IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第9話 責任

Side 無月

 

謹慎生活3日目。授業に出なくて良いというのはかくも素晴らしいものか。もともと学園には通う必要がなかったのだ。これほど快適な空間はない。

 

コンコンコン

 

すると来訪者が来たようだ。1日1回山田先生が巡回に来るがまだ早い。一体誰が来たことやら。

 

「お前か」

 

「ああ。話があって来た」

 

立っていたのは軍人。一応俺が謹慎処分を受ける原因になった奴だ。だからといって別に恨んでいるわけではないが。

 

「まあ、上がっていけ」

 

「すまない」

 

俺は軍人を部屋に上げた。手狭な部屋ではあるが座ってお茶を飲むぐらいは可能な場所だ。軍人はココアを飲みたがったので入れてやって用件を聞くことにした。

 

 

 

「で、何の用だ?」

 

すると軍人は俺に頭を下げてきた。

 

「すまない。お前の謹慎は私が原因なのだろう?」

 

「ああ、そのことか。気にするな。決闘の結果だ。それに文句を言うのは無粋だろう?」

 

本当にここで生活していたいぐらいだ。それになんかこいつキャラ変わったか?前会った時の様子では自分から謝りに来るような奴ではなかったが。

 

「そうか。なら1つ聞かせてくれ。どうしてお前はそんなに強いのだ?私はドイツのIS部隊の隊長だ。私が手も足も出ないくらいお前は強かった」

 

強さか。どうしてなんて考えたことはない。復讐を達成するためには途方もない力がいる。だから強さを求めてきた。

 

「理由なんかない。俺には為すべきことがある。そのためには力が必要だ。だから強さを追い求めてきた。それこそ血反吐を吐いてもな」

 

「・・・復讐か?」

 

誰かに聞いてきたか?まあ、ここは女子高みたいなもの。噂の広まり方は尋常じゃないくらい早いからな。

 

「ああ」

 

「どうして復讐など―――「黙れ」・・・」

 

こいつにそれを言わせるわけにはいかない。

 

「俺が何を為そうとしようとお前には関係のないことだ。それにお前に俺の何がわかる?まあ、わかってもらう気もないが。今、お前に大切な人はいるか?」

 

「・・・いる。教官と嫁だ」

 

教官とは織斑千冬か?嫁は知らんが。こいつの大切な人が、奴とはね。こいつともいつか敵対するな。

 

「俺にもいた。昔な。だが、死んだ・・・いや殺されたと俺は思っている。俺はそいつらを許さない。必ず俺の手で始末する。そういうことだ。もう帰れ。用事は済んだはずだ」

 

「・・・ああ。すまなかったな」

 

そういって軍人は帰っていく。声を荒げるのは俺らしくなかったな。まあ、そんなことより

 

「楯無さん。盗み聞きが得意なのは構いませんが、いい加減出てきたらどうです?」

 

「あらら、参ったわね」

 

軍人が去った後、俺は部屋の外で会話を聞いていた楯無さんに声をかけた。本当に隠れて動くのが好きな人だと呆れる。もしかしたらそういう筋の人かもな。

 

「ここは謹慎室ですからお茶菓子はないですよ」

 

「心配は無用よ。ここに巷で話題のシュークリームを持って来たわ!」

 

といって得意げに箱を取りだした。さすが生徒会長。謹慎室の事もわかっている。

 

「それで謹慎になった流れはだいたい聞いているけど、何をしたの?」

 

「聞いているとおりですよ。決闘を申し込まれて、破壊しすぎた云々で謹慎です」

 

どこまで知っているのだろうか?軍人のISの暴走まで走っているだろうからあえて言う必要もないか。

 

「にして相変わらずね。相手はドイツの現役軍人なのよ」

 

ああ、確かにそんなこと言っていたな。確かに金髪よりも強かったと思う。根性もあったし。

 

「まあ、良いじゃないですか。それよりこんな話をしに来たわけじゃないでしょう?」

 

「鋭いわね。でもおねーさん、あなたとこうして話すのも結構好きなのよ?それなら単刀直入で聞くわ。あなたの復讐ってどこまでが目的なの?」

 

「どこまでとは?」

 

確証もなしにこんなことを聞く人ではない。おそらく俺の復讐対象を掴んだのだろう。まあ、経歴を漁ればいつかはわかることだ。逆にいえば、楯無さんはそれを探れるだけの立場があるということだ。

 

「事件の関係者だけで終わるのかしら?」

 

事件とはもちろん白騎士事件のことだろう。そして楯無さんは篠ノ之束と織斑千冬だけで終わるのかと聞いてきている。

 

「世界まで、と言ったらどうします?」

 

冗談っぽく聞こえるように言ってみる。

 

「あなたに何が起こったのかは大体理解したわ。あなたがどう考えたのかも。でも・・・それでも私はあなたに復讐をしてほしくないの」

 

「・・・・・・」

 

「復讐は全てのものを傷つける。私はあなたに傷ついてほしくないの」

 

そんなことはわかっている。ただ、俺はやらなければならないことだ。

 

「確かに復讐を果たしても両親は帰ってこないでしょう。しかし、奴らはのうのうと生きている。自らの罪も償わないままに。俺はそれが許せない。行動には結果が伴い、結果には責任が伴う。奴らは何の罪もない人間を殺した。だったら断罪されてしかるべきでしょう」

 

自らの欲望のままにテロ事件を起こし、人命を奪った2人。こいつらがのうのうと生きているという事実が辛い。織斑千冬などどの面を下げて教師面をしているというのか?

