週に一本のペースでゆっくり更新していくつもりなので、気長にお待ちいただければ幸いです。
ご都合主義や捏造設定なんかも出てきてしまいますが、その点はお許し下さい。
「本日より皆さんのお世話になります
数十人の視線を一身に受けながら、俺は新しい学校生活を良いものにするために気合を入れた自己紹介をする。あっ、あっちに兵藤くんがいる! 教室内を見て思ったけど、なんだか女の子の方が多いなあ。所々からぼそりと聞こえてくる『なんだかちょっとかっこよくない?』なぁんて声が地味に嬉しい。
いや、すごく嬉しい! ここがエデンの園なのか!
エデンと言えば
いかん、話が進まん。俺が何故、難関とされるここ駒王学園に転入しているのか。
その理由はあの時の、グレモリー部長に眷属にならないかと誘われた夜まで遡る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「眷属、ですか?」
俺はグレモリーさんの言った言葉をそのまま口にする。
悪魔の眷属――血でも吸われるのか……? ってそれは吸血鬼か。
でも吸血鬼も悪魔に分類されるよな? フランちゃんの二つ名も『悪魔の妹』だし、レミリアだって『紅い悪魔』って呼ばれてたもん。
「その、眷属になるにしてもどうすればなれるんですか?」
「そういえばその説明をしていなかったわね。ちょうどいいわ、イッセー。あなたも聞いておきなさい」
茶髪の彼、兵藤くんにお声がかかる。兵藤くんも知らないのだろうか? でも思い返してみれば俺とグレモリーさんたちとで対峙した時も、彼だけ流れに着いていけてない印象を受けた。
兵藤くんは眷属とやらになって日が浅いのかな? まあいいや。
少し長くなるけどと前置いて、グレモリーさんは続ける。
大昔――悪魔と堕天使、そして天使を率いる神は三つ巴の大きな戦争を始めた。
大軍勢を率いてどの勢力も永久とも思える期間、争いあった。
結果どの勢力も酷く疲弊し、勝者もいないままに戦争は数百年前に終結。
悪魔側も大打撃を受けてしまい、二十、三十もの軍団を率いていた爵位を持つ大悪魔と呼ばれる者達も、部下の大半を長い戦争で失ってしまったんだとか。
それこそ、軍団なんて保てないほどに。
純粋な悪魔はその時に多く亡くなった。だが戦争は終わっても堕天使、神との睨み合いは現在でも続いており、いくら堕天使側や神側も部下の大半を失ったとはいえ、少しでも隙を見せれば危うくなる。そこで悪魔は少数精鋭の制度を取ることにした。それが『
はあ。まだ続きがあるのか。さっきの説明といい、なんか今日だけで驚愕の事実がゴロゴロ出てくるな。それにしても神、か……。もしかしてオーディンみたいな奴なのかな? あんな傲慢な奴が実際にこの世界にいるだなんて、俺は絶対いやだぞ。
とりあえずグレモリーさんの説明はまだまだ続く。
爵位を持った悪魔は人間界のボードゲーム『チェス』の特性を下僕悪魔に取り入れた。
下僕となる悪魔の多くが人間からの転生者だからという皮肉も込めて。
主となる悪魔が『
軍団を持てなくなった代わりに少数の下僕に強大な力を分け与えることにした。
この制度ができたのはここ数百年のことなのだが、これが意外に爵位持ちの悪魔に好評なんだとか。
――好評だって? 一体この制度のどこが悪魔のツボに受けたのやら。
「好評? チェスのルールがですか?」
俺と同じように疑問を感じた兵藤くんが問いかける。
兵藤くんの問いの答え。
競うようになったそうだ、自らの下僕の強さを。
『私の騎士は強いわ!』『いえ、私の戦車のほうが使える!』『私の僧侶こそが最強と呼ぶに相応しいですなwwwww』といった感じで。
その結果、チェスのように実際のゲームを、下僕を使って上級悪魔同士で行うようになった。
これが『レーティングゲーム』と呼ばれるもの。
このゲームが悪魔の間で大流行。今では大会も行われているほどで、駒の強さ、ゲームの強さが悪魔の地位、爵位に影響を及ぼすほどに。
『駒集め』と称して、優秀な人間を自分の手駒にするのも流行っている。
優秀な下僕はステータスになるから。
以上で説明を一旦区切るようだ。
ふむ、駒集めが流行っているのか……。悪魔というのは暇な連中が多いのか?
