秋には2人の3年生が引退した。
なぜ秋までいたのかというと、引退する区切りになる大会がないため高校野球のテストが始まる時期に自然と引退するのがうちの中学野球部の伝統だった。
先輩達は千葉県にある駒場商業と神奈川県の神奈川工業の推薦を受けたようだ。
(・・・しかし、監督は凄いな。公式試合に出させてないのに試験を合格させるなんて・・・。)
この中学から活躍しているOBは多く、たまに監督の教え子の先輩達がやって来て紅白戦をするが・・・。
中には6大学の選手だったり、スカウトだったり・・・。
(まぁ本気は出さないけどね。)
私は将来の敵に情報を与える気がないので頑張ってるが成果が出てないように見せた。
私の本気を知っているのは監督と先輩4人と1人のスカウトだけだった。
剛田小助・・・そのスカウトの名前だ。
穴場の発掘がメインのスカウトをしており、ギム監督の中、高の後輩でチームメイトとして野球をしていた。
ポジションは捕手。
彼との出会いは監督からの紹介だった。
監督が彼女の本気を見てほしいと彼にお願いしたらしい。
結果気に入られてたまに投球配分の相談や、ランナーの効率のよい牽制の仕方等を教わっている。
これが半年間の出来事だった。
〔久しぶりのオフ〕【河川敷】
草野球のグランドで雷市達とおじさんたちと久しぶりに試合をした。
2試合して2安打1失点24三振の結果だった。
「いやー、おじさんじゃ勝てんは!!」
「腹に贅肉しかないとダメだね。打っても球が飛んでいかない。」
と話していると1人少女が立っていた。
「お!!秘密兵器だ。」
「パルスィ、こいつは雷市並みの逸材だ。たまたま見つけてきたんだが、ちょっと勝負してくれないか?」
「はい。」
「よろしく。」
「よろしく。」
前にいる少女は薄い紫色の髪をし、眼鏡をかけていた。
バッターボックスに入り、彼女は構えたが、それは平凡でどこにでもいるようなそんな構えだった。
(・・・いや、ちがう。何を基準に私は平凡にしたんだ?どんな選手でも特徴がある。・・・彼女はそれを全て平均した構えだ。・・・ん?おかしい。なんだこの違和感。)
例えるなら外は古い型の車だが、中は最新の戦車のように機械でびっしりしているような違和感だった。
私はギリギリストライクを外した場所に球を投げた。
彼女はピクリとも体を動かすことがなかった。
しかし何かを呟いた。
私は口の動きを見て判断した。
『右1センチ外れ。確率1/3変化。』
(・・・!?なんなの!?)
私は怖くなったが、顔には出さずスライダーでストライクゾーンギリギリの内角低めを抉る。
結果は凡打だったがその潜在能力は恐ろしいものだった。
「名前は・・・。」
「長門有希。」