ありがとうございます!
いろいろな感想をいただいていますが、このまま書いていこうと思います。
Side 無月
限界を超えた楯無さんの一撃と俺の須佐能乎の一振りによる衝突は地面に大きなクレーターを作り、辺りのものを吹き飛ばしていた。楯無さんはまだランスを構えたまま無言だったが、しばらくしてその口を開いた。
「・・・悔しいなー・・・私、じゃ・・・届かなかった」
顔に笑みを浮かべながらそう言うと、楯無さんは気絶したのか、ISが解除される。支えがなくなり、地面に倒れかけた楯無さんを俺は受け止めた。
「すいません・・・楯無さん」
激突の瞬間、楯無さんのミストルテインの槍は驚くべきことに俺の須佐能乎にヒビを入れた。五行の力を司る須佐能乎に亀裂を入れるとは信じがたいがそれだけ想いが乗った一撃ということだったのだろう。
「俺を止めたい理由が俺を好きだからだなんて・・・自分のためって言ってたじゃないですか」
衝突の瞬間に楯無さんがそう言ったわけではない。ただ、確かに伝わってきた。俺は楯無さんを倒壊の危険が少ないであろう校舎に寄りかからせる。
「楯無さん。刃は届かなかったかもしれません。けど、想いは確かに届きましたよ。でも俺はそれを越えていきます。それが俺の戦いですから」
楯無さんには楯無さんの戦いがあったように、俺には俺の戦いがある。それはここで止まることではない。
「さて、奴らはどこへ行ったのかと」
まだそう遠くには行けていないはず。といっても目的地はわかっている。すぐに追いつけるはずだ。
「・・・見つけた」
俺は飛雷神の術で飛ぶ前に楯無さんの方に目をやる。目立った外傷はない。じきに目を覚ますだろう。だが、それまでには全てが終わっている。
「次に会えたらあなたは俺になんて言うのでしょうね」
織斑千冬の気配を感知した俺はその近辺にある術式の元へと飛ぶために印を結ぶ。そして俺は飛ぶ瞬間に楯無さんの目に一筋の光が流れるのを見た気がした。
◇
Side 千冬
「千冬姉!楯無さんが霧雨と戦ってくれている!早く行こう」
教室に投げ捨てられた私に一夏が寄ってくる。霧雨の相手は楯無がしており、一夏も撃墜されたようだが、楯無から何かを言われたようだ。行こうとはおそらくエネルギーの補充に行く、ということだろう。
「ああ、すまない」
私も一夏も怪我をしているが、それほど重い傷ではない。まだ走る体力も残っている。一夏が先頭となり、エネルギーを補充する装置のある、第1アリーナに向けて走り出した。
◇
「・・・一夏」
「どうしたんだ千冬姉?」
第1アリーナへと向かう途中、私は一夏に声をかけた。まだ何も話していない一夏に話しておかなければならないと感じたからだ。
「私は間違っていたのだろうか?」
思い出すのは白騎士事件が起きるよりも以前の事。そしてISが発表されるよりも前の出来事。
「・・・・・・」
一夏は何も言わない。ただ、私は話さずにはいられない。
「発明した作品を認められなかった束のため、という一心で私は白騎士に乗り、ミサイルを撃墜し、各国の軍隊を相手にした。しかし、招いたのは世界の混乱とこの戦争だ。そして私は霧雨の両親の死の原因となった」
ISという世界ではだれも開発したことのないパワード・スーツを開発した束は必死になって自分の発明したISの有用性を世界に向けて発信した。束は世界でも言われているとおり、私と一夏と篠ノ之にしかまともにコミュニケーションが取れない。
その束が一生懸命、多くの人間とコミュニケーションを取ろうとしたのだ。慣れない言葉づかいまで夜遅くまで練習して発表に臨んだのだ。これで宇宙に行ける、と喜んでいた束を私は今でも覚えている。
しかし世界はISを認めようとはせず、発明は日の目を見ることはなかった。世界に絶望した束は白騎士事件という強硬策に打って出た。私はそれに反対しなかった。私が協力して親友が認められればいいのだと思っていたからだ。
2000発以上のミサイルを撃ち落とすのは困難だったが、やり遂げた。そして死傷者が0というニュースを聞いて心から安堵した。これで束の作ったISは世界に認められ、夢だった宇宙開発に辿り着ける、はずだった。
だが、世界はISの軍事的優位性に目をつけ、宇宙開発という言葉を忘れ去った。ISが登場した世界に残ったのは女尊男卑、という狂った風潮だけだった。しかし、いつかは宇宙開発が見えてくる。そう信じていた。
だが、一向にその気配はなく、ISは各国の軍事力の象徴となり、技術をぶつける場としてモンド・グロッソが生まれ、教育の場としてのIS学園が創設され、私は学園の指導者となった。
そして一夏と時を同じくして現れた霧雨無月。霧雨の話によれば両親は白騎士事件で死んだのだという。その話を聞いた時に私は衝撃を受けたし、何より恐怖した。
自分のせいで人を殺してしまったということが。一夏と年も変わらない1人の子どもを不幸に追いやってしまった、ということが。
「私は怖かったのかもしれない・・・自分が誰かを殺したという事実が。自分がこの狂った世界を作った原因になってしまったということが」
私が為したことは偉大だと多くの人に言われたが、そんなことはなかった。何も思った通りに行かず、不幸を作っただけなのだから。
「・・・千冬姉」
これを聞いて一夏はどう思うのだろうか?私を軽蔑するのだろうか?
