IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第24話 白銀の戦姫

Side 無月

 

「白銀の戦姫に会いに中東へ!?」

 

スコールが驚いた口調で言う。あの3人娘は修業中、マドカはその監督兼自主トレ、ここにはナターシャさんとオータム、俺、スコールで今後の予定について話し合っていた。

 

「ええ、明日には出発するつもりです」

 

「待って。白銀の戦姫って誰のこと?」

 

ナターシャさんが言う。そうか、ナターシャさんは表で生きていたから知らないのか。俺も裏の情報を漁っていて知ったのだから無理もない。そして、その質問にはスコールが答えた。

 

「アーデルハイド・ローゼンベルク。背中まで伸ばした銀髪に赤い目を持ち、1年前に突然現れた、素性が一切不明の傭兵。卓越した戦闘技術を持ち、現れた戦場では無敗。そして深紅のISを使い、国家代表にも勝る腕を持つといわれている少女・・・裏で語られるのは普通ここまでよ」

 

「・・・まだ何かあるの?」

 

白銀の戦姫、裏で語られるのはここまで。だが、その先がある。

 

「その先は俺が言いましょう。アーデルハイドはドイツのアドヴァンスド計画の最高傑作といわれ、14歳で研究所から逃亡。この際にドイツ製の第3世代機、ブルート・クロイツを強奪。その後は行方不明となり突然傭兵として姿を現した、というわけです」

 

そして研究所からどのように逃亡したのかまではわからない。俺もこれは亡国機業を追うついでに手に入れた情報だからな。

 

「その子を仲間にしようっていうの?」

 

「はい。能力的には問題なしですから」

 

何しろ前例が存在する話だからな。

 

「噂話でそこまで判断していいのかしら?」

 

「それもそうですが、IS学園に転校してきたラウラ・ボーデヴィッヒ。あいつもアドヴァンスド計画の成功例の1人・・・まあ、途中で失敗になりましたが、ドイツのIS部隊の隊長を務めていました。それ以上の能力を持つと言われてるわけですからスペック的には問題ないはずです」

 

しかし、目的があって戦争に参戦しているならともかく、こいつの行動にはそれが見えない。ただ破壊衝動に駆られて紛争に介入しているのなら、いない方が世界のため。それに俺の目的の不安要素を消すことにもなる。

 

「・・・そう」

 

ナターシャさんは元々優しい性格だ。悲しそうな顔をするのはアーデルハイドを思ってのことだろう。

 

「ナターシャさん。そんな顔しないでくださいよ。俺はアーデルハイドに仲間になってもらうつもりですが、実験体として扱う気なんて毛頭ないですから。純粋に仲間が欲しい所に良い奴がいた。それだけのことです。戦争するだけの兵器なんていりませんよ」

 

「わかったわ」

 

これでアーデルハイドについての話は終わりだ。問題は誰を連れていくかだが。

 

「行くのは、俺とマドカ、それにスコールでいいですか?」

 

「おい、私はどうするんだ!まさか、留守番か!?」

 

オータムが抗議の声を上げる。

 

「いや、オータム。お前には重大な役目がある」

 

「・・・重要な役目だと?」

 

不信感いっぱいの目で俺を見るオータム。そんなにスコールと離れるのが嫌か?

 

「あの3人娘の教官役だ。ナターシャさんと一緒にあいつらをこってり絞ってやってくれ」

 

「なんで私がそんなことをしないといけないんだよ!」

 

ごねるオータム。さてどうしたものか。スコールをちらりと見ると目を背けられた。

 

「オータム、耳を貸せ」

 

そういって俺はオータムの耳元に移動し囁き戦術を使う。

 

「スコールがこの前の飲み会の時に言ってたんだ、オータムに大人の魅力が加わればもっといいってな」

 

「なん・・・だと!?」

 

食いついてきたか。

 

