仮面ライダードライブ type IF 〜心持つ人形達はどこへ向かうのか〜   作:ダイタイ丸(改)

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今回は本編の中でもプロローグにあたるお話です。

それでは第0話、どうぞ!


第0話 77番目の人形は何故裏切ったのか

『15年前』

 

 

目覚めると、そこは暗い地下室のような場所だった。

 

周囲は何も見えず、どこなのかわからない。

 

そしてふと、思う。

 

自分は何者なのかと。

 

何もわからない、何も知らない。

 

それを認識した時、自分の中の何かが呼応した気がした。

 

その何かは徐々に鮮明になっていった。

 

そして認識する。

 

初めて自分に芽生えたもの、『知りたい』という思いに。

 

何故、自分は生まれたのか。

 

何をするべきなのか。

 

その答えが、知りたい。

 

 

すると周囲が急に明るくなる。

 

ついで、誰かの足音が聞こえて来る。

 

その何者かが自分の眼の前で止まる。

 

そして言う。

 

「初めましてだなNo.077。俺はNo.002、君の友達さ」

 

 

その瞬間、ロイミュードNo.077はようやく自分を表す名を手に入れ、誕生した。

 

 

ーーーーー

 

 

その、わずか1時間後・・・

 

 

郊外に建つ自らの屋敷の中で、天才科学者クリム・スタインベルトは正面に座る人物と対話していた。

 

既に壮年のクリムとは逆に、青年というべき年齢には至って入るものの、あどけなさの抜けない少年のような雰囲気も醸している。

 

彼の名は七瀬三春。

 

クリムにその才能を見出され、助手として研究をサポートしている若き秀才だ。

 

師弟のような関係の二人。

 

だが、今彼らは決して談笑するわけでもなければ研究の話をしているわけでもない。

 

彼らは、将来起こりうるであろう深刻な事態について話し合っているのだ。

 

 

「蛮野が作り出した増殖強化型アンドロイド、通称『ロイミュード』その感情部分のプログラムは未だ不完全だ」

「えっと、蛮野天十郎は試作体として作られたNo.002に人間をコピーさせ、苦痛を与える実験と称し拷問のような行為を行っていた。それを見た博士は残りの作業だったコアドライビアと感情機関とのリンクの調整を放棄し、研究から手を引いたんですよね?」

 

「ああ、私がいなければ蛮野はロイミュードを完成させることができない。ただ一つの手段を除いてはね」

「・・・その手段って一体何なんです?」

 

「感情機関に大量の人間の感情データを読み込ませ、無理やりコアとリンクさせる方法だ・・・ただこの手段だと、大量の人間の感情が必要になる。そしてそれを無作為に選択してしまえば、人間の持つ『悪意』と共鳴してしまう可能性がある」

 

「でも、人間らしいアンドロイドには多少の悪意も必要ではないですか?」

「ああ、それも一つの正論だ。だが拷問にも等しい理不尽な暴力を受け続けたロボットが、急に人間と同じ感情を手に入れてしまったら・・・少なくとも普通なら復讐するだろうね。なにせ相手より強い力を持っているのだから」

 

「・・・もし、蛮野天十郎がその手段を取ってしまっているとしたら?」

「もし、ではない。彼ならきっとそうするだろう。だからこそ、君に協力してもらってサイバロイドZZZを完成させたんだ」

 

サイバロイドZZZ・・・それはクリムがある最悪の可能性を想定し、対策として開発していたものの一つだ。

 

「博士・・・本当に、死ぬつもりなんですか?」

「最悪の場合はね。まぁ正確には意識データをサイバロイドに移すから”死”とは少し異なるのかもしれないがね」

 

最悪の場合とはロイミュードが反旗を翻した場合だ。

その場合、彼らはまず滅びを避けるために自分たちの弱点を知る者・・・すなわち開発者を殺すはずだ。

クリムはそれを逆手に取り、自身の死の間際に精神データを強化型ロイミュードとも呼べるサイバロイドZZZに移し戦う力を手に入れるつもりなのだ。

 

