「此処は何処だ?」
俺は何とも不思議な場所に立っていた……いや、何とも不思議な場所という表現はこの空間を表現するにはあまりにも陳腐過ぎる……が、俺はこの表現でしかこの空間を言い表せない。
だがあえて、この空間を他の言葉で表現するのなら……ありとあらゆる不幸と言うものを混ぜ込みぶちまけたかのような空間だ。
何故俺はこんな所にいるんだ?いや、そもそも……。
「どうして自分は生きているのか?……ですか?」
「誰だ?!」
背後から聞こえてきた声に驚き振り向くと……そこには
その何かは人の形をしているが、人ではない……雰囲気が違う。人が醸し出しては良い雰囲気ではない、この何かが醸し出している雰囲気は――。
「安心して下さい。私は彼方の思うような存在じゃありませんよ」
俺の考えを読み取れるのか、何かは人を安心させるような声色で考えを否定する……。そうか、この何かは
「まあ、邪神寄りの神と言ったところですかね?」
この何かの言葉を聞いた瞬間、ずっこけたのは言うまでもない……。
「どうして、ずっこけたのですか?」
「気にしないでくれ……。それで?その邪神寄りの神様はどうして俺の様な取るに足らないような存在の前にいるんだ?」
「それは彼方を転生させる為ですよ」
目の前の何かはさも当然のように言う……。転生と言うことはやはり俺は死んでいたか。
「ええ、彼方はとても不幸な人生でした……ごく普通に生き、ごく普通に結婚し、ごく普通に子供を作った……けれど、彼方は様々な思いが交錯する戦いに巻き込まれ、そして戦いから戻って来たと思ったら……あぁ、とても不幸。だから貴方を転生させるんですよ」
……コイツは何を言ってるんだ?
「……わけがわからないよ。って言った感じの表情ですね?……私は
「
「ええ、私はですね。不幸になった者を転生させ幸福に幸福だった者をさせ不幸にと言う
何かの雰囲気が暗くなるのを感じる。狂気に満ちて行くのを感じる。……コイツ、やっぱり
「おっと、話が逸れてしまいましたね。まあ、私が何を言いたいのかと言うと……彼方は転生して幸せになるべきと言うことですよ」
もう、なんなのコイツさっきからコロコロ雰囲気が変わり過ぎて疲れるんだけど……。
「ハァ、もういいなら早くその転生とやらをしてくれ」
俺は直ぐにこの場から立ち去りたいと言う雰囲気を出しながら何かに言うと、何かは嬉々として作業を始める。
「次の世界は此処にして、容姿と能力は……そのままにしておきましょう。何か弄ったら私、殺されそうですし。おすし」
……何気に失礼じゃないか、この何かは?
そして作業を終えたのか、何かは俺の正面に存在していた……。
「では、次の生を楽しんで来て下さいね。えーと……」
「
「そうそう、林檎さんでしたね!私は……不幸の女神とでも呼んでください」
「不幸の女神って……ハァァァァ……じゃあ、アンタの言う通り次の生を楽しむよ、不幸の女神様」
そう言って、俺は女神様が指差す穴の様な所へと向かう……。ああ、これだけは言っておこう。
「女神様、俺は別にあんたが思う程、不幸では無かったぜ」
「どういうことですか?」
「アンタが言った通り、戦いに巻き込まれた時には不幸だと呪ったさ……けど、その戦場で俺はかけがえのない
「ならどうして、自殺なんてしたんですか?不幸だったから自ら命を絶ったのではないんですか?」
女神様は心底不思議そうな表情で首を傾げながら言ってくる……ああ、そう言えば俺の死因って自殺だったか。
てか、自殺した理由なんて女神様なら分かっていそうだが……まあ、一応言っておくか。
「自分で自分を殺すなんて……どんな世界でも最も忌むべき行為で、禁忌だろ?」
