IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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文化祭編が始まります。


第16話 生きたい

 

Side 無月

 

夏休みの終盤、俺は約束通りにナターシャさんに会いに行き、俺の目的を話した。驚いたことにナターシャさんは俺についてきてくれるそうだ。何故かはわからないので聞いたが、俺に助けられたからだそうだ。

 

ゴスペルの復旧はだいぶ進んでおり、月読の世界で会ったらもう1度飛べると、とても嬉しそうにしていた。もう二度と篠ノ之束に暴走させられないように、ミラージュでコア・ネットワークを外してもらった。

 

意図的にネットワークを外したのでリスク自体は不明だが、IS同士の経験の共有という自己進化の部分が失われたので、セカンド・シフトをするのが難しくなると言われていた。それを伝えると、ゴスペルは暴走なんかよりずっとましだと言っていたが。

 

そしてIS学園は学園祭が間近に迫っていた。1年1組はメイド喫茶改め『ご奉仕喫茶』だった。俺も執事をやらされることとなったが、関心はなかった。適当にこなせばいいだけなのだ。それよりも学園祭後の方が重要だった。

 

 

 

「あら、なかなか似合っているわよ」

 

学園祭当日、ナターシャさんがいそいそと働く俺の所に来ていた。生徒1人につき1名まで学園祭に招待できる招待券があり、ナターシャさんが行きたいと言ったので招待券を渡したのだった。

 

招待券は3枚あり、3日ある学園祭の各日に使えるものだ。そのうちの1枚をナターシャさんに渡してある。残りは北条さんに渡しておいたので誰か来るのだろう。

 

「バレたらどうするんですか?」

 

「あら、大丈夫よ。変装はしてるし、顔を見られたといっても専用機持ちの子たちはあっちの王子様に夢中だから」

 

確かに専用機持ち達は織斑の一挙手一投足に注目しており、ナターシャさんどころではないだろう。ここぞとばかりに織斑に甘えてくる女の子たちに警戒心を抱いているからだ。

 

「はあ、そんなもんですか」

 

「そんなものよ。なら私はこれをお願いしようかしら」

 

そういってナターシャさんが指さしたのは『執事の特別ご褒美セット』だった。値段は学園祭なのに3000円というぼったくりものだ。

 

「お嬢様。当店ではこちらのケーキセットがお勧めですよ。本日のケーキは当店自慢のモンブランです」

 

これは何としても避けたいものだった。見知らぬ人にやるのはともかく知り合いにやるのは恥ずかしすぎるものなのだ。

 

「霧雨無月くん。今日のあなたはどういう立場なのかしら?」

 

ナターシャさんが悪そうな顔で言う。

 

「・・・執事です」

 

「そう、あなたは執事。じゃあ私はこのお店ではどういう立場なのかしら?」

 

くっ!どうやら勝てそうにない。ナターシャさんがこの店にいる以上、お客様であり奉仕すべきお嬢様なのだ。

 

「当店に来店されたお嬢様で、我々が御奉仕させていただくお嬢様です」

 

「正解よ。そしてあなたは執事で私はお嬢様。仕える側の人間が主人に逆らえる道理は存在しないのよ、無月くん」

 

俺の答えを聞いて満足そうなナターシャさん。逃げる術はないようだ。

 

「かしこまりました、お嬢様。少々お待ちくださいませ」

 

観念した俺は『執事の特別ご奉仕セット』が注文されたことを伝え、キッチンからセットのケーキが渡される。内容は小さいパフェにドリンクというシンプルなものでぼったくりもいいところだった。

 

 

 

「お待たせいたしました、お嬢様」

 

「ええ」

 

俺はナターシャさんの座るテーブルに戻り、横に腰掛ける。

 

「それでは失礼いたします」

 

そういうとパフェをひとすくいし、ナターシャさんの口元に持っていった。ナターシャさんはパクリと一口食べ、満足そうにする。知り合いにするのは何とも恥ずかしいな、これは。

 

俺の恥ずかしさなど関係ないといった風にナターシャさんはおいしそうにパフェを食べ続けた。俺は必死にお嬢様を喜ばせる努力をしつつ、パフェを食べきってもらった。

 

「特別って言うくらい何だもの。まだ終わりじゃないんでしょう?」

 

ナターシャさんがふと言う。察しが良いな。頭のいい人はこれだから嫌なんだ。

 

「も、もちろんでございますお嬢様。それでは立っていただいてよろしいですか?

