Side 無月
戦闘開始前、俺はハルフォーフのISを通して奴らの作戦を聞いていた。
「これで配置が判明したな。各自、予定通りの場所に向かってくれ。爆発が開戦の合図だ」
俺の水分身が飛雷神と同時に爆発を起こし、一気に攻め込む。その後は各個撃破だ。
「思わぬところで役に立ったな。無月はどうするんだ?」
「俺は遊撃部隊のシュヴァルツェ・ハーゼを叩く。想定は全て終えた。動きは基本的に任せるが、俺の指示には従ってくれ。懸念事項は伝えた通りだ。あと、万が一エネルギーが切れかけたら撤退しろ」
大局は既に終えた。この戦いは戦争の一部であり、事後処理程度のものだ。ただ、俺が待ち望んだ戦いでもある。
「正午が近いな。おそらく最後の戦いだ。気を引き締めて行け。死ぬなよ」
ISといえど絶対防御が貫かれれば死ぬ。大切な者が死ぬのは1度で十分だった。
「誰が死ぬのじゃ?アーデル、マドカ?」
「さあな、誰に向かって言っているのだ?」
「ティナじゃないのか?」
優子とアーデル、マドカは今さら何を?と言う感じだ。
「嫌だなー、マドカ様。それを言うならマリアとサラでしょう?」
「「私(うち)は負けませんから!」」
こいつら本当に息があっているな。
「オータム、あなたが一番心配だわ」
「何言ってんだ、スコール。あんな奴らにやられるぐらいなら無月に殺されてるだろ?」
まあ、敵をなめて油断してる癖は訓練で痛めつけて強制的に直したからな。オータムにとっては苦痛だったろうが。
「ふふふ。霧雨くん。あなたの心配は無用みたいね?」
「全く。頼もしいよ、お前らは」
良い仲間を持った。俺は水分身を作り出し、爆弾を持たせ、送り込んだ。
ドゴオオンッ!
「さあ、行こうか。最後の戦いだ」
「「「おお!!」」」
こうして俺達の戦いが始まった。
シュヴァルツェ・ハーゼは本校の1階か。あそこは学園の中心地。通信1つでどこへでも行けるということか。昔、ここに置いてきた術式はまだ有効なようだ。俺は奴らの近くに飛ぶ。
「いいか、戦闘が始まった。敵はおそろしく強い。決して気を抜くな!」
「「「はつ!」」」
相変わらず良い部隊だ。だが、さっさと退場してもらおう。指揮を執る部隊長のハルフォーフが残りの5人と少し距離を置いたのを見て俺は印を結ぶ。
「涅槃精舎の術」
チャクラの消耗を抑えるために範囲は5人の付近に限定して涅槃精舎の術を使う。白い羽が眠気を誘い、5人を眠りの世界へと誘う。そして俺は用意していた装置を起動させる。
「おい、お前ら、一体どうしたというのだ!?」
突然、部下が眠ってしまったのだ。戸惑うのも無理はない。いくら揺すっても決して起きないがな。
「さて、どうしたんだろうな」
「き、貴様は!?」
まだ混乱しているハルフォーフの前へと姿を現す。
「作戦司令室!霧雨無月が姿を現しました!・・・司令室?応答願います!!」
「残念だったな。通信は不可能だ」
ハルフォーフのISは俺達の渡したコアを使っている。コアを誤作動させて起動そのものをできなくしたのだ。
「貴様!一体何した!?ジャミングか?」
「いや、お前の使っているISのコア・・・一体どういう経緯で手に入れた?」
「・・・まさか!?」
気付いたか。ヒントをあげたのだから察しの良いものは気付くだろう。
「俺達が渡したものだよ。そのコアを誤作動させて起動を封じる。ISに頼った弊害だな。シュヴァルツェ・ハーゼはここで退場だ」
「くっ!まだだ!ここで負けるわけにはいかないのだからな!!」
そう言って腰にあった銃を向けてくる。まだ戦意を失わないか。精鋭部隊と言うだけはある。
「そんなものは無駄だ」
「っ!」
一瞬でハルフォーフの前に移動し、銃を弾く。
「もう寝ていてもらおう・・・写輪眼!」
ハルフォーフが崩れ落ちる。俺はその場にいた全員のISを奪い、ミラージュへ送った。
「・・・そろそろ行くか」
あと少しで戦局はこちらにぐっと傾くだろう。俺は頃合いだと考えて目的の場所へと向かって行った。
Side 山田真耶
「教師陣、半数を切りました!オルコットさん、鳳さんのエネルギーは残り4分の1。他の生徒たちも半分を切っています!」
シュヴァルツェ・ハーゼが出撃不可となってから数分で戦況は悪化の一途をたどっていた。専用機持ちの生徒たちも頑張ってはいるが、いずれやられるのは目に見えている。
「織斑先生!私が向かいます!」
私が出て行って何かできるとは思えない。それほどまでの実力差があるということはわかっていた。だが、このまま生徒達がやられていくのを黙って見るわけにはいかない。
