IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第21話 ヴァルキリー

Side マドカ

 

フランス中部の田舎町。ここにIS部隊が駐在している。拠点自体は作戦によって動きやすい場所へと移動するのだが、普段はここにいる。研究所という名目で堂々と作っているが、その中身が悪の組織だから笑えない。

 

「そろそろ時間ね」

 

ナターシャが言う。時刻は20時前。一緒にいる無月の分身がアジトの襲撃を感知して5分後に私たちの攻撃は始まる。時間を少しずらすのはアジトが襲撃されているとの報告を受けさせて少しでも混乱させるためだ。

 

ここにはスパイを潜入させていないからだという。確かにIS部隊にスパイは必要なく、作戦を受けて出撃という形であるため納得した。

 

亡国企業のISは全部で5機。そのうち2人がオータムとスコールである。この2人には警戒する必要があるが、他は2人の実力に遠く及ばない。そのため3人をどれだけ早く倒すことができるか、が肝心だった。

 

「―――襲撃が始まったようだ。作戦は2人に任せている。どちらのサポートをすればいい?」

 

どうやら無月によるアジト襲撃が始まったようだ。

 

「私の方ね。いくら元国家代表といってもヴァルキリー相手は厳しいわ」

 

「そうだな。私のISは元々多対一を想定しているから4人同時に相手するのは問題ない。それに、負けないだろうしな」

 

戦闘能力でいえばスコール、私、オータムの順だった。それにオータムは精神的な安定さに欠ける。

 

「油断はしないことだ。俺の本体も終わり次第こっちに来る。さあ、時間だ。行くぞ!」

 

そろそろ私達が行く時間らしい。しかし1つ気になっていることがあった。

 

「無月、そのへんてこな仮面はなんだ?」

 

ずっと我慢してきたツッコミだった。でももう限界だ。右目だけが空き、それを中心として渦を巻いている。これはないだろう。

 

「諦めなさい。マドカちゃん。ゴスペルを取り戻した時もこの仮面をしていたわ」

 

「ちょっと、ナターシャさん。その可哀そうなものを見る目は止めて下さい。いいじゃないですか。なんか悪っぽいでしょ?」

 

仮面をしていても無月の抗議の必死さが伝わってくる。

 

「はいはい。かっこいいわよ。さあ、行きましょう。マドカちゃん」

 

なんて投げやりな返事なんだ。地面に手をついている無月が哀れに見えてくる。

 

「あ、ああ」

 

ナターシャが駆けだし、私もそれに続く。無月も慌てて走ってきた。そして私たちのアジト襲撃が始まった。

 

 

 

「だいぶ混乱しているようね。騒ぎが伝わってくるわ」

 

他のアジトが一斉に何者かによる襲撃を受けたことが伝わっているのだろう。侵入した私達にも気付かないくらいの喧騒だ。

 

「さて、少し派手めなの行くか。2人はISを展開して離れていてくれ」

 

無月に指示され、私達はISを展開し、無月から距離を取る。

 

「火遁・灰積焼!」

 

無月が辺り一面に灰を撒き散らした。そしてカチッという音と共に灰の巻かれた範囲が一気に爆発し、爆風がアジトを襲った。

 

ウーウーウー

 

襲撃を知らせるサイレンが響き渡る。

 

「さて、俺は雑魚の掃除と情報を取ってくる。2人は作戦通りに頼む。終わり次第そっちの援護に行く」

 

無月はそう言うや否や巻物から水を出し、その水から分身体を作り奥へと向かって行った。

 

「マドカちゃん、私たちも行きましょう」

 

「ああ」

 

中の構造は知っている。襲撃された際のマニュアルも。IS部隊はそこにいるはずだ。私はナターシャを先導しながらIS持ち達がいるであろう場所に向かって行った。

 

 

 

「ここにいるはずだ。私がまずビットによる一斉射を仕掛ける。スコール達は無理だろうが、他はやれるはずだ。シルバー・ベルでそいつらを追撃してくれ」

 

「わかったわ」

 

私はドアを突き破り、中にいた5人にビット攻撃を仕掛けた。やはりスコールとオータムの反応は速く、すぐさまISを展開して逃れた。だが、他の3人は展開するだけでやっとのようだ。

 

私はフレキシブルでスコールとオータムを狙った攻撃を曲げて逃げ遅れたものに当てる。スコール達は私が急に現れたため呆気に取られているようだ。この隙を逃すはずがない。

 

私はライフルも同時に用いて逃げ遅れた3人を撃つ。全てが命中したところにナターシャのシルバー・ベルが殺到し、3人のISは解除された。もうあいつらにできることはないだろう。

 

「て、てめえは!?」

 

「生きていたのね、マドカ」

 

2人がようやく口を開く。時限式ナノマシンの事は仲間内に知られており、ここIS学園襲撃以来音沙汰のなかった私は死んだことにされていたらしい。

 

「ああ、運よくな。話があるんだが、そう言うわけにもいかないのだろう。お前らを倒した後でゆっくりと話をさせてもらう」

 

スコールに向けて言う。するとスコールはナターシャの方を見て驚いていた。

 