 

「わかったわ。けど立ってどうするの?」

 

言い質問だ、ナターシャさん。俺も突然立てと言われれば疑問符しかないだろう。

 

「こちらにどうぞ」

 

そういって俺は手を取って教室の隅に設けられたスペースにナターシャさんをエスコートして行き、入ってもらった。そこには待ってましたと言わんばかりに、カメラを構えたクラスの女子が待ち構えていた。

 

「写真を撮ってくれるのね」

 

正解なんだけど正解じゃない。それだけならどれほど良かったことか。俺は深く深呼吸をするとナターシャさんに声をかけた。

 

「失礼します、お嬢様」

 

そういって俺はナターシャさんを御姫様だっこしてカメラの方を向く。ナターシャさんは突然のことに困惑しつつも『特別』の意味を悟ったようで焦りはない。

 

「うーん・・・写真を撮る体勢は自由なのかしら?」

 

そう写真係の女の子に聞く。

 

「はい。お姫様抱っこの姿勢なら問題はないです」

 

ナターシャさんの意図がわからないが、女の子も規定通りの回答をする。

 

「なら、これもいいわね」

 

「ええっ!?ちょっと、お嬢様?」

 

そういうとナターシャさんは手を俺の首にまわした。俺はナターシャさんとさらに密着する形とる。ナターシャさんはモデル顔負けのスタイルの良さもあり、豊かに実ったモノの柔らかい感触まである。

 

気恥かしさで気が気ではない。それに女性特有のいい匂いまでしてくる。

 

「はい、じゃあ取りますよ。はいチーズ」

 

俺の焦りが考慮されることはなく、そのままシャッターが切られた。

 

 

 

「うーん、さすがは『特別』というだけあるわね。満足よ」

 

「・・・ありがとうございます、お嬢様。またの御来店をお待ちしております」

 

写真を受け取り満足そうだったナターシャさんは他のクラスの出し物を見るといって退店していった。俺は次の指名が入っており、そちらに向かうのだった。どうも俺が執事をして従順と言うのが面白いらしく、ひっきりなしに指名を受けていた。

 

 

 

                  ◇

 

 

 

Side 無月

 

初日の出し物が終わりの時間に近づき、俺はもう上がっていいと言われたので1人寮に向かう廊下を歩いていた・・・が、どうもお客さんらしい。

 

「・・・霧雨無月だな?」

 

「ご名答。あんたは誰だ?ISを装備して挨拶はないだろ?」

 

俺の目の前に現れたのはISを装備した女。バイザーで顔は見えないが装備しているISは金髪のISに似ていた。

 

「悪いが一緒に来てもらう」

 

俺の話は無視してそいつは俺に銃をつきつける。が、そんなものでは何もできないだろう。

 

「物騒な世の中だな。大人しく「はい」と言うとでも思ったか?思ってんなら出直してこい。行くぞ、雫」

 

IS学園は無意味にでかいので廊下も広いが、ISで試合ができるような広さは当然ない。生身で戦っても良かったが、敵に能力を知られるわけにはいかない。

 

「それを待っていた!」

 

と女が言い、戦闘が始まった。

 

 

 

「バカな、ありえない」

 

「目の前にある光景が真実だ。お前は強いよ。少なくとも俺のクラスの誰よりも強いさ。ただ、相手が悪かった。それだけだ」

 

相手はやはり金髪と同じようなISだった。ビットと大型レーザーライフルを使うIS。金髪よりも扱いに熟練しており、フレキシブルというビームを途中で曲げる技術も持っていた。が、俺にエネルギー兵装は無効だ。

 

「エネルギー兵器が効かないだと!?そんな話があってたまるか!!」

 

