Side紅崎界貴
「確かこのあたりなはず……」
俺はドイツ軍との戦闘を終えた後に、
ちなみにイデアが俺の周囲に強力な
――目標座標まで後、800mです。
AIからの誘導に従い、完全に感覚を掴んできたブースター制御をオートからマニュアルに切り替えて俺は飛行している。
オートでは戦闘時の完全な小回りが利かないし、こいつのスピードでは神経加速していない限り一瞬で飛び去ってしまう。
――目標座標に到達しました
AIからの合流地点到着のしらせ。
試しに千夏に
「(こちら紅崎。合流地点に到着した。応答を)」
『(ここよ)』
――距離8mにエネルギー反応出現
AIから機体出現の報告があると同時におれの目の前の何も無い空間がいきなり歪みそこから全体的に白いカラーリングに大きな
――機体情報ライブラリから解析・照合――完了。
――機体名:
持つ二代目に開発されたABです。武装は光学兵器を多く所持し遠距離に特化する機体です。しかし前面の大型ハンドガード内にはエナジー刃ウィップを装備しているので留意してください。
この機体は搭乗者である草神千夏によって特殊なプログラムが組み込まれており、搭乗者自身の脳内演算によって機体を制御するという、機構をしようしています。
「(セラかそれが千夏の機体か?)」
『(そう。戦闘より離脱力と防戦・迷彩に特化させた機体。私は戦闘が上手くできないから)』
懸命な判断とアセンブルだろう。
戦闘が不得意な素人が無理になれるより、逃走や防戦などに機体を特化させるほうが理にかなっている。
『貴方の戦い、見てたけどかなり予想以上の結果だったわ。あそこまでテスト運用なしに機体を制御・運用できるなんてね……』
千夏が通常回線に切り替えたので俺もそれに順ずる。恐らく回りにアンカーを張っているのだろう。
「まあ、機体の武装が俺の戦闘スタイルに合っていたし、何よりこの
彼の言うことはもっともだが、アブソリュートは誰にでも扱える優等生ではない(千夏がスペックを求めた過ぎた結果)。AIのサポートがあるといっても
さらに彼が優位に立てた理由はもう一つある。
「さらに言えば、相手は精神的に不利な状況だった。引けば漏洩、押しても
彼女はウインドの先で、『戦闘に関しては冷酷だね』と、苦笑いしていた。
「そうか?こんなもの戦闘を優位に進める際では話術は基本だ。敵を追い込むのも見方につけるのも戦闘だけじゃ足りない」
彼はそれを前世界での傭兵時代で嫌と言うほど体験していた。
傭兵は情報が纏められた状態で任務を与えられる軍隊と違い、情報の良し悪しはすべて己の判断で決めなければ成らない。彼はその過程で自らの無知さを痛感し己の武力だけでは生きていけないことを強く理解していた。ゆえに戦闘を有利に進める上で手間はいとわないし、受ける任務も全て裏ずけが取れているか信憑性が高いことが信用できるものしか受けてこなかった。
今世紀の傭兵は戦うだけでは勤まらない。
あがってくる情報を自らの判断で冷静に慎重に選別し、独自のネットワークを作り上げ、仕事を請ける。
ただ戦場で撃って切って殺してだけでは生きていけないのだ。
完全に生きていけないわけではないが、そういう仕事ばかりを請けるやつらはすぐに死んでいった。
「そういえば完全に忙しすぎて聞き忘れてたけど、貴方ってどこから来たの?それと何歳?私と同じぐらいに見えるけど……」
――ここで界貴は迷う
――話していいのか?拙いか?
――いや、そもそも信じて貰えるのか?こんな荒唐無稽な話を
そこで何かが俺に伝わってくる――
『……聞こ…ます……か?……』
ABのネットワークから通信が俺の耳に、かすかな声として届く――
最初はごく小さく、しかし段々とそれはしっかりと俺の耳に入ってきた。
通信元を見ればUNKOUWNの表示。しかし通信方法は量子通信と表示されている。
『――聞こえますか?界貴?』
鈴の音のようなソプラノボイス。この声はまさか――
『まさか……ティリアか?』
『そのとうり。私ですよ、界貴』
どうやら本物のティリア=マクスウェルのようだ。
しかしどうやって?
