Side マドカ
亡国機業壊滅から一夜明けて、無月は真っ白な灰になっていた。
「・・・見事に無一文だな」
「ナターシャさんマジ半端ねえよ。というかスコールも飲むのな」
あの後、食事に行ったまでは良かった。しかし、ナターシャはやはり飲んだ。それにスコールも負けじと飲んだ。だんだん無月の顔色が悪くなっていったのはさすがに同情した。
「お前がいなかったらヤバかったよ。ありがとうなマドカ」
手持ちの金がなくなった無月に懇願され、私も出してやった。無月はなんだかんだで口座にお金を持っているので後で回収すればいい。
「あれは仕方ないだろう。それで、この後はどうするんだ?」
目的だった亡国機業の壊滅は終えた。だとすると後は世界を回って戦力を集めるだけだが。
「うーん、やっぱりスカウトだな。国家代表クラスが良いけど、難しいだろうし。代表候補生とかどうだ?」
「そうだな。戦争をするということは覚悟もいる。技術だけではないからな。現状に不満のある奴を狙うのはどうだ?」
しかし、そうなるとユーゴスラビアから回った方が良い気もするな。
「その線か。なら不満があって国籍を変えたユーゴスラビアからか?でもそんな目ぼしい戦力はいないぞ?」
なんせ男女平等を謳う国家だ。女尊男卑の特権を受け、それが価値観となっていることが多いIS操縦者にとっては面白くない国だろう。
「昨日捕えて寝かせてある3人はどうだ?確かに昨日は倒したが、代表候補生ぐらいの力はあるぞ?」
「そうか。ならまずはそいつらに会いに行こう。スコール達は買い物に行ったし、俺達で行こう」
そういうと無月は3人を捕えてある倉庫へと向かって行った。
Side 無月
3人は最初の一撃で敗れたと聞いていたからあまり気にしていなかった。しかし、よくよく考えれば仲間になる余地は十分にある。
「そいつらの名前は?」
「紫色の髪を背中まで伸ばしているのがマリア。緑色のショートヘアがサラ。青い髪でポニーテールなのがティナだ」
マリア、サラ、ティナね。しっかりと覚えておかないとな。
「仲間にはなりそうか?」
「・・・たぶんな」
どうしたんだ?珍しくマドカの歯切れが悪い。
「仲間になりそうにないのか?」
もし、ならないのなら他の構成員と同じような対処をしなければならない。
「いや、そんなことはない。だが、少し面倒なことになるかもしれん。主に私が」
「・・・どういうことだ?」
俺は隣を歩くマドカの顔を見た。なんともいえない苦い表情をしている。
「まあ、行けばわかる」
実際に会えということだろう。しかし、面倒なことか。一体何が起こることやら。その話はいったん止め、俺はマドカと話をしながら3人がいる場所へと向かった。
「おーい、朝だぞ。3人とも起きろ」
幻術で眠らせてあった3人の幻術を解き、呼びかける。3人はのろのろと起きあがるが、まだボーっとしている。すると、マドカが声をかけた。
「3人とも、寝坊とはいい度胸だな」
「・・・あれ?マドカ様の声が聞こえる?」
最初に声を出したのは、青い髪をしたマリア。
「ありえへんやろ。マドカ様は行方不明なんやで」
「うーん、あたしも聞こえたよ」
えせ関西弁がサラで、あたしと言うのがティナね。
「いい加減にしろ、3人とも。人を勝手に殺すな!」
寝ぼけている3人をマドカが一喝する。3人はしっかり聞こえたのか、マドカの方を見た。
「「「マ、マドカ様!!」」」
3人がそろって声を上げる。そしてマドカの周りに寄って口々に挨拶を始めた。3人とも目に涙をためて挨拶していた。
「うるさい!まずは静かにしろ。それと今後に関して重大な話がある」
そういうと3人はピタリと会話を止めた。そしてマドカの前に3人並んで正座した。そしてマドカは亡国機業が壊滅したことを話し始めた。俺は特にやることもないのでそれを見ていた。なんか入りづらいし。
「―――というわけだ。話はわかったか?」
マドカの説明が終わり、3人への質問タイムになった。
「つまり、マドカ様が亡国機業を潰したってことかいな?」
「「さすがマドカ様!」」
なんかマドカってすごく慕われてないか?3人は口々にマドカがいかにすごいかという武勇伝を話している。
「それでマドカ様は死んだと見せかけて、後ろの男を舎弟にして組織を潰したんですね?しかもこの男、マドカ様のターゲットだった霧雨無月じゃないですか!?」
「「さすがマドカ様!」」
あれ?俺ってマドカの舎弟だったの?
