IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第14話 目的

Side 無月

 

「ふう。間一髪だったわ」

 

「上手く行きましたね。じゃあ、俺はあいつを気絶させてきますね」

 

爆発から逃れたナターシャさんにそういうと俺は爆発に巻き込まれても無事でいたオータムの後ろに飛んだ。まだ砂埃が立ち込めているのでちょうどいい煙幕だった。

 

 

 

「バカが。そんなもん効くわけないだろうに。さて、私ももう帰るか。スコールが早く帰ってこいって言ってたしな―――ぐあっ!」

 

ナターシャさんが自爆したと思って油断していたオータムを後ろから須佐能乎の全力の一撃をぶつける。オータムは背後から思ってもいない一撃を受け、転がっていく。

 

「だ、誰だ!?」

 

まだISは解除されていないのか。だが、もう少しなはずだ。そう考えた俺は姿を隠すためにも霧隠れの術を使う。

 

「急に霧が?」

 

突然の霧にあっけにとられるオータム。当然だ。こんな場所に霧が発生するはずがない。奴はまだ何が起きたのかわかっていないのだろう。そして俺は輪廻眼を発動し、天牙を口寄せした。

 

「制御がきかないだと!?何だってんだ、次は?」

 

万象天引によってこちらに引き寄せられるオータム。霧の中で視界が悪く何が起きているのかもわからないはずだ。俺は天牙に風遁のチャクラを込め、間合いに入ってきたオータムを切りつけた。

 

「ぐうっ!」

 

そしてオータムのISはエネルギーが尽き、ISが解除される。未だに何が起きたのかわかっておらず、地面に膝をつくオータムに接近し、写輪眼で幻術にかけ、オータムの意識を奪った。

 

 

 

「ほい、いっちょ上がり!」

 

「・・・何をしたらこうなるのよ」

 

オータムを抱えてナターシャさんの元に俺は飛んだ。ここなら監視カメラにも見つからないはずだ。

 

「それはまた次の機会にでも。ナターシャさん。こいつが隠し持っているコアを取ってください。俺がやるとセクハラになるので」

 

なんだかんだ言ってもオータムは女だ。俺がやるわけにはいかない。女尊男卑云々関係なく、俺が終わる。社会的な意味で。

 

「わかったわ。こっちに寄こして」

 

そういうとナターシャさんはオータムが持っているであろうコアを見つけようと服の中を探し始めた。

 

「でもまさかあんなに上手くいくとは思わなかったわ」

 

「それはナターシャさんの演技のおかげですよ。女優を目指したらどうです?」

 

俺はナターシャさんに向かって放たれた弾丸を神威で消し、被弾をさせなかった。流れた血はトマトジュースだったのだ。爆弾を避けられたのは飛雷神の術で爆発前にナターシャさんを助け出したから、というわけだ。

 

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね・・・見つけたわ」

 

コアを手に持ってこちらに見せるナターシャさん。

 

「では撤退と行きますか。離れる祖国に一言あります?」

 

「ありがとう、そしてさようなら、とでも言っておくわ」

 

俺はオータムを人目につかない場所に移動させた後、ナターシャさんの所に行き、飛雷神の術で再び飛んだ。

 

これでナターシャさんはISを守って死んだ英雄として扱われることになるだろう。目的のゴスペルのコアも奪取できた。今回は完璧と言ってもいいくらいの出来だったといえる。

 

 

 

「待っていましたよ、無月くん」

 

「無理を聞いてもらって申し訳ないです。北条さん」

 

俺が飛んだのはミラージュにある北条さんの部屋。緊急の救出劇だったが、連絡を取る時間はあったので事情を説明しておいたのだった。

 

「それでそちらの女性が・・・」

 

「はい。ナターシャ・ファイルスです」

 

ナターシャさんが自己紹介をする。まだ事情が呑み込めていないようなので説明することにした。

 

「ナターシャさんにはしばらくの間、ここにいてもらいます。といっても監視とかじゃないですよ。自由にしていてください。ただ、外出する時は変装してくださいね。一応、死んでることになっているので」

 

「それはわかったのだけれど、ゴスペルはどうなるの?」

 

そういってナターシャさんはゴスペルのコアを取りだした。

 

「ゴスペルの設計データと稼働データは持ってきてますよね?」

 

「ええ。それはここに入っているわ」

 

持っていたUSBを取りだすが、まだ事情は呑み込めていないようだ。

 

「ここはミラージュ。ここの技術を駆使すればゴスペルの全てを再現できます。それほどの場所ですから」

 

「ええ、無月くんの言うように『銀の福音』を再現してみせましょう。我々の技術力の証明にさせてもらいますよ」

 

北条さんが自信ありげに言う。ここはそれだけの技術を持っている。最先端科学研究所の名は伊達じゃないのだ。

 

「・・・本当に?」

 

「もう1度空を飛ばせる、それがゴスペルとの約束ですから。北条さんもここのみんなもやってくれるそうです」

 

ゴスペルとの約束。それを話すとみんながゴスペルをもう1度空に、という思いを全員が持っていた。中には感動して泣きだす者もいたほどだ。

 

「ありがとう、無月くん、北条さん」

 

満面の笑みでナターシャさんが言う。笑顔は女性の最高の化粧とは言ったものだ。こちらまで嬉しくなってくる。

 

