IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第48話 空

Side 無月

 

第1アリーナに降り立ったのは2機。1機は篠ノ之束。織斑の白式のような外形に、深紅のラインが入っている。だが、もう1機は誰だ?無人機ではない。そして感じたことのない気配だ。

 

無人機のような外形をしてはいるが、無人機よりも全体的に細身な身体をしている。ただ、腕が他のISに比べて長いという特徴はあった。

 

「火遁・火龍炎弾!」

 

俺は篠ノ之束に向けて火遁・火龍炎弾を放つが、無人機のようなISが火龍に反応してISほどの大きさのある盾を展開し、火龍炎弾を防いだ。

 

そして盾をしまうとそのままこちらに向けて突進してくる。俺は素早く雫を展開し、俺に向かって振り下ろされる拳を両手で受け止めた。相当に重い一撃で、両手で防御しなければガードの上からダメージを負っただろう。

 

「・・・お前は誰だ?」

 

無人機のような形をしたISだが、確実に人が乗っている。篠ノ之束がそばに置いている人間いるなど聞いたことがなかった。

 

「私の名前は空。くーちゃん、と呼ばれている、束さまの助手です」

 

全身装甲の頭の部分が開き、顔をのぞかせた少女がそこには居た。空と名乗った少女。年はまだ10歳ほどではないだろうか?髪の毛は銀髪で何故か両目を閉じていた。

 

空と名乗ったこの少女に会うのは初めてのはずだ。だが、俺はこいつに似た気配の人間を知っている。だが、そのようなことがあり得るのだろうか?

 

「ちーちゃん。遅くなってごめんねー。ちょっと機体の最終調整に思ったより時間をとられてねー・・・ちーちゃん!?」

 

篠ノ之束。世界を狂わせた元凶であり、俺の両親を殺した真犯人。俺は後ろに飛んで空との距離を開け、新月を展開し、風の刃を篠ノ之束に向けて放った。が、風の刃は空が身の丈ほどもあるバカでかい刀を振るって打ち消した。

 

「これを止めた、か」

 

「博士の邪魔はさせません」

 

この空という奴はだいぶできるみたいだ。目を閉じているのにこの攻撃を見切るとはどういうことだ?

 

そして持っている刀は首斬り包丁並の大きさがあるが、刀というよりも鉄の塊と形容した方がいいかもしれない。そしてそれを手足のように扱っている。

 

「・・・死者との対面をそこまで望んでいるとはな」

 

「どういうことです?」

 

空が首をかしげる。無理もない。織斑千冬が死んだのはつい先ほど。生きていると思っていてもおかしくはない。

 

「ねえねえ、ちーちゃん。どうしていっくんと一緒に寝てるのかな?救世主の束さんがちーちゃんのピンチを救いに来たよー!!」

 

篠ノ之束は倒れている織斑千冬に尋ねるが、織斑千冬が答えることはない。

 

「ちーちゃん!起きてよ、ちーちゃん!!」

 

篠ノ之束は物言わぬ織斑千冬に必死に話しかける。

 

「あと少し遅かったな。2人がもう目を覚ますことはない」

 

「・・・ちーちゃん!・・・いっくん!」

 

俺はアリーナに降り、篠ノ之束に近づいて行く。俺の言葉に耳を貸すことなく、篠ノ之束は2人を揺する。だが、しばらくするとその動きを止め、俺の方に向き直った。

 

「お前・・・お前がやったのかーーー!!」

 

そう叫ぶ篠ノ之束の顔は絶望と憎しみに染まっていた。

 

「そうだが・・・それがどうした?」

 

予想だにしなかった2人の姿を見て激昂した篠ノ之束が俺に向けて特大のビームを放った。俺はそれを封術吸引で無効にする。

 

「俺の両親はお前達の起こした白騎士事件で殺されている。白騎士である織斑千冬はその報いを受けて当然だろう?」

 

