IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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久しぶりの更新になってしまいました。

これから最後まで一気に書き上げたいと思います。


第51話 穢土転生

Side 無月

 

棺桶が開き中から1人の人間が現れる。その中身を見た篠ノ之束は驚愕の感情を顔に浮かべた。

 

「・・・ちーちゃん?」

 

「そんな馬鹿な・・・私は霧雨に殺されたはず。なぜまたここにいる?」

 

棺桶の中から現れたのは織斑千冬。穢土転生は死者をこの世に口寄せする禁術。織斑千冬が戸惑うのも無理はない。操作する札は予め仕込んである。ただまだいいだろう。

 

「ちーちゃーーーーん!!!」

 

「・・・束?」

 

何も知らない篠ノ之束は織斑千冬にISを解除して駆け寄っていく。今が好機。そう考えた俺はすかさず口寄せを行い、首斬り包丁を呼び寄せ、織斑千冬に持たせ、命令を出す。

 

「奴を斬れ」

 

「なっ!体が勝手に!?避けろ!束!!」

 

「ちーちゃん!?」

 

振り抜かれる首斬り包丁。捕らえたかと思ったが、そうも甘い相手ではなかったようだ。ISの腕の部分を瞬時に展開した篠ノ之束は首斬り包丁を受け止めていた。だが、ここで攻撃を止めはしない。

 

「ちーちゃん!どうして攻撃をやめてくれないの!?」

 

「止めようとは思っている!だが、体の自由がきかん!!」

 

身の丈を超えるほど巨大な首斬り包丁を振るい織斑千冬は篠ノ之束に切りかかっていく。ISを装備しており、性能面では圧倒的に有利に見える篠ノ之束も相手が相手なだけに攻撃を加えることができず、防戦一方という状況になっている。

 

ガッ!!

 

篠ノ之束は織斑千冬の腕を掴んでその動きを止めた。

 

「ちーちゃん!目を覚まして!」

 

「くっ!体が・・・。だが、私は死んでいるはず。ここにいるはずがない」

 

膠着状態となった戦闘だが、それもここまでだ。

 

「火閃!!」

 

「なっ!?」

 

北条さんの放った火閃が織斑千冬を貫き、篠ノ之束に直撃する。火閃はマテリアル・ハイの壁に阻まれはしたが、その隙を突いて織村千冬が首斬り包丁を振るってダメージを与えることに成功した。

 

「束!?」

 

「ぐぅ!ちーちゃん!?」

 

胸に大きな穴が開いた織斑千冬だが、塵芥でできたその体はダメージを残すことなく、傷を塞いでいく