そういってビットを使って総攻撃を仕掛けてくる。

 

「無駄だ」

 

俺は封術吸引でエネルギーを無効化し、女の方を見る。

 

「さて、顔を見せてもらおうか!」

 

そういって俺は女に接近する。雫の瞬時加速は世界最高峰。エネルギーが無効化されたことに対する動揺もあってか、女の反応が鈍い。俺はバイザーを破壊し、女の顔を見て衝撃を受けた。そいつが織斑千冬とそっくりだったからだ。

 

「・・・お前は誰だ?」

 

そういうが女はニヤリと笑うと俺の胸に何かを取りつけた。

 

「なんだこれは?・・・ぐあっ!」

 

全身に電流が駆け巡る。けっこうな痛さだが、我慢できるレベルだ。この程度の苦痛なら嫌というほど受けてきている。だが、不思議なことに雫が解除されてしまった。

 

「油断などしているからだ、バカな奴め」

 

そういうやつの手元には黒いクリスタル。あれは雫のコアだった。

 

「へー、それはISを強制的に操縦者から奪い取るものか。お前、面白いものを持っているな」

 

「お前のISは強力だ。だから我々が使わせてもらおう。それにお前を連れ去って研究材料にしてやる。あの電撃に耐える体とは面白い」

 

織斑千冬に似た女は勝ち誇った笑みを浮かべる。俺が何もできないとでも思っているのだろう。だが、それは不正解だ。

 

「そう簡単にいくと思うか?」

 

「お前にISはない。お前を捕えることなど児戯にも等しい」

 

そういってますます笑みを深める。こいつには聞きたいことが山ほどできた。

 

「連れ去られるのはお前の方さ。いろいろ聞かせてもらうぞ!」

 

そう言って俺は天牙を口寄せし、雷遁の鎧を纏う。輪廻眼で対応できるだろう。それにビーム兵器もあるし、念のためにな。

 

「な、なんだそれは。それにその眼は何だ?」

 

俺の変化に戸惑い驚いたという表情をする。だが、まだ自分の優位を疑っていないようだ。

 

「ここで見たことは内緒だぞ!!」

 

そう言って俺は一瞬で相手の背後に回り、一太刀を浴びせる。

 

「くっ!」

 

なんとか対応した織斑千冬に似た女は前に飛び、最小限の傷で凌ぎ切った。俺は一撃で仕留められなかったことに驚いていた。

 

「お前、すごいな。これに対応できる奴はそうそういないぞ?」

 

「・・・化け物め」

 

織斑千冬に似た女にもうさっきまでの余裕はなかった。殺しに行くくらいがちょうどいいと判断したのかライフルとビットを攻撃に回してくる。

 

「・・・ハイパーセンサーで見切れない攻撃ってあると思うか?」

 

「急に何を言っている?中国の技術でそんなものがあると聞いたが、そんなもので私が止まると思うな」

 

たぶん猫の衝撃砲の事を言っているのだろう。あれは見えづらい代わりに攻撃力がそれほど高いわけではない。だが、俺の風の刃は違う。一撃の大きさはハヤテの時に証明済みだ。

 

「残念だったな。これで終わりだ」

 

「一体何を言って―――ぐあっ!!」

 

見えない刃は止めることができない。その言葉通りの展開だった。織斑千冬に似た女のISは解除され、俺は雫を取り戻し、女を確保した。逃げられないように縛り上げる。

 

女性を縛りあげる男。これはまずいんじゃないかと思うが、気にしたら負けだ。これは犯罪じゃない。必要なことなのだ。

 

「・・・私をどうする気だ?」

 

織斑千冬に似た女は抵抗を諦めたのかこちらに聞いてくる。当然ISも含めた武器は取り上げているので何もできない。

 

「なに、ちょっとついてきてもらうだけだ」

 

そういって俺は女を抱えてミラージュへと飛んだ。

 

 

 

「・・・無月くん、この事はナターシャさんに報告させてもらいます」

 

俺を見るや否や北条さんが言った言葉は俺を深く傷つけた。それになんでナターシャさん!?

