IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第32話 初動

 

Side マドカ

 

‘暁’結成から1年。私達は主に個人の実力の底上げとメンバーとの連携。あらゆる状況を想定した模擬戦などをこなしていた。1年前のようにIS学園に介入するなど表だった動きは避けていた。そして、ちょうど結成から1年たった今日、招集がかかった。

 

みなそれぞれ自分の訓練に集中しているため、9人いても1人はいないなど全員そろうことはほとんどなかった。そのため、全員がそろうのは宴会などのイベント以外ではなかなか揃わないのだった。

 

私がいつもいるのは無月、アーデル、優子が主で、同じ敷地内にいても訓練以外は会わないなどざらにある。

 

「今日は一体何なんじゃろうな?」

 

隣に座った優子が聞いてくるが、昨日会った時、無月は会議の事は言っておらず私も詳しいことはわからなかった。

 

「無月からは何も聞いていない。ただ、今日で結成から1年だ。そろそろ動きだすのだろう」

 

「良く覚えておるな」

 

優子は感心したような声を出すが、無月の言葉は覚えるようにしているので今日のことは覚えていた。

 

「まあな」

 

さらに話をしようとする優子だが、それは中断された。1人だけいなかった無月が部屋に入ってきたためだ。

 

「遅くなってすまないな」

 

口ではそう言っているが、何とも思ってないな。最近、表情の微妙な変わり方で無月が何を思っているかが読めるようになってきた。

 

「さて、今日、集まってもらったのは他でもない。あれから1年たった。それぞれの訓練も一段落しただろう。そろそろ俺達は動きだす」

 

やはりか。確かに全員の実力は向上しており、1年前とは比べ物にならない。ここは模擬戦の相手に困ることはないし、1日中アリーナは解放され、トレーニングも可能な施設がそろっている。

 

訓練密度の濃さはファントム・タスクの比ではなく、任務もないため訓練に集中できる環境が整っていた。たまの休暇では無月に頼めば旅行にも一瞬で連れて行ってもらえるため、息抜きもできる。

 

「まずは何をするの?」

 

最初にナターシャが質問をする。

 

「最初はドイツの問題を片づける」

 

ドイツの問題だと?私は今一ピンとこなかったが、スコールは気付いたようだ。

 

「私とアーデルハイドのことね」

 

「そうだ。そろそろスコールとアーデルがユーゴスラビアに所属することをドイツに向かって宣言する」

 

そうだったな。しかし、何故この時期に?

 

「そうか。だが、なぜ今さら言うことになるのだ?」

 

当事者の1人のアーデルは首をかしげる。

 

「半年後にモンド・グロッソが日本で行われる。今回から参戦するユーゴスラビアの国家代表を選出するからな。ドイツにはさっさと手を引いてもらう」

 

今年は第3回モンド・グロッソが行われる年だ。前回はドイツだったが、今回はIS発祥の地・日本で行われると決まっていた。そして私たちも今年行われる予選に出ることとなっている。

 

私も格闘部門で出る気でいた。アーデルは格闘部門ではなく、キャノンボール・ファストが行われる制動部門に出場するらしい。

 

「どうするつもりだ?力づくか?」

 

「最終的にはそうだが、最初は穏便にいこうかと思っている」

 

にやりと無月が笑う。何を交渉材料に使う気なのだろうか?

 

「ISコアを渡すだけだ」

 

「コアの譲渡はアラスカ条約で禁止されているはずよ?国家として動くならそれはまずいんじゃないかしら?」

 

ナターシャが言うが、それは最もだ。暁は元々アラスカ条約など気にしてはいないが、ユーゴスラビアとして動くなら条約は守った方がよいのではないか?

 

「なに、問題ない。もともとアーデルのISはこちらにある。それに実際にやるのは返還さ。それとスコールの分も渡しておくか。完全にグレーゾーンだが、ドイツは失ったコアを2つも手に入れることができるんだ。反対はしないさ」

 

確かに条約にコアの交換に関しては書かれていない。そもそも想定されていないのだ。完全なグレーゾーンだろう。だが、1つ疑問がある。

 

「ドイツの戦力を増やすことになるがいいのか?」

 

私達は世界を相手に戦争をする。ここで敵に塩を送るようなことをしてよいのだろうか?

 

「2機ぐらいなんとでもない。それにモンド・グロッソ後には襲撃をかける。それにタダでコアを渡すはずないだろう?」

 

「・・・どういうことだ?」

 

タダで渡すはずがないということはコアに細工したのだろうか?

 

「コアが自動でこちらに情報を送るプログラムを仕組んだ。最新技術を使おうがこちらに情報は送られてくる。まあ、よくできた盗聴器、というわけだ」

 

「つまりドイツの情報は筒抜け、ということか」

 

相手の情報を知っているか知っていないかの差は大きい。特にドイツは技術大国として健在している。ハッキングするよりもリスクは小さい。

 

「まあ、そういうことだな。俺達はコア2つの代わりにスコールとアーデルが正式にユーゴスラビアの代表資格を得るんだ。そして情報は全て筒抜け。それにコアなんて後から全て回収するんだ。少し手間がかかる程度の話だ」

 

こちらのメリットが大きいということか。それならば問題ないだろう。一方的に告げるのは問題があるが、少々危険ではないのか?それに無月は顔を晒していいのだろうか?

