俺の個性が知られたらヤバイ。   作:サイヤマンZ

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3話 試験

平穏な中学生活が終わりを告げる頃。

雄英から連絡があった。

内容は筆記試験も実技試験も免除されては居るが初のスカウトによる特待生制度の対象

となった俺の実力を知る為に、実技試験は他の受験者と一緒に受けて

欲しいという要請が来たのだ。

 

そして、連絡が来てから受験シーズンに突入した今月の末に俺は雄英高校

の敷地にある入学試験会場へと足を運んだ。

 

 

『今日は俺のライブにようこそーーー!!エヴィバディセイヘイ!!!!』

 

 

運んだ……はずだよな?

 

実技試験の説明を聞く為に会場に集められた俺達受験生を待っていたのは奇抜な格好をした

DJだった。

 

しかも実技試験の説明がいつの間にか彼のライブになっている。

これには俺達受験生は度肝を抜かれ、DJに対して誰もが反応できない状態が続く。

 

『こいつぁシヴィーーーー!!受験生のリスナー!

実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!!』

 

だが、無反応な俺達受験生に対し、場を盛り上げようとしているのだろうDJは

さらに声を張り上げ、俺達に掛け声を要求するが……。

 

『YEAHH----------!!』

 

だれも反応しない。

DJの大きな声が会場に響くだけ。

やめるんだDJ!!あんたが傷つくだけだぞ!!

俺のそんな心の叫びも虚しく、彼の自称ライブは続行される。

 

『入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!!

持ち込みは自由!プレゼン後は各自の指定の演習会場へ向かってくれよな!!』

 

DJの後ろにある巨大スクリーンから現在地と演習会場であるA、B、C、D、E、F、G

が表示され、DJの『OK!!?』という言葉が虚しく響く。

もはやDJの精神の心配をするのもバカらしくなった俺は、他の受験生と同様に

DJの存在を無視する事にした。

 

『演習場には≪仮想敵≫(かそうヴィラン)を三種・多数配置してあり!

それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある!!』

 

バックスクリーンの映像がポイント表示された敵のシルエットに切り替わる。

しかし三種類?

もらったプリントには四種類の敵のシルエットが記載されているのだが…。

何かのミスか?

 

『各々なりの個性で仮想の敵を行動不能にし、ポイントを稼ぐのがリスナー

の目的だ!!

もちろん他人への攻撃などのアンチヒーローな行為はご法度だぜ!?』

 

俺の疑問をよそにどんどん進む解説。

気になる記載について質問をするかどうか迷っていると一人の勇者がビシッと手を

あげてDJに質問をした。

 

「質問よろしいでしょうか!?

プリントには四種の敵が記載されています!誤載であれば日本最高峰たる雄英

において恥ずべき痴態!!我々受験者は模範となるヒーローのご指導を求めて

この場に座しているのです!!」

 

勇者は眼鏡を掛けた優等生タイプの青年だ。

しかもすさまじい気迫を感じる。

真面目で熱血か……。

うん、俺のヒーロー志望の動機や個性の秘密を知ったら明らかにまずいタイプだ。

接触はできるだけ避けて様子見をしよう。

 

「ついでにそこの縮毛の君!!

先ほどからボソボソと……気が散る!!

物見遊山のつもりなら即刻、雄英から去りたまえ!」

 

なんとなくで見ていた眼鏡君だったが、突然質問から後ろの席の受験生に

ビシッと指を刺し、注意をしながら睨み付ける。

厳しい言動であるが間違ってはいないので縮毛の受験生に黙とうを捧げる。

 

『オーケー、オーケー。

受験番号7111くんナイスなお便りサンキューな!

四種目の敵は0P(ポイント)!そいつは言わばお邪魔虫!

各会場に一体!所狭しと、大暴れしている「ギミック」よ!』

 

「有難う御座います!失礼致しました!!」

 

なるほどつまり、0Pは避け、それ以外の敵を倒してポイントを

稼げばいいんだな?

 

『俺からは以上だ!!最後にリスナーへ、我が校≪校訓≫をプレゼントしよう!!

かの英雄ナポレオン=ポナパルトは言った!「真の英雄とは、人生の不幸を

乗り越えて行く者」と!!

≪プルス・ウルトラ≫!!それでは皆、良い受難を!!』

 

こうしてDJの説明を聞き終えた俺たち受験生は、指定の演習場へと向かった。

 

……。

 

俺と同じ演習所に指定を受け、演習場前で集まる受験生達。

周りの受験生を見ていると明らかに学生ではない容姿をした者や

頭部が人間ではない者がストレッチをしたり深呼吸をして開始の合図を待つ。

 

さて、じゃあ俺も…『ハイ!スタートーー!!』

 

は?

 

『どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねぇんだよ!!

走れ走れぇ!!賽は投げられてんだぞ!!?』

 

マジで!?

 

一斉に走り出す受験生達に遅れないように食らいつく俺。

いや、まずは個性を発現させないと…。

思い出せ!!修行の日々を!!