「そんなゴミみたいな奴知らないよ!!お前だけは絶対に許さない!!完全に壊して、ナノ単位で分解してやる!!」

 

顔を真っ赤にして篠ノ之束は叫ぶ。

 

「お前にとってはゴミでも俺にとっては大切な両親だ。まあ、今からお前もああなる。親友の死を悲しむことはない。良かったな。自分の大切なものと一緒の日に死ねるなんてお前は幸せだ」

 

「くっだらないね!!」

 

「束さま!私が行きます!!」

 

再び篠ノ之束がレーザーを放とうとするのを制して上空に待機していた空が瞬時加速でこちらに飛び込んでくる。瞬時加速にしてはだいぶ速い。紅椿と同じ、いや、それ以上か。

 

ガシッ!!

 

空が繰り出した拳を俺は掌で受け止める。この両腕もおそらくは対IS兵器。不用意に攻撃を受けるべきではないだろう。

 

「束さまが作ったゴーレムⅣの攻撃を止めるとは、やりますね」

 

「それはどーも!」

 

力任せに空を振り払ったところで先ほどと同じビームが俺を襲う。だが、俺はそのレーザーを封術吸引で無効化する。

 

「・・・行きます」

 

再び瞬時加速からの鋭い斬撃を繰り出してくる空の刀を新月で受けとめる。鍔迫り合いとなると思ったが、刀を合わせた瞬間に悪寒が走り、俺はその場から一気に離脱した。そして離脱と同時に、大きな爆発が起きた。

 

「よく回避しましたね。ですが、さすがに爆発全てを回避は出来なかったようですが」

 

「対象に激突した衝撃で爆発する刀か」

 

ゴーレムⅣと呼ばれた機体が全身装甲の理由はこの爆発から操縦者を守るためだろう。あの刀に触れてはいけないというのは戦いづらい。爆発の規模は相当大きく、俺も爆風を避けきれずにダメージを負ってしまった。

 

「何を悠長に分析してるのかな?」

 

そう言ってまたレーザーを放つ篠ノ之束。効かないと何度やったらわかるのか。レーザーに左手をかざし、封術吸引で無効化しようとしたが、そこに空が突っ込んで来たのを見て飛び上がって回避する。

 

レーザーは空に直撃するギリギリのところを掠めて校舎を大きく破壊した。

 

「あーもう!遅いよ、くーちゃん!!」

 

篠ノ之束は悔しそうに叫び声を出す。

 

「・・・お前達は本当に仲間なのか?」

 

下手をすればレーザーが直撃して空は死ぬかもしれなかった。奴のレーザーの威力はISの絶対防御を軽く打ち破ってくるだろう。こんな攻撃は連携とは言わない。それに空の攻撃が間に合えば俺ごと空も死んでいた。

 

「仲間、とは何ですか?私は束さまの助手。束さまはあなたを壊したがっています。ならばその目的のために私が命を惜しむのはお門違いでしょう?」

 

「・・・狂っているな」

 

歪んでいる。そうとしか思えない両者の関係だった。

 

 

 

Side 空

 

「避けてばかりでは私は倒せませんよ?この刀に手こずっているのですか?」

 

「どうだろうな」

 

霧雨無月は私の攻撃をことごとく避けるが、攻撃に転じてくることはなかった。口ではああは言ったものの、攻めあぐねている、という気配ではない。どちらかというと、機会を窺っているといった方が正しいだろう。

 

「はあ!!」

 

ドオンッ!

