「バーン・ストーム! バーン・ストーム! バーン・ストーム! バーン・ストーム! もいっちょバーン・ストーム!!!」
九々です。
春を向かえ、最近は暖かくなってきましたね。
今俺がいる場所が密閉された地下の儀式場というのも相俟ってか、暖かいを通り越して暑くすら感じられます。
「クール・ダンセル! クール・ダンセル! クール・ダンセル! ついでにもいっちょクール・ダンセルゥゥ!!!」
前述した通り暑く感じる日もありますが、それでもまだ冬の寒さが抜けきっていないのでしょうか、寒く感じる日もあります。
今俺がいる場所がお日様の日差しが届かない地下の儀式場というのも相俟ってか、寒いを通り越して凍えてしまうのではないかと感じられます。
まだまだ寒暖の差が激しい日が続くとは思いますが、それでも俺は風邪をひかないよう毎日を元気に過ごしています。
先日、駒王学園に転入しました。新たな学校生活に不安もありましたがクラスメイトや、所属している部活の人達はみんな良い人ばかりです。早速友達もできました!
特に部活――オカルト研究部の皆さんは学園の有名人ということもあり、個性的な人ばかりでした。
今俺は研究部の木場くんと塔城さんと、この地下の儀式場に来ています。
ですがこの二人、場内を見て何故か唖然としています。本当に、何故唖然としているんでしょうね。
「――ふぅ。漸く全滅、ってとこかな? 数だけだったな」
さっぱりした場内を見てようやっと一息つくことができた。
あれだけいた神父達も全員片付き、死亡フラグをへし折るのに見事成功。
我ながら天晴れと言うほかなかった。しかし……。
――これはひどい。
場内のあちらこちらにバラバラになった神父達の死体が散らばっているのだ。
爆炎を伴った上昇気流で下から打ち上げられ、その衝撃に耐えられず四肢を失う者。
氷精に氷の刃で斬り捨てられ、腹を裂かれて臓物をぶちまける者。運良く五体満足で死ねた者も、
阿鼻叫喚の地獄絵図が、場内で再現されていた。
「魔法がメインだって九々崎くんは言ってたけど……それに違わぬ凄まじい威力だったね」
いち早く戻ってきた木場くんが語りかけてくる。
は? 魔法がメイン? こいつは何を……ああ、そんなことも言ってたっけ。
「……剣が使えて、魔法も使えて。九々崎先輩はとても強いですね……」
――槍と弓と、あとナックルも使えますがなにか?
内心でドヤ顔しながら独り言ちる。
俺を褒める塔城さんだったが、その言葉にはなんというべきか……決して+とは呼べない感情が混じっていたように感じられた。なんだろう、自分でも何を言っているのかよくわからない。
まあいいさ、俺には関係の無いことだからな。
さて、全員始末してやったことだし、さっさとこの儀式場から出ようと提案する刹那――
床が青白く光りだす。その光は徐々にとある形――魔方陣を作っていく。
すわ増援か! と警戒する俺に、塔城さんが語りかける。
「……あれはグレモリー眷属の魔方陣です」
塔城さんの言葉に俺は警戒を解く。言われてみれば、部室にあった魔方陣と同じ形だな……。
その光の中から現れしはリアス・グレモリーと姫島朱乃。
駒王学園の『二大お姉さま』にして、グレモリー眷属の『王』と『女王』だった。
――二人とも、来るのが遅すぎです!
なんだよ! この二人が来てくれるんだったら、俺あんなに頑張らなくてもよかったじゃん!
そんな俺の心中も知らず、現れた二人は場内を見回す。
「もう戦闘は終わっているようね。それにしても――」
「ええ。地獄絵図……ですね」
あー……やり過ぎてしまっただろうか。だが杖も装備せず、大魔法も使わなかったのだから、一応加減はしたつもりだったんだけど……。というか、ここで大魔法を使ったら絶対生き埋めになるだろう。そのため大魔法に関しては使えなかったと言った方が正しいかな。
「祐斗と小猫の戦い方ではこんな有様にはならないだろうし……九々がやったのね?」
バレた。まあそうだよな。あちらこちらに散らばる死体を見れば、決して剣や素手でやったものではないと容易に判断できる。前に魔法がメインだって言っちゃったしな。
「はい。一応手加減はしたつもりだったんですけど……」
「手加減、ね。本当にあなたの底が知れないわ」
グレモリー部長が嘆息する。
ふふん、そうだろうそうだろう。なんてったって俺はハムスターを倒した男だぜ?