「それで、ドライブシステムの方はどうかね?」

「とりあえずドライブドライバーは完成させました。シフトカーも変身用の物以外はほぼロールアウト済みです」

「そうか・・・さて、どうなるか・・・」

とクリムが呟いたその時。

 

何かの爆発音、そして振動が屋敷を襲った。

 

「っ!これって!」

「・・・残念ながら、事態は最悪の方向に傾いてしまったようだ・・・」

そう言って、テーブルの上に置いてあったインカムを右耳に装着する。

インカムに見えるこの装置は実は精神データの転送機であり、これを介してクリムはサイバロイドに意識を移すつもりなのだ。

 

「君は地下に行って必要機材を運び出してくれ。既にプロトトライドロンに乗せてある。私が所有するガレージで会おう」

「・・・はい」

拳を握り、懸命に自身の感情を押し殺す三春。

 

そんな彼にクリムは最後にこう言った。

 

「まだ、人間でいるうちに伝えておくよ・・・君は最高の助手で、弟子だった。Good luck!幸運を祈るよ!三春」

そう言って笑うクリム。

そんな彼にこちらも瞳に涙を浮かべながら別れの言葉を紡ぐ。

「・・・今まで、本当にありがとうございました!・・・また、お会いしましょう」

「OK!さぁ!行くんだ!」

 

本棚の隠し扉から地下へと向かう三春。

そんな弟子の背中を見えなくなるまでクリムは見送っていた。

 

 

そして、部屋全体に炎が伝ってくる。

そろそろだろうと考えたクリムは脳内で指令を発しインカムを起動。

サイバロイドへの精神データの転送を始める。

 

しかし、途中で問題が起きた。

 

サイバロイドのプログラムになんらかのバグが発生し、欲望や驕り、怒りや憎しみといった人間の負の感情を増幅させるようになっていたのだ。

 

(まずい!このままでは自我を侵食されかねない!)

仕方なく転送を中止、急いで自分も避難しようとする。

 

しかしその瞬間、目の前のガラス張りの扉が爆破され侵入者がその姿を現わす。

 

まさしくそれは、クリムと蛮野が創り出した悪魔、ロイミュードであった。

 

すると蜘蛛をディフォルメしたかのような顔のロイミュード002が人間の姿へと変身する。

 

赤いコートに端正な顔立ち、服装は違うが蛮野がコピーさせた青年実業家と瓜二つの顔だ。

 

002は吹き飛ばされたクリムの前まで来ると彼を見下ろし、愉悦の笑みを浮かべる。

 

爆風の衝撃で意識が混濁する中でクリムは一つのことに集中していた。

 

(転送プログラムの転送先を・・・ドライブドライバーに設定。転送開始・・・)

 

消えゆく意識の中、クリムは自分に言い聞かせるように強く言う。

 

「・・・まだ、死ねない・・・こいつらを、野放しにはしておけない・・・」

 

生死の狭間に立たされた為、左側から伸びる機械の触手には最期まで気がつかなかった。

 

そして、ドライバーへの意識転送が終了する間際、ハートがその拳に力を込める。

 

「クリム・スタインベルト・・・お前を超え、俺たちはまた一つ強くなれる・・・」

 

そして拳を深く、深くつき立てる。

 

「ぐはっ・・・!」

「さらばだ・・・創造者・・・!」

 

消えゆく意識の中、クリムの心には体温が奪われていく死の感覚がしっかりと刻み込まれた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

一方、クリム邸の地下室では三春がプロトトライドロンに乗り込もうとしている最中だった。

 

 

断続的に響く振動は恐らく上での爆発によるものだろう。

 

「・・・博士。どうか無事で」

祈るように呟き、プロトトライドロンのアクセルを踏み込もうとする。

 

すると後ろに積んだ機材の中から誰かのうめき声のようなものが聞こえた。

 

正体を確かめるべく、荷物の中を探っていく。

 

 

