歴史は繰り返されるものだというが、繰り返された歴史はどこかのRPGのように少しは…ほんの少しくらいは過去起きた時よりは良くなっていて欲しいものだと思う。

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携帯をブッコしておきながらなんとかパソコンで執筆してます。五月までには機種変してるでしょうがどうなんでしょう…未来の事は分かりません。さてさて、今回もハーメルンコンテスト出場させて頂きます。ハピナ様、今回も何卒よろしくお願いします!!


それは時の中で揺らめく龍のように…

今日は五月の癖に気持ち悪いくらい暑かった。俺は親父と喧嘩して家を飛び出して人気の少ない方に走っていった。喧嘩の事は些細な事ではあったけど譲れるものでは無かった。だってそれは不公平だったから。

 

「ハァ……ハァ……ケホッケホ。それにしても暑過ぎるわ……クソッ。」

 

俺は一度Uターンして少し前に通り過ぎた小さな公園に戻る事にした。その公園には二人用ベンチが一つと小さな水飲み場、それとセンス無く見える奇抜なジャングルジムがあるだけだったが、そこは喉の乾きと膝に溜まった疲れをとるだけなら十分過ぎる場所だった。

 

俺はその公園に着くとすぐさま水飲み場の蛇口を捻り、貪るように僅かな隙間から放たれる水を飲んだ。数十秒して唇が冷たくなり始めると蛇口を締めて勢いよく木製のベンチに座った。

 

「あーあ嫌だ嫌だ。」

 

俺はぼーっとしながら感じたままの言葉を吐露した。

 

「ったく……何でこんな事になったんだが。」

 

今日は五月の連休の最終日でゆっくり出来たはずだというのに……全く、休日なのに部活も無いから最高の日だと思っていたのに……ありえないったらありゃしない。

 

「んなぁ〜!!思い出しただけでムカつく!大体俺は間違ってないし!悪いのは全部親父とおふくろだし!!」

 

俺は意味も無くイライラとしながら空を見上げた。雲が一つも無い空から顔を見せる太陽の光は容赦無く俺の顔へと直撃する。反射的に目を瞑り、眩しいのを避けるのを面倒な事だったから上へと向けた頭はそのまま後ろへ体重をかけ、体は前を向いたまま顔は後ろを向くという状態になった。

 

そんな俺にあるものが目に入った。それは巨大な石の建物の一部にいた小さな魚だった。

 

「小さっ……」

 

俺のそれを見ての第一印象はそんな物だった。建物が大きいのか、それともその魚が小さいのかは分からなかったがその魚がこの場所では不似合いな物だと感じた。

 

 

俺はその魚をよく見る為に頭を戻して立ち上がり建物の方へと方向転換した。

 

「……久しぶりに見たな。最後に見たのは…………たしか幼稚園の時だったかな。」

 

俺は腕をぐぅぅっと伸ばして血の巡りを良くしながら呟いた。その建物の近くで泳いでいるかの様に揺らめく魚は何だか寂しそうだった。

 

 

「鯉のぼり……ねぇ。こんなに大きなマンションならもっとベランダに出しててもいいと思うけど。」

 

辺りを見渡してみたがその鯉の他に一匹も鯉がいなかったため少しの違和感を持ちながら唯々見ていた。

 

 

 

「一人……いや一匹か。俺と似ているな……」

 

馬鹿みたいに思える話だったが、たかが鯉のぼりの鯉と比べるのが自分がちっぽけ過ぎる人間に思えてだいぶ可笑しかった。

 

 

 

 

────君は一人じゃない────

 

 

しかしそんなのが気にならないくらいの衝撃的な事が起きた。

 

 

 

「…………は?」

 

暫く呆けた顔になってしまったがそんな間抜け面を見る奴なんて一人もいない。

 

 

 

 

 

何処を向いても自分の視界に映るのはベランダに吊り下げられている鯉だけなのだから……

 

「まさか…………そんな訳ない。ここにいるのは俺だけ、今の俺は一人なんだ。」

 

俺は視界を一度マンションの方に戻したが雑念を振り払った。そんなラノベじみた事は無い。つまらない考えは止めだ。

 

