Side 無月
俺は控え室で織斑と金髪の試合が終わるのを待っていた。調べたところによると金髪のISはエネルギー兵装が主力らしい。なら吸術封印で完封できる。既に結果が見えている試合だ。織斑も専用機が来るらしいが、こちらの方が興味あるな。
「霧雨くん、織斑くんとオルコットさんの試合が終わったので準備をしてください」
「・・・はい」
クラス代表にならない以上、勝敗は関係ないので聞かないことにした。今はイギリスの代表候補生らしい金髪との試合が楽しめればいい。あれだけ威張り散らしていたんだ、それなりに実力はあるのだろう。
俺はアリーナにやってきた。俺が専用機持ちであることを知らないので山田先生は打鉄とラファールを用意している。
「霧雨。お前は専用機持ちではないはずだ。どちらかの訓練機を選べ」
相変わらず高圧的な奴だ。それに訓練機で専用機を持つ代表候補生とやらせようとしたのか。無理がありすぎるな。
「けっこうです。行こう、雫」
俺は雫を展開し、空中に飛び出した。驚くような顔をしているが、報告義務などないし、たかだか一教師に情報を教える必要もない。
そして俺は金髪と向かい合った。
「織斑・・・一夏・・・」
金髪はどこか焦点が定まらない目で織斑の名前をつぶやいている。ああ、これが主人公ね、と思いつつ呆れるが既に試合開始のブザーは鳴っている。一気に強襲しても良いが、まあ集中させてやろう。
「おい、金髪。お前はどこを見てるんだ?試合をやらないなら帰れ」
「し、失礼しましたわ。踊りなさい、わたくしのブルー・ティアーズで!」
掛け声とともに4機のビットからビームを打ち出してくる。やはりエネルギー兵装か。俺は輪廻眼を発動する。その直後にビームが直撃した。
「あら、あっけないですわね」
「お前は何を見ているんだ?」
封術吸引でエネルギーは無効化され、俺は一切ダメージを受けない。
「そ、そんな確かに直撃したはずですわ!」
自分の攻撃が効かなかったことに取り乱しているらしい。だが、戦いでは何が起こるかわからない。どれだけ精神の安定を保てるか。それが重要な要素となる。
「さてな。まさかこれで終わりか?代表候補生って大したことないんだな」
こいつは挑発に弱いはずだ。ならどんどん挑発してやろう。
「減らず口を!行きなさい!ティアーズ!!」
あっさり挑発に乗った金髪は手に持った大型ライフルとビット兵器で俺を落とさんとビームを連射する。だが、無意味だ。俺は多少動きつつ封術吸引を試すことにした。
Side 真耶
「霧雨くんの機体はビーム兵装を無効にできるんでしょうか?」
そう、さっきから霧雨くんはオルコットさんのビット兵器による攻撃とライフルの射撃が直撃しているのに一切ダメージがないのだ。
「さあな。だがそんな技術は聞いたことがない。あの機体は異常だ」
ブリュンヒルデの織斑先生も聞いたことがない技術。一体何をどう使っているのか?それに霧雨くんが専用機を持っていることが驚きだった。
彼は手のかからない生徒だ。授業は真面目に受けるし、頭もいい。しかし、一切と言っていいほど人と関わろうとしない。受け答えはするし、特にコミュニケーションに問題があるわけでもない。
個人情報は一切不明。経歴だけはしっかりしているが、中学も入学だけはしたようだが、3年間通ってすらいない。何かあったのだろうか?と思うが、生徒にもプライバシーがある。いくら教師だからと言っても踏み込んではいけない部分と言うものはある。
「オルコットが焦ってきている。だが、当然か」
「自分の攻撃が一切効かないんですもんね」
試合自体はオルコットさんが攻撃し、霧雨くんが避けたり、攻撃を受けたりしている。ただ、オルコットさんの攻撃は一切効かず、霧雨くんは攻撃をしない。そんな攻防が続いていた。
Side 無月
先程の挑発から金髪が俺に攻撃を継続するが、封術吸引で攻撃が一切効かないため、金髪が焦ってきているのがわかる。
「あなた、一体何なんですの!?それに攻撃をしないなんてふざけてますの?」
「そうか、そんなに攻撃してほしいのか」
俺はチャクラ刀・新月を展開し、飛びまわる4機のビットの動きを風の刃で破壊した。
「そんな!ティアーズ達が!あなた一体何をしましたの?」
わからないだろうな。わかる必要すらない。残り2機のビットを隠しているはずだが、まあ、いいだろう。
「じゃあ、行くか」
そう言って瞬時加速で一気に金髪に接近する。機動特化した雫はどのISよりも速い。それに雫が自ら戦闘特化と言うだけあって、戦闘に使用されるあらゆる能力が強化されている。
チャクラを通していない一太刀を浴びせる。チャクラを通したらすぐに終わってしまうからな。
「くっ!行きなさい」
接近した俺に切られながら金髪は残りの2機を出した。残りの2機はミサイルらしい。俺は左手を差し出す。
「神羅天征!」
ドンッ!
