IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第2部開始です。




第20話 国造り

Side マドカ

 

「国を作ると簡単に言ったが、一体何をするんだ?」

 

ミラージュに帰った後、話の真意を聞くために無月と話をしていた。

 

「旧ユーゴスラビア。紛争が続いているここを統一する・・・って、そう怪しむな。紛争を煽っている奴と幹部たちの情報はもう探ってある。こいつらを排除して統一するだけだ」

 

簡単に言ってくれる。

 

「・・・その後は?」

 

「女尊男卑に辟易してる奴は多い。そいつらを取り込んで発展の基礎にする。ミラージュも移転をしてもらって資金面でのバックアップをしてもらう予定だ」

 

途方もない話だ。でも当然のことか。国を作ることなんてしたことがないのだから規模がわかるはずもないのだから。

 

「私も何かすることはあるのか?」

 

無月に協力するといった以上、私も何かしたいと思う。ただ、政治方面についてはさっぱりなのでできることはないだろう。

 

「マドカは俺とナターシャさんと一緒に戦力集めをしてもらいたい」

 

「当てはあるのか?」

 

戦力集めといっても容易なことではない。要するに引き抜きだ。所属を変えることは組織への反逆を意味するからだ。

 

「まずは亡国企業かな。あそこを潰して戦力を引き抜く」

 

頭が痛くなった。亡国企業を潰すだと?私はかつてそこに所属していただけあってどういう組織なのか知っている。規模も大きさもだ。

 

「俺とマドカとナターシャさんがいるんだ。難しいことじゃない。組織の情報はほとんど掴んでいる。後は掃除をするだけだよ。それに俺達のやることを全て亡国企業のせいにできるんだ。動きやすいったらないぞ?」

 

「確かにそうだが・・・どうやって情報を手に入れたんだ?私だって組織の全貌は知らなかったんだぞ?」

 

そうなのだ。私でさえ知っていたのは戦力の中核を為すIS部隊と一部の関連部署だけ、どのような情報を手に入れればそんなことが可能になるのか?

 

「ああ。確か8月の中旬に最高幹部が1人行方をくらませただろう?」

 

「確かにそうだが・・・まさかお前がやったのか?」

 

にやりと笑う無月。最高幹部の突然の失踪。あれには組織中が大騒動になったのだ。ただそのおかげでオータムへの処分が有耶無耶になり、オータムは学園祭の際に織斑一夏襲撃を任されたのだった。

 

「一体何をしたらそんなことができるんだ?」

 

1人でできることの次元を超えている。どんなこと手を使ったのか?

 

「そうだな。俺の能力を教えておくか。主に使ったのはこいつだ」

 

そういって手で何かを形作る無月。何をしようというのか。それを終えると両手の2本の指を十字の形に合わせ、言った。

 

「多重・影分身の術」

 

ボボボボンッ!

 

「な、なんなんだこれは!?」

 

急に無月が5人に増えた。しかもホログラムの類ではなく、それぞれが実体を持っている。

 

「「「「「影分身の術だ」」」」」

 

示し合わせたかのように声が重なる。気味が悪いな。

 

「わかったから1人に戻ってくれ。同じ顔が5つもあると落ち着かない」

 

「「「「「それもそうか」」」」」

 

ボフンッ!

 

また1人に戻る無月。しかし、何なんだったんだ?

 

「まあ、これでひたすら必要な情報を漁っていたからな。幹部までたどり着いて、情報を抜いてやったわけだ」

 

うんうん、と1人で頷く無月。私は呆れてものも言えなくなっていた。

 

「それで、国を作った後は組織を潰して戦力集めか?」

 

「ああ。半年で戦力を集めて徹底的に鍛える」

 

「全く、お前は」

 

軽く言ってくれるが、自信があるのだろう。私ですら歯が立たなかった相手だ。勝算もあるのだろう。

 

「簡単なことではないが、不可能なことでもない。知らない土地への旅行ぐらいの心持ちでいいんじゃないか?」

 

確かに私は物心ついた時から組織で生活していたため娯楽というものを知らなかった。やっていたのはほとんど任務だけだったからな。そして出会ってから日は浅いが組織のメンバーと違って緊張しなくても良いメンバーでの旅。これも面白いのかもしれない。

 

「それも楽しそうだな。プランは任せるぞ?」

 

「あーあ、る○ぶを全巻に買いに行くか」

 

と、なぜか動揺を見せる無月。これが戦いになると別人みたいになるのだから面白いものだと思う。

 

「なら、さっさと準備して行くぞ。どうせ世界各地にあの術式を置いてきているんだろう?」

 

一瞬で移動する技は本当に重宝するべきだと思う。あの影分身というやつは実体を持っている。行く先々に術式を残しているのだろう。

 