『あなたとのパスが量子通信が可能な環境なのに築いて、私とのギアス経由で音声と貴方の視界かつこの
『なるほど。これで大分楽になるな。』
『ええ、貴方の視界を通じて私が他の神の
これで悩んでいた課題が一つクリアされた。上々だ。
せっかく通信が繋がっているのでティリアに目の前の問題について投げかけてみることにした。
『なあティリア。俺がこの世界に来た理由を目の前の
しばしの沈黙のあとに答えが合った。
『恐らく、問題は無いのですけど……信じて貰えますか?』
『恐らくは理論立て伝えれば大丈夫な……はず』
語尾が怪しいのには突っ込まないでくれ。自分でも思うから。
『一応は伝えてみることにするよ……』
『はい……頑張ってくださいね。でわ、私はこれで――』
『ああ。またなティリア』
そういって俺たちは会話を打ち切った。
ちなみにこの会話、通話時間を確認すると――恐ろしいことに1.49秒しか現実時間では経過していないのであった。
末おそろしや精神加速。まあ量子通信と言うのもあったのだろうが。
で、話すことにした。結果的に。
『そうだなー、究極的に言えば俺は別世界――ここではない世界から来た人間だよ』
俺が直球的にはなした内容に彼女の顔が固まった。
『それって
こわばった声音で利いてくる。
『マジで。死んでとある理由からこっちの世界に、……そうだな、転生したと言うべきか。それで転生先だったあの森で襲われてる千夏を見かけて成り行きで――って感じだ』
『どうやって転生したの?まさかのブラックホールからの時空転移とか言わないよね?』
それは無い、断じてない。そんなことをすれば身体が微粒子まで分解されてDEADだ。
知ってるか?あれって超重力場の塊だから近づいたらその瞬間に光も残さずバラバラにされるらしいぞ。まあ、多分
『あえて口で言おう。それは無い。本当に非科学的な事だから証拠は無いから信じなくていい。ちなみに年は19歳だ(今年の秋で20歳)』
彼女は黙り込みABのセンサーで拾った独り言が『(まさか宇宙人……いや、完全に人間だしそれは無いか。でもあの身体……etcetc)』のどと地味にひどいことを言っていた。
閑話休題。
そして顔を開けた彼女は俺に言った。
『あなたの素性は……よく理解できないけど、怪しい人間じゃないのは前もって分かってるからもう聞かないわ。でも貴方ってほんとに19歳?もっと下に見えた』
彼女は知る由も無いが彼の肉体は超強化の過程で細胞のテロメアまで変化したのか17歳のまま外見が髪の毛を除き変化していない。
筋肉や神経、内臓などの器官はいまだに彼の身体能力の向上に比例して強化され続けてはいるものの、外見上の変化はあまり見受けられず殺伐とした雰囲気だけが彼の実年齢をはかる基準だ。
『失礼な…まあ、俺はよく下に見られるから良いんだが……(おかげで潜入とかも便利だったりしたし)。俺も聞きたいんだが君は何歳なんだ?』
『私?私は今年で18歳になるよ。まあ、私はもっと年上に見られること有るけど……』
あれで18?ちょっと育ちすぎじゃないか?
東洋人は若く見えるというが彼女のそれは未成年の体というにはあまりにも色香があり過ぎる。
鋭い目尻は雰囲気に大人を感じさせ、肌の白さが生み出す目元の影は天然のアイシャドーとなって色合いを可憐に彩っている。
――システムコール。セラのパイロットの身体データの測定を開始。結果報告をくれ。
――個人データに分類されますがよろしいのですね?人としては推奨されません。
ーーん?何かいま凄く人間臭いこといわなかったか?このAI。
――私は
――へえ、凄いな。で、結局やるのか?やらないのか?