「教官とは生徒が失敗しても根気強く教え、導く存在。すなわち大人だ。お前今まで避けていた教官を務めるということは、精神的に確実に成長する」

 

「・・・それで?」

 

あと一歩か。

 

「アーデルハイドを仲間にするには1週間ほどかかる予定だ。その間にお前は教官をして自分を磨け。そうすれば1週間ぶりに会ったスコールはお前が以前よりも魅力的になったことに気づくだろう。なんていっても恋人だからな」

 

そこで一息入れ、締めに入る。

 

「それに離れてこそわかる相手の良さもきっとある。そして本にはこう書いてもあった。恋人の普段と違う一面を見せることで愛情が深まると。つまりはギャップだ。他人を指導するオータムなんて今までスコールに見せたことがないだろう?」

 

「た、確かに」

 

ゴクリ、とオータムが息を飲む。さあ、フィニッシュだ。

 

「つまりそこを狙う。ついてきてもいいが、それではいつものお前を見せるだけだろう。しかし、お前が教官になることでお前とスコールの愛は深まり、3人娘は実力をつけ、それは俺の目的にも直結する。まさに一石二鳥だ。オータム、この大役、やってくれるか?」

 

「ああ、わかったぜ!無月!きっちりと教官役をこなしてやるよ!!」

 

俺達はがっちりと握手をする。ナターシャさんとスコールはそれを見て頭を抱えている。なぜだ?と思うが、その疑問はいつの間にか帰ってきていたマドカによって語られた。

 

「・・・お前は詐欺師か?」

 

「おい、マドカ。人聞きの悪いことを言うのをやめろ。これでみんな幸せになれるんだからな。あの3人はどうだった?」

 

あの3人の力量の上昇は作戦にも大きく関わってくるだけに気になる。

 

「そんな急に変わるものか。ただ、もともとのセンスは悪くないからな。地道に鍛えていくしかないだろう」

 

それもそうか。そんな急に実力が上がるはずがない。

 

「まあ、そうだな。それと明日、アーデルハイドをスカウトしに行く。行くのは俺とマドカとスコールだ。しっかりと休んでおいてくれよ」

 

「わかった」

 

ここは亡国企業の使っていたアジトのひとつでカザフスタンとウズベキスタンの国境付近にある。飛行機を乗り継いで行けばアーデルハイドがいるイラクまで2,3日で着くだろう。

 

そこまで急ぐわけでもないので観光でもしながら行くつもりだ。飛雷神の術式は一応世界中に置いてあるからすぐに行くこともできるが、それでは楽しくないからな。

 

その後、落ち合う場所を決め、俺達は寝ることにした。3人娘は訓練の厳しさもあってか夕食を終えると泥のように眠っていた。

 

 

 

Side マドカ

 

「起きろ、無月。そろそろ目的地だ。スコールも起きろ」

 

私達は目的地であるイラクの首都バグダードから100km離れたイスカンダリアを目指していた。

 

イラクはずっと紛争が続いており、それは年々激しくなっている。特にISが出現してからは用いられる兵器の質も上がっている。

 

ISの登場でそれまで主力だった兵器の価値・価格共に暴落したからだ。また、軍人が大量に解雇されたことで軍人崩れも多数内戦地域に流れたことも大きい。治安はIS登場前に比べてずっと悪い。

 

ここに来る途中にも武装集団に襲われたが、無月に一掃されていた。スコールも寝ており、どうしようもない。

 

「さて、そろそろか。マドカ、スコール、降りようか」

 

イスカンダリアに到着して私達は車から降りた。

 

「当てはあるのか?」

 

戦闘がいつ起きるかはわからない。だが、無月は確信があるようだった。

 

「ああ、近いうちに必ず戦闘が起きる。アーデルハイドが現れたら後をつける。そして隠れ家でお話といこう」

 

そういって無月は近くの人間に話しかけに行き、今夜泊まるホテルを探しに行った。私とスコールはそれを待ちつつ、市内を回ることにした。

 