 

そう思っているとまた声が聞こえた。

 

────君は一人じゃないんだ────

 

今度ははっきりと聞く事が出来た。声のした方を向くとやはりそこには鯉がいるだけであった。

 

 

 

 

……いやぁそんなまさかとは思ったよ?俺だって信じられないって思ったよ?所詮夢だから無視してれば時期に覚めるものだとは思っていた。

 

 

 

 

 

だけどその鯉がうるさ過ぎるんだよ。

 

大して喋った訳でも無いくせに言葉が深く染み込んでくる。使い古された言葉かもしれないけど俺にとっては一周回って新鮮だったんだ。

 

だから俺は夢でもいいからその鯉と話してみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ……鯉。」

 

────やっと口を開いたと思ったら…………どうしたんだい?────

「どうして俺は一人じゃないって言い切れるんだよ。」

 

────どうしても何も君には大切な家族がいるじゃないか────

 

……俺に家族がいなかったらどうすんだとかいう気持ちを抑えて話を続けた。

 

「でも俺はそんな家族と仲が悪い。俺なんて駄目な奴だから孝行も出来てないし、喧嘩ばかりだし……今日だって。」

 

────その年で孝行を考えてるのはよく出来た物だと思うけど……因みに今日はどんな理由で喧嘩をしたんだい?────

 

「…………。」

 

────何黙り込んでるの、話せば楽になるってさ────

 

鯉のくせに生意気な……なんて思いながら今日の起きた事の説明を淡々始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ふうん……まぁよくもそんな事を思いつくね────

 

「そんな事だろうが何だろうがおかしいと思わないか?何で母の日とか父の日が祝われて子供の日が祝われないんだ!?どう考えても変だろ!不公平だろ?」

 

俺はすぐに理解をしてくれない頭上の魚に苛立ちを覚えた。そんな事もつゆ知らず、鯉はうーんうーんという言葉だけを声にしていた。

 

――――それは…まぁ仕方ないんじゃない?子供の日ってそういうものでしょう――――

 

「いいや良くない!じゃあなんだよ子供の日って!ふざけんなよ!!」

 

俺は鯉のぼりに話しかけているという超常現象であるのも忘れて呆れたような困ったような声をしていたやつに向かって不満をぶつけた。

 

 

 

 

 

 

 

――――子供の日を馬鹿にするな少年――――

 

するとその鯉はさっきとは打って変わって重々しい声色で話しかけてきた。

 

――――端午の節句…一般に鯉のぼりを吊るされる日だって事は知っているな?――――

 

俺は少し放心状態になりかけながら首だけをコクコクと縦に振った。

 

――――確かに今ではあまり意味をなさないかもしれない。実益を皆が欲しがるから鯉のぼりをあげるだけ無駄なことだと思うのも分かる。しかし端午の節句は男の子の成長を祝う日である。確かにひな祭りや節分と比べて認知度は低い事は確かであるがどれも昔から続く大切な行事なのだ。少年をはじめとする男の子全ての健やかなる成長を願ってもいるんだ――――

 

「そんな事くらい分かってる!」

 

俺だって馬鹿じゃない。それがさっきまでの話と何の関係があるというのだ。

 

 

 

 

 

 

――――では君に聞こう、何故そんな日がこの世に存在しているのだと思う?――――

 

「なっ……?」

 

何を言って…と意味が分からず困惑しているうちに話は続いていた。

 

――――日々子供の為に尽力している親達がどうしてそんな日を作っているのか、どうして毎日君達にの為に様々な事をしているというにも関わらずわざわざ子供の日を設けるのか…君は考えた事はあるのか?――――

 

「そんな事………」

 

あるに決まっていると断言する事はできなかった。確かに俺は感謝の気持ちを欠かしたことは無い…と思う。ありがとうはその都度言っているし、誕生日のプレゼントはきちんと送っている。贈る言葉や物が上っ面であったことなんてない。しかしそうやって過ごしていく事がをクラスメイトの高慢さが影響してるんだかなんだか知らないが当たり前だと思わなくなっていた。当たり前の事を当たり前に思わなくなっていた。

 

 

 

そんな上から目線な考えで親と接していたと思うとどうだ?