――……私はマスターのモノ。貴方が望むままに。
なにか気になる間があったが一秒でセラの機体の中に包まれた彼女の身体データが俺の視界に表示された。
身長:170cm 体重:52kg(予測値)
3S:B84 W50 H85
体脂肪率:±0.4
――女性の身体としては至って健康体です。
男女的なことを挟まずに言えば健康的で均整の取れたいいスタイルだ。
しかし一言、言わせてもらえばこの体つきは非常に――エロい。彼女の大人っぽい顔の作りからすればなおそう思う。
――マスター、不純です。自重してください。
AIに叱られたので思考を停止させ彼女との会話に意識を戻す。
すると千夏がジト目で俺を見ていた。
『何か今、いかがわしいこと考えてなかった?』
『いや、そんなことはないぞ。今後どうするか考えてたんだ』
女の勘とは恐ろしいと改めて思う彼であった。
『で、今後はどうする?このままじゃいずれ視界透過できない俺は見つかるぞ』
『わかってる。だからもう一つの隠れ家に逃げるよ。これから』
どうやらもう一つ隠れ家があるらしい。
『それはどこに?』
『傍受の可能性があるからあっちに到着してから話すよ。付いてきて。あ、あと
『変形?どうやるんだ?』
『AIが教えてくれるよ。急いで、多分目視で感ずかれた。ISが来るよ』
レーダーを確認してみれば4機ものISが近づいてきている。
10分もしないうちにここに到着するだろう。
俺は試しにAIにモード変更を打ち込んでみた。
ーーシステムコール:モードチェンジ、ソニック
――
――装甲位置変更――完了……OK
――超音速戦闘用武装に超振動波動出力を微調整――完了……OK
――パイロット身体データ計測――超音速戦闘によるG耐性S7ランクを確認。ブースター調整出力78%へ――完了……OK
――モード及び機体変形調整完全に完了を確認。半重力制御が向上しているので感覚データに僅かに変化しますので留意してください。
――モードを変更後の俺の機体は本格的に龍に近い形へと変貌していた。全体的に装甲が分厚くなり、ブリューナクをマウントしていた装甲が開き、紅い機械の翼を展開。
比較的薄い翼に空いた空気孔が蠕動し内部機構冷却のためのファンが回転を始める。
分厚い胴体に翼を備えた姿は、飛龍の様なフォルムだ。
『できたね?じゃあ行くよ――』
千夏のセラは言葉とともに
『速いな!!さすが機動力特化』
『置いてくよ!!』
『ああ、すぐ追いつく』
――ブースター点火。出力上昇、0.1秒で超音速領域に到達します。Gで舌を嚙まないように。
分かってる。急げ。置いてかれるぞ。
『行くぞ!!』
俺は背部のブースターを吹かせ、爆発的な加速でAIの演算道理0.1秒で超音速域に到達。千夏のセラを追いかける。
――初期加速領域問題なく経過。
――時速2100kmに到達。
――機体・演算能力ともに問題なし。速度上昇が可能です。
『上げろ!!もっと速く!!』
――
AIの電子音声とともに俺の視界にわかりやすいスピードメーターが表示される。(車と違い表示されている数字が最早キチガイなのだが)
かなりの速さで過ぎ去っていく視界の風景。
放射線状に流れていく景色はいままで見たことのない感覚だった。
クリアに見えつつ放射線状に流れ去っていく視界のすぐ先に純白の光の翼と白い気体が見えてくる。
後ろから見たセラの機体は蝶のような羽が印象的だ。
『さすがに疾いね。このセラに後走りで追いつくなんて』
口に出しつつ自らに追走する機体の速度データを計測し視界に表示する。そこには時速3000km超と言う狂気のスピードが記載されていた。
『ーー呆れた……。初めてのった機体でそんな加速を叩き出すなんて……。でもいくらあなたの体が普通の人間の数倍頑丈でもそれは飛ばしすぎでしょう!!幾らなんでもフィッティング前の機体で音速の3倍近く出すなんて死ぬ気?』
まあ速度的には速いだろうが体的にはまだ阿頼耶に及ばない。恐らくまだ余裕があるだろう。
あの時がとまってしまっているかのよういな重い空間にはまだいえない。
神経を加速させた状態に慣れきってしまっている彼はこの程度の加速では恐怖を感じられないのだ。
『今のところは問題ないな。Gは重力制御とPIC?が防いでくれてるし、複雑な機動をする必要も無いからな』
彼は気軽そうに行っているが、この速度を同じ状況で常人が行った場合、脳震盪を起こし姿勢維持を失敗し筋断裂。最悪は
『千夏もABに乗れたんだな。正直、頭脳労働派かと思ってたが』
『まあ、貴方の言うとうり私はあんまり戦いは得意じゃないからね。けどABは別だよ。自分で作った物に自分で乗れなかったら恥ずかしいでしょ?
