私にはその男性を見たことがあった。
「ドラえもんだ。」
坊主頭で太っているためドラえもんという渾名で親しまれている森川という千葉レッドゲームズという球団にいる先発ピッチャーでMax155キロの速球と3種類の変化球を投げる投手だった。
「小さいのにボクのことを知ってくれてるなんて嬉しいよ。」
彼は現在20歳で千葉現役だが、この時期はオフのようだ。
「君は何歳なの?」
「3ヵ月。」
「へぇ、3歳か・・・ん?」
「3ヵ月だ、わざと間違えるなんて妬ましい。」
「ちょっとフードをとらせてもらうよ。」
彼は私が被っていたフードをとるとあまりの幼さに驚いたようだ。
「・・・生後3ヵ月でこんなに動けるのか!?」
「うるさい。大声を出すな妬ましい。」
「あ、ごめん。」
「親のところに行けばわかるだろ。」
「君はほんとに3歳じゃないのか?」
思考を停止したドラえもんを置いて私は家に走り出すと、彼も私のあとを追ってきた。
【家】
きずなは買い物でいないようで、矢部が代わりに出てきた。
「早かった・・・森川でやんすか?」
「矢部さん!?ここにいたんですか!!」
ドラえもんは矢部と知り合いだったようだ。
「とりあえず中に入るでやんす。」
と言って家の中に入っていた。
「さて、どこから話すでやんすか。」
矢部が語りだし、私は邪魔にならないように横で体幹を鍛えることにした。
〔数十分後〕
矢部と途中から聞くだけでなく、会話に参加したドラえもんの話をまとめると
《・矢部がプロ野球について教え、森川は恥をかかずにすんだ
・スランプを脱出するきっかけを作った
・トレードで別球団に森川が移動してから、あまりの話さなくなる》
だった。
「本当に心配しましたよ。」
「いや、森川がトレードされた後にオイラは解雇されたでやんす。」
「で、この子は本当にまだ0歳なんですか?」
「本当でやんす。この子はまだ3ヵ月しかたってないでやんす。ただ・・・。」
「矢部、別に言っても大丈夫でしょ。彼が私のことをバラしても誰も信じられないし。・・・私は元妖怪、今はこんな貧弱な赤ん坊だけどね・・・大人の体が妬ましい。」
「とり憑かれたってことですか?」
「いや、どうやら腹の中からでやんす。ただ、彼女・・・パルスィとはお互いにあることを約束したでやんす。」
「あること?」
「オイラが立つことのできなかった夢の舞台に立ってもらう代わりにオイラ達が面倒を見るということでやんす。」
「私も野球というのに興味があってね。」
「・・・ボクにも少し噛ませてもらえませんか?」
「ん?どういうことでやんす?」
「私の夢は監督になることです。その前に教育することができるか怪しいので彼女に教えたいのです。」
「・・・私としてはうれしい。私は投手になりたいからね。」
「良いでやんすが、森川もプロでやんす。オフシーズンの暇な日だけにするでやんすよ。」
「ふふふ、わかりました。」
私にはわかった、ドラえもんは嘘をついていると・・・。