「なら、俺はもう帰りますね。ナターシャさんはゆっくり休んでてください。また何かあれば連絡ください。夏休みが終わる前に1度は顔を出しますから」

 

「そういえばあなた、学生だったわね。今は夏休み期間中じゃないの?」

 

確かにそうだ。だが、俺にはやることが多い。

 

「今後の俺の身の振り方はまた教えます。おそらく真っ当な道ではないですが」

 

「あなたは何が目的なの?」

 

ナターシャさんには教えておいてもいいだろう。もう共犯みたいなものだし。

 

「織斑千冬と篠ノ之束に対する復讐です。それに俺はこの世界を許さない」

 

「恨みがあるって言ってたわね。どういうことなのかしら?」

 

俺はISをすべて破壊するという考えは既になかった。ISコアには意思がある。それは雫とゴスペルから教えてもらった。問題は利用する側なのだ。ISをただの兵器としか見ない政府からコアを取り上げる。

 

本来は宇宙開発を目的として作られたもの。ならばその道で使って行くべきだ。世界を再編するためには戦争しかない。そして勝利し、コアを回収してみせる。ISが兵器でなくなるということは女尊男卑の解消にもつながるだろう。

 

「白騎士事件。あれで俺の両親は死にました。篠ノ之束が自己顕示のために各国をハッキングしたミサイルによって」

 

「そんな!?事件の被害者は0だって聞いたわ。それにブリュンヒルデがどう関係するの?」

 

ナターシャさんはアメリカの国家代表だが、白騎士事件の真相は知らないようだ。

 

「白騎士の操縦者は織斑千冬だからです。やつも篠ノ之束の計画に協力したということは俺の両親を殺した1人です。そして事件の死傷者が0というのは政府によって隠蔽が為されたからです。俺は口止めされましたよ。ISの有用性に比べれば小さな犠牲だと」

 

「・・・そんな」

 

まあ、信じられないのも無理はない。これは表では決して明かされない真実なのだから。

 

「2人には必ず復讐をする。これが俺の目的です。目的はもっと先にありますが、それはまた次回でいいでしょう。それじゃあ、また」

 

そういうと俺は飛雷神の術を発動し、自分の部屋に戻ってきた。そして俺はベッドに入るとすぐに眠りに就いた。

 

 

 

Side ナターシャ

 

私は彼が去った後もしばらくその場に立ち尽くしていた。

 

「・・・復讐」

 

彼は確かにそう言った。両親が白騎士事件の被害者になっていたというのは驚きだった。あの時のことは今でも覚えている。

 

テレビに映し出される白いIS。ミサイルを次々に撃墜し、アメリカをはじめとするミサイルを発射した国々は安堵の息を漏らすとともに、私達一般市民はすごいものがあるものだと歓声を上げていた。

 

「無月くんは御両親を大切にしていました。それが理不尽に奪われたのです。思うことがあったのでしょう。ここに来た時からすさまじい覇気でしたよ」

 

北条さんが言う。年は40代半らしいが、髪は黒く若々しい。整った、人の良さそうな顔立ちと力のある目が特徴的な人だった。

 

「彼の事、詳しく教えてもらえますか?」

 

 

 

私は応接間のような場所に通され、無月くんの過去の話を聞いた。それはすさまじいとしか言いようのない内容だった。

 

「・・・そんな風に生きてきたんですか」

 

9歳でここにきてISが動かせると判明してから彼は自身の特殊な力の事もあり、実験に協力するという名目で能力を鍛えていたらしい。

 

話を聞く限り、およそ訓練といえるような内容ではない。毎日倒れるまで体を酷使し、常人には考えられないような訓練をしていた。それこそ血を吐くようなこともやったらしい。

 

「無月君は本来優しい人間です。しかし白騎士事件が全てを変えてしまった。私は2人の親友を奪われ、彼もまた・・・私も憎いですよ、あの2人が」

 

北条さんが拳を握る。北条さんと無月くんの両親は大学時代の親友らしい。卒業と同時にミラージュを立ち上げて研究を重ねていたようだ。しかし、白騎士事件でその親友は亡くなった。

 

私も篠ノ之束を許すことは出来ない。私を守るために、望まぬ戦いに身を投じたゴスペル。強引なセカンド・シフトは大きな負担だっただろう。それに彼がいなかったら、空を飛びたいという彼女の願いは永遠に果たされなかった。

 

「・・・私に何かできることはあるのでしょうか?」

 

彼は確かに優しい人間だ。今回も本当なら私を助ける理由はない。今回はオータムを利用できたが、本来の作戦なら彼自身も危うく世界から狙われる身になったかもしれない。

 

「彼を見守ってあげて下さい。彼の復讐は世界をも巻き込むでしょう。それに協力してあげてくれとは言いません。しかし、あなたは彼の真実を知る数少ない1人。彼の理解者でいてあげて下さい」

 

「・・・ええ」

 

もちろんそのつもりだった。それに私は彼に2度も助けてもらった。その恩を返すためにも私は彼のそばにいようと思う。それが修羅の道でも・・・。

 





今回で主人公のもつ万華鏡写輪眼の能力が出揃いました。
左目→天照、神威
右目→月読、加具土命
両目→須佐能乎

ちなみに神威は対象を時空間に飛ばすだけです。
物の出し入れをしたり、物体が体をすり抜けるなどはできません。
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