すると声の出所が銀色のアタッシュケースだとわかる。

 

 

「これは・・・まさか!」

急いでケースを開けると中には車のスピードメーターのようなデザインのベルト『ドライブドライバー』が入っていた。

 

そしてそのディスプレイには今、人の顔のような模様が浮かんでいる。

 

 

「もしかして博士!?どうしてドライブドライバーに?」

問うとドライブドライバーが苦しげに声を発する。

 

「・・・すまない三春。どうやらサイバロイドZZZには欠陥があったようだ」

「そんな!じゃあどうするというんですか!?」

「とにかく今はここを出るべきだ。ここで死んでは元も子もない」

 

 

そう話している間にも爆発が地下室でも起きはじめ、あっという間に辺りは火の海と化す。

 

 

「とにかく行こう。行くんだ!」

 

 

すると、三春はダッシュボードに設けられた特製のスタンドにベルトを固定する。

 

 

「な、何をしているんだ!?早く発進したまえ!」

 

 

その言葉に、三春は車から降り答える。

 

 

「博士はこのまま例のガレージまで逃げてください。サイバロイドは僕が回収します」

「なぜ別行動をとる必要がある?君もまずはガレージに行くべきだ!」

「いいえ、事態は一刻を争います。ロイミュード達がサイバロイドを見つける前に回収しなければなりません。それに、僕が動くことで囮にもなれる。博士の安全は確保できます」

 

そう言って、ポケットから拳銃を取り出して弾を込める。

 

「だ、だが君の命が・・・」

「大丈夫です。僕はそう簡単には死にません。必ず、また会いましょう」

そして車のドアを閉め、自動操縦システムを起動する。

 

「三春!」

「ありがとうございました・・・さようなら、先生」

 

 

エンジン音を轟かせ、プロトトライドロンは地下室を飛び出していった。

 

 

 

それを見届け、三春は上に向かおうとした。

 

だがその時、天井が崩れ大量の瓦礫が上から降ってくる。

 

 

抵抗もできず、三春は瓦礫に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると、誰かが自分をのぞき込んでいた。

 

人間ではない。

 

コウモリをディフォルメしたかのような頭部、胸の077の刻印。

 

 

ロイミュード・・・クリムと蛮野が生み出した機械の悪魔。

 

そんな怪物が、三春に問いかける。

 

 

「あなたは・・・何で一緒に逃げなかったの?」

「・・・見てたのかい・・・?」

「うん。だって、知りたいから」

「・・・何を?」

「自分が何者なのか。なぜ生まれたのか。それが知りたい」

 

 

そう言って、彼が三春に覆いかぶさっていた瓦礫をどける。

 

 

「・・・なぜ、僕を助けるの?」

「あなたなら知ってそうだったから」

 

 

その言葉には悪意も何もない、ただ純粋な思いがある気がした。

 

 

だから、信じてみようと思った。

 

 

 

「・・・なら、僕をコピーしなよ」

「どうして?君をコピーすればどうなるの?」

「・・・きっと見つかるよ・・・君の欲しがってる答えが・・・」

 

 

そして、彼に手を伸ばす。

 

 

彼はその手を取り、姿を変える。

 

 

自分と同じ顔、同じ服。

 

そして同じ声で自分に話しかける。

 

 

「答え・・・わからないよ?」

「それは・・・これからの君次第だよ・・・自分の心に・・・従って・・・」

 

 

全身から力が抜けていく。

 

意識が、遠ざかっていく。

 

クリムの事が、頭をかすめる。

 

自分がいなくなったら彼は一人で戦うしかない。

 

 

心配だ。

 

申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

 

だが、決して絶望はしていない。

 

 

この純粋な人形は、きっと悪魔になんてならない。

 

本来クリムが願った、人と寄り添うものになってくれる。

 

 

そう祈りながら三春は目を閉じた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

『半年前 グローバルフリーズ発生の一週間前』

 

 

 

 

人の街は騒がしい。

 

 

あちこちで笑い、泣き、怒る。

 