「それもそうね。それとその機体は『銀の福音』かしら?それに、あなたはナターシャ・ファイルス?オータムの話では死んだって言う話だったけど」

 

「そう見せかけただけよ。そこの子、ずいぶんせっかちなんだもの。気絶していたあなたはなかなか美人だったわよ。黙っていれば口の汚さはわからないものね」

 

ナターシャが挑発気味に言う。

 

「て、てめえ・・・!」

 

オータムはもう沸点に達したらしい。顔が真っ赤だ。なんかナターシャと口喧嘩しても勝てない気がするな。それにどことなくスコールと似ている。

 

「話は終わりだ。行かせてもらう!」

 

そう言って、私はビットでオータムを攻撃し、ナターシャはスコールに接近戦を挑み、私対オータム、ナターシャ対スコールの構図が出来上がった。

 

 

 

「なんでてめえが襲撃してくるんだ?裏切りか?」

 

私はオータムと戦闘をしていた。機体の相性はいいはずだが、さすがに実力者。ビームを盾で防ぎつつ、接近戦の機会を窺ってくる。隙をついて8門ある砲撃を撃ってきており、こちらも被弾するが、ダメージは比にならないだろう。

 

「さあな。私ではどこまで話していいかわからんのでな」

 

「その口調だと別の組織につきやがったのか?ナノマシンはどうしたんだ?」

 

気になるのはそこだろう。裏切り防止のためのナノマシンが作動していないのだから。

 

「そんなものはもうない。そろそろ決めさせてもらうぞ!」

 

「ちっ!」

 

ビットによる一斉射がオータムに襲いかかる。時間差で襲いかかられてはたまらないだろう。それにフレキシブルもある。盾を避けて相手を狙うことも容易い。

 

「・・・こうなったら」

 

ここで一気に決めれると思っているとオータムが予想外の行動に出た。ダメージに構うことなく瞬時加速で私に近づいてきたのだ。

 

「てめえは接近戦が苦手なはずだ。この距離ならもらったぜ!」

 

確かに私は機体性能の事もあり、接近戦が苦手だった。だが、それは1か月前までの話だ。

 

「それは心外だ」

 

ズバッ!!

 

「・・・なんだと?」

 

私の手には剣が握られており、オータムはその一撃をくらった。この剣は雷切といい、無月の能力を応用して作った剣で高圧電流を纏わせることで切れ味と攻撃力を上げている。

 

この作戦前にミラージュで受け取ったものだ。ここ最近の訓練で近接戦闘はなんとか形になりつつあり、瞬時加速で真っすぐ突っ込んでくるオータム。ましてや私が近接戦闘を苦手としていると油断していた者にカウンターを合わせるのは簡単だった。

 

「油断大敵だな。少し大人しくしていてもらうぞ」

 

エネルギーが尽きたオータムのISは解除された。私はオータムを縄で縛り、動けないようにしておいた。そして、ナターシャとスコールの戦いに参戦するために向かって行った。

 

 

 

「大丈夫か、ナターシャ?」

 

傍目から見てもナターシャが不利なことは明らかだった。

 

「見たことはあってもやっぱり厄介ね。シュヴァルツァ・ヘクセ。さすがにヴァルキリーなだけあるわ」

 

スコールの機体はドイツの第2世代機、シュヴァルツァ・ヘクセ。セカンド・シフトを果たした機体でその特徴は万能型。セカンド・シフトにより全ての能力が高水準にまとまっており、なんといってもワン・オフ・アビリティーが厄介だ。

 

「ふふふ。あなたも強いわよ?それにしてもあなた達2人が組んでいるってどういうことかしら?」

 

「素敵な騎士さんに誘われたからよ。それと、あなたも誘われているわよ」

 

無月が騎士?私はナターシャと違って敵として戦ったから最初は悪魔にしか見えなかったが。

 

「あら、是非とも会ってみたいわね。けれどここで負けたら意味ないわよ?」

 

スコールが楽しそうに笑う。2対1なのにこの余裕。自分の実力に自信を持っていることの証左でもある。

 

「その余裕なくしてやる!」

 

私はビット6機を操って一斉に攻撃を仕掛けるが、空中にできた壁のようなもので防がれた。

 

「くっ!相変わらず厄介なワン・オフ・アビリティーだ!」

 

「このマテリアル・ハイとあなた達の相性は最悪のようね」

 

スコールのワン・オフ・アビリティー、マテリアル・ハイ。これは大気を超圧縮して様々な形を作り出す。シールドエネルギーを消費するがごく微量であり、燃費は決して悪くない。

 

「ならこれはどうかしら?」

 

そう言ってナターシャはシルバー・ベルを全開で撃つ。四方八方から光弾がスコールを襲う。

 

ズドオオンッ!!