「違う!話を聞け!私は無月の下についているんだ。それに組織を潰したのは無月だ」
「もうファースト・ネームで呼び合う仲なんて!サラ、マリア・・・あたし、感動しちゃった。マドカ様にもついに婚約者ができたんだって」
「「さすがマドカ様!」」
おーい、そこのやつ。話が飛びすぎてるだろ?それにマドカがもう切れる寸前だ。なんかオーラが見える。
「・・・このバカどもが!!」
3人にマドカの拳骨が入る。けっこうな威力だったらしく、3人は頭を抱えて座り込んだ。
「全く!切りがない!無月、こっちに来てお前も説明してくれ!」
「は、はい」
マドカの剣幕に圧倒されつつ、俺は3人の元に行く。そして今回の顛末について話をした。
「つまり、マドカ様は霧雨無月の組織にいて、あたし達がどうするかって言う話ですか?」
えーと、こいつはティナだな。
「そういうことだ。もし仲間に加わるなら歓迎する。だが、目的は世界を相手にすること。生半可な覚悟なら止めておけ」
「断ったらどうなるんや?」
もっともな質問だ。他の2人も気になっていたらしく、うんうんと頷く。
「殺しはしないが、組織に関する情報は全て忘れてもらう。まあ、一般人の生活に戻るということだな。それなりに不自由しない生活は約束する。30分待つ。自分の人生だ、自分で決めろ。また30分後に来る」
そういってマドカと部屋の外に出ていく。
「お前、メチャクチャ慕われてたな」
これが本当に気になった。なぜあそこまで慕われていたのか?マドカは苦笑いして言う。
「私はIS部隊に所属していたと話したな?あいつらはその頃の部下だ。それに教育係もしていたのでな」
「お前が・・・教育係だと!?」
マドカが教育とは意外すぎる。スパルタな気がするが。
「くっ!なんだその顔は!?これには理由があったんだ!部隊長のスコールにそんな暇はないし、オータムは性格があれだ。他に選択肢がなかったんだ!」
うむ。オータムでは教育係は絶対に無理だろうな。適性がない。そもそも人に教えるのは苦手そうだ。
「・・・来ると思うか?」
「さあな。だが、来たら来たでけじめはつけさせる。そこは安心してくれ」
こっちにこればいつまでもマドカの部下ではない。1人1人が自分で全てをしてくれないと困る。だが、そこは心配していない。マドカの部下だ。そういうけじめは出来ているだろう。
30分たった。マドカがいると答えが変わるかもしれないので、待ってもらうことにして俺は3人の元に向かった。
「答えは決まったか?」
3人を見渡す。さてどうなることやら。
「あたしはついて行くよ。一般人の生活なんて知らないし、そっちにはマドカ様もいる。それに世界が相手なんて面白そうだし」
ティナが口火を切った。俺は黙って他の2人の答えを待つ。
「うちもや。今の世界は気に食わんしな」
「私もサラとティナと同じ。ただ1つ確かめたいことがある」
マリアが俺に言う。
「あなたは本当に強いの?マドカ様もスコール隊長もオータムさんも強かった。その3人を率いているあなたの強さが知りたい。あなたは世界を相手にするというけど、普通に考えたらそんなことは無理。可能というのならそれを示してほしい」
それを聞いて他の2人も頷く。
「そうだな。普通に考えれば夢物語だ。なら、俺が言っていることが夢物語でないことを教えよう」
そういって俺は巻物から3つのペンダントを口寄せし、それぞれに渡した。
「お前たちの使っていたISだ。これを装着して展開しろ」
3人は慣れた手つきでISを展開する。3人が使っていたのは、ラファール・リヴァイブ。フランスの第2世代機の量産型だ。
「戦うのが一番わかりやすい。3人がかりでこい」
「・・・本気で言ってるんですか?」
マリアが言うが、
「お前たちにやられるわけがないだろう?まあ、やってみればわかることだ」
そういって雫を装着し、お互いに距離を取る。
「さて、始めようか」
そして1対3の戦いが始まった。
「先手必勝だな」
数で負けている以上、相手が油断している隙に1機でも落とそうと思う。開始と同時に俺は空中に飛び上がらなかったサラに狙いをつけ、最大出力の瞬時加速で突進した。