「待て。お前が出て行ってもどうにもならん」
「・・・ですが!!」
では、どうしろというのか。もう援軍は望めない。
「オルコットさん、鳳さんの反応が途切れました!」
ついにかろうじて保っていた戦力の均衡が崩れ始めた。
「・・・私が出る!山田先生は全体の指揮を!」
「ちーちゃん、困っているみたいだね?」
突然モニターがジャックされ、篠ノ之博士が映し出された。
「・・・お前は」
織斑先生はそれを見て苦々しそうな顔になる。
「今はお前にかまっている余裕はない、消えろ!」
「まあまあ、ちーちゃん。私がそんなこと知らないと思う?他の奴はどうでもいいんだけど、このままだといっくんや箒ちゃんまでやられちゃうから手を貸してあげるよ」
そして映像が途切れた。一体どういうことなのだろうか?すると設置していたレーダーが接近してくる何かを感知した。
「っ!織斑先生!20機ほどのISがこちらに向かっています!」
「なんだと?映像をつなげ!」
監視カメラの映像を見ると見覚えのある機体が映し出されてた。しかし、どれも機体の様子が少し違っていた。
「あれは北海道にいる最後のIS部隊!どういうことだ?通信をつなげ!」
「はい!―――こちらIS学園、あなた達は援軍ですか?」
しかし、応答はない。なぜ?
「・・・まさか」
「どういうことです?織斑先生?」
なにがわかったというのだろうか?
「こちらの通信が通じないということ・・・おそらくあれは『銀の福音』の時と全く同じ状態だ」
「暴走ですか!?それじゃあ、あの事件は全て・・・」
そこまで言って言葉を飲み込んだ。今は咎めているような状況でもない。
「・・・全てのISが学園に侵入。戦闘を開始しました」
20機はバラバラになり戦闘を開始したのだった。
Side 無月
「やはり来たか。全員、気を引き締めろよ!」
自衛隊基地へと逃れて行ったISが学園上空に現れた。おそらく篠ノ之束に暴走させられているのだろう。しかし、こちらの想定には入っていたことだ。悪い部類に入るものだがな。
だが、あいつらは負けないだろう。俺は俺の目的を果たすだけだ。そして辿り着いたのは第1会議室。ここに奴がいる。
ドカンッ!
ドアを蹴り飛ばし、侵入する。思った通りだ。
「2年ぶりだな。織斑千冬」
「・・・霧雨無月か」
2年か。長かった。だが、ここまで来た。
「山田先生には悪いですが退場願いましょう・・・神羅天征・衝!」
「きゃ!」
山田先生は壁に叩きつけられる。山田先生はそのまま気絶した。神羅天征・衝は掌から直接衝撃を出すものだ。神羅天征を防御ではなく、攻撃に回したもの。人1人など簡単に飛んでいく。
「・・・私の首を取りに来たのか?」
「当然だ。これが全ての目的であり、俺の復讐」
「そう簡単にやられると思うか?」
そういって暮桜を装着する織斑千冬。俺も雫を装着し、輪廻眼を発動させる。
「神羅天征!!」
ドオオオンッと当たる一面が吹き飛び、俺は空へと飛んだ。
Side 優子
「さて、あちらも始まったようじゃのう」
「ああ、無月はここで終わらせる気だろう」
第1会議室がある場所が吹き飛び、そこから2機のISが飛び出していた。
「千冬姉!?」
織斑一夏が驚いたような顔をしている。
「どこを見ている?」
その隙をついてアーデルハイドが斬りかかる。アーデルハイドのISはスピード特化型。セカンド・シフトしたという白式にも劣らない速さだ。
「アーデルハイド。5機の暴走機が向かってきておるぞ?」
「わかっている」
暴走した機体を5機も相手にするのは面倒じゃが、アーデルハイドと組むのは久しぶりじゃ。負ける気など毛頭ない。
「一夏!千冬さんの方に行け!私がここを引き受ける!」
暴走機がわしらの敵だということを見て、篠ノ之箒が織斑一夏に無月くんの方に向かうように言う。
「箒・・・だが、ここが」
「千冬さんが負ければ私達は終わりだ。それに霧雨を倒せば私たちの勝ちだ。私と手易々と負ける気はない!」
「すまない、箒。ここは任せた!」
そういって織斑一夏は無月君の方へ飛んでいった。計算上はそうなるの。じゃが、あの程度の力量で無月を倒すのは無理じゃ。
「健気じゃのう。じゃが、残酷じゃな。弱ければ何も守ることなどできんと言うのに」
「一夏は強い。お前たちの思っている以上にな」
篠ノ之箒が言うが、笑いがこみあげてきた。
