴が階層支配者になってたとは。3000年もたつと、流石に色々と変わるもんだな・・・)
3000年・・・一言で言ってみても、その時間は想像を絶する程長い時間だった。
黒夜は元々は普通の人間だったのだが、ある出来事をきっかけに不老不死となってしまい、更には長い年月の間に強大な力を手に入れた事で上層から危険視されていた事があるのである。
しかし、本来の黒夜はとても温厚な正確だったため結果的には見逃されていた。
そんな中、たまたま出会った白夜叉・・・当時は白夜王と呼ばれていたが・・・に妙に懐かれてしまい、黒夜自身も彼女を気に入っていた事もあり義兄妹の契りを結ぶことになる。
本来ならば歳上である白夜叉が姉になる筈なのだが、本人が甘えたいから妹が良いと言って聞かなかったため黒夜が兄を務めることになっていた。
それから数千年の間、2人は箱庭各地を面白可笑しく渡り歩いていたのだが、ある時白夜叉が人類最終試練の一角に認定されたことで状況は一変した。
各地から幾度となく白夜叉を狙う刺客が現れ、2人はそれの撃退に奔走する事となる。
遂には上層からも白夜叉を亡き者にせんとするものが現れ、それに対して遂に怒りを爆発させた黒夜が白夜叉を守るために単身上層へと喧嘩を売りにいき、20を超える神を殺し50を超えるコミュニティを半壊にまで追いやったことでようやく上層の実力者達も白夜叉の討伐を断念したのだった。
しかし話はここで終わりではない。流石に神を20も殺してしまった黒夜は無罪放免とはいかず、黒夜本人も責任を取ることを受け入れたため外界への追放及び封印が決定されたのである。
だがこれに対して今度は白夜叉が激怒し、戦いは泥沼へと発展しそうになるのだが、ある1柱の神が白夜叉が今後良い功績を積んでいくならば、その功績が十分と判断された時に黒夜を箱庭へ再召喚することを確約。
こうして、箱庭全土を巻き込んだ2人対多数の神々による戦争は終止符を打つのだった。
黒夜は昔のことを思い出しながら、一人自嘲の笑みを浮かべていた。
あの時、死者さえ出していなければまだ箱庭に残って入られたかもしれないと思うと、義妹に対して申し訳ない気持ちで一杯になってしまう。
と・・・そんな事を考えていると、ドアをノックする音と共に既に聞き慣れてしまった声が聞こえ聞こえてきた。
「あの・・・ラグスムエナです。もうお休みになってしまってるでしょうか?」
「いや、まだ起きてるよ。入っておいで」
ラグスムエナは失礼しますと言いながら、ゆっくりと扉を開いて入ってきた。
今の彼女は先程までのローブ姿とは打って変わって、薄い桃色のネグリジェに身を包んでおり可愛らしさが前面に押し出される格好となっていた。
だが黒夜が気になったのはネグリジェ姿ではなく・・・何故か身長だった。
ローブ姿の時はもう少し高かった気がしたのである。
「えっと・・・凄く可愛いんだけど、なんか身長縮んでない?」
「え!?あ、あぁ・・・さっきはブーツを履いていましたから。多分5cmくらいは高くてなっていたと思います」
なるほど・・・と納得した黒夜。昔はブーツなど無かったので黒夜はそんな靴があることを知らなかったのだった。
「それで?なにか用があるの?」
「あ、はい。先ほど準備が整いましたので、明日の朝にはノーネームへ出発出来ると思います。それと、明日の朝食も私が用意するんですが・・・なにかリクエストはありますか?」
黒夜はふむ・・・と考え込んだ。ちなみに、2人の距離はなんだかんだ縮まっており、ラグスムエナも所々砕けた表現が混ざるようになっていた。
「それじゃあ明日は魚が食べたいな。夕食は肉料理がメインだったし。お願いできる?」
「はい!」
話はそれで終わりだと思ってそろそろ寝ようかと思った黒夜だったが、ラグスムエナが出て行こうとしない事に気づいて視線を戻した。
「どうしたの?」
「え、えっとですね・・・。あの・・・も、もし・・・黒夜様が嫌で無ければ・・・一緒に眠っても、良いですか?」
これには黒夜も驚いたようで、目を丸くしてラグスムエナの顔を覗き込んでしまい、それに耐え兼ねたラグスムエナは顔を真っ赤にしてしまった。
「あ、あの!すみません!やっぱり嫌ですよね。今のは忘れてください!!」
そう言って慌てて出て行こうとするラグスムエナの腕を黒夜は咄嗟に掴んで引き止める。
「あ、あの・・・?」
「あ、ごめん。でも・・・嫌じゃないよ。ちょっと驚いたけどね。じゃあ一緒に寝ようか?」
「は、はい///」
布団に入るまでは緊張していたラグスムエナだったが、いざ入ってしまうと疲れもあったのかすぐに寝入ってしまった。
黒夜はもしかしたらなかなか眠れなくて来たのかな・・・と急に彼女のことが愛おしくなり、柔らかい髪を撫でながら眠りに付くのだった・・・。
今回はここまでとなります。
次回からはゲストを呼んでの会話などを・・・。
ちなみに、黒夜の容姿は黒髪でBlackcatのトレインを少し短くした感じの容姿。
ラグスムエナは神採りアルケミーマイスターというゲームのラグスムエナほぼそのままです。こちらに関してはそのうち挿絵描けたら良いなと思ってます。
そう言えば、仕事に復帰しようと思って電話したら・・・入院中にクビになってしまってました(T ^ T)
現在新しい仕事探してます・・・。
ではでは!またお会いしましょう!