 

「だったらあなたが自分でやらなくても」

 

「奴らは既に法律でどうこうできる立場にはない。それに首謀者なんて行方不明。だから俺がやるんです」

 

「・・・そう」

 

楯無さんは俺を心配してくれたのだろうか?それとも忠告をしに来たのであろうか?いずれにせよ、自分を案じてくれた人など誰1人いなかった。不思議と嬉しさのようなものを感じていた。

 

「楯無さん。俺はもう進むしかないんです。じゃあ、もう時間ですね。謹慎中は暇なのでまた来てください」

 

「ええ。次もお茶菓子を持ってくるわ」

 

そう言って楯無さんは扉から出ていく。

 

 

 

Side 楯無

 

「・・・ダメか」

 

彼は私が思っている以上に復讐を理解していた。そして全てわかって復讐を為そうとしていた。曖昧な思いで復讐をしようとしていない分、その思いはより強固なものになっていた。

 

しかし、奴らとは一体どういうことなのか?白騎士を指しているのはわかる。しかし、どうやって白騎士の正体を掴んだのか?私は白騎士の情報を漁ったが、特定の人物につながるものは何一つ出てこなかった。

 

「お譲様、浮かない顔をして何かありましたか?」

 

お茶を入れてくれた布仏虚が私に声をかける。ここは生徒会室。普段の私はここを拠点にしている。もう1人虚の妹の本音も生徒会に入っているが、ここにはいない。

 

「いや、世の中思い通りに行かないのねって」

 

「恋愛などそういうものでしょう?相手がいるのですから。私は経験がないので存じ上げませんが」

 

「ゴホッゴホッ!!・・・虚!恋愛ってどういうこと?」

 

思わずむせてしまう。虚は一体どうしてしまったのだろうか?

 

「また彼の所に行ったのでしょう?仕事を放ってまで通っているのです。恋愛もいいですが仕事はしっかりしてください、お嬢様」

 

「いやいや、虚。確かに彼は気になるわよ。でもそれはそういう意味じゃないのよ?」

 

「はいはい。それと押すばかりが恋愛ではないといいます。たまには引いてみなければ相手は自分を見てくれないそうですよ」

 

なるほど、なるほどって違うわ!

 

「どうしてそういう話になっているのかしら?」

 

「お嬢様が彼の元に通っているのは周知の事実。本音など通い妻だと騒いでいましたから」

 

どうやら本音ちゃんとはゆっくり『OHANASHI』をしないといけないようね。それにしても霧雨無月くんか。そんな目で見たことはなかったけど、少なくとも自分があった男の中では上の方に来る人間だ。

 

容姿は中の上ぐらいだが、話してみると案外退屈しない人間だ。それにしっかりと自分というものを持っていて流されない意思の強さを感じる。復讐は止めたいが。

 

「うーん、案外悪くないかも」

 

「お嬢様、いい加減に仕事をしてください!」

 

虚に怒られながら私は仕事を続けた。全く。どっちが主従だかわからないわ。

 

 

 

                  ◇

 

 

 

Side 無月

 

「うーん、存外長かったな、2週間というのは」

 

学年別トーナメントが終了し、俺の謹慎は解かれた。優勝したのは織斑・男装ペアだった。まあ、良いのではないだろうか。軍人も惜しかったが、ペアがな。篠ノ之束の妹ではお話になるまいよ。

 

というか専用機持ちのペアってずるいよな。訓練機じゃどうあがいたって勝てない。練習時間が違いすぎるのだから。世の中公平じゃないということか、ままならないな。

 

教室に行くと異様なものを見る目で見られた。あらあらずいぶん嫌われたようで。でも謹慎の情報ってどうやって伝わったんだ?軍人のISの暴走は伝えられてないと思うから、俺が怒りのままに軍人のISを破壊したことになってるのか?

 

これは先生の不手際だな、これは。噂に尾ひれがどんどんついて俺は今まで以上の危険人物になれたというわけだ。そうこうしているうちに山田先生がSHRを始めて、男装が男装を止めた。

 

なんて呼べばいいんだ?まあ、負け犬でいいか。面倒くさいし。しかし、これで再び1人部屋か、良いことづくめだな。

 

次のイベントは臨海学校か。何かあるたびに俺を喜ばせてくれる学園だ。次もきっと何かが起きるのだろう。それが楽しみで仕方がない。俺は1週間後に迫った臨海学校へと思いを馳せていた。

 

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