IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第40話 宣戦布告

No Side

 

「全員、揃ったな。これから緊急のIS安全保障理事会を行う」

 

議長国のアメリカが会議を進行する。ここニューヨークにある国際連合本部内にあるIS安全保障理事会ではIS大国であるアメリカ、日本、ロシア、ドイツ、イギリス、フランス、中国からの計7カ国の理事によって行われる。

 

通常の安全保障理事会は既に機能しなくなって久しい。通常兵器ではまるで相手にならないISの登場で世界のパワーバランスが変化したことが大きい。

 

そのため国連ではIS大国と呼ばれる国家による理事会を設けて、世界に向けた発言力の維持・強化を図ることにした。

 

安全保障理事会はアラスカ条約に基づいてISを利用したテロを行った組織や国家への制裁も可能であり、世界のIS行政に関して相当大きな発言力を持っていた。

 

「さて、いきなり本題に入らせてもらおう。暁、という組織をご存知かな?」

 

「・・・モンド・グロッソ以降、急に台頭し始めた組織、ということまでなら」

 

フランスの理事が言う。ただ、なんとも歯切れが悪い。

 

「この場だからこそ、隠さずに言おう。先日、我が国のノースカロライナ州のポープ空軍基地が襲撃されISが3機奪われた。敵は黒地に赤い雲の外套に身を包んだ者だったそうだ。諸君らにも心当たりがあるのではないか?」

 

議場の空気が重くなる。あのアメリカが軍事機密であり、他国に恥をさらすような情報を公開してきたのだ。各国の理事たちはこの場がただの緊急集会ではないことを痛感していた。その後、理事全員が先日襲撃されたことを述べた。

 

「IS大国全てを同時襲撃か。正気の沙汰とは思えないが、亡国機業の間違いではないのか?」

 

安全保障理事会でかつて議題に上ったことがある組織は亡国企業のみ。しかも被害はわずかで行動を注視するとした。ただ、その後、亡国機業は一切の活動をした形跡がなくなり、注視することも有耶無耶になっていた。

 

「いや、まるで規模が違う。少なくとも亡国機業とは別の組織だろう。情報も一切ない」

 

「目的も一切不明か。得体の知れない者たちだ」

 

「今回の事件で奴らはISを少なくとも15機は強奪している。戦争ができる規模だぞ?このまま放っておくわけにもいくまい」

 

隠す情報がなくなったことで理事たちの議論も活発になっていった。しかし、暁という組織自体が謎に包まれており、対策を打とうにも打つ手がない。

 

「暁がどのような組織であろうと、我々が屈するわけにはいかん。それにこのままでは被害が拡大しかねない。各国で暁対策のために常任理事国による対策委員を設立しようと思う」

 

たかだか1組織に対する対応としては異例の対応だった。1組織に対してIS大国と呼ばれる国家が7カ国で協力する。なんとも大げさだと思う者もいるが、誰も口に出さない。

 

なぜなら、暁の強奪したISの数はIS大国たるドイツの保有数をも上回る。言うなればIS大国1国を相手にするにも等しい。もはや面子云々と言っていられる状況ではないのだ。

 

各国が対策委員の設立に対して意見を述べようとした時、

 

「IS大国様が俺達をそこまで評価してくれるなんて嬉しいな」

 

突如として会議場に男が現れた。その男は、黒地に赤い雲の外套を着ており、紛れもなく先程議題に上っていた暁のメンバーであった。

 

 

 

「貴様、何者だ!どうやってここまで入ってきた!!」

 

「ああ、自己紹介がまだだったな。暁のリーダー・ペインという」

 

男の表情は仮面で遮られているため窺うことができないが、特に焦った様子は見受けられない。

 

「そのペインが一体何の用だ?ここに潜入してわざわざ挨拶をしに来たわけじゃなかろう?」

 

得体の知れないペインと名乗る男とのやりとりはアメリカが引き受け、各国の理事はその様子を見る。

 

「ああ、IS行政に絶大な力を持つお前達と交渉に来た」

 

「・・・交渉だと?」

 

理事たちは眉をひそめる。この男の目的が掴めない。

 

「お前たちの保有しているISを全て俺たちに渡せ。お前達には見返りとして俺達がするある計画へ参加させてやろう」

 

この男は何を言っているのだろうか?理事達は予想もしなかった要求に言葉を失っていた。

 

「話にならんな。お前たちの目的は何だ?」

 

アメリカがこの提案を一蹴する。できるはずもないのだ。ただでさえISを強奪する非合法組織。何が起こるかわかったものではない。

 

「世界からISを解放する、とだけ言っておこうか」

 

「わけのわからんことを・・・ひっ捕えろ!」

 

外に控えていたSPが一斉に雪崩込んでくる。侵入を感知できなかった分、彼らのプライドは傷ついており、反撃の機会を窺っていたのだ。全員が銃を構える。

 

「そんなもので俺を捕えることはできん」

 

「聞きたいことが山ほどある。致命傷だけは外しておけ・・・撃て!」

 

パパパパパパンッ

 

銃声が鳴り響くが、男の姿はそこにはなく、次の瞬間、SPが次々と倒れ、気絶していく。SPは総勢15名。全てが反撃すら出来ず倒れ、男は理事達の目の前に現れた。

 

「ISは何を生み出した?歪んだ女尊男卑を作り出し、多くの軍人は職を失い紛争地に流れ、紛争が激化した。戦争孤児の比率も難民の比率もIS登場以前と比べて急激に増加した。負の側面ばかりではないか?俺達はそれを変える」

 

確かにISが生み出したものは圧倒的な軍事力。そしてそれに伴う技術革新。だが、それをもってISの登場は全て正しいということは出来ないのも事実だった。

 

「お前が何を思おうと既にISは世界の一部だ。何が正義で何が悪か、お前が決めることではない」

 

「そうだな。正義と悪は常に表裏一体だ。お前たちにとっての悪が正義になり変わることも当然ありうる。ならば決めようじゃないか、どちらが本当の正義なのかを!」

 

誰も言葉を発しようとはしない。この男が言おうとしている意味がわからないのだ。

 

「俺たち、暁は今この瞬間を持って世界中の全ての国家に対して宣戦布告を行う」

 

「貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか!?」

 

ペインが宣言したことは戦争に他ならない。

 

「俺達は第1次IS大戦の引き金を引く。ただそれだけのことだ」

 

「バカを言うな!どれほどの犠牲が出ると思っている!」

 

「必要な痛みだ。現にISがこの世に名を知らしめた時、痛みを味わった者もいる」

 

ピリリリリリ

 

各理事達の机に備え付けられた電話が一斉に鳴り響く。緊急を伝える電話だ。そして事務員の男が会議場に雪崩込んでくる。

 

「大変です!EUのIS保有国が一斉に攻撃を受けています!」

 

「「「何だと!?」」」

 

各国が一斉にこの情報を受け、メールも次々送られてくる。逼迫した内容がこの襲撃が偽の情報ではないことを物語っていた。

 

「さて、俺も参戦するとしよう。ああ、安心してくれ。死者は必要最低限に抑えるつもりだ。苛烈な抵抗さえしなければ命までは奪わない」

 

「貴様!待て!!」

 

アメリカ理事の叫びも虚しく、ペインと名乗った男は音も出さずにその場から消えた。

 

こうして世界史上初のISを用いた戦争の火ぶたが切って落とされたのだった。

 

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