 

 

朝は遅刻しないように起こしてくれて、朝食と弁当を用意してくれる当たり前。ほぼ毎日自分よりも早く家を出て遅くまで仕事をして養ってくれる当たり前。…色々と迷惑をかけてもここまで育ててくれたという当たり前。

 

 

 

「とんだクソ野郎かよ……」

 

ここまで俺にしてくれたというのに俺の気持ちというのは厚かましく最低でおめでたい奴であるとしか言い表せなかった。

 

――――若いのによくそこまで頭が回るね…――――

 

鯉は声を一段と柔らかいものへと変え、笑いを含ませた。

 

「若いって…確かに若いけどそこまで分別のないような年に見えるか?」

 

そんな風に思われてるのは心外なんだが。

 

――――ごめんごめん、でもね君みたいにきちんと理解できる子供もいれば分からない子や理解しようとしない子もいる。増して大人になっても理解できない奴だっている。常識とか当たり前であると思っているような事をきちんとこなせる君を僕は褒め称えたいよ――――

 

「それはどうも…」

 

さっき会ったばかりの鯉に説教されたり褒められたりと驚く事が度重なって頭の中はゴチャゴチャとしていたが一本の太い道が出来上がっていた。

 

――――さて、じゃあもうそろそろ帰りなさい――――

 

「そうかもうそんな時間か、じゃあ帰る…か。」

 

と思ったが親と今さっき話題にしてた件で喧嘩してた事を思い出した。…気まずいし少し気が引け所はあるが帰って気持ちを伝えよう。

 

――――何をうじうじしてるんだか知らないけどシャキっとシャキっと!!――――

 

俺は鯉の熱意に煽られながらも自分自身に鼓舞しながら公園を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると視界の端にはある一人の男性が歩いていた。

 

俺はその男性が誰であるかが分かると嬉しくなってその男性に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ほらね、言った通りだったでしょう?――――

 

 

 

どこか遠くから誰かの囁く声が聞こえ、無意識に笑みが溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…まぁ中学の頃の思い出といったらこんなものか

 

 

暑い五月の夕暮れ時、俺は辺りの風景を見渡しながらそんなことを思っていた。

 

 

 

 

それ以降その鯉がいた場所行っていない。そもそも無我夢中で走っていたからあの時行き着いた公園がどこなのかも分からないし、部活も塾も忙しかった。多分あの頃はこの辺りを走っていたのだろうが、二十年前と比べ再開発が進んでしまったせいかすっかりと変わってしまい、今見てもよくイマイチ分からない。

 

 

 

 

 

にしても今でもにわかに信じ難い…

 

そんな超常現象を素直に受け入れていた自分も怖いが、随分前のことにも関わらず覚えているのだから現実だと信じたくなってくる。

 

 

 

 

 

「……さてと、どうしたものか。」

 

閑話休題、感傷に浸るのも悪くないがそろそろあの子見つけないと日が暮れてしまう。

 

些細な事で口論になってしまい出て行ってしまったあの子を探さないと、

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度あの頃俺を探していた親父のように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父ちゃーーーーん!!」

 

そんな時に聞き覚えのあるあの子の声が背後の方から聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ふっ。

 

 

 

 

すぐさま振り向くと自分の視界に映った光景に無意識に笑みが溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前にも家族ができたんだな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は目に映る自分の息子と

 

 

 

 

 

 

マンション一面に飾られた鯉に向けて歩んでいった。

 




形や実益を伴う物に目が行きがちですが、本当の気持ちという物はさりげないひと手間だったりするかもしれませんね……

さてさて今回はなかなか書かないようなテーマでいて非常に楽しく書かせていただきました。今回も妄想炸裂ボーイ突っ走りましたが携帯が壊れる以外は順調でした。初めてが尽きないこのハーメルンという素晴らしいサイトと全ての読執筆者さんにこれからも頑張っていこうかと思っています。重ね重ね申し訳ありませんがハピナ様、よろしくお願いします!

最後まで読んで下さってありがとうございました!!

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