 

また爆発が起きるが、霧雨無月を捉えることはできていない。このようなやり取りを先ほどから続けている。避けながらエネルギー刃を飛ばしては来るが、私はそれを弾き、避けているため、ダメージを負うことはない。

 

私は目を閉じているため、攻撃事態を見ることはできない。しかし、目を閉じた中で気配を感じて動く術を身につけている。高速で動く中、相手を感じることは困難だが、束さまの作った補助システムのおかげで霧雨無月にも対抗できていた。

 

私の刀、爆裂刀は斬るというよりも叩き潰すという刀だ。このゴーレムⅣの腕力に任せ刀を振るい相手を叩き潰し、爆発によって戦闘不能に追い込む。私も爆発のダメージを受けはするが、厚い装甲を施しているため大してダメージは多くない。

 

それにしても不可解だ。何を狙っているのだろうか?

 

「全く・・・厄介な刀だ」

 

私の横に振るった一撃を回避して霧雨無月は地上へと降り立つ。私もそれを感じ取って地上へと降りる。

 

「なら存分に食らってください!」

 

直線状にいる霧雨無月へ爆裂刀を構えて向かっていく。すると霧雨無月はなぜか地面に手をやったようだ。

 

「土遁・土流壁!」

 

霧雨無月の言葉と同時に、突如、前方に壁ができた。何をしたのか?壁が突然発生したような感覚だ。このままでは激突してしまう!

 

「くっ!」

 

やむを得ず爆裂刀を振るい、目の前に迫っていた壁を爆発で破壊する。巨大な土の壁のようだが、爆発の威力には耐えきれなかったらしく、崩壊した。しかし、前方から急に接近してくる気配があった。

 

「まさかっ!?」

 

「そのまさか、だ」

 

接近してきたのは霧雨無月。私が爆裂刀で壁を破壊することを読んでいたのだろう。距離からして破壊したのを見て突っ込んで来たのからではない。壁を作ると同時に突っ込んできていたのか!?

 

「くっ!早く爆裂刀を・・・」

 

爆裂刀はその重さ故に、ISを持ってしても連続で振るうことには適していない。早く体勢を立て直さなければ・・・

 

ザンッ!

 

「そんなっ!?」

 

霧雨無月が刀を振るったと同時に私の右手に持っていた爆裂刀の感覚がなくなった。まさか爆裂刀を斬ったというのだろうか?だが、いくら柄の部分とは言え、鋼鉄でできている物を容易く斬るなんて信じがたい。

 

「思った通りだ。刀身以外は衝撃を受けても爆発はしないようだな」

 

霧雨無月は何でもなかったように言うと私に足のスラスターで威力を増した強烈な回し蹴りを食らわせてきた。防ぐ術のない私はその蹴りをまともに食らい、束さまの傍まで蹴り飛ばされた。

 

 

 

「くーちゃん!」

 

「・・・束さま!!」

 

束さまが怒っている。今はそれがとてつもなく怖い。

 

「わかりました!本気で行きます!」

 

私は閉じていた両目を開き、再び霧雨無月に向かって行く。見えすぎるこの眼はISに乗らなければ意味を為さない。

 

「金色に輝く瞳・・・ヴォーダン・オージェか」

 

霧雨無月は特に驚く様子もなく、こちらを冷静に分析する。

 

「・・・気味が悪くないのですか?」

 

今まで出会った人達は束さまを除いて、実験体の証であるこの目を軽蔑の眼差しで見てきた。それなのに霧雨無月の反応はその全てと異なる。

 

「気味が悪いか、だって?生憎、俺の仲間には両目にそいつを持っている奴がいる。それに・・・」

 

「・・・それに?」

 

「特殊な目なら俺も持っている」

 

そういって霧雨無月がこちらに目を向ける。

 

「その瞳は・・・」

 

霧雨無月の瞳は先ほどのような赤色ではなく、薄紫色で瞳はなく、波紋のような模様が浮かんでいた。

 

「これは輪廻眼と言う。銀色の髪の毛にヴォーダン・オージェ・・・おそらくお前はアドヴァンスド計画の被験者か?あの研究はもう終わっているはず・・・なぜ、お前がいる?」

 

「私は―――」

 

霧雨無月との戦いを続けながら、私は自分の過去について思い返していた。

 

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