ジョースターさんの言葉を!!

 

『おぬしとケンイチの個性の発動に大事なのはイメージじゃ。

どれだけ真剣に妄想できるかでおぬしの戦闘能力が決まってくる』

 

『イメージをするんじゃ。あの本の中で最も興奮した乳を……。

貧乳でも巨乳でも美乳でも何でもいい。

脳内で熱いパトスをぶちまけろ!!』

 

『合言葉は≪バースト≫(おっぱい)じゃ!!』

 

ジョースターさんの言葉を思い出し、走るのをやめて妄想を始める。

俺の中にある最もすごいイメージとは……。

 

俺が初めて個性を発動させた日。

 

初めて見た、美人の揺れるおっぱい。

 

彼女が一歩後ずさった時にプルンと揺れたあのお乳だ。

 

俺の脳内で彼女のおっぱいが無限に上下に揺れる。

 

 

 

―――――ああ……脳内は無限のおっぱいで出来ていた――――

 

 

 

「バーストォォオオオオオオオ!!!!」

 

 

おっぱいぃいいいいいいい!!!!

 

 

感じるぞ!!

俺の中の生命エネルギーが上昇し、全身を巡っている事を!!

このまま一気にケリをつけてやる!!

 

※斉藤 武の個性『チェンジバースト!!』

性的興奮を覚えた状態で発動すると生命エネルギーを激しく上昇させ、

金の髪と緑色の瞳を持つ超戦士へと変貌するぞ!!

バースト→バスト→おっぱい!

 

 

個性を発動させた俺はトップスピードで演習場を駆け、拳でターゲットで

ある仮想敵のポイントを確認しないままに撃墜していく。

 

もはや自分が何体倒したのか?どれだけのポイントを取得したのかはわからない

まま、敵を本能のままに駆逐していく。

感覚で40は倒したのではないかと思った所で、そろそろエネルギーが少なくなって

来たのを感じた俺はビルの屋上へ跳躍し、再び妄想をしてエネルギーを回復させようと

したまさにその瞬間。

 

前方で巨大な敵が姿を現した。

 

ドゴォォオオン!!

 

突如姿を現した巨大な敵は演習場のビルを破壊しながら移動を開始する。

おいおい!!エネルギーが切れかかっている時に何で来るんだよ!!

いや、落ち着け!!どんな状況でも妄想できるようにジョースターさんと

訓練したじゃないか!!さっきのようにもう一度……。

 

「オイラを置いて行かないでくれよぉーーーー!!」

 

ん?

妄想を始めようとした俺の耳に飛び込んでくる聞き覚えのある悲鳴。

この声は……。

巨大な敵の近く聞こえるこの悲鳴は、まさか……。

 

「ちくしょーーーー!!」

 

俺は目にエネルギーを集中させて視力を強化し、悲鳴の発生源を見る。

悲鳴の発生源は背の低い二頭身の受験生で頭から引きちぎるボールのような物を

すさまじい形相で敵に投げつけている知り合いが居た。

 

なんで、峰田!?

 

正直、なんであいつが雄英の受験に来ているのかは謎だが、このままだと

敵の進路方向にいる峰田は確実に敵につぶされる。

助けないと!!

 

俺は両手首を合わせて手を開いて、体の前方に構える。

 

爺ちゃん直伝の必殺技。

残り少ないエネルギーだが、敵の進路を妨害することぐらいはできるはずだ!!

 

構えを取りエネルギーを集中させようとした瞬間。

また予期せぬ出来事が発生する。

 

なんと、なんと……!!

 

とっても中華でセクシーな服装の茶髪サイドポニーテイルの女子が峰田を助けようと敵に向かって走り出したのだ!!

しかもそこそこ大きいお乳様ですよ!!

揺れてます!!

もうブルンブルンです!!

 

ブルンブルンブルンブルンブルンブルンブルンブルン

 

ブルンブルンブルンブルンブルンブルンブルンブルン

 

ブルンブルンブルンブルンブルンブルンブルンブルン

 

「バーーーーストーーーーーーー!!!」

 

さっき妄想して得たエネルギーを超えるすさまじい力が全身を駆け巡る。

視覚から与えられる性的興奮とかつてないほどのエネルギーを感じながら、

俺は爺ちゃんの言葉を思い出した。

 

『いいか武。わしらの個性には段階があり、武の状態はまだ1じゃ。

段階を上げればまだまだ強くなれるが、同時に今の武ではデメリットも発生する。

壁を超える時は必ず注意するのじゃぞ』

 

 

爺ちゃん!デメリットは怖いし嫌だよ。

でも!!女の子(おっぱい)を守れないゴミクズ野郎にはなりたくねぇんだ!!

……あと、元クラスメートも!!