「はっはっは。あやつが無月くんより強いじゃと?冗談はよしてほしいのう」
確かに1年の時に比べて能力は上がっているのだろう。じゃが、その程度。無月君は零落白夜を完封する術がある。
「また絢爛舞踏かの?」
篠ノ之箒から金色の光が見える。その瞬間にわしは瞬時加速で懐に飛び込んだ。篠ノ之箒はそれに反応して鍔迫り合いとなる。
「絢爛舞踏は確かに強力じゃ。じゃが、リスクについて考えたことはあったかの?」
「・・・どういうことだ?」
仲間ばかりの状況では気付けなんだか。
「絢爛舞踏は一定範囲内にいるISを‘全て’回復させる能力じゃったな?」
「それがどうした・・・はっ!」
篠ノ之箒は気づいたようだ。
「そう、全てのISじゃ。それは敵味方を問わぬ。お主が絢爛舞踏をしようとした直後にわし達が飛び込んできた理由は絢爛舞踏を阻止するためでなく、おこぼれにあずかるためじゃよ」
「くっ!」
後ろではアーデルハイドが1機の暴走機を落としたところだった。
「さて、フィナーレと行くかの」
わしは空いている片手に刀を展開し、戦闘を再開した。
Side マドカ
「まあ、粘った方だったな」
ボーデヴィッヒとデュノアとの戦いは終始私達が圧倒していた。それも仕方がないことかと思う。
AICはビーム兵器に対しては無意味。私を止めてもビットを動かせるためその間に攻撃は可能だ。そしてデュノアは第2世代機な上にラビット・スイッチの技量も優子には及ばない。
そして優子のように圧倒的な強みがない。どの距離でも遜色なく戦うことを強みにしていたようだが、決定力に欠ける。器用貧乏と言うところか。
それでもまだ戦えていられるのは連携が異様に上手いからだ。伊達に3年間は過ごしていないというところか。ただ、圧倒的な『個』を崩すには至らない。私とナターシャも連携訓練は積んでいるしな。
「ナターシャ、暴走機が来ている。任せてもいいか?こいつらは私が片付ける」
「ええ。ゴスペルは1対多を想定した機体よ。4機ぐらいなんとでもないわ」
無月の懸念通り、暴走機が来ていた。面倒だが、問題はない。
「ちっ!舐めるなーーー!!」
ボーデヴィッヒがプラズマ手刀を展開して切りかかってくる。私はそれを雷切で迎え撃つ。1合2合と切り結ぶ。
「僕もいるのを忘れないでほしいよね」
右からでデュノアが現れる。あれはパイルバンカーか?物騒な物を持っているな。
「ああ、忘れてはいない。後ろに気をつけておけ」
接近には気付いていた。そしてビットから放たれたレーザーの速度を最大にする。
「くそっ!」
慌てて避けるデュノア。よく避けたと思う。だが、
「避けていいのか?」
「・・・えっ!?」
「ぐあっ!」
私はデュノアに避けられたレーザーを曲げてボーデヴィッヒに直撃させた。
「ラウラ!!」
自らが回避したために味方に攻撃が当たったのだ。さっきまでの連携に綻びが見えた。
「崩れたな」
私は雷切と切り結ぶ術を持たないデュノアに狙いを定めて、切りかかった。盾で防ごうとするが、雷切は高圧電流で切れ味を極限まで上げた刀。盾で防げる代物ではない。
ズバッ!!
「・・・掠っただけか」
盾を切った瞬間、デュノアは盾を捨てて後ろに向かって飛んだ。そのせいで雷切はデュノアに掠っただけだった。
「そうか。お前は1度無月に盾ごと切り捨てられていたな。無月に礼でも言っておくんだな」
「っ!誰が!!」
ここで安心させてやる必要はない。後ろからこちらを狙ってきたボーデヴィッヒにビットの一斉射を放つ。
情報ではオルコットが私の姉妹機に乗っていて、フレキシブルを使うらしいが、私ほどの精度はないだろう。
「がはっ!」
レーザーが次々にボーデヴィッヒに吸い込まれていく。残りのエネルギーでは耐えきれまい。それと同時にスター・ブレイカーを展開し、充填を始める。
「ラウラーーー!!この!」
「仇討ちか・・・だが、残念だったな」
スター・ブレイカーの充填が終わり、最大出力で放つ。それに気付いたデュノアは距離を取って回避する体勢をとる。しかし、フレキシブルを使う私には無意味だ。
「うわあああっ!!」
レーザーが直撃したデュノアは落ちて行った。
「さて、無月・・・ここは終わったぞ」
少し手間取ったが、戦闘は終えた。後はナターシャの戦っている暴走機か。ふとそちらを見るとナターシャがシルバー・ベルを連射していた。校舎が崩壊していく。
「・・・やり過ぎだ」
頭が痛いが、残りは3機か。加勢しに行くか。2人からISを奪い、そう思い私はナターシャの方に向かった。