あの! ハムスターを! 倒した男だぜ!? そう簡単に底を知られてなるものか。
――……え? 公太郎? いやちょっと何を言ってるかわかりませんね……。
何故だか吐き気を催してきた。背を伝うじっとりとした汗が、とても不快だ。
あれ? おかしいな……。寒気までしてきた、気がする。
もう帰ろう。はぐれエクソシストの連中も始末したことだし、この場に留まる
「そういえばイッセーはどこに行ったのかしら?」
……あっ、やべっ。兵藤くん忘れてそのまま帰るとこだったわ。
兵藤くんなら女の子を連れて上の聖堂に逃げて――そこで俺は堕天使がいないことに気付く。
先程の呪文に巻き込んだ覚えもない。巻き込んでたらどっかに死体が転がってる筈だからな。
ここにいないということは、兵藤くんを追って上へと向かったのだろう。
――もしかしてもう堕天使にやられてたり……?
なんてことを考えたその時、上の方からとんでもなく大きな破砕音が響いてきた。
って、あの音はなんだったんだ!?
「おそらくはイッセーがやったのでしょうね」
そうグレモリー部長は言う。その言葉を口にした彼女は、兵藤くんの勝利を信じてやまないようだ。
その根拠を聞きたいところではあるが、それよりも今は兵藤くんのとこへ向かうのが先だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
聖堂内の壁に生まれていた大きな穴を見て、俺は驚嘆していた。
その大穴の先。そこに地下で見た堕天使が横たわっていたのだ。
――マジで兵藤くんが倒したのか。
まさに驚嘆と言う外ない。あの悪魔になりたてのペーペーが、自分よりも遥かに強いであろう堕天使を、見事打倒してみせたのだから。
床に倒れこんでいる兵藤くんは体中傷だらけの血まみれだった。
だが荒い呼吸音から、ちゃんと生きているのが確認できる。
――どれどれ、回復してやるとしよう。
「キュア・プラムス」
淡い光は見る見るうちに兵藤くんの体を癒す。傷も大部分が治っており、呼吸も安定したものになっていた。
いやーキュア・プラムスマジ便利。チャージターン? なにそれおいしいの?
「……九々崎か」
「おう、お疲れさん」
落ち着いた兵藤くんがこちらを見やる。そういや逃げる時に連れてた女の子がいないな、と思ったら長椅子に横になっていた。まああんだけ絶叫してたわけだし、おそらくは疲れて寝てるのだろう。
「ほら、グレモリー部長が来てるんだ。いつまでも寝転んでないでさっさと立ちな」
その言葉に彼はハッと辺りを見回す。そうしてグレモリー部長を視認したと同時に勢いよく立ち上がる、彼女がここに来ているのが意外だったのだろう。
「よくやったわね、イッセー」
だが彼の表情は暗い。敵の親玉を倒して、無事に目的の女の子も助け出すことができたのだ。万々歳ではないか、何故そんな顔をしているのやら。
「何暗い顔してんだよ、女の子も助け出せたんだろ? もっと喜ぼうぜ!」
俺の言葉を聞いた途端、兵藤くんは涙を流す。え、なんで!?