 

「まあ、詳しいことは後で話します。あの部屋、借りますね」

 

「もしもし、警察ですか?匿名でお願いしたいのですが―――」

 

と、急に警察に電話をかけ始める北条さん。ちょっと待って!!お願いだから、話を聞いて!!!

 

「ちょーっと待って下さい。怪しいことをするんじゃないです。俺はこいつに襲われたんです。顔も織斑千冬にそっくりだし、聞きたいことが山ほどあるんですよ!!」

 

「ふむ。わかりました。念のため私も同行しましょう」

 

念のためってなんだよ!激しくツッコミたいがそれは我慢する。俺と北条さんと織斑千冬に似た女は窓も一切ない真っ白な部屋へ入ってきた。

 

 

 

「で、お前は誰だ?知っていることを話してもらおうか」

 

「・・・バカが。そんなこと言うはずがないだろう」

 

女の拘束を解いて椅子に座らせたが、一向に口を割る気配はない。

 

「まあ、そうだな。でも拷問とかは嫌なんだよ。情報抜いてもいいけど、死んじゃうしなあ」

 

人間道の力なら一瞬で情報を抜けるが死んでしまっては意味がない。その後は一言も話さず、時間だけが過ぎていったが、俺は女が微妙に震え始めているのに気がついた。

 

「おい、お前はなんで震えているんだ?」

 

女は震えが気付かれたことに驚いたようだが、すぐにその顔は元に戻り、口を開いた。

 

「・・・私の体には裏切りや任務が失敗した時の場合に備えて時限式のナノマシンが仕込まれている。あと3分もすれば私は死ぬ。情報が得られず残念だったな」

 

こんなことまで強いる組織だ。闇の中の闇だな。だが、震えているところを見ると死ぬのが怖いのだろう。当然だ。誰でも死にたくはない。望んで死を選ぶ奴などいないのだから。

 

「死ぬのが怖いのか?」

 

「・・・この組織に入った時から覚悟していたことだ」

 

表情も変えずに女が言う。

 

「生きたくはないのか?」

 

生かす方法がないわけではない。が、無理矢理生き延びさせてやることもない。沈黙がこの空間を支配する。

 

「それができるくらいならもうやってる!!・・・だが、もうダメなんだ。私には選択肢がない」

 

「・・・もう一度だけ聞く。生きたくはないのか?」

 

女の言った3分まで時間がもうない。俺は最後の意思確認をするために答えを待った。

 

「生きたいに決まってるだろ!?まだ死にたくはない!!」

 

女は力の限り叫ぶ。気丈に振る舞っていた時とは違い、目に涙を浮かべていた。

 

「・・・なら、少し痛いが我慢しろ」

 

そう言って俺は印を結び、女の口に2本の指を入れ、術を発動させる。

 

「雷遁・感激波!!」

 

「あ、あああああああっ!!!!」

 

耳をつんざく悲鳴が女から上がる。相手を感電させるのが目的で、並の人間なら死ぬような電撃だが、こいつなら生き残る気がした。

 

目的は体内にあるナノマシンの破壊。体内にある以上、多少の衝撃には耐えられる作りだろうが、人が一人死ぬくらい強い電撃を浴びて正常に作動するマシンなど存在しないだろう。

 

そして俺は急いで掌仙術で女を治療する。医療忍術は綱手やカブトのようなトップクラスの者には及ばないだろうが自分の治療のために必死に覚えたので多少の自信はある。俺の狙った通り、女は気絶をして寝てはいるものの生きているようだった。

 

「さて、俺はこれ以上ここにいるわけにはいきません。こいつを連れて帰りますね。自分の部屋で聞きたいことがありますから」

 

「わかりました。彼女もここで暮らすのでしょう。ナターシャさんと同じ部屋を用意しておきます」

 

俺もそのつもりだったので俺の意図を読み取ってくれた北条さんに感謝して自分の部屋に戻り、女を寝かせておくことにした。当然、何かあったのか事情聴取されたが、倒しましたが、隙を突かれて逃げられてしまいましたと言っておいた。

 

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