「は、はや」
アサルトライフルを展開していたサラだが、予測を超える速さで急接近されたためガードが間にあわず、ライフルで新月を防ごうとした。
だが、ライフルは接近戦で使うものではない。ライフルごと切り、呆気にとられたサラに風の刃を何回か飛ばし、エネルギー切れにした。
「まずは1人・・・おっと」
サラを倒すと同時に俺のいた場所が銃撃される。それを俺は芭蕉扇を展開して防ぐ。
「火遁・鳳仙花爪紅!」
「炎くらいで怯むあたしじゃ―――ぐぅ・・・中に刀!?」
近くにいたティナに鳳仙花爪紅を放つ。鳳仙花爪紅は鳳仙花の中に短刀を仕込んだ炎の弾。炎をブレードで弾いて消しても中に仕込んだ短刀で2段階の攻撃が可能だ。
ティナは炎を斬って落とそうとしたが、中に短刀が仕込まれているとは思っておらず、残りの鳳仙花爪紅を受けて動きが止まった。この瞬間が大きな隙になる。俺は瞬時加速で一気に接近する。
「2人目」
「えっ!?」
突然、目の前に現れた俺に困惑するティナ。それに構うことなく、俺は展開した新月でティナを切りつける。奇襲を食らったティナに防御する方法はなく、そのままエネルギーがなくなった。あとは、マリアか。
「おっと」
ガキン
「・・・防がれましたか」
マリアは距離を開けると何をされるかわからないと判断して、俺に接近戦を仕掛けてきた。
「良い判断だ。だが、それでいいのか?」
「くっ・・・攻撃が見切られている!?」
マリアの攻撃を見切って俺はその全てを防いでみせる。確かに接近戦ならば純粋な力量の勝負が可能だ。しかし、それだけに力量の差が大きく出る。
ガシッ
「これで終わりだな」
ズバッ
マリアが振り下ろしてきた腕を受け止め、俺は飛燕を纏わせた新月でマリアを斬りつける。
腕を止められ、ガードする術もないマリアにこの一撃はクリーンヒットし、エネルギーが失われた。こうしてあっという間に3人はエネルギーが切れ、俺の勝利でこの戦いは終わった。
「俺の強さ、わかってもらえたか?」
「ええ、驚きました。私もそんな風に強くなれますか?」
マリアが尋ねてくる。向上心が強いのはいいことだ。
「なれるだろうし、なってもらわなければ困る。3人とも2年後には国家代表クラスを超える強さになってもらうつもりだ。でないと世界と戦えないからな」
「うちらも強くなれるんか?」
マドカの見立てでは国家代表候補生クラスの実力はある、ということだ。不可能ではないだろう。
「当然だ。それにお前達が強くなれば専用機を渡すつもりだ。明日から厳しく鍛えてやるから、それを励みに頑張れよ」
さすがに戦争するのに量産機で、なんて言わない。ミラージュもあるので資金自体は豊富にある。亡国機業もだいぶ貯め込んでいたようだしな。あとは似たような組織を潰していけば問題はないだろう。
それにISの開発で一番足りないのは資金ではない。ISコアなのだ。個数に限りがある為に資金と技術はあってもISを作れない、という企業は多い。
「あたし達にも専用機が!?なら頑張らないとね!」
もうテンションが上がっているようだ。頑張ってくれるなら何よりだ。
「終わったようだな」
マドカもやってきた。やはり元とはいえ教え子だけあって心配なのだろう。といっても同い年っぽいけど。
「ああ。なにはともあれこれで8人だ。それにあと1人なら当てがある」
「当てだと?」
これは亡国企業の最高幹部の情報を追っているうちに、手に入れた情報なのでおそらくマドカは知っているだろう。スコールもオータムも。
「白銀の戦姫、聞いたことはあるだろう?」
「あいつか。だが、気難しい奴だと聞くぞ?」
マドカも聞いたことがあるのか、納得という表情を見せる。
「会ってみないとわからんさ。意外にいい奴かもしれないだろう?」
「・・・そうだな」
そういうとマドカは3人の方に向かって行き、一緒に帰るように促していた。ここにいる目的は果たした。俺は新たな仲間を3人加えて、ナターシャさん達の待つホテルに戻ることにした。
3人に関してはQMAのキャラを参考にさせていただきました。
あれってやってみると楽しいものですね。