それにこの機体は私が扱うために初期コンセプトからガッチガチに弄ってあるからこその加速なのよ展開…?
装甲が受けるGを3箇所別所展開するPICで緩和しなければ私の貧弱な身体能力では翔べないもの』
『ーーそこらへんは身体の作りとか色々あるんだろうが…まあ俺のことは気にするな』
戦闘が苦手なのに、超音速飛行に慣れているのはかなり妙である。
まあ、些細なことだが……
『やっぱり貴方は凄いよ……初めて乗るのに私より落ち着いてる』
『経験の差だろうな。これでも
一見落ち着いて見える彼だが、内心は焦ってはいないが多少テンパッテはいる。
戦闘においてそれが現れないのは『戸惑えば死ぬ』と言う傭兵時代の習慣から現れる物である。
しかし、即時対応がモットウの彼はすでにこの状況になれ始めていた。無論、緊張が抜けているわけではないが。
これは身体に染み付いた習慣の様なものだ。
突然に身の回りの環境が変わったり、いきなり襲われたりは傭兵時代にはかなりザラだったので感情とは別に身体が勝手に慣れていく。
どうせ身一つで大密林に放り込まれても死ねなかったのだ。この程度の変化でうろたえていてはあのクソッタレの訓練を踏み潰してきた意味がない。
『で、目下の目標の第二の隠れ家ってのはどこにあるんだ?』
俺は彼女に
蛇足では有るが、この会話はお互いの顔が半透明のウインドウに表示される形式で成されている。
しかし、お互いの顔は見えるのに口が動いていないのは少々奇妙ではあるが。
閑話休題。
『まあ大雑把に言えば太平洋の海中かな。位置的に言えば日本よりになる。ただ進行上にちょっと厄介な物があってね……』
『その厄介なものって?』
『ISが女性にしか扱えないのは知ってるよね?そしてISは世界的に認めたくは無いけど現行、人類史上最強の兵器に成ってる』
『ああ、それは先ほどのABとのことで概略は理解している。それが何か?』
『(ABを除いて)現行最強の兵器であるISを開発したのは日本……正確には日本人の
女性しか扱えないから女子高なんだけど』
IS学園ね。
また珍しい高校ができたものだ。
『詳しい事は自分の
彼女に進められたとうり俺は調べてみることにする。
――システムコール。IS学園の概要を教えてくれ。
――
――アラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校です。操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成されます。また、学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約があり、それ故に他国のISとの比較や新技術の試験にも適しており、そういう面では重宝されて居ます。
。
ただしこの規約は半ば有名無実化しており、全く干渉されない訳ではないというのが実情でです。
――なるほど。OKだ。
『IS専用の学園か……。相当に金掛けられてんだろうな。それに国際ともなればセキュリーティーやレーダー網も結構なものだろう――そういうことか。だから厄介な訳だ』
『察したよだね。日本領空を横切るに当たって、貴方の機体が発見される確立がすくなからずあるの。私のセラはステルスにも特化してるから光学迷彩や熱源探査、衛星監査でも発見されにくいんだけど、貴方のその機体は戦略級の殲滅力に特化した戦闘特化型だから熱源反応はPICや超振動波動を切れば自持ちのアンカーで隠せるけど光学迷彩は持ってないから衛星監査で拾われると痛い。』
『速力で振り切ればいけないか?こいつの最高時速はまだ上がるからレーダーに感知される前に領空を離脱すれば……』
俺の世界ならこいつの大気と重力が存在する状態での最高加速速度、時速8440km(最大稼働。正確には無重力下での速度は24670km)の極超音速で領空を飛行されれば捕らえられないだろう。捕らえられても確認する前に逃げられる。
しかし彼女は否を返してきた。
『貴方の前世界の話から推測するにこっちの科学力はISやABを含め相当に貴方の世界よりあがってる。あちら側のレーダーをクラックしない限りは多分感知される。
それに日本政府側の状態をこっちから覗いてみたらあっちはあっちでもう警戒網を張り終わってるみたいだしね』
なら、この案は没か。
『もし見つかったと考えて、迎撃戦闘が発生する可能性は?』
『多分、日本領空なら60%ぐらいね』
『高いな。だがしかし、何故攻撃してくる確立がある?こちら側から攻撃しなければ問題ないだろう?』
それともな武装解除できない理由でもあるのだろうか?