「よくわかったな。けど旅は行く過程を楽しむものらしいぞ?」

 

「それは紛争を終わらせた後のことだろう?さっさと国を作って時間を作るべきなんじゃないか?」

 

旅を楽しみにしている自分がいたのは不思議だった。

 

「お前、実はけっこう楽しみにしてるだろう?」

 

「うるさい!私は準備をしに行ってくる」

 

旅を楽しみにしていることを指摘されると恥ずかしかったので、そこで会話を切り、私は旧ユーゴスラビアに向かうための準備をしに部屋に戻っていった。

 

 

 

             ◇

 

 

 

Side マドカ

 

紛争地域の統一は思っていた以上に早く終わった。ユーゴスラビアに飛んですぐ、無月は例の分身を使い各地に散っていった。

 

そしてこちらに投降する意思のない幹部たちを殺害・もしくは操って、組織を壊滅させていった。組織というものは頭を叩くことで想像以上に弱体化するものらしい。そして無月の手際の良さを見る限り、だいぶ前から準備を進めていたらしい。

 

各地でそのような事態が続き、紛争地域は瞬く間に統一されたのだった。統一はすぐに国際的に発表され、行きすぎた女尊男卑を止め、平等な国家の建設を宣言した。大統領には統一を目指して活動してきた者が選ばれたが、こいつは無月の操り人形に過ぎない。

 

しかし、当然、抵抗というものがあり、中にはISを使ってくる者もいたが、私が鎮圧に向かった。サイレント・ゼフィロスは暴走防止のため、コア・ネットワークだけは外されたが、他はそのままだった。しかし、今後はミラージュの技術で改造していくらしい。

 

抵抗勢力は全て決起してから1日も持たずに鎮圧され、次第にそれはなくなった。その後は1カ月ほどかけて政府機能を回復させ、平行して優秀な人材を国に引き入れ、資本を呼び込んだ。

 

女尊男卑に異を唱えるものは想像以上に多く、既存の法律を改正。見せしめに何人かを実際に逮捕すると、その流れは一気に強まり、こぞって国籍を移しに来た。

 

企業の筆頭はミラージュ。ここは世界でも有数の技術力を誇る企業であり、他の企業に先駆けてユーゴスラビア入りした。それが資本流入の流れを作り、企業が次々と入ってきたのだった。

 

人が入れば当然スパイも入ってくる。それを伝えたが、無月は問題ないと言っていた。何をするのかと思っていたが、突然雨を降らしたのだった。なんでもこの雨に触れれば国に害を為す者がわかるらしい。

 

その後、自身の分身を警備に回し、首都にいるスパイを全て捕まえて見せた。今後は警備部隊を設立し、この雨も併せて使うことで情報を遮断するらしい。

 

捕えられたスパイは幻術というもので操り、逆に二重スパイとして用いるようだ。偶にわざと間違った情報も与えて謀略に使うらしい。情報戦に関してはミラージュの得意分野なので問題がないようだ。

 

私はというと、こういった謀略は苦手で政治面では役に立たない。ましてやこの顔だ。下手に顔を出せば大騒ぎになってしまうので、なかなか生活しづらかった。

 

だが、無月の目的を達成するためには戦闘部隊がいる。表ではなく、裏で動く戦争の核となる部隊が、だ。私とナターシャはそこで働くらしく、仲間が集まるまではミラージュでの戦闘訓練が主な仕事だった。

 

ナターシャは国家代表をしていただけあって強く、私と同等かそれ以上の実力者だった。特に復活した『銀の福音』を使って空を駆ける姿は生き生きとしていた。

 

当然、戦闘部隊というだけあって生身の実力も必要となり、武術を徹底的に仕込まれた。といってもまだ筋トレなどの基礎体力作りと型をやるだけだ。正直つらかった。怠っていたつもりはないが、想像以上の厳しさに参ってしまった。

 

なんでも私はビットを使いながら剣術も使えればいい。と言われ、これからは剣術を習得していくらしい。この発想はなかったが、無月との戦いでエネルギー兵装を無効かされると撃つ手がなかった。

 

だからこの訓練はちょうどいいと感じていた。剣に関しては無月の能力を応用した技術があるそうで、私自身、強くなれることに喜びを感じていた。強くなることに目的はないが、無月に一撃入れて見せるというのが私の目標だった。

 

 

 

「さて、そろそろ亡国企業を潰しに行こうか」

 

国を建国してから2カ月たったころ、無月が私とナターシャの所に来てそう言った。

 

「ここは大丈夫なのか?」

 

亡国企業を壊滅させようとなるとここを離れる必要がある。そうなった場合の警備は誰がするのか、という問題もある。

 

「なに、影分身を残していく。それに政策面は北条さんに任せてある。それと何かがあれば飛雷神の術で戻ってくるから大丈夫さ」

 

「あら、私が行くことは決定事項なの?無月くんだけで十分じゃないかしら?」

 

意外、という表情をナターシャがする。私達の役目は戦力集めだと最初に無月が言ってなかったか?