いや、優秀な駒がステータスになる上単純に悪魔の数も増やすことに繋がるのだから、暇というのはちょっと語弊があるか。
しかし……それを踏まえた上で俺に眷属にならないかと持ちかけてきたということは、グレモリーさんの御眼鏡に俺が適ったということなのだろう。
ふふん、見る目があるじゃないか。つい有頂天になってしまう。
「改めて問うわ。九々崎九々くん、私の眷属にならないかしら?」
「なりません」
即答。
俺の即答にグレモリーさんは面食らった様子。こう言うと失礼かもしれないが、彼女の面食らった様子は結構可愛かった。
まあそんなことはともかく。だって眷属になったら悪魔になっちゃうんだぜ?
せっかく二度目の生を、人間として謳歌させてもらっているんだ。
それを捨て去るようなことをするだなんて、罰当たりにもほどがある。
だからグレモリーさんには申し訳ないがこの話は断らせてもらう。
「――そう。残念ね」
お? 意外だ。こんなにもあっさりと引き下がるとは。
今度は俺が面食らってしまった。
相手は悪魔なのだ、殺してでも眷属にしてやる! ぐらいは言われるかと思ったのに。
こうもあっさりと引かれると、なんだか逆に申し訳ない気持ちになってしまう。
「あっさりと引いてくれるんですね?」
「ふふっ、眷属にしたいというのが本音ではあるんだけど、本人が嫌がってるのなら無理強いはできないわ」
そう言ってまた、グレモリーさんは優雅にお茶を一口。
お、大人だ……。高校生とは思えない貫禄が、そこにあった。
さて。眷属どうこうの、グレモリーさんの話はこれで終わったのだ。これで俺は家に帰れると思っていたのだが、そうは問屋がおろさない。今度は木場くんのターンだった。
「九々崎くんが生成したさっきの剣、あれをもう一度見せてもらえないかな?」
――また剣かよおめぇはよぉ! どんだけ剣が好きなんだよ!
なんてことを内弁慶の俺は木場くんに言うことができず、爽やかな笑みを浮かべながら「ああ、構わないよ」と言ってアントラー・ソードを生成する。
生成は一瞬で終わり、パッと俺の手に現れた剣を見てオカルト研究部の面々は息を呑む。
生成された物を見ていつも思うんだけど、本当に俺って何を支払って生成してるんだろうね。一応VP1の『道具生成』で生成できる物は全て生成してみたけど、
唯一オリハルコンを生成した時はちょっと疲れた気がしたが、それでも疲れた気がしただけだった。
あともう一つ、ユニオンプラムだけは生成ができなかった。
「はい、木場くん」
あっ、悪魔は光のオーラが苦手らしいし、渡すのはまずかったか?
だがそんな心配事は杞憂だったようで、俺から剣を受け取った木場くんは刀身に触れないようにして観察していた。
なるほど、切られたらアウトってだけなんだな。
しばらく剣を観察する木場くん。なにやら剣呑な雰囲気の彼だったが、観察が続くにつれそれも和らいでいく。一体どうしたっていうんだ?
「これは……」
なんとも言えないような表情になっているけど、そんな顔をされるとマジで気になってしまう。
――言えよ! なにかおかしなところがあるんなら言えよ!
そんな俺の気持ちを代弁するかのように、グレモリーさんが木場くんに問いかける。
「どうしたのよ祐斗、あなたらしくもない。なにかあったの?」
「部長、この剣なんですが――」
木場くんの困惑していた理由。それは剣の発するオーラにあった。
手にとってわかったことらしいが、アントラー・ソードはそれっぽいオーラを放っているだけとのこと。つまり、
思わず嘆息してしまう。なんでそんなものを発しているんだか……。
「まあこれもある意味では才能と呼べるわ。初見の悪魔なら私達同様、間違いなく騙されるでしょうね」
グレモリーさん。そんなフォローはいらんとです。
ただの剣だというのがわかって満足したのか、木場くんも初めて出会った時のような威圧感を出さなくなった。まったく、なんなんだ彼は。光のオーラを発する剣に怨みでもあるのかねぇ。
「それにしても不思議ね。九々崎くん、この剣以外にも何か生み出したりできるのかしら?」
「出せますよ。例えば……そうだな、これなんかとか」
「……なにこれ?」
「ウサギの足」
ただのウサギの足と侮るなかれ、これを持っていると幸運が訪れるのだっ!
……っていう言い伝えがあるだけなんだけどね。
因みに今生成したウサギの足だが、可愛らしくデフォルメされた形でお守りになっている。
もしもそのまま足だけ出てきたとしたら余りにもグロ過ぎる。
「そ、そう。他には何があるの?」
他? そうだな……。
「これなんか如何でしょうか?」
次に生成したのは天使の唇と呼ばれる真っ赤なルージュ。
このルージュでメイクすると、交渉が上手くいくともっぱらの評判なのだっ!