 

「ああ、俺はもちろんこれを着けて行くぞ?」

 

そう言って懐から取り出したのはあの仮面だ。みんなが黙る。

 

「あれか!いいのう!」

 

そう、優子を除いて。かつて優子を除いた全員に反対され仮面を捨てかけた無月だったが、優子が味方をしたため仮面を継続している。

 

「優子、お前だけは俺の味方でいてくれ!」

 

「わしはいつでもお主の味方じゃぞ!」

 

  優子が誇らしげに言う。だが、優子・・・私だって無月の味方だぞ!この場合はあり得ないが。

 

「・・・冗談だ。交渉にはこれで行く」

 

そういうと無月は印を結び変化した。

 

「大統領の側近のトビね」

 

しかし、本当にそっくりだな。これで仲間に化けられて奇襲なんてされたらたまらないだろう。認証システムまですり抜けることができるのだからな。

 

「これなら問題ないだろう?」

 

「わしはあの仮面の方が良いんじゃがな」

 

「・・・俺もそう思う」

 

優子が残念そうに言い、無月が同調する。これ以上話が進まないのはまずい。

 

「ゴホン、ゴホン!それで無月。いつ行くんだ?」

 

「っと。いろいろ準備があるんでな。3日後の明朝。ドイツに潜入する。隠密行動は得意なんでな。ベルリンの連邦首相府に乗り込む」

 

簡単に言ってくれるな。無月ならやれるかもしれんが、1国のトップの執務室に乗り込むなんてことは誰もしないぞ。

 

「おい、そんな作戦を立ててスコールは無事なんだろうな!」

 

オータムが声を上げるが、無月は意に介するような仕草は見せない。

 

「世間からの非難はあるだろうが、この国では歓迎されるだろうし、特に害はない。もう少しすれば全員動いてもらう。それまでは鍛錬に励んでくれ。それじゃあ、解散だ」

 

会議はそこで終わった。みんな散って行き、私も普段している訓練メニューを消化し、夕食後に無月の部屋を尋ねた。

 

 

 

「入るぞ」

 

「ああ、開いているぞ」

 

ノックをして無月の部屋に入る。今日は珍しく優子とアーデルは来ていないらしい。だいたい無月の部屋にはその2人がいるのだが。

 

「そうだ、マドカには謝っておかないといけないことがある。忘れていた」

 

「・・・謝らなければいけないこと?」

 

この間の新年会の費用は回収したし、覚えがないが。

 

「今回はマドカを連れていけない。まだマドカの顔を他国に晒すわけにはいかないからな」

 

「そのことか。今回は最初から諦めている。それに楽しいことならこれから山ほどあるのだろう?」

 

無月はこういう約束事を守ることに関してはきっちりとしている。それに私との約束を忘れていないだけでいい。

 

「任せておけ。戦闘なら嫌というほどできる。それに楽しいことなんて見つかるさ。現に俺は今の状況を楽しんでいるしな」

 

「・・・私もだ」

 

訓練は辛いものを自分に課している。でないと意味がないからだ。だが、それ以外の部分では自分でも不思議なほど楽しめている。

 

亡国機業にいた頃はただ1日が過ぎて行く、という日々を送っていたが、暁ではその1日1日に意味がある、と思える日々を送ることができていた。

 

「ドイツは俺の要求を飲むだろう・・・いや、飲むしかない。あの2人はドイツが全軍を挙げても求めることはできない」

 

あの2人の実力は暁でもトップクラス。それを私とナターシャ、優子が追っており、それにマリア、サラ、ティナが続く。1年前と力の序列が上下したりはしないが、戦力的には桁違いだ。

 

「それに奴らも失ったコアを取り戻せる機会を逃しはしないだろう」

 

「・・・そうだな。だが、本当に警備を掻い潜れるのか?1国のトップの執務室兼居住地だ。IS学園とはわけが違うぞ?」

 

IS学園の警備はザルだが、ドイツが同じとは思えない。

 

「問題ない。影操りの術で潜入して交渉する。特に問題もないだろう」

 

「ならいい。お前の術は信頼している。間違いはないだろう」

 

無月の術はこの1年で一通り見せてもらった。影操りは影に入り込んで対象者の動きを操る。潜入にはもってこいだろう。

 

「おいおい、俺は信頼してないのか?」

 

無月がおどけたように言うが、

 

「バカを言うな。お前のことを信頼していないとついてきていない。それにどんな能力を持っていようと遣い手次第だ。お前のことも信じているぞ」

 

「・・・マドカ」

 

無月が恥ずかしそうに顔をかく。もしかして私はものすごく恥ずかしいことを言ってしまったのではないか?

 

まずい。この雰囲気は気恥かしいものがある。それに恥ずかしがる無月はあまり見たことがない。ふははは、優子、残念だったな。

 

「無月くん、遊びに来たぞい」

 

「おう、優子。それにアーデルか」

 

くっ!なんていいタイミングで。まあ、いい。この雰囲気はちょっと緊張していたからな。それからはいつものように他愛ない話をして過ごし、無月達は3日後にドイツに向かって行ったのだった。

 

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