「……歪んでいますね」
「女神様には言われたくないな。それに俺よりもっと歪んでいる奴……てか、バカか……バカを知っている身としては正常だと思うけどな。まあ、とりあえず、さよならだな」
俺は穴に向かって進みながら、女神様に別れの挨拶をする。
「ええ、さようなら。彼方に祝福がありますように」
そんな言葉を聞きながら、俺は穴の中に落ちて行った……。
~~~~~~
~~~~~~
――人が次第に朽ちゆくように、国もいずれは滅びゆく……千年栄えた帝都すらも、今や腐敗し生き地獄。人の形の魑魅魍魎が、我が物顔で跋扈する……天が裁けぬその悪を、闇の中で始末する……我等全員、殺し屋稼業――。
「な、何者だよ、お前?!俺はお前のことなんて知らないぞ!」
「知らなくても結構。ハァ、白髪で
「……ハァ?」
なんとも間抜けな声が
男は前触れもなく体が二つに裂け、血が噴き出し臓物をぶちまけ、絶命した。
――この世界に来てから早数十年、最初はこの世界の腐敗度に狂喜乱舞したが今は覚めちまったな。
人々が弱すぎる。誰も『禁忌』に触れようとしない。触れさせたとしてもすぐに潰れる。あぁ、なんと嘆かわしいことか。
せっかく『邯鄲』に色々な奴らをぶち込んだのに……。
「ハァ、とりあえず他の奴らの様子でも見てみるか」
男の死体を一瞥してから、
~~~~~~
~~~~~~
「お前達はなんの役にも立てない地方の田舎者でしょ?!家畜と同じ!!それをどう扱おうがアタシの勝手じゃない!!」
――あぁ、やっぱりこうなった……。
夢で
視界に映る光景も同じ。目の前の少女――正確には少女とその家族たちか――に嬲り殺された様々な人々の死体が放置されている。
――いや、少しだけ違うか。
「タツミ」
「大丈夫だ。サヨ、イエヤス」
目の前の光景を見て、顔を青褪めさせる幼馴染の二人を安心させる為に、タツミはなるべく穏やかな表情で言う。
タツミの体験した夢で死んでいたサヨとイエヤスは生きていて、二人の代わりに別の人間が死んでいる。
「善人の皮を被ったサド家族か……。ジャマして悪かったなアカメ……」
「葬る……」
「待て」
タツミは夢では仲間だった革命軍の裏部隊ナイトレイドのメンバーであるアカメとレオーネの二人を止め、少女にゆっくりと近寄っていく。
「まさか……またかばう気か?」
「いや……」
レオーネの言葉を否定し、タツミは背中の剣に手を掛け……。
「俺が斬る」
「あ」
まさに神速と表現されてもおかしくない速度によって振るわれた剣。スピードが速かった為か血が一滴もこぼれず上半身と下半身は解れ、剣のスピードが速かった為か血が一滴もこぼれず、少女の死体は地面に堕ちる。
「ごめんな。環境が良ければ、キミは本当に優しい女の子だったかもしれないのにな……」
呟きながら殺した少女の目蓋を下ろし、タツミは死体がある倉庫に向かう。
幼馴染の代わりに死んだ二人の人間を弔う為に……。
~~~~~~
~~~~~~
「オイオイ、なんてことだ……」
林檎は木々の陰で今回の標的であった少女を殺したタツミを見て驚いていた。
タツミが振るった神速の剣。それに林檎も使用しているモノが使われていたからだ。
「あの少年、『夢』を使ったな……。この世界で!」
驚愕から歓喜に変わり、目が大きく開き興奮で頬が紅潮し、息が荒くなる。
「クハハハ、この世界もまだまだ捨てたものじゃないな!あの少年、レオーネの奴が連れてったってことは、ナイトレイドに入るはずだ。久々に顔を出すのも悪くないか……。待ってろよ、
歓喜の表情を浮かべながら、林檎は闇の中へと消えていった。
はい、タツミ君は林檎君にロックオンされました。
はてさてどうなることやら