彼が何故突然泣き出したのか。疑問に思っていた俺に、木場くんがその理由を教えてくれた。
地下の儀式場で
そこから先は言われずともわかる。あの子はもう……。
「なあ、九々崎……。なんとか、できないか……? ほら、伝説の霊薬をあんな簡単に生み出せるわけだしさ。死んだ人を蘇生させる薬も……」
言っていて、自分でもそんな都合の良い物は存在しないと理解しているのだろう。
段々と紡ぐ言葉も尻すぼみになっていくのが、何よりの証拠だ。
そして――兵藤くんの思う通り、俺は死人を蘇生させるなんてこと、できやしない。
「……すまん、兵藤くん」
もしもこれがシルメリアだったなら、時間はかかれど何とかできただろう。
死んだ存在であるエインフェリア。それらに肉体を与えて解放するということは、死者を蘇らせているのと同じことなのだから。それを考えると、若い姿でシルメリアのエインフェリアとなり、そのまま解放されたフィレス大勝利である。
58歳から17歳だぜ? その上失った片腕も元通りだし……。
一応換魂の法で助けることもできるが、この方法は提示しない。
言えば兵藤くんは自分の命を使えと言うだろうし、グレモリー部長はそんなこと絶対に認めないだろうからな。
「それにしても……教会がボロボロですわ。部長、よろしいのですか?」
重たい空気を払拭するかのように姫島さんがグレモリー部長に問いかける。
困り顔だが何か問題でもあるのだろうか。
「……なんか、ヤバいんすか?」
教会は神ないしそれに属する宗教のもので、今回のように堕天使が所有している場合がある。
そのケースだと彼女ら悪魔が教会をボロボロにすると、後に他の刺客から付け狙われることがあるらしい。恨みと報復をもって。
グレモリー部長の知恵袋より抜粋。
「でも今回それはないでしょうね」
――はて、報復がないのは嬉しいが、それは何故なのだろう。
ここは元々捨てられた教会だった。そこをとある堕天使達が自らの私利私欲のために活用し、俺達はそこでちょっとした喧嘩をしただけだと。
相手の公式な陣地へ戦争を吹っかけたわけでもなく、いち悪魔といち堕天使の野良試合の小競り合い。ただそれだけのことだそうだ。
いやあ、相変わらず説明上手な方だ。きっとグレモリー部長には人物特性に、説明上手が含まれているに違いない。
――ん? 何か、引きずるような音が……。
「部長。持ってきました」
音の正体は壊れた壁の奥から現れ、堕天使を引きずってきた塔城さんだった。
その様は、狩ってきた獲物を嬉々として主人に見せる猫を連想させる。堕天使倒したのは兵藤くんだけど。
グレモリー部長とアイコンタクトを交わすと、姫島さんは堕天使に生み出した水の塊をぶっ掛ける。
見た目美少女の堕天使に、ぶっ掛ける。
ぶっ掛ける。
美少女にぶっ掛けるという言葉を聞くと、興奮してしまうのは俺だけではない、筈。
はい、どうでもいいことですね。
水をぶっ掛けられ、咳き込みながらゆっくりと眼を開ける堕天使。
「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」
「……グレモリー一族の娘か……」
「はじめまして、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、お見知りおきを」
優雅に自己紹介をするグレモリー部長。それはいいんだけど、俺にはさっきから気になってることがあった。
――あの少年神父の死体が、どこにもない。
少年神父の倒れていた場所を見れば、血溜まりがあるばかり。点々と床に垂れている血の跡も、途中で途切れていた。
――あいつ、生きているのか。
言葉が理解できなかったため、あの神父がどういった人間かは不明だが、生きている以上必ず報復しに来るだろう。俺はそれが怖い、復讐するやつは何をやらかすか全くわからないからな。
ちゃんと止めを刺すべきだったか……。だがあれだけの深手を負ったのだ、逃げたとしてもそう遠くには行ってないだろう。
その
現れた。穴の空いた壁の奥から。
応急処置はしてあるものの傷は深かったようで、その足取りはどこか覚束ない。
顔色も血が足りないのか真っ青になっていた。よくあんな状態で逃げれたなあ。だがここで出てくる意味がわからん。
現れた神父を見て、堕天使は叫ぶ。
「助けなさい! 私を助ければ褒美でも何でもあげるわ!」
いや無理だろ。あいつ自身既に虫の息なのだ、そんな状態で俺達を出し抜いて堕天使を助け出すことは不可能だろう。ていうかあいつ日本語わかるの?
でもなんかわかってるっぽい。ニンマリと嫌な笑みを浮かべながら、堕天使に返答してるし。
「くっ……ふ、ふざけないで、私を助けるのよ!」
本当にあいつは何を言ってるんだろう。堕天使の怒り具合からして、碌でもないことしか言ってないんだろけど。
それにしてもマジでタフだな。体をクネクネさせながら喋っているその姿は、血で真っ赤に染まった神父服に目を瞑れば怪我を負っていることを感じさせない。
ひとしきり喋ったあと、今度は満面の笑みを兵藤くんに向けて話しかけていた。
ビビッてる兵藤くんを見るに、よっぽど怖いこと言われたんだろうな、可哀想に。
次いで、俺の方を見やる少年神父。その表情は兵藤くんに向けていた笑みとは違い、憤怒のものへと変わっていた。
血走った眼で睨みつけ、指を差しながら俺に向かってギャンギャンと喚く。
だから、何言ってるのかさっぱり分からないんだってば。
「なあ、あいつなんて言ってんだ?」
「えーっと……『必ず殺してやるからな!』みたいなことを言ってるよ」
隣の木場くんが教えてくれる。やっぱ復讐する気満々じゃないですかー!