 

 

「そういえば、どうしてスコールはついてきたんだ?」

 

それが疑問だった。何か理由があるのだろうか?適当に買った飲み物を飲みながら聞いてみた。

 

「あら?マドカは彼と2人っきりが良かったのかしら?それは悪いことをしたわ」

 

「ごふっごふっ!ど、どうしてそうなるんだ!純粋な質問だぞ!」

 

予想外の返事に思わずむせてしまった。

 

「そう、残念ね。私はここら辺の武装勢力に顔が利くの。だから来たのよ。そして彼らによれば近日中に比較的規模の大きい戦闘が起きそうな気配だそうよ。知らない顔の人たちが多くなったそうだから」

 

確かにそういう情報は武器になる。私は顔が利く勢力なんていないからな。スコールが隊長だったからこその情報だろう。それを利用する無月には感心する。

 

「あなたはどうしてなの?」

 

なぜ、私がついてきているか、ということだろう。

 

「ああ、それは約束だからだな」

 

「・・・約束?」

 

そう、私と無月が会った時にした約束だ。

 

「無月とは私の2度目の人生を楽しませてくれると約束してあるからな。この手の面白そうなイベントにはついて行くと決めている」

 

「それって・・・いえ、なんでもないわ。そういう理由だったのね」

 

そうしているうちに無月が私たちの前に現れ、今夜泊まるホテルを見つけたと言ってきたので、話はそこで終わった。

 

 

 

イスカンダリア到着から2日。市内を見て回っていると突然、目の前に無月が現れた。

 

「始まったぞ。ここから10km離れたところだ。規模が大きい。スコールはもう行っている。俺たちも行くぞ!」

 

どうやら戦闘が始まったらしい。無月がこちらに手を差し出す。

 

「わかった」

 

そう言って私は無月の手を取り、飛雷神の術で一緒に飛んだ。

 

 

 

「スコール、状況は?」

 

どうやらスコールの近くに飛んだらしい。200mほど先で戦闘が始まっている。昔あった戦争以来、イラクはこうした戦場になることが多い。政府対テロリストの構図のようだが、どちらも戦車まで持ち出している。

 

「テロリスト側が兵器的に不利ね。けど練度自体は向こうが上よ。伊達に軍人崩れを雇っていないわ」

 

「そうか。なら、戦場見学といこうか」

 

無月が戦闘に目を凝らす。しばらく戦闘は続いていたが、スコールの言った通り政府側が押しているようだ。そして、テロリスト側が崩れかけた時、政府側の戦闘ヘリが突然爆発した。

 

「・・・来たか」

 

事前の情報通りの深紅のISが現れる。アラスカ条約で戦争にISを使うことは禁止されてはいるが、建前だけだ。こうした戦場ではISが使われることは多い。

 

「おっ!政府軍もISを出してきたぞ?」

 

「本当ね。条約だなんだといっても内戦には関係ないって言うことかしら?」

 

政府側もISを2機出してきて深紅のISを撃墜しようとする。アーデルハイドの銀髪が太陽に反射して輝いて見える。

 

数の上では不利だが、問題なかったようだ。瞬時加速で一気に接近すると、ISほどの大きさもあるバカでかいレーザーブレードを一閃。そこにグレネードを叩きこんでエネルギー切れにした。

 

そしてもう1機もアサルトライフルで応戦するが、それは全て避けられている。銃撃を諦めたのか、政府側のISは接近戦を挑むがカウンターを合わせられ、斬り伏せられた。

 

命まで取る気はないようで、ISを解除された搭乗者はそのまま逃がされた。テロリスト側は継戦を諦めたらしく、そのまま撤退していった。どうやら崩れかけた時の足止め役だったようだ。

 

「白銀の戦姫の名は伊達じゃない、か。それに最後のカウンター、無月みたいだったな」

 