そのためフレイに交渉上手なエインフェリアを要求された場合、天使の唇を持たせて神界に送れば高評価を得られる便利アイテムである。
上級プレイヤーの多くがおっさんキャラに持たせて送ったことだろう。
ベリナスとかジェイクリーナスとか。
少なくとも俺は真っ赤な口紅でメイクしたおっさんなんぞ見たくない。
「あら。これ、とても良い口紅ね」
「もしよろしければどうぞ。俺が持っていても無用の長物ですし」
消してもよかったがせっかく生成したんだ。それに天使の唇も美人さんに使ってもらえるんだから、道具冥利に尽きるというもの。
「ふふ、ありがとう」
「どういたしまして。お二人もどうぞ」
グレモリーさんだけにあげるのもあれだし、姫島さんと白髪で小柄な女の子の塔城さんにも渡しておく。元手はタダみたいなもんだし、二つ三つあげてしまっても問題はない。
「あらあら、ありがとうございます。九々崎くん」
「……ありがとうございます」
心なしか女性陣の目がキラキラしているように感じられる。こうして喜んでもらえると、あげた甲斐があるというものだ。
さて、男子二人には何を渡そうかな? ……俺と同じ年頃の男子高校生だし、消耗品で悪いが二人にはあれを渡しておくか。
「はい。木場くんと兵藤くんにはこれを渡しておくよ」
俺から小瓶を受け取る二人。木場くんからは、一体これはなんなんだろうという好奇心が見て取れた。兵藤くんはというと――
「おっ、エリクサーじゃん。本当にもらっていいのか?」
ありゃ、知ってたのか。ということは説明はしなくても大丈夫そうだな。
「もちろん。色々と回復できる優れものだからね、是非とも有効活用しておくれ」
きっとあの時、兵藤くんも買ってくれてたのだろう。まさかこんなところであの時のお客さんと出会えるとは。世の中なにがあるかわからないなあ。
次いで木場くんの方を見やると……何故か固まっていた。
っていうか俺と兵藤くん以外の面々が固まっている。何故だ。
「イ、イッセー? 今あなた、なんと言ったの……?」
「へ? エリクサーですよ、これがまたかなり効くんスよ!」
「……ちょっと見せてもらえないかしら?」
未だ固いグレモリーさんと戸惑い顔の兵藤くん。頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、兵藤くんは小瓶を渡す。
「本物だわ……。まさかエリクサーをこうも簡単に生み出せる者がいただなんて……」
なんかすんごい慄いてるけどどうしたんだ? 実はエリクサーってこの世界じゃ滅茶苦茶レアなアイテムだったりして……。
「……あれ? もしかしてあの時の怪しい薬売りって九々崎だったのか?」
怪しいとは失敬なやつだ。それにしても今更気付くとは、鈍いやつめ。
「……イッセー。あなたは九々崎くんとは初対面だったみたいだけど、彼の生み出したエリクサーのことは何故知っていたのかしら?」
ようやっと凍りついた空気が払拭され、いち早く持ち直したグレモリーさんは兵藤くんに何故エリクサーを知っていたのかを問う。
「俺が中学の頃の話なんスけど――」
やはりと言うべきか、兵藤くんはあの時のお客さんの一人だったようで、何度かエリクサーを買ってくれてたらしい。その時に買ったエリクサーの容器の形を今まで覚えていたらしく、さきほど俺から渡された小瓶を見て、エリクサーだと判断したそうだ。
次に矛先を向けられたのは俺だった。
どういうことなのかと説明を求められたので、軽く説明しておく。
中学の頃、道行く人に健康ドリンクと称して日々売りさばいていたこと。
エリクサーってなんかポカリみたいな味がして美味しい!
あまりにも売れるもんだから笑いが止まらなかったこと。
最終的に捕まりそうになったことまでを説明した。
――あれ? 説明になってない!?
これを聞いたグレモリーさんは絶句しており、兵藤くんを除く三人も似たような感じだ。
「いやー、兵藤くんも買ってくれてたとはね。エリクサー、かなり効いたでしょ?」
「ああ! 最高だったぜ!」
まさか最高とまで言ってもらえるとは……!
さっきも言ったけど俺の提供した物でこんなにも喜んでもらえるなんて、やっぱり渡してよかったなあ。嬉しそうにしているのを見るだけで、こっちまで嬉しくなってくる。
だがそんな気分に水を差すように、グレモリーさんから衝撃的な言葉を投げかけられる。
「――九々崎くん。もう二度とそんなことをしてはいけないわ」
……え? なして?