ただ、先のドイツのようなことがあれば政府を信用できないのも理解できるが。
異常な武力を持つ俺たちを日本政府が優しく迎え入れる可能性があまり高くないのは想像に難くからな……。
『貴方には悪いけど、私は彼らにABをもう汚されたくない』
『どう言うことだ?それはもう見つかれば撃墜して振り切ると言う解釈でいいのか?』
『貴方が疑問に思ってることを一言で説明するなら、AB悪用の危険。今、
あそこで貴方の
彼女は蒼い瞳に固い決意をこめて俺を見つめている。
汚らわしい著作と言うのはあの無人ABのことだろう。あれにはデータを見た限り、人の脳神経が使われていた。
飛行しながらなので身体の機微を察することは出来ない。
しかし彼女とて俺の戦闘力はドイツ軍との戦いを見ていたなら
心の中の恐怖に逆らってまで彼女は自分の作品につよい思いを注いでいる。
しかしそれは彼女の偏見だ。
俺は先ほどの会話のなかで一度もあの贋作を肯定した覚えはないし、クライアントをないがしろにするつもりも無かった。
ただ、心の奥ではさしてその気持ちを理解できてはいない。
見ず知らずの人間がどこで死のうが俺には興味がないし、無いのなら他のもので代用するという考え方は倫理観を無視すれば酷く合理的で納得できてしまう自分がいる。
しかし、あの贋作の存在を許すなというのがクライアントの意思なのだから俺はそれに従う。
なので彼女にそこん所をしっかり確認しておく。
『安心しろ。俺もあの人道に反してる贋作を認めるつもりはないし、第一君は俺のクライアントだ。俺が君を守る事はあっても敵対することは無い。絶対にだ。』
ーー心の中で一体どの口が人道などと偉そうなことを喋っているのかと嗤う自分がいた。
『でも、このまま私を守ってると貴方まで死ぬ可能性が出てくるよ?私はいろんな所から狙われてるし……それでも護ってくれるの?私を?』
不安な瞳でこちらを見るその姿はABの開発者と言う威厳などは無く。ただの女の子だった。
僅かながらそこに自分の過去を重ね合わせてしまい、ズキッと精神の古傷が疼いた。
いくら大層な兵器をもとうと結局は人間なのだ。不安を消すことはできない。
だから少しでも彼女を安心させる言葉をかけなければいけないと思った時には護衛任務の折に決まり文句としてうそぶいてきたセリフが口から出ていた。
『――ブラッディは任務を放棄しない。受けた以上は完遂する。それが俺の矜持であり、唯一の誇りだ。頼りないかも知れないが、俺が君を守護し危害など与えさせない事を約束しよう』
自分でも臭い台詞だが彼女はウインドウ越しに笑顔で大きく頷いてくれた。
その姿は彼女の機体と相まって天使のようだった。
――しかし、耳元で響く
『何だ?』
思考が急速に冷凍されていき、半自動的に被せられる殺意と言う名の仮面が高揚感を戦闘意識に変換していく。
自分でも相当に冷たい顔をしていると分かるほどに。
――未確認熱反応多数確認。座標
――IS:6機 海上小型戦艦:3 空母:1 不完全AI搭載型AB:11。
――AB×11機は
――機体をソニックからコンバットへ変更しろ。
――
俺の機体が重装の飛龍から、巨躯の龍人へと変化する。
ただ今回はブリューナクのラックとなっていた紅い翼は格納されずに背部に装備されたままだ。
おそらくなにか軌道を助けるためのモノなのだろう。
――武装アセンブルスキャン開始
AREM:
HAND――
ELBOW――
BODY:
SHOULDER――高出力ビーム式短剣×8=クロイファ……OK
BAKC――
WAIST――
REG:
SHIN――
TOE――
