Side 無月
「邪魔をするな織斑。消えろ。お前の仲間なら無事だろう?」
「俺がこいつをやる!お前はそこで見てろ!!」
そう言うや否や織斑が飛び出して行った。機体が変化している。こいつもセカンド・シフトをしたらしい。
行ってしまっては仕方ないので、俺は無人機の相手をすることにした。新月を展開し、打ち合いをする。すると、金色の光が生じたかと思うと専用機持ち達が再び戦闘に戻ってきた。
「悪いけど、キミはどいていてもらうよ」
負け犬が俺に言う。こちらに来たのは篠ノ之束の妹を除く4人。全員が全員、俺が邪魔だと思っているようだ。
「なあ、お前らは人の邪魔しかできないのか?命令違反に加えて任務を遂行している人間を邪魔者扱いか。お前らはどれだけ偉いんだ?」
とんでもない自己中心的な人間たちだと思う。そもそもここにいるのが間違っている。それを棚に上げて俺を邪魔者扱いとは。呆れてものも言えない。
「お前には悪いが、お前には下がっていてもらおう。福音の方には箒が向かった。無人機の相手は私達がする」
「そうよ!それにこいつは前、私をこけにしてくれた奴よ。借りを返すわ!」
「ええ。このブルー・ティアーズの力を見せてあげますわ」
何を言っても無駄だろう。。俺は戦闘から離脱して観戦することにした。4対1だ。数にものを言わせて攻撃し、損傷した無人機を戦闘不能に追い込んでいた。だが、失敗からは学ばない集団らしい。
海に墜ちた無人機は左腕のレールカノンに全てのエネルギーを乗せて打ち出そうとしていた。これを食らえばタダでは済まないだろう。俺はそれを見て瞬時加速をする。打ち出されそうになった直前に軍人が気付き声を上げるが遅い。
ガキンッ!
俺は写輪眼で見切った弾丸を真っ二つに切り、そのまま無人機を風の刃で破壊した。そして呆気にとられていた専用機持ち達のいる場所へと上昇した。
「お前らISに乗るのを止めたらどうだ?」
「いきなり何言うのよ!」
猫が噛みついてくる。
「お前は借りがあるといったな。そしてこいつに借りを返すと。だったらなぜ最後の攻撃をされたんだ?聞いた話では前に無人機と戦った時に同じような攻撃をされたんじゃなかったのか?」
「っ!そ、それは・・・」
俺は軍人の方を見る。
「お前は確かIS部隊の隊長だったな。軍人なのに命令違反。仇討ちだの何だと言って相手を撃墜したのがそんなに嬉しかったか?俺がいなかったら誰か死んでいたんだぞ?」
「くっ!」
そして残った2人を見た。
「それでお前らは代表候補生、と。私情に任せて突っ走る奴らが国の命令を聞けるはずがないだろう?代表候補生である以上、戦争があれば軍の指揮下に入る。命令の重要性は習わなかったのか?」
「「・・・・・・」」
代表候補生に軍人。一体何がしたかったんだ?専用機持ちは国の切り札。それが揃いも揃って命令違反をするとはな。
「まあ、俺が決めることじゃないしな。それに―――」
「霧雨!お前はまた何か言ってるのか!」
織斑がこちらにやってきた。篠ノ之束の妹がナターシャさんを抱えている。どうやら終わったらしい。
「特に何も言ってない。こいつらのしていることは命令違反。そして俺の邪魔をしに来ただけだ。そして1度は撃墜された。文句の1つくらい言う権利はあるだろう?」
「確かにそうかもしれないが、みんな無事なんだ。それに任務は達成した」
こいつは昨日言ったことすら覚えてないらしい。
「それは結果論だと昨日も言ったな。こいつらのやったことの重大性を考えてみろ。それにこいつらは挙句の果てに俺を邪魔だと言い放った。そして最後に油断して反撃を受けた。それをどう思う?」
「・・・・・・」
織斑は答えられない。こいつなりに理解しているんだろう。こいつらのやったことの重大性が。命令違反はまだいい。だが、最後に俺を邪魔者扱いし、反撃を許したのは庇いようがない
「だんまりか。まあ、いいさ。俺は先に帰らせてもらう。ゴスペルの操縦者は俺が運ぼう。お前らは言い訳でも考えながら来るがいいさ」
俺は篠ノ之束の妹からナターシャさんを受け取り、花月荘に向かって行った。
◇
Side 無月
花月荘に戻ってきた俺は山田先生に迎えられていた。織斑千冬は来てはいないが、いなくていい。
「お疲れ様です、霧雨くん。それにこの方が」
「ええ。『銀の福音』の操縦者です。ここで保護していただいていいでしょうか?」
俺は抱えていたナターシャさんを用意された部屋に運んで行って寝かせた。こうして見るとナターシャさんはモデル顔負けの美人だった。だが、長居するわけにもいかないので俺はさっさと山田先生のもとに行き、任務の報告をした。
「これで事情聴取は終わりです。お疲れさまでした」
「ええ。今日はもう寝ます。さすがに疲れましたから」
俺は部屋に戻り寝ることにした。途中で織斑千冬に説教を受けている専用機持ちを見かけたが自業自得だ。
まだ山田先生は帰ってこないだろう。俺は持ってきた口寄せの巻物からナターシャさんに渡すものを口寄せし、パソコンでUSBに今後するべきことを記した。明日、ナターシャさんは俺に会いに来るはずだ。その時に渡せばいいだろう。
遅れていた武装の稼働実験を終わらせて俺達は学園に帰るためのバスに乗っていた。
「ねえ、霧雨無月くんっているかしら」
そこへ鮮やかな金髪をし、透き通るような青い瞳をもったナターシャさんが現れ、俺をバスの外へと連れ出した。
「改めて自己紹介をするわ。私はナターシャ・ファイルス。銀の福音のパイロットよ。昨日はありがとう。」
「ええ。霧雨無月です。あまり長話は出来ないので、これを渡して置きます」
俺は用意していたネックレスとUSBメモリを渡した。
「・・・これは?」
「彼女を救うために必要なことを記したものです。詳しいことはUSBに入っています。これに従って動いてください。と言っても難しいことはないですから。それと、これを常に身につけておいてください。今回の作戦の要です」
ナターシャさんは俺から渡されたものを受け取るが、俺に質問をしてきた。
「なぜあなたはここまでしてくれるの?あなたにも危険が及ぶのよ」
当然の疑問だろう。見ず知らずの他人がここまでするということは裏があるようにしか思えないのだろう。
「俺は篠ノ之束に人生を狂わされた人間です。あなたも今回、奴のせいでとても危険な状況にあった。それにあなたはゴスペルを大切にしていたし、ゴスペルの願いもある。俺は素直に協力したいというだけですよ」
「・・・そんなことが。疑って悪かったわ。なら私もお礼をしないとね」
そういうとナターシャさんは近づいてきたかと思うと俺の頬にキスをした。
「ふふ。昨日はカッコよかったわよ、黒い騎士さん。じゃあ、またね」
あっけにとられる俺を尻目にナターシャさんは去っていった。俺は自分の頬が赤くなるのを感じた。これが大人の魅力か。
俺はそのままバスに乗ったが、しばらくは思考を放棄していた。そんな俺を乗せたまま、バスは学園へと向かって行くのだった。
臨海学校編は今回で終了です。
次回からオリジナルの話が入ってきます。
ただ、時系列的に原作は続いていきます。