 

俺は今までに出したことのない速度で敵に向かって飛び出した。

 

 

☆審査員☆

 

限られた時間と広大な敷地……。

そこから見えてくるヒーローとして必要な要素が浮かびあがる。

 

状況をいち早く把握する為の『情報力』

 

遅れて登場じゃ、話にならない『機動力』

 

どんな状況でも冷静でいられるか『判断力』

 

そして純然たる『戦闘力』

 

平和を守るための基礎能力がポイントとして形を現す。

 

そしてヒーローとして最も重要な要素が巨大敵で現れる。

 

……。

 

「B演習場はすごい豊作だね」

 

「あのジャージのヤツ、面白いね。

アレに立ち向かってぶっ飛ばすなんて久しくみていないよ」

 

「D演習場も決着つきそうだぞ」

 

 

B演習場の映像が教員たち全員が見ているモニターに映し出される。

 

その映像には巨大なギミックに襲われている背の低いのが特徴の受験生が

転んで逃げ遅れている映像だった。

 

そして、その状況を見た女子が助けに行こうと疾走する。

 

男女は逆だがさっきのシュチュエーションによく似ている。

しかし、女子にはギミックを倒せる力はないようで、救助に専念している。

そんな時、去年に週刊誌やニュース・新聞で見た黄金の戦士。

ミッドナイトが見つけたとんでもない個性を持ち、学校初のスカウトによる特待性として教員達の注目を集めている男が姿を現した。

 

雄英初のスカウト。

より優れたヒーローの原石を見つける為にという、校長とミッドナイトの強い希望により、スカウト制度のテストケースとして彼が選ばれた。

もし彼が一年の間に優秀な成績を残して二年に進級した場合。

スカウト制度を有益と認め、実施する事になっている。

そんな大事な案件に関わっているとは一切知らされていない彼の情報は資料として

我々教員達に配られていたのだが……資料にプリントされた個性発動時の姿と今、画面の

目の前で巨大なギミックを蹴り上げる彼の姿とは異なっていた。

 

資料の写真と違い、現在の彼は全身に時折雷神のごとく稲妻状の火花が散り。

髪型も資料の映像や写真と比べ、髪がさらに細かく逆立っていた。

 

もしや個性を成長させたのか?

一年の間に?高校のヒーロー科に入っていない中学生が?

これがミッドナイトの言っていた原石なのか?

 

 

☆峰田☆

 

ちくしょう!!こんな所で!!

斉藤を超えるモテモテを目指して雄英を受けたオイラだったが

30ポイント獲得したところで近くのおっぱいに夢中になり転んで

足をくじいちまった!!

 

しかも、すぐそばで巨大な敵が!!

 

女体に触りたい!!彼女ほしい!!

 

「ちくしょーーーーー!!」

 

オイラが魂の叫びをあげた時、オッパイが降臨した。

 

「君、だいじょうぶ!?」

 

中華服を着た素敵オッパイが上下に揺れてオイラに話しかけてくる。

ああ、ここがアヴァロンか。

 

「さぁ、捕まって。ここから逃げだすよ!!」

 

つ、捕まる!?

つ、捕まっていいのかい!?

オイラは戦慄した。

まさかその≪ほどよいオッパイ≫に捕まれと言われるなんて!!

 

※誰も言っていません。

 

「さぁ!早く!!」

 

そ、それじゃあお言葉に甘えまして……。

いただきまーす!!

両手をワキワキさせながらオッパイに突っ込もうとした瞬間。

 

ヤツが俺たちの前に現れた。

 

金の髪にオーラみたいなものを噴き出している。

黄金の戦士と女子にちやほやされるあんちきしょうだ。

 

あいつは片腕で仮想敵のキャタピラの動きを止めていた。

なんてパワーだよ!!お前はオールマイトか!!?

 

「俺がもっとも許せないことが一つある」

 

ドウ!!

 

ヤツが言葉を放つと同時にあいつの纏うオーラが激しくなる。

おいおい!なんかやばくね!?

まだ仮想敵に襲われていたほうが安全だったんじゃ!?

悪い予感が脳内で激しい警報となって警告を始める。

 

ここから逃げろと

 

「女に傷をつけようとするクソ野郎だーーーーーー!!!!」

 

しかしもう遅い。

ヤツは…斉藤は怒りの咆哮を上げて、仮想敵の顎の部分まで瞬間移動して

蹴り上げる!

 

ドゴン!という音を辺りに響かせながら巨大な仮想敵は上空へと飛び上がった。

 

「「「「と、飛んだ―――――!!!!」」」」

 

これには避難していた受験生たちも絶叫を上げている。

そして斉藤の攻撃はまだ終わっていなかった。斉藤は上空で静止したまま

独特の構えをとる

 

 

両手首を合わせて手を開いて、体の前方に。

 

「か」

 

腰付近に両手を持っていきながら。

 

「め」

 

両手を完全に後ろにもっていくと同時に手の平に集まる光の塊。

 

「は…め…」

 

突き出される両手から光線が放たれた。

 

 

「はぁああああああああ!!!!」

 

 

辺りが光に包み込まれると同時に、敵は塵に還った。

 

そして……オイラは人の尊厳を失った。

 

じょぉおおお

 

ほどよいおっぱいが見ないフリをしてくれたのが唯一の救いかもしれない。

 

 

 


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