続けてグレモリーさんは俺に説明する。エリクサーがどれだけ貴重な物なのかを。
エリクサー――錬金術師の到達地点とされる賢者の石から作成される伝説の霊薬。
服用することで如何なる病も治すことができ、人間だけでなく悪魔、堕天使、天使にも効果を及ぼすことから、それらの種族が日々求めてやまない物らしい。
それらの種族だけでなく、錬金術師はもちろん魔法使いまでもが探し求める至高の一品なんだとか。
……マジか。そんなにも貴重な物だったとは。
そんな連中に伝説の霊薬をポンポン生み出せると知られれば、間違いなく拉致られるそうだ。
冗談ですよね? と返したところ、兵藤くん以外の四人がとても真剣な面持ちで見つめてくる。
ちくせう。マジなのか……。
こんなことならもっと高い値段で売ればよかった……!
「……わかりました。肝に銘じておきます」
「わかってくれたのならいいわ。あなたのしていたことは本当に危険なことだったんだから」
俺の身を案じてくれてるのが伝わってくる。会ったばかりの俺をこうも案じてくれるとは……!
だがな、怖いもんなら俺はセラフィックゲートで散々見てきたんだよ! 今更怖いもんなんざあらへんわ!
まあとりあえずここはグレモリーさんに従っておこう。
またほとぼりが冷めた頃に売れば……いや、待てよ?
「グレモリーさん、今度は俺から提案があるんですが――」
俺を眷属にしたがっている彼女だ。恐らくは受け入れてもらえるだろう。
俺の提案というのは――
ここで回想終了。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「まさか兵藤くんと同じクラスになるとはな」
「俺はこんなにも早く九々崎が転入してきたことにビックリだよ」
自己紹介のその後も授業風景もすっとばして放課後。
俺は兵藤くんと一緒に旧校舎にあるオカルト研究部へと向かっていた。
さて、俺があの時にした提案だが――
俺は生成できる物をバンバン売りさばきたい、だけどグレモリーさんはそんなことをさせたくない。
ということで。
グレモリーさんに生成した物を買い取ってもらえないかと提案したのだ。
グレモリーさんは伝説の霊薬を安価で購入することができ、俺は危ない連中に目をつけられずに小遣い稼ぎができるという、Win-WInな関係になれるんだ、これならば彼女も文句は無いだろう。
予想通りというべきか、彼女は快く受け入れてくれた。
自分達の目の届く場所にいてもらいたいということで、俺はここ駒王学園に転入させられたのだが、学費は全てグレモリーさんが負担してくれている。
エリクサーを安価で譲ってもらえるのだから、これぐらいは当然のことだそうだ。
そういう訳で、俺は駒王学園に転入していた。
あと当然だが俺もオカルト研究部に所属している。じゃなきゃなんのために転入してきたのかわからないからな。
「まあなんだ。せっかく同じ部活の一員になったわけだしさ。これからよろしく頼むよ」
兵藤くんからそんなことを言われる。
はっ!? これが青春ってやつか……!
これから先の学校生活を想像するだけで……みwなwぎwっwてwきwたwww
九々がセラフィックゲートに送られ約三千年。
漸く『あの剣』を手にし、彼女を超えることができた。
あとは二度目の生を受けるのを待つだけだった。
そこで九々にチート能力を与えた神は、餞別に『ある物』を渡す。
「……? 俺に餞別、ですか?」
怪訝な顔をしながら受け取った物を見やる九々。
渡された物を見て、九々は驚きを露にする。
「これは……! VP1の『アーティファクト』ですね!? 本当にいいんですか!?」
問題ないと神は返す。これは言わば、長い間修行を頑張った九々へのご褒美みたいなものだ。
「すごい……VP1の作中に出てきた物が全てあるんですね! 聖杯や黄金の鶏まで!」
まるで子供のようにはしゃぐ九々を見て、微笑む神。
様々な『アーティファクト』を前に目を輝かせる九々だったが、とある『アーティファクト』を見てからその様子が変わる。
「……久遠の灯火に、こっちは紅蓮剣インフェルナス……」
俯き、何故か体を震わす九々。
ああ、なんだ。
紅蓮剣インフェルナスを前に、歓喜で打ち震えているだけかと神は推測する。
男の子なだけあって、炎属性の剣に並々ならぬ興味があるらしい。
――その気持ち、よくわかる。
炎属性の剣について語ろうじゃないか。
語りかけようとした瞬間――
「紅蓮剣あるなら最初によこせよっっっ!!」
――ファッ!?
怒鳴られた。
解せん。