「きゃ!」
衝撃波がミサイルごと金髪を吹き飛ばす。俺は金髪を吹き飛ばした方に瞬時加速し、金髪を蹴り飛ばして制御されていないビットを切り捨てる。
「どうした、こんなものか?」
金髪のいる方に移動しながら呼びかける。金髪は浮かんでくるが、もう兵器はビームライフルしかないだろう。
「これでもくらいなさい!」
「学習しない奴だ」
金髪はビームを撃つが無意味だ。俺は封術吸引でビームを無効化し、風の刃を最大出力で打とうとチャクラを込める。具現化した青いチャクラが新月から立ちこめる。
「あ・・・あ・・・」
金髪はもう戦意もないようだ。口を開けたまま抵抗すらしようとしない。俺はそれを見た瞬間に勝負をつける気が失せた。新月をしまった。
「山田先生、俺はこの試合棄権します」
「えっ?は、はい。勝者セシリア・オルコット」
そして試合が終了する。勝者が確定し、俺の負けが決まった。
「あ、あなた一体どういう―――」
金髪が何か言おうとするが無視した。俺はアリーナから出て更衣室に向かおうとするが、山田先生と織斑千冬に止められた。
「霧雨、お前のISは一体何なんだ?それにお前が専用機を持っているということは聞いていない」
「申告義務なんてありませんし、専用機の性能について同様です。それに何の権限に基づいて機密情報を聞き出そうというんですか?学園への情報提供義務はなかったはずですが」
そうなのだ。ここはIS学園と銘打って各国の試験場になっているが、情報提供の義務は全くない。あったとしても一教師に教える必要はない。
「そうだ。だからこうしてお前に聞いている」
「俺は言う気がないので、その必要はありませんね。失礼します」
そういって立ち去ろうとする。
「・・・待て。なぜ試合を棄権した?」
「戦意のない相手と戦う意味はないでしょう?それと俺はもう試合はしませんので」
そういって俺はその場から立ち去った。あまり長くいると織斑千冬を殺しそうになる。のうのうと生きている‘奴’を見るのが耐えきれない。
「あれが代表候補生・・・がっかりだ。で、そこで何をしている?」
ヒュンッ!
俺は人の気配を感じ、そちらに向けて近くにあった花をチャクラで強化して放った。そこまでチャクラをこめていないので花は壁に当たりそのまま落ちた。既に気配が遠ざかったので覗き人はいなくなっただろう。
Side 更識楯無
「まさか気付かれるなんてね」
私は1年1組で行われるという試合を見た後、霧雨無月を尾行していた。が、失敗に終わってしまった。気配は完璧に消していたはずなのにどうして気付かれたのか?
「それにしてもでたらめな子だわ」
彼は圧倒的ともいえる力で代表候補生を破った。おそらくシールドエネルギーは削られてすらいないだろう。それにしても不思議なISだ。エネルギー兵装が無効とは一体どういう仕組みなのか?
そしてさっき言っていた言葉。
『あれが代表候補生・・・がっかりだ』
セシリア・オルコットはけっして弱いわけではない。現にIS学園に首席で入学してきている。それをがっかりというほどの力を持っているのだ。そしてまだまだ力を隠しているのだろう。
「・・・一度お話ししてみたいわね」
新学期早々、新たな楽しみができた。まずは彼がどういう人間であるか調べる必要がある。私は早速データを洗うために生徒会室に向かって行った。
主人公はセシリアを金髪呼ばわりしていますが、他の専用機持ちも名前を呼ばないと思います。もし違和感があれば訂正します。