というわけで弓――クロス・ボウを生成する。狙いは当然神父の頭。
だが俺が狙いをつけるよりも早く、あいつは懐から取り出した丸い物体を床に叩きつけ――
「ぬおおおおお! 目がッ! 目がぁぁぁぁぁ!!」
痛い痛い痛い! 目の奥が熱いしなんかチリチリする!
あの糞ったれやりよったな!? スタングレネードとは味な真似を!
弓なんか使うんじゃなかった、ばっちり光源の方見ちゃったよ!
目を両手で押さえ、ゴロゴロと聖堂内を転げまわる俺の姿はさぞかしマヌケなことだろう。
――あの神父充分一矢報いてるよ! 大ダメージ与えられてるよ!
「九々!? 大丈夫!?」
大丈夫じゃねえよ見りゃわかんだろ!
しかし、痛いがこれしきのこと、セラフィックゲートでは日常茶飯事だったのだ。
「キュア・プラムス!!!」
淡い光が俺を包み、その身を――というか目を癒す。
あー死ぬかと思った。今ので死にかけたら、『ガッツ』は発動してくれるのだろうか。
――あっ、そういえばスキル一個も装備してなかった……。
帰ったら色々と装備しておこう。
漸く痛みの引いた目を開ける。堕天使はガクガクと震えているが、一体なにがあったんだ?
いや、もう、どうでもいいや。精神的に疲れた……。結局、あの女の子を救うことはできなかった。自信たっぷりに手伝うと言っておきながらこの体たらく。本当に――――情けない。
そうして、俺が自己嫌悪に陥ってるうちに全部終わったらしい。
哀れな堕天使の消滅をもって。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
聖堂の宙に緑色の淡い光が浮かんでいる。これが女の子――アーシアの
「さて、これをアーシア・アルジェントさんに返しましょうか」
「で、でも、アーシアはもう……」
俯き、打ちひしがれる兵藤くん。抜き取られた
「イッセー、これ、なんだと思う?」
グレモリー部長がポケットから紅い、チェスの駒を取り出す。『僧侶』の駒だ。
何故突然チェスの駒を取り出したのかは分からないが、きっと意味があってのことなのだろう。
戸惑う兵藤くんにグレモリー部長は説明する。
爵位持ちの悪魔が手にできる駒の数は『兵士』が八つ、『騎士』、『戦車』、『僧侶』がそれぞれ二つずつ、『女王』が一つの計十五体。
『僧侶』の駒を持ったまま、彼女はアーシアさんのもとへ足を向け、胸元にその紅い駒を置く。
『僧侶』の力は眷属の悪魔をフォローすること。アーシアさんは優れた回復能力を持っているらしく、グレモリー部長はその能力に目をつけたということだろう。
シスターを、悪魔として転生させる。前代未聞の事だそうだ。
……え、転生? ちょっと待って。悪魔ってそんなことできんの?
「我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、アーシア・アルジェントよ。いま再び我の下僕となるため、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ。汝、我が『僧侶』として、新たな生に歓喜せよ!」
まさかと思うけど、これで生き返ったり――
「あれ?」
――生き返った。どういうことなの……? まったく着いていけない、転生ってそういうこと!?
「回復要員は既に九々がいるけど、九々は眷属ではない。だからこそ私はその子を眷属として転生させたわ。イッセー、あなたが彼女を守っておあげなさい。先輩悪魔なのだから」
「……イッセーさん?」
怪訝そうに首を傾げるアーシアさんを、兵藤くんは涙を流しながら抱きしめていた。
「帰ろう、アーシア」
あの後、俺の混乱はピークに達していた。
あまりに知らないことだらけで、その場の流れに着いていけなかったからだ。
アーシア・アルジェントが堕天使に目をつけられていた理由。
彼女の
死んだ人間すらも蘇らせ、下僕にできる悪魔の力。
おまけに悪魔にはほんやくコンニャクが標準装備されている、などなど。
それらを聞いて、漸く今回の騒動の内容が理解できた。
彼女――アルジェントさんと兵藤くんを除く、オカルト研究部四人が懇切丁寧に教えてくれた。
――もっと早く教えてくれよ……。
教えてもらっといてこの言い草はないだろうが、それでも俺はそう漏らさずにはいられなかった。
ていうか、悪魔にほんやくコンニャクが装備されてるってズルくね?