そして誰もが、どこかを目指して歩いている。

 

 

 

 

そんな街の片隅にある路地で、彼は一輪の花を見ていた。

 

整った顔だちをしたあどけない雰囲気の青年だ。

 

コンクリートの隙間から顔を出したタンポポを、しゃがみこみ手でやさしく触れながら眺めている。

 

 

すると路地の奥から一つ、人影が現れる。

 

 

フライトジャケットを羽織り、首からは飛行機を模したペンダントを下げている。

 

 

花を眺める彼に苦笑し、青年は声をかける。

 

 

「よっ、自然観察か?随分多趣味だな。セブンス」

「からかわないでよ。ジェット」

冗談めかして言う青年、ジェットに困ったような顔をしてセブンスは返す。

 

 

「だってよ、その花の情報ならいくらでも入手できるだろ。キク科タンポポ属の多年草だってことは知ってるだろ?」

「そうじゃなくて・・・そうだな。人間の言う『美しい』って感情が知りたかったのかも」

「美しい?知ってどうするんだそんなもん」

「さぁ?・・・でも僕は知りたがり屋だから」

 

そう言って、立ち上がりジェットと向き合う。

 

 

 

ジェットもセブンスと同じロイミュードだ。

 

 

彼のナンバーは055で体の各部から空気を勢いよく噴射する能力に目覚めつつある。

それにちなんでジェットという名をセブンスが付けたのだ。

ちなみにセブンスという名前は逆に彼が付けてくれたものだ。

由来はNo.077、すなわち7(セブン)が二つでセブンスである。

 

 

 

ーーーーー

 

 

セブンスが彼と出会ったのは14年前、初めて会った人間をコピーした一か月後だった。

 

 

あの青年をコピーし、ますます自分の中の好奇心は倍増していた。

 

そしてその日、セブンスは住宅街の公園を一人歩いていた。

 

周りでは子供たちが駆け回り、楽しそうにはしゃいでいる。

 

 

人の姿に変わるようになって、一つ分かったことがある。

 

誰かの笑顔を見ていると胸が軽くなるのだ。

 

物理的な意味ではなく、比喩であるがそうとしか言いようがない。

 

 

「人間はこういう感情を『落ち着く』っていうのかな・・・」

呟きながら歩いていると足に何かがぶつかってくる。

 

飛来したそれを拾って見てみる。

 

発泡スチロールでできた飛行機のおもちゃだ。

向こうから投げたと思しき子供たちが駆けてくる。

 

「・・・あの、これ僕もやってみていい?」

「え?お兄ちゃんやったことないの?」

少し興味がわき、子供に頼むと不思議そうにしながらもいいよ!と言ってくれる。

 

そして子供たちにやり方を教わり、投げてみる。

 

飛行機は水平に飛んでいき、そのまま道路に飛び出してしまいそうになる。

 

 

すると横から現れた青年が間一髪、飛行機を受け止めこちらにやってくる。

 

「おいおい、気を付けないと折角の飛行機が壊れちまうぜ?」

青年は子供たちに飛行機を渡し、セブンスの方にやってくる。

 

そして耳元で小さくつぶやく

 

「お前、ロイミュードだろ。ついて来い」

 

 

 

 

数分後、二人は街を一望できる丘にいた。

 

 

「お前、なんで飛行機なんかで遊んでたんだ?面白いか?」

「ううん。何となくやってみたくて・・・」

 

その答えに、なぜか彼が笑い始める。

 

「・・・なんで笑うの?」

「ハハハ・・・だってよ、何となくなんてそんな曖昧なこという奴お前くらいだぜ?」

「そう言われても・・・」

 

ひとしきり笑った後、彼が手を差し出してくる。

 

「お前、気に入ったよ。俺は面白いことが好きなもんでね」

「は、はぁ・・・」

「俺はNo.055。よろしくな」

「う、うん。僕は077だよ。よろしくね」

 

 

こうして二人は出会った。

 

 

ーーーーー

 

 

