公太郎はトラウマ   作:正直な嘘吐き

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オリ主がVP1・2両方のチートを望んだため、セラフィックゲートの設定が1・2ごっちゃになっていますが、ご了承ください。


一話

 あれから。

 

 困惑していた俺はとりあえず話し合いをしようと、虚空から取り出した純白の腰布を掲げた。

 

 それをヒラヒラと振って、こちらに敵意はありませんよと意思表示を示す。

 

 これでも尚かかってくるのであれば、血祭りにしてやろうと画策していたのだが、俺に敵意が無いことをわかってくれた彼女らは臨戦態勢を解いてくれた。

 

 というよりかは、純白の腰布をヒラヒラとふっている俺の姿が滑稽だったのもあるんだろうけど。

 

 とにかく、向こうもなにやら聞きたいことがあったようで、少しご同行願えるかしらと紅髪の人からお誘いの声を頂く。

 

 断れる空気ではなかったことと、俺自身も彼女らに聞きたいことがあったため、紅髪の人に誘われるがまま、俺はホイホイ着いていってしまったのだ。

 

 道中で軽い自己紹介なんかもしたのだが、やはり彼女らは駒王学園の生徒のようで、そこでオカルト研究部として日々活動をしているとのこと。……表向きは。

 

 しかしてその実態は、本物の悪魔の集まりというのだから驚きである。

 

 そうして俺は彼女らの活動拠点に連れられたわけだが……その部屋を見て、俺は早速後悔をしていた。

 

 室内の至るところに書き込まれた意味のわからない文字、部屋の中央に描かれた巨大な魔方陣。

 

 オカルト研究部の名に恥じない、コッテコテの怪しさ満点の部室だった。

 

 その上これらを描いたのは本物の悪魔。

 

 ――帰りたい帰りたいよぉ! 誰か助けてくれぃ!

 

 胸中はそんな思いでいっぱいだった。

 

 そして現在。

 

 俺は部室内のソファーに座っていた。黒髪ポニーテールの姫島さんとやらにお茶を出されたのだが、如何せんここが相手のホームグラウンドであるということと、ポジション的なこともあってお茶に手が出せないでいた。

 

 対面には紅髪の女性――リアス・グレモリーさん。このオカルト研究部の部長らしい。

 

 他の面子はグレモリーさんの傍らに佇んでいる。

 

 このポジション……どう見てもあれだよね。あれ。

 

 俺が何かしてもグレモリーさんをすぐ護れるようなポジションだよね。

 

 ファック! さっきの自己紹介の時は中々良い感じだったのにっ! おいしそうなお茶まで出してくれてるのにっ! そんなに俺のことが信用できねえのか!?

 

 まあそれもそうだよな。聞けば俺がバラバラに引き裂いたあの化け物。名をバイサーというらしいが、本来あれはグレモリーさんの獲物だったとか。

 

 結果だけ見ると俺がグレモリーさんの獲物を横取りしたようなもんだよな。

 

 でもこればっかりは悪いことをしたとは思えない。

 

 もしもあのまま黙って見ているだけだったら俺はあの化け物にやられ――はしないだろうな。

 

 あの化け物よりもギルマン・リーダーの方がよほど怖い。

 

 セラフィックゲートに送られて間もない頃、何度あいつにぶっ殺されたことか……。

 

 あいつのせいで俺は生まれてから今まで、切り身の魚しか食べれなくなっていた。あとイカも食えない。

 

 お頭がついたままの魚を食えと言われたら、俺は発狂する自信があるぞ。

 

「それで、あなたは本当に悪魔祓い(エクソシスト)ではないのね?」

 

 なんて、俺が馬鹿なことを考えてばかりいたせいで、痺れを切らしたグレモリーさんが口を開く。

 

 悪魔祓い(エクソシスト)

 

 神の祝福を受けた力ある人間のことらしい。

 

 彼らはその力をもって、仇敵である悪魔を日々滅しているんだとか。

 

 ――其は(しょう)の下に滅せよ!