――だからアホっぽい兵藤くんも外国語を理解できていたのか!
ちなみに、悪魔に限らず、他の種族も同じようにほんやくコンニャクを装備しているらしい。
さて、この話はここまでにしておこう。翌日の――まあ今日のことだ。
俺は朝っぱらから職員室に呼び出されていた。
呼び出された理由は、昨日学校をサボったことにあるらしい。
――なんでや! サボったんはお昼からだったやろ!?
……はい、完璧に俺が悪いですね。先生、本当に申し訳ない。
こうしてちゃんと叱ってくれるあたり、この先生はとても良い先生なのだろう。
次は無いと言われ、次いでもういいぞと言い渡される。
学費もグレモリー部長に出してもらってるわけだしな。それなのにこうサボっていては
職員室から退室し、そこで俺は昨日見知った女の子を見かける。
「おっ、アルジェントさんじゃん」
「九々崎さん!」
見れば彼女は職員室のもう片方の扉から出てきたところだった。
駒王学園の制服に身を包んでいるってことは、そういうことなんだろうな。
「制服、似合ってるね」
当たり障りのないことしか言えないが、似合っているのは本当のことなのだ。
おそらく今の彼女を見れば、学園の男連中は同じことを言うだろう。
「ありがとうございます!」
元気良く返事をしてくれるアルジェントさん。
――笑顔が眩しいです!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺達は旧校舎にあるオカルト研究部部室へと足を運んでいた。
明日の朝集まりがあると昨日言われ、こうして向かっている途中だった。
集まりというのはおそらくアルジェントさんのことだろう。
職員室前で制服姿の彼女を見るまで、学園に転入してくるなんてこと知らなかったのだ。
きっとそのお披露目に違いない。
「――そっか。アルジェントさんはこういった学校生活は初めてなのか」
「はい。ですからこれからのことを想像するだけで――」
部室に向かう途中、こうしてアルジェントさんと会話をしているわけだが――
――楽しい! 美少女と会話するのがこんなにも楽しいだなんて!
童貞丸出しの感想である。我ながらなんとも言えない虚しさがあったが、そんな虚しさも彼女と会話するだけで霧散していくというものだ!
いや、オカルト研究部の美少女三人組との会話ももちろん楽しいよ?
でもなんていうかこう――言い方が悪いがあの三人と比べ、この子はとても純真無垢なのだ。
話していて癒される。とでも言うべきか。
――ああ、着いてしまったか……。
だがそんな楽しい会話も、部室に着いてしまえば途端に終わってしまうものである。
表に出さない程度に部室の扉を開ける。その先には――
「あっ、チューしてる」
グレモリー部長が兵藤くんの額にチッスしている光景があった。ファック!!
「イ、イッセーさん……?」
隣を見れば、目の前の光景に笑顔を引きつらせるアルジェントさん。
――この反応から察するに……こりゃ兵藤くんに惚れてるな。
この予測に、俺の脳内の小人さん全員が頷いた。
聞けば兵藤くんとアルジェントさんは出会ってまだ間もないという。
にも関わらず友達を見捨てられないという理由で、単身堕天使の拠点に殴りこもうとしたのだ。
会って間もない人間を、命がけで救い出そうとする彼の考えはとても理解できないが、それでも俺はその行動に敬意を表したい。
アルジェントさんからすれば、兵藤くんは自分のために命を賭した救いのヒーローなのだ。
そりゃあ惚れる。
おっ、俺が呆けている間に全員揃ったみたいだ。
それにしてもいつの間に……。このどこでも呆ける癖はなんとかしたいものだ。
「さて、全員が揃ったところでささやかなパーティーを始めましょうか」
そう言ってグレモリー部長が指を鳴らすと、テーブルの上に大きなケーキが出てきた。
なんでもこのケーキ、グレモリー部長の手作りらしい。
新しい部員もできたことだしと、照れながらそう口にしていた。
なるほど。歓迎会ですね、わかります。
ちょっと豪華なものにしようと、飲み物代わりにみんなにノーブル・エリクサーを配ったのは内緒の話。