昔のことを思い出し、目を細めているとジェットが面白そうに言ってくる

 

「まったく、普通のロイミュードはそんな顔しないぜ?」

「人間に近づいてきてるのかもね。だからもっと知りたいんだ。人間の事も、僕らの事も」

「お前、本当に変わってるよな。ハートとは意見が合わないんじゃねぇか?」

「・・・そうだね。正直ハートがやろうとしてることには反対かな」

「人間に、味方すると?」

 

 

ハートが企てるグローバルフリーズ・・・全世界で重加速を起こすその計画。

それにセブンスはどうしても賛同できなかった。

 

 

「なんでだ?人間との共存ができると思ってるのか?」

「わからないよ。でも、だからこそ可能性を潰しちゃいけない。そう思うんだ」

 

 

そう言ったその時

 

 

ロイミュードの人間を上回る聴覚が異変をとらえた。

 

 

「・・・何かが崩れた?」

「ああ、工事現場か何か・・・っておい!セブンス!?」

 

 

ジェットが声をかける間もなく、セブンスは目にもとまらぬ速度で路地から飛び出していった。

 

 

 

 

人通りの多い交差点をセブンスは駆け抜けていた。

 

 

明らかに人を越えた速度で次々と街行く人をかわし、音の聞こえた方へと走る。

すれ違う人の中には通り抜けた後の強風にあおられ、転倒している人もいる。

 

 

これがセブンスの目覚めつつある固有能力、超高速移動だ。

 

 

その速度は現在存在するあらゆるロイミュードの中でも最速を誇っている。

 

 

 

人にぶつかりそうになりながらも、決してぶつかることなく音の出所まで駆けつける。

 

 

 

そこは工事現場だった。

 

 

だが建設途中の足場が崩れ、数人が下敷きになっているようだ。

 

 

 

そしてその光景を見た瞬間、自分の中の何かが響く。

 

 

「助けなきゃ・・・」

 

倒れた足場をロイミュードの膂力でもって持ち上げ、下敷きになっていた人に手を伸ばす。

 

伸ばした手を人が握る感覚。

 

一人目を引っ張り出した彼はさらに次の人の下へと向かった。

 

 

 

 

数分後、全員を救出したセブンスは注目を恐れるように立ち去ろうとした。

 

 

すると先ほど助けた人がよろめきながらもやってきて「ありがとう!」と感謝の言葉をかけてくる。

 

 

次々と発せられる感謝の言葉。

 

それを聞いたとき、何故か胸が温かくなるのを感じた。

 

それはきっと『喜び』と呼ばれる感情なのだろう。

 

だが、その感情を理解できるほど、彼はまだ人に近づいていなかった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

その日の夜、セブンスはビルの屋上から街の光を見下ろしていた。

 

街は人工の光で輝き、まるで宝石のようだ。

 

それを眺め、ふと自分の手のひらに視線を落とす。

 

工事現場で、助けようと伸ばした手を。

 

 

そんなセブンスにジェットが声をかけてくる。

 

「頼むから昼間みたいに目立つことはするなよ。居づらくなるだけだからな」

それには答えず、セブンスはジェットに自分が思ったことを伝える。

 

 

「今日ね。助けた人にありがとうって言われたんだ・・・それを聞いたとき、胸が温かくなって・・・何ていうか・・・心地よかった」

「・・・それで?」

 

ジェットの問いに数秒目を閉じ、そして答える。

 

 

「あんな感覚があるなんて知らなかった・・・まだまだ人間と僕らの間には可能性がある。それを、消しちゃいけない」

 

そしてジェットの目を見て、決意を伝える。

 

 

「僕は・・・グローバルフリーズを阻止する。ハートと・・・仲間と敵対することになっても」

 

 

その言葉にジェットは肩をすくめ、答える。

 

「仕方ないな・・・俺も付き合ってやるよ。相棒」

 

 

そして二人は屋上から姿を消した・・・

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

それから一週間、僕たちはハートを説得しようとあらゆる手を尽くした。

 

 

