俺の個性が知られたらヤバイ。   作:サイヤマンZ

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1話 進路

 

「と、言うわけでして斉藤君には是非!我が校に来ていただきたいんですよ」

 

全身筋肉痛から復活して、細マッチョな体となって学校に復帰した俺に待っていたのは

ヒーロー科が存在する高校からの激しい勧誘だった。

まだ三年生にもなって居ないのに……。

それに俺はヒーローになるつもりはない。

何故なら俺の個性は性欲という感情をエネルギーとして力を発揮する。

世間にばれたらかなりキツイ個性だし、ヒーローになったとしてもエネルギーが切れた時、

災害時や犯人を確保する途中でムラムラしないとエネルギーが回復しないのはさすがに

無理だし不謹慎すぎる。

しかし、世間では何故かミッドナイトに破廉恥な要求をした犯人に怒りを爆発させた

俺が事件を解決!という事になっていて誰も本当のことをしらない。

 

だから俺はバレる前に勧誘に来る学校の職員に対して丁重にお断りをしているのだ。

 

「斉藤君すごいよね!今日はわざわざ北海道から来たんでしょ?」

 

「本当よね。さすが正義の怒りで目覚めた超中学生!」

 

「有名になったらサイン頂戴」

 

勧誘を断り自分の教室に帰ると女子達が騒ぐ。

今まで特に意識される事無く話す機会も授業以外には存在感がなかった自分だが、学校に

復帰した途端にまるでアイドルのような扱いを受けるようになったのが未だになれない。

そしてこの反応は女子だけでもなく男子や教師までも似たような反応をする。

 

特に仲良くないクラスメイトがいつの間にか親友になっていたり、担任の先生が

『俺の教育の賜物だな!』と師匠気取りしていたりと環境がガラリと変わった。

そして好印象な反応ばかりではなかった。

一部の男子達は俺を妬み、今も殺意を乗せた鋭い視線を送っている。

 

特に激しいのは峰田というクラスメイトだ。

彼は『性欲魔人』『変態の王者』と呼ばれ、エロ本を常に鞄に潜ませている童帝であり

女子に毛虫の如く嫌われている男である。

そんな彼が、ミーハーな女子に囲まれている俺の現状を快く思わないのは当然だ。

とりあえず、時間が解決してくれる事を祈ろう。

そのうち、俺の話題を吹き飛ばすような事件をNO1ヒーローのオールマイトが解決することで

すっかり世間から忘れ去られる事だろう。

 

周りの反応は変わってしまったが、特に事件が起らず、俺に対するテレビの

取材やマスコミの取材はやなりを潜めた頃。

 

朝のホームルームで先生がとても興奮した様子で俺に放課後残るようにと言ってきた。

何でも雄英から職員が俺の勧誘にやってきたらしい。

 

日本で一番有名なヒーロー育成機関『雄英高校』。

平和の象徴として今もNO1ヒーローとして活躍しているオールマイトの母校だ。

職員は全員プロヒーローであり、日本で最も入試最難関の学校である。

そんな有名校から職員である現役ヒーローがこんな平凡な中学にやってきたのだ。

担任の興奮具合も納得がいく。

 

そして、放課後。

俺はいつものように勧誘してくる職員がまっている応接室に入ると……。

 

「ひさしぶり。あの時はありがとう」

 

「…ミッドナイト」

 

中にいたのは仮面をつけたスーツ姿のミッドナイトだった。

しかも胸の谷間が見える素敵使用だ。

 

「斉藤 武君。単刀直入に言うわ。特待生として雄英に来なさい」

 

「はい」

 

あれ?

 

「即答ね。なら雄英で貴方を待っているわ」

 

 

 

 

おっぱいで覚醒した俺は、今度はおっぱいで人生の選択を誤ってしまった。

ミッドナイトが置いていったパンフレットを自室の机の上において考える。

今からでも連絡すれば取り消しできるだろうか?

 

そう考えたが恐らくかなり難しいだろう。

雄英の特待生として勧誘を受けたことは既に学校と両親に伝わっていて

とても喜んでいる。

今でも父は酒を片手に電話で同僚に『ヒーロー科で最難関の学校に息子が特待生で

入学する事が決まったと』と、思わず自慢してしまうほどに喜んでいるのだ。

母にもヒーローという職業を心配しながらも人様の役に立つ息子に成長してくれて

嬉しいと言われてしまい、とてもじゃないが断れない状態なのだ。

 

どうしろっていうんだよ……。

 

 

pppp

 

 

頭を抱えて悩んでいると携帯電話に一本の通話が来た。

俺はおもむろに電話の通話ボタンを押して耳に当てる。

 

『おお、武。何か有名な高校に特待生で入学するんじゃろ?おめでとう』

 

電話をしてきたのは爺ちゃんだった。

どうやら母さんに俺の特待生の話を聞いてわざわざ連絡をしてくれたらしい。

 

「爺ちゃん……実は俺…」

 

一人で抱え込みどうしようもなくなっていた俺は全てを爺ちゃんに打ち明けた。

性欲で力が目覚めた事。

この個性ではヒーロー活動は向いていないから特待生をやめたいという事。

 

その話を聞いた爺ちゃんは俺にこういった。

 

『……もし、その個性を制御する修行があったらどうする?

受けるのも受けないのも自由じゃ。

受けるなら全力で応援しよう。

受けないのならわしから二人を説得してみよう。

武の人生じゃ、武が選びなさい。』

 

 

その話を聞いて、すぐに決断できなかった俺は少し時間が欲しいと言って通話を切った。

ヒーローか……。

子供の頃、誰もが憧れる職業。

活躍すれば沢山の人たちから感謝と尊敬を集めるがその一方で助けられなかった時は

無能とけなされる職業。

 

自室にある古いテレビを付けるとヒーロー関連、特に進路関係ニュースが飛び交う。

 

Q『将来の夢は?』

 

A『ヒーロー!』

 

Q『理由はなんですか?』

 

A『モテたいからです!!』

 

チャラそうな若者のインタビューが終わると映像はスタジオに戻された。

 

『最近の若い奴等はヒーローをアイドルと思っているからけしからん!!』

 

『これも時代の変化だと思われます。

かつてヒーローは慈善事業のボランティアのようなもので容姿や人気は関係なかったのですが

最近ではヒーローをアイドルとして扱う企業も増えてきて、CMなどで売り出したり

バラエティなどのテレビ出演に雑誌のモデルなど活動範囲がかなり多くなってきました。

これにより芸能人のように収入が大きくなったヒーローは容姿が酷くなければモテモテに……』

 

……。

 

「じいちゃん。俺、ヒーローになるよ。」

 

 

この時、彼のクラスメイトの性欲の権化も同じニュースを見てヒーローとなる

決意をした。

 

 


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