HEEL――|高熱伝導粒子収束ブレード(ビームブレード)……OK
MEIN BUSUTER:反重力制御超高出力ブースター5門…OK
SUB BUSTER:脚部高機動多方向高出力ブースター各部3門 計6門OK
WING UNIT:式半重力制御用化変則翼……OK
――スキャン完了。全武装エネルギーMAX充填確認。
――戦闘シュミレーション開始――完了。勝率:96.4%。敗率:3.6%。九割の確立で殲滅可能です。
(ちなみにこのシュミレートに相手パイロットの力量は反映されておらずあくまでアブソリュートが判断する性能差による結果である)。
AIから戦闘可能の報告を聞きながら、俺は相手をどう攻めるか考えていた。
先ほどの千夏の情報道理なら除装しての交渉は無い。
次にオープンチャネルでの交渉だが……これも無い。なにぶん此方には取引材料が無いし、そのまま交渉の場面に行けば不利な状況を作ることになってしまう。
結果、ドイツ軍との戦闘と同じく、実力で突破・離脱する方法しかなかった。
ただ、問題は千夏だ。
彼女の戦闘力で俺の立ち回りも変えなければ成らない。
護衛しながら戦うのはもちろんだが、彼女自身が戦えるのと戦えないのでは大きく立ち回りが変わってくる。
――現在の相対速度のまま飛行すれば約24.2秒後に会敵します。戦闘準備を開始してください。
対敵まで残り15秒、俺は千夏に聞いておくことにした。
『戦闘経験はあるのか?』
『あの著作相手なら何度かはあるけど……貴方みたいな動きはできないわ』
『一応あるんだな?ならいい。時間が無いから一つだけアドバイスしとくぞ――ISと戦艦は俺が相手するからとにかく相手に距離をつめさせない用にしておけ。多分その射撃特化の機体なら可能だろう』
『距離をとって撃つ……分かった。やれるだけやってみる』
やはり本格的な軍隊を相手にするには怖いんだろう。声が若干震えている。
あまりの緊張ゆえに逆に興奮する新兵のようなことになるよりはマシだが、気に掛ける必要性があるだろう。
『安心しろ。いざとなったら君だけでも護るから』
『……ええ!!』
彼我の距離が1キロを切り、ABによって強化されている神経が敵の姿を捉えた。
――敵機確認。ライブラリ照合開始――確認。データ表示します。
――IS α1 α1:第二世代型
しかし、敵軍の打鉄には追加ブースターと思われる武装が目視で確認できます。機動力にご注意を
α2~6:第二世代型:ラファール・リヴァイブ 備考:目視による特殊武装の有無は確認できません。
――海上戦艦 β1~3 :小型機動戦艦 BOLX-C 備考:エネルギーシールドを初めとする現行兵器の装備が予測されます。本機の近接格闘で破壊可能。
――以下、NAB(N=ナッッシング)と呼称します。γ1~11 備考:イデアAIを搭載していないため高い戦闘力は予測されませんが、自爆攻撃の可能性があります。即時撃破を推奨。
彼我の距離が55mまで近づいたところで此方へと応答を求める旨の通信が来た。
『――こちらIS学園特殊防衛部隊。未確認機体、応答を求む』
聞こえてきたのは女性にしては僅かに低めの声。
『こちらAB機体:アブソリュード。そこをどいてくれ。道が無いなら実力で突破する。繰り返す、道を空けて貰いたい』
それを聞いて、多数の銃口が俺を狙うのが分かった。
『お前たち二機には不法入国の嫌疑とドイツ政府からの引渡し要求が出されている。すぐに除装し此方が誘導する地点まで降下せよ』
『その要求にはこたえられない。実力で突破させて貰おう。
そして彼がこの世界へきて二回目の戦闘が幕を開ける――
感想と評価をいただきたいです……