けれどハートの人間への怒りは強く、聞き入れられなかった。

 

 

僕たちは仕方なく、全ロイミュードを敵に回して戦うことを決意した。

 

 

そして・・・

 

 

ーーーーー

 

 

 

『半年前 グローバルフリーズ発生』

 

 

 

打ち付ける豪雨の中、僕とジェットは別々に分かれ戦っていた。

 

 

襲い掛かる自分と同じ姿をした敵・・・NO.088を拳でもって気絶させ、次の敵に目を向ける。

 

周囲ではまだ五体ものロイミュードがこちらの様子をうかがっている。

 

次の相手を攻撃しようとしたその時

 

 

 

大きなエンジン音がその場を凍り付かせた。

 

 

 

誰もがその方向を向き動けない中、セブンスだけは身の危険を感じて人間態に戻り、建物の陰に身を隠していた。

 

 

そして陰から”ソレ”を目撃した。

 

 

 

”ソレ”は自分たちと同じく、人ならざる異形に見えた。

 

だが、ロイミュードとは明らかに違う者だった。

 

 

黒の流線型のボディ。

 

機械的なディテールの胸部。

 

そして闇夜を照らすヘッドライトのように輝く複眼を持つ仮面。

 

 

その存在にその場にいた一体のロイミュードが問う。

 

「何者だ!?貴様!」

 

 

その問いにソレは返す。

 

 

「答える必要はない・・・今から倒される者共に・・・!」

 

 

そこからはあっという間だった。

 

 

先頭の032を拳で牽制し、後ろに控えていた二体を回し蹴りで吹き飛ばす。

 

間髪入れず左右から襲い掛かる102と092の攻撃をかわし、エネルギーのこもった一撃で同時に粉砕。

 

 

ものの数分で五体ものロイミュードを圧倒し、倒してしまった。

 

 

 

物陰からそれを見ていたセブンスは動揺を抑えきれなかった。

 

恐らく彼もグローバルフリーズを阻止しようと戦っているのだろう。

 

手を組むべき相手であるという事も分かっている。

 

 

だがそういった理屈をかき消すほど、自分と同じ種族のものをいとも簡単に粉砕した彼にセブンスは強烈なある意識を抱いていた。

 

 

それは生物がもつ原始的な感情『恐怖』だった。

 

 

だがセブンスはそれを認識できず、急いでその場から立ち去る。

 

自分が、次の標的にならぬように。

 

 

 

 

 

五体のロイミュードを撃破し終えたプロトドライブはベルトに話しかける。

 

「クリム。次はどこに向かえばいい」

 

それに呼応するようにベルトのディスプレイに顔のような模様が浮き上がり、声を発する。

 

「次はここから2キロ先の地点だ・・・む?」

 

 

途中で言葉を止め、すぐそばの建物の陰をスキャンする。

 

 

「・・・気のせいか」

「どうした?敵か?」

「いや、誰かいたような気がしたがセンサーに反応はない。気のせいだろう」

「そうか・・・では行こう」

 

 

そしてバイクにまたがり、戦いへと向かう。

 

 

颯爽と現れ、名も言わずに去っていく。

 

 

その姿はまさしく騎士・・・ライダーのそれだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

数時間後・・・

 

 

 

郊外の埠頭でセブンスとジェットは3体のロイミュードと戦っていた。

 

 

互いに消耗が激しく、3対2という数の差が如実に表れている。

 

 

拳打を防御しながら後ろに後ずさっていくセブンスに相対する029が問う。

 

「貴様らはどうして同族を滅ぼそうとする!?そこまで人間が大事か!?」

「・・・違う。僕は可能性を信じてるだけだ!君たちこそ何故人間を否定する?」

「人間は忌むべきもの、打ち倒すべきもの!それが全てだ!」

 

そう叫びながら放たれた拳がセブンスのボディに直撃し、衝撃に吹き飛ばされてしまう。

 

 

「くはっ・・・!」

「死ね・・・裏切者め!」

 