 

激しい爆発が起こる。これほどの攻撃を食らったら少しはダメージを負うだろう。そう思い、爆炎が晴れた先を見る。

 

「うそでしょ!?」

 

そこには傷らしい傷を負っていないスコールがいた。

 

「ふふふ。言ったでしょう?私とあなた達の相性は最悪だって。次はこちらの番よ」

 

そう言うとスコールが手をかざす。

 

「一体何をしようって言うの?」

 

「わからん。ただ、良いことではない」

 

スコールが戦うところを見ることは少なかった。だからどのような戦闘を行うのかがわからない。

 

「マドカ、まずはあなたよ!」

 

そう言うや否や瞬時加速でこちらに向かってくる。私は雷切で応戦するがやはり近距離戦は分が悪い。いったん距離を取ろうと後ろに飛ぶ、が。

 

ドンッ!

 

「がっ!?」

 

後ろに下がろうと飛んだら急に壁のようなものにぶつかった。これはマテリアル・ハイで作られた壁か?

 

「・・・まさか!」

 

「お察しの通りよ。さて、他にはどこにあるでしょうね?」

 

まずい。スコールのマテリアル・ハイは目視することが困難だ。マテリアル・ハイのみに集中すれば見切れないことはないだろうが、高速で動きながらでは難しい。私は不利な状況での戦いを強いられることとなった。

 

 

 

                 ◇

 

 

 

Side マドカ

 

「全く、厄介な相手だわ。マドカちゃん、まだ行ける?」

 

「もうエネルギーが3分の1を切っているがな」

 

逆にスコールのエネルギーはほとんど削れていないだろう。攻撃らしい攻撃をできていないし、マテリアル・ハイで防がれている。

 

「あの子は何をやってるのかしら?」

 

無月のことか。確かに遅いな。IS使いならまだしも他の奴らに苦戦する奴ではないのだが。

 

「一体誰のことなのかしら?」

 

「さあな」

 

無月は表では行方不明ということになっている。

 

「まあ、いいわ。あなた達を倒した後にゆっくりお話ししてもらうから」

 

そう言ってスコールはまた手をかざす。次はどこに仕掛けてくる?そう思って目を凝らしていると、視界に変な仮面を被った人間が現れた。

 

「雷遁・雷獣散華!!」

 

無月の手から雷の獣が3匹現れ空中を疾駆する。獣はスコールに向かって行き、直撃した、かに見えたが3匹とも途中でマテリアル・ハイによって防がれた。

 

「遅くなってすまない」

 

そういって無月が私の近くに移動してきた。ISもないのに凄まじい速さだった。

 

「全くだ。一体何をしていた?」

 

遅いにもほどがある。ナターシャも私の近くに来て無月に寄っていく。

 

「情報を抜くのに手間取ってな。本体ももうじきここに来る。アジアやアメリカの拠点はもう潰した。奴らはほぼ壊滅したといっていい」

 

ファントム・タスク壊滅作戦は佳境に差し掛かっている。それだけにここを落とさなければならない。

 

「どなたかしら?」

 

「霧雨無月・・・といえばわかってもらえるかな?」

 

そういって無月はセンスの欠片もなかった仮面を外す。はずすなら仮面の意味はないのでは?と思ったが言わないことにしておいた。

 

「本物かしら?彼は行方不明になったはずよ」

 

「残念だが、それは嘘だ。さて、スコール・ミュラー、俺たちの仲間にならないか?亡国企業はもう無くなる。あと数分でな」

 

無月の口ぶりからするとこれは本当の事なのだろう。だとすると驚くほど順調なペースだったというわけだ。

 

「あなたが今回の事件の主犯だったの。面白い子ね。せっかくのお誘いだけど、まずは私を倒してから言ってもらえるかしら?」

 

「ならちょっと俺と遊んで行け。きっと仲間になりたくなるからな!」

 

そういうと無月は手で何かを結び始めて、頬を大きく膨らませた。また、さっきの獣か?と思ったが、今回は違うらしい。

 

「水遁・爆水衝波!!」

 

多量の水が口から吐き出される。あまりのことに呆気にとられる私達。無月の出した水によって、一部が床上浸水のような状態になった。一体何がしたいのか?するとまた手で何かを結ぶ。

 

「水遁・水牙弾!!」

 

今度は水でできたドリルのようなものがスコールに向かう。これもマテリアル・ハイで防がれるのかと思ったが、スコールは無月の攻撃を避けた。

 

「さっきの壁みたいなので防がなくてもいいのか?周りに浮かべているだけじゃないか」

 

「まさか・・・あなた見えているの?私のマテリアル・ハイが」

 

スコールが初めて驚いたような顔をする。無月の方を見ると目がいつもの赤一色ではなく、巴のような模様が浮かんでいる。

 

「まあな。どうだ?少しは面白くなっただろう?」

 

「水を操り、マテリアル・ハイも見切るなんて。あなた、人間なのかしら?」

 

スコールの言うことはもっともだと思う。

 

「れっきとした人間だよ。だが仲間になっても退屈しなさそうだろう?」

 

「ふふふ。この期に及んでもスカウトなんて、本当に面白い子」

 

スコールの笑みが深くなる。そして戦いは終盤へと突入していく。

 




スコールの苗字と機体については原作で一部記述もありましたが、詳細は不明ですので、独自設定にしてあります。
ヘクセとは魔女という意味です。

マテリアル・ハイはPSYRENからカイルの技を使わせていただきました。
不明な方はPSYRENと検索をしてwikiで詳細をどうぞ。
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