それが気になっていた。相手の一撃をぎりぎりで避けながら一撃を繰り出すのはなかなかできるものではない。これは写輪眼を持っている無月が好むやり方だが、アーデルハイドはそれができるようだった。

 

「・・・ヴォーダン・オージェね」

 

スコールはどうやら事情を知っているらしい。

 

「ヴォーダン・オージェ?何だそれは?」

 

「ナノマシンを目に投与して、脳への視覚信号伝達の爆発的な速度向上と超高速戦闘状況下における動体反射の強化を目的としたものよ。彼女とは特に相性が良かったらしいわ。それに彼女は両目にヴォ―ダン・オージェを持っているそうよ」

 

あの動きはそう言うことが理由なのか。しかし、研究対象か。なんだか気分が悪いな。

 

「さて、アーデルハイドは影分身に追わせている。今日中にアジトがわかるだろう。アーデルハイドの戦い方が見れて良かったな。今日は帰って対策でも練ろうか」

 

無月はそう言い、私達はホテルまで帰ることにした。

 

 

 

夜中になり、無月が私の部屋をノックしてきた。まだ起きていた私は無月を部屋に入れた。

 

「どうやら居場所がわかったらしい。早朝に出かけるから早めに起きてくれよ」

 

「お前の方が心配だ。モーニングコールでもしてやろうか?」

 

無月は朝が弱い。放っておいたら昼まで寝ていそうな気配がある。それは自覚しているようで無月は笑って言った。

 

「頼むよ、マドカ」

 

しかし、なんだかいつもと様子が違う。

 

「無月、どうしたんだ?いつもと様子が違うぞ?」

 

そういうと無月は驚いたような表情をする。  

 

「・・・アーデルハイドをどうしようかと思ってな」

 

「仲間にするんじゃないのか?」

 

目的はそれだったはずだ。それ以外の選択肢でもあるのだろうか?

 

「いや、するつもりだ」

 

一体こいつは何が言いたいのか?

 

「話が見えないな。どういうわけだ。話をしてくれないとわからん」

 

「断られた時、俺はアーデルハイドを殺そうと思っていた。計画の障害になりかねないし、何よりその方がアーデルハイドのためだと思ったからな。だが、それは奴が目的もなく戦争介入をしていた場合。今日の奴はどうだった?」

 

今日の戦いを見た感想か。

 

「少なくとも破壊衝動だけではないな。もしそうだったらISの操縦者を殺している」

 

その後も大人しく撤退をした辺り、理性的に動いていると思われる。

 

「だからこそだ。害を為す組織の奴らなら容赦はしないが、アーデルハイドの出身に同情できる。断ったからと言って問答無用で殺すのも忍びない」

 

そういうことか。だったら私が言えることは一つだけだ。

 

「迷うな。お前が迷えば私達はぶれる。それにお前がアーデルハイドを殺そうと殺すまいと少なくとも私はお前について行く。お前のやりたいようにやればいい」

 

組織の上が迷えば下はどうしていいかわからなくなる。それにこれから無月がやろうとしていることはアーデルハイドの問題以上に迷うことも多いだろう。

 

「そうか、悪かったな。マドカ、ありがとうな」

 

無月がさっきとは異なり迷いがなくなった顔をする。これが普段の無月だな。

 

「なに、気にするな。それに明日は早いのだろう?さらにいえば明日のお前は大変だぞ?」

 

「ああ、おそらく・・・いや、確実にアーデルハイドと戦闘になるだろう。勝たないと話にならないからな」

 

しかし、こいつが負けるところは想像がつかないな。月読という無月の精神空間では雫に負けているらしいが。

 

「勝てよ。さっき言っていたことも勝ってからの話だ。まあ、心配はしてないがな。もう寝る。明日はしっかりと起きろよ?」

 

「ああ、おやすみマドカ」

 

無月は自室へと戻っていった。さて、明日は早い。私も寝ることにしよう。私は目覚ましをセットして布団で横になり、目を閉じた。

 

 

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