 

「何を言ってるんですか、ナターシャさん。頼りにしていますよ」

 

「それはいいけど、あなた余裕過ぎないかしら?亡国企業って相当規模が大きいのでしょう?」

 

私もそう思う。なんでこいつはこんなにも余裕なのか?亡国企業を甘く見ない方がいいと思うのだが。

 

「「奴等って毎日たくさん侵入してくるんです。そいつらに一斉に反乱起こさせれば混乱しますから、そこを叩いて終わる予定です。まともに戦えるのはたぶんISの部隊だけですよ」

 

それを聞いて眩暈がした。だからこんなにも余裕なのか、と。

 

「・・・時々あなたがとても怖くなるわ」

 

「・・・同感だ。私は早めに仲間になって正解だったみたいだな」

 

アジトの中で仲間に暴れだされたら混乱の極みに達するだろう。そこに無月が攻め込むのだ。元仲間には同情を禁じ得なかった。

 

「作戦はどうするの?」

 

「影分身を使って各地を一斉に襲撃します。俺は本拠地に乗り込んで幹部連中を潰してきます。マドカとナターシャさんはIS部隊を潰してくれ。影分身を一体つけるがサポート程度と思っていてほしい」

 

確かにそれが1番だろう。数で勝る相手を各個分断して叩くのは常識であるといえる。

 

「なぜサポート程度なんだ?いつも通りならサポートとは言わずに生身で戦力として働けるだろう?」

 

いつも使う分身体は相当に強いものばかりだったので違和感があった。本体と同じ能力を持っているのではないのか?

 

「今回は数を増やすからな。力が分散されてしまう。それにここの警備のこともある。術も大規模なものは使えない。使うとすぐに消えてしまうからな」

 

どうやら効力が大きい半面、リスクも存在するようだ。

 

「便利だけど万能な力ではないということね」

 

ナターシャも私と同じ感想のようだ。

 

「そういうことです」

 

作戦の内容はわかった。確かにこれで亡国企業は潰れるだろう。しかし、目的が若干違うはず。

 

「オータムとスコールを仲間に引き込むんじゃないのか?」

 

そう、この旅は戦力集めも兼ねている。特にこの2人は組織崩壊後に所属を失う。倒してしまっていいのだろうか?

 

「なに、2人が倒した後に話をすればいい。それに頑強に抵抗するなら、2人には悪いが組織と一緒に、な」

 

無月は無闇に殺しを好む人間ではないが、かといって手を汚すのを躊躇う人間でもない。そういう厳しさも持ち合わせている。それはこの数ヶ月でよくわかった。

 

「まあ、無理矢理操る方法もあるが仲間にそれはしたくないからな。しかし、スコールは戦力的に欲しい所なんだが。マドカ、大丈夫か?」

 

確かにスコールは元ドイツ国家代表で第2回モンド・グロッソの優勝者でもある。不本意な結果だったが。そして頭も切れる。ファントム・タスクの最強戦力であり、仲間にすれば裏切るような人間でもない。無月が欲しいというのも納得だ。

 

「スコールは特に目的があるわけでもないと思うから大丈夫だろう。お前が説得すればどうにでもなると思うぞ」

 

それにスコールを説得すればもれなくオータムもついてくるだろう。

 

「でもオータムは性格に難があるんだ。矯正できそうか?」

 

「確かに。あの子は危なっかしいわね。それに軽率だわ」

 

ナターシャも同調する。コア奪還の状況は聞いたが、私も思わず頭を抱えてしまったからな。自信過剰な上に好戦的なオータムは隠密行動が向かないだろうし、無駄に戦いを好む。私も人のことは言えないが、状況を考えている・・・つもりだ。

 

「まあ、そこは厳しく鍛えるから問題ないだろ。うん。戦力は必要だしな」

 

「オータムはスコールの言うことは必ず聞く。だから仲間にすれば裏切りはないといっていい。だから仲間にした方がいいと思うぞ。一応実力は国家代表ぐらいある・・・はずだ」

 

軽率さがなければの話だが。

 

「よし、じゃあ、3日後の20時から襲撃を開始する。マドカとナターシャさんの所が鍵だ。俺も終わり次第そっちに行くけど、任せたぞ」

 

無月が交互に私達を見る。

 

「「わかった(わ)」」

 

私とナターシャの声が重なる。私はナターシャに2人のISの特徴や性格を伝え作戦を練ることにした。

 

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