 

 …………ごめんなさい、なんでもないです。

 

 んで、いざ現場に向かってみればただの人間がはぐれ悪魔を無傷で撃破しているところから、グレモリーさんは俺をエクソシストなのではと思ったらしい。

 

 あと化け物を引き裂いた時に使っていたアントラー・ソード。

 

 あれもなにやら悪魔が苦手とする光のオーラを放っていたみたいで、それも俺のことをエクソシストだと思った要因の一つみたいだ。

 

 まああれは元々神に分類される戦乙女が生成した剣なのだから、なんか光のオーラを放っていてもそりゃあしゃあないってもんだ。

 

 だが待てよ? アントラー・ソードってなんの属性も付与されていなかった筈だけど……。なんで光のオーラとやらを放っていたんだ? もしかして俺が生成するやつみんな光のオーラを放つのかな? 後で試してみるべ。

 

 今はとりあえず、グレモリーさんに俺がエクソシストではないってことをわかってもらわなきゃ。

 

「はい。俺はエクソシストなんかじゃありません。大体俺は、エクソシストが本当にいるだなんて今初めて知ったぐらいなんですから」

 

「嘘は言っていないようね……。じゃあもう一つ。あなた、剣術かなにかを習っていたの? エクソシストでもない、ただの人間がはぐれ悪魔を返り血も浴びずに斬り捨てるだなんて、そうできることではないわ」

 

「習っていたというか……戦い方をとある女性に教えてもらっただけです。剣は適当に振り回していただけですから」

 

 思い出すはセラフィックゲートの門番にして案内人でもある彼女。

 

 思えば何度彼女に助けられたことか。

 

 殺されては力尽きる度、何度もユニオンプラムを使ってくれたのは彼女なのだから。

 

 戦闘には関与こそしなかったものの、戦いのたの字も知らない俺に彼女は様々なことを教えてくれた。呪文と大魔法を行使する方法や、敵の破壊しやすい部位などなど。

 

 他にも色々と教えてくれたが、それらを全て説明しようとすると結構な時間になってしまうため残りは割愛する。本当に、彼女には頭が上がらない。

 

 こんな俺にチート能力をくれた神様にはもちろん感謝しているが、それ以上に俺は彼女に感謝していた。セラフィックゲートを卒業するまでに死んだ回数は数百、数千を軽く超えるだろう。

 

 この世界に生まれる直前に神様から聞いたことだが、俺が送られてから卒業するまでを約三千年。

 

 それだけの時間。彼女は俺を支え続けてくれたのだから。

 

 ただでさえ地獄と呼ぶに相応しいセラフィックゲート。

 

 特性? というべきか、ゲートには周回する度敵の強さが上がるというものがあった。

 

 まったく、そのせいで『あの剣』を手にする直前というところで本気で挫けそうになった覚えがある。そんな時も俺は彼女に叱咤され、激励され、慰めてもらったのだ。

 

「適当に振った剣でああも見事にバイサーを倒せるだなんてね。それよりも僕は、きみが使っていた剣について聞いてみたいな」

 

 なんて彼女のことを思い出していると、今度は金髪の彼、木場くんが話しかけてきた。

 

 なんだか彼だけ少し剣呑な雰囲気だけど、俺木場くんになにかしたかな?

 

「そうね。いつの間にか消えているみたいだけど。光のオーラを放っていたあの剣、あれは一体なんだったのかしら?」

 

 む……。あれは『道具生成』によって生成された物なんだけど……。なんて説明すればいいんだ?

 

 そういえば、『道具生成』はマテリアライズポイントを消費して行われるけど、あれはゲームとはいえレナスだったからこそポイントを消費して生成できていたのだ。

 

 神様からもらったチート能力の一つである『道具生成』だが、俺の場合は何を消費して生成しているんだ? 今まで考えたこともなかったな……。

 

 因みにこの『道具生成』はゲームでは生成するアイテムによって生成できる上限がある。

 

 だが俺のもらった方はなんとこの上限を無視できるのだ!

 

 無視できることを知り、調子に乗った中学の頃。

 

 俺は千本ぐらいエリクサーを生成しては、一本百二十円で道行く人々に売りさばいた覚えがある。

 

『一本飲めば半分回復、二本飲めば全回復!』とかいう意味のわからんキャッチコピーをつけて。

 

 結果は大成功。

 

 あの時は本当に笑いが止まらなかった。

 

 売れて売れてあまりにも売れまくったのだから笑いも止まらないというもの。

 

 本当にぼろい商売だった。

 

 半信半疑で買っていく奴も一度飲んだら即リピーターって感じだったのだ。

 

 あまりの効き目に副作用を懸念する者も出てきたが、そいつらも何本飲んでも副作用の兆候を見せない者達を見て、我先にと言わんばかりに買っていくのだから愉快と言う外ない。

 

 当然許可無く売っていたことがばれてしまい、捕まりそうになったのは記憶に新しい。

 

 はっ!? もしや今こうして悪魔とやらに目をつけられてしまったのは……俺がエリクサーを売りさばいたせい!?

 

 ――糞っ! やはり一本百二十円でなく、チェリオと同じ百円で売るべきだったか……!

 

 ……って、違う違う!