「いっそ私は霧雨にやられてしまった方が良いのかもな」
霧雨は私と束を狙っている。世界中で戦争を起こしてはいるが、犠牲者が出た、という報告はなく、ISを奪っているだけだ。最後に学園を残したのも私を狙うためだろう。
私には正義など語る資格はないのだろう。ならばいっそ殺された方が良いのかもしれない。
「ふざけるなよ、千冬姉!!」
一夏はそう叫ぶと思いっきり私を殴りつけた。私は踏ん張ることもできずにそのまま地面に倒れ込み、一夏を見上げた。
「なんでそう言うことを言うんだよ、千冬姉!確かに千冬姉のしたことは褒められることじゃないかもしれない。けど、俺にとっては大切なたった1人の家族なんだ。だから、そんなことは言わないでくれよ」
家族・・・か。
「それに俺は誓ったんだ。千冬姉を守るって。今がこの時なんだと思う。守られるばかりじゃなくて、千冬姉を守る。それが専用機を持った時に初めて思ったことなんだ。千冬姉が狙われるならそれを振り払ってみせる!」
「そうか、そうだな・・・」
私のしたことは間違いだったかもしれない。ただ、こんな私をこれほど大切にしてくれる一夏がいる。そのためには戦わなくてはいけない。戦って生きなければならない・・・だがな、一夏。
ゴンッ!
私は立ち上がって一夏に近づいて思いっきり殴ってやった。
「痛て!?」
「誰が教師を殴って良いと言った?」
「す、すみません」
おかげで迷いが晴れた。私のしたことは決して償えるものではない。ただ、私には私の戦う理由がある。一夏のため、たった一人の家族のために私は剣を振ろう。そのためにもここで負けるわけにはいかない!
ドゴオオオオオオンッ!!!!
突然大きな音と共に地震にも似た衝撃が校舎を揺らした。
「・・・楯無さん!?」
一夏が楯無の安否を心配する。この衝撃はさきほどまで私たちが戦っていた方角からきている。
私も一夏もISのエネルギーを失っている今、他の戦況がどうなっているかは全く分からない。ただ、進むしかないのだ。
「行くぞ、一夏!」
「ああ、行こう!千冬姉!!」
◇
間もなく、私達は第1アリーナに到着し、エネルギーの補充を始めた。補充が完了するには5分ほどかかる。
早く行かなくては楯無も危ないだろう。それほど霧雨の力は強大だった。いくら楯無が世界第3位の強さを誇っていたとしても、奴は現ヴァルキリーのスコールまで従えている。
生半可な強さではないということが先ほどの戦闘でもわかった。
単騎での戦闘で勝ちを拾うのは容易ではないだろう。零落白夜は一撃必殺の攻撃力を有する。ただ、どのような攻撃も敵に当たらなければ意味を為さない。霧雨はこちらの攻撃をほぼ完璧に見切っている。それを突破するのはやはり容易ではない。
奴を突破するためにはどうすればよいのか。
「・・・千冬姉?」
「ああ、すまない。考え事をしていた」
「・・・みんなは大丈夫かな?」
一夏が戦闘に参加した者達の心配をする。こんな時まで他人の心配をするとはな。
「奴らに撃墜された者も多い。ただ、霧雨を倒せば逆転の目はある。しかし、お前も生徒会長の自覚が出てきたようだな」
「そりゃそうだよ!俺だって伊達に楯無さんを見てなかったさ。生徒会長は学園を守る最後の砦だからな」
確か、一夏が生徒会長を目指したのは楯無がきっかけだったな。私が意識不明の時に、精神的な弱さを見せることなく自らを鍛えていた姿に憧れたと言っていた。
生徒会長とは学園最強の証であり、学園の精神的主柱。これが折れれば有事の時に学園は一気に崩壊するだろう。だから生徒会長は敗れてはいけないし、弱さを見せることはできない。
全く、人の成長とは早いものだ。今まで頼りなかった弟がこうも成長するとはな。嬉しい反面、寂しさも感じる。
一夏の成長。私はそれを見くびっていたのかもしれない。どこかで私が守らなければ、という思いが先の戦闘でも常にあった。そのために防御できるであろう攻撃も無理をして庇いに行った。
だが、一夏はもう私が守らなければならない子どもではないのだ。もう一人前のIS乗りとして戦う力を持っている。ならば次は一夏に背中を預けて戦えばいい。護るべき対象ではなく、共に闘う戦友として。
そうなれば勝機が見えてくるかもしれない。一撃でいいのだ。一撃入れることができれば形勢が傾いてくる。
もうエネルギーの補充は終わるのだろう。短い間だったが、久々に一夏と話ができた。こんな状況で話ができる自分に驚くが、それもいいだろう。だが、それも長くは続かなかった。
「話は終わったか?」
「霧雨!?じゃあ、楯無さんは!?」
霧雨が第1アリーナに現れたからだ。くっ!もう来ただと?まだエネルギーの補充が終わっていないというのに。
ヒュンッ!!
そして補充が終わる時間を確認しようと私は霧雨から目を離してしまった。それと同時に何かが空気を切り裂いて進んでくる音がした。
「危ねえ!千冬姉!!」
「・・・なっ!?」
ドンッ!
一夏が叫ぶと同時に立っていた私を突き飛ばした。突き飛ばされた勢いで視界が歪み、なぜ一夏が私を突き飛ばしたのかもわからなかった。
ザクザクザクッ!!
「くっ!一夏!?」
私は素早く起きあがり、一夏の様子を見る。だが、私のいた場所に立っていた一夏の首には5本の細長い刃物が突き刺さっていた。
「い・・・一夏ぁーーーーーー!!!!!」
アリーナに私の絶叫が響き渡った。