ダメージを受け人間態になったセブンスに029が拳を突き立てようと振りかぶる。

 

 

「させるかよぉ!」

先ほどまで戦っていた2体を撃破し、血まみれの人の姿になりながらもジェットがその拳の軌道を寸前で変える。

 

 

「貴様・・・邪魔をするなぁ!」

「ごふっ!?」

 

激昂した029の拳がジェットに深く突き刺さり、吹き飛ばす。

 

 

吹き飛ばされたジェットはすぐそばのガスタンクに激突し、動かなくなる。

 

 

「ジェット!」

 

叫ぶとかすかに聞き取れる声量でジェットが声を発する。

 

「・・・悪いな・・・相棒・・・こっから先は・・・お前がやれ・・・やりたいように、な・・・」

 

 

そしてガスが引火し、爆炎に彼が包まれる。

 

 

「ジェットー!!」

 

叫ぶも、返答はなかった。

 

 

 

「・・・そんな・・・僕は・・・僕は・・・」

「よそ見してる場合かよ?」

 

 

跪き、失意に打ちのめされるセブンスを029が引きずり、海の真上で首を締め上げる。

 

 

「・・・くっ・・・かはっ・・・」

「すぐに相棒に会わせてやるよ・・・あの世で仲良くしな!」

 

ますます力を込めて締め上げられ、視界がかすんでいく。

 

 

「・・・僕は・・・何のために・・・」

 

意識が途切れそうになるその瞬間。

 

 

突然飛来した小さな車たちが029を直撃し、首から手が離れる。

 

 

重力に引かれ、落下していく視界で最後にとらえたのは先ほどの仮面の戦士だった。

 

 

(仮面の騎士・・・仮面、ライダー・・・)

 

 

 

 

そして、セブンスは夜の海に沈んでいった・・・

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

数日後の朝

 

 

 

まだ人気のない砂浜を彼女は歩いていた。

 

 

砂浜に足跡を残しながら太陽に照らされる海を目を細めて眺めている。

 

 

しばらく歩いていると浜辺に何か打ち上げられているものがあることが分かる。

 

 

大きな流木の陰に隠れるように白いものが見える。

 

 

人の手だ。

 

 

慌てて駆け寄ると流木によりそうように自分より1、2歳下くらいの青年が倒れている。

 

 

「大丈夫ですか!?しっかり!」

 

声をかけ続けるも青年は返事をしない。

 

 

胸に耳を当てるとわずかに振動するリズムを確認できる。

 

口からもか細いながら空気が漏れているため呼吸はしているようだ。

 

 

ただ、それが動力機関の微振動と排熱によるものだと彼女は気づかなかった。

 

 

「と、とにかくまずは温めてあげなきゃ!」

 

肩を貸すようにし、持ち上げると線の細い見た目に反して重いことが分かる。

 

 

「頑張って・・・絶対助けてあげるから!」

 

 

 

鋼鉄の人形と、孤独な少女。

 

二人が出会った瞬間だった。

 

 

 




はい!というわけでいかかでしたか?

面白かった、つまんなかった、本当にドライブ好きなの?にわかじゃないの?などでもいいので御感想を頂けると嬉しいです!

最初の話で仮面ライダーに変身しない主人公・・・まぁ自分が書いてるもう一作の方なんか一話目にオリ主出てきませんでしたからね(汗)

どんなライダーに変身するかは楽しみにお待ちいただければ!

ちなみにこれを書いている今、九州では地震で多くの被害が出ています。
なじみの作者さんも被害にあわれているようでとても心配です。
でも、自分は自分なりにできることを続けていこうと思います。
こういう一言の応援とかも。


では次回予告も一応しておきますね。


次回


友をなくした人形と孤独な少女が出会うとき、彼の中にに何かが芽生え始める。

そして時は流れ、平穏を生きる彼に再び運命は戦いを強いる。

少女と人形の運命は?


第1話 全てを無くした彼は何故戦うのか



がんばれ九州!次回もお楽しみに!
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