 

 閑話休題。

 

「あの剣は俺が生成した物です。おっと、どうやって生成したのかは聞かないで下さいよ? 俺自身、どうやって生成しているのかわかっていないんですから」

 

 まあこう答えるしかないよな。それに嘘は言っていないんだから。これ以上追求されても俺は知らん。

 

 だが俺の返答を聞いたグレモリーさんと木場くんは予想していた追求をしてこない。

 

 他の部員の人達となにやら話し合っているご様子。

 

 待つこと数分。

 

「ごめんなさいね。あなたの能力だけど、それは恐らく神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれるものよ」

 

 これはまた壮大な単語が出てきた気がするけど……。神器(セイクリッド・ギア)ってなんぞ?

 

「なにそれって顔をしてるわね。いい? 神器(セイクリッド・ギア)というのは――」

 

 神器(セイクリッド・ギア)――特定の人間の身に宿る、規格外の力。歴史上に残る人物の多くがその神器(セイクリッド・ギア)所有者と言われており、神器(セイクリッド・ギア)の力で歴史に名を残したとのこと。現在でもその身に神器(セイクリッド・ギア)を宿す者が存在し、世界的に活躍している面々の多くがそれを有しているんだとか。

 

 さらにさらに。大半は人間社会規模でしか機能しないものばかりなのだが、中には悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った神器(セイクリッド・ギア)があるとのこと。

 

 堕天使という単語で頭にクエスチョンマークを浮かべた俺だが、その反応から堕天使の存在を俺が知らないことを見抜いたグレモリーさんは、続いて人外の三すくみについても聞かせてくれた。

 

 元々は神に仕えていた天使が、邪な感情を持ち、地獄に堕ちてしまった存在。

 

 それが堕天使と呼ばれるもので、悪魔の敵でもあるらしい。

 

 悪魔は古来より堕天使と争っている。冥界――人間界で言う地獄の覇権を巡って。

 

 地獄は悪魔と堕天使の領土で二分化されているとのこと。

 

 悪魔は人間と契約して代価をもらって力を蓄え、堕天使は人間を操り悪魔を滅ぼそうとする。

 

 ここに神の命を受けて悪魔と堕天使を問答無用で倒しに来る天使を含め三すくみ。

 

 これを大昔から繰り広げているそうだ。

 

「ふぅ。長くなったけれどこんなところね」

 

 喋り疲れた喉を潤すためにグレモリーさんは姫島さんの入れなおしたお茶を一口。

 

 優雅にお茶を楽しむグレモリーさんを他所に、俺はさきほどの話を思い返していた。

 

 まさかこの世界に、そんな人外連中が跋扈していたとは……!

 

 今漸く、あの神様の言っていたことが理解できた。

 

 元々チート能力は、俺が転生する世界がパワーバランスのインフレ(はなは)だしい世界だから、そのため身を護る手段として神様が授けてくれたものだった。まあ能力の内容はインフレがやばいと聞いて俺が神様に望んだものだけど。

 

 そして与えられたチートを完璧に使いこなせるようにと、神様が気をきかせて(?)俺を転送した先が地獄、セラフィックゲートだった。

 

 三千年の間ひたすらに鍛えられ、『あの剣』を手に入れて、遂には彼女を超えるまでに至って漸く転生した先の世界が、普通の現代と何一つ変わらない平和な世界と知った時は愕然としたものだ。

 

 セラフィックゲートに送られた意味は……ってゆうか、チート能力をもらった意味は――

 

 その先は口にできなかった。

 

 口にすれば最初から最後までを、彼女に支えてもらった時間を否定することになるから。

 

 だから俺は、なにも言えなかった。

 

 それからある意味自暴自棄になって、調子こいたのが中学の頃の黒歴史である。

 

 エリクサーを売りさばいたのはそんな黒歴史の内の一つだ。

 

 しかし……そうか。そんな人外連中がいるんなら、あの発狂しそうになるほどの修行も無駄ではなかったな。

 

 彼女との時間を無駄にせずに済みそうだと安堵するかたわらで、今度は別の懸案事項が浮かび上がる。

 

 インフレのやばい世界らしいから、俺がそれに着いていけるのか? ということだ。

 

 着いていけないと、やはり無駄になってしまうことには変わりないのだ。

 

 どうしよう、なんだか不安になってきた。

 

「そこで提案があるんだけど」

 

 不安が顔に出そうになっている俺のことなど知らんと言わんばかりにグレモリーさんは話しかける。

 

 提案ねえ。一体どんな内容なのやら。

 

「あなた、私の眷属にならない?」




ちなみにオリ主が転生する際、セラフィックゲートで獲得したアイテムは全て持ち込んでの転生となっております。ついでに餞別として、神様からVP1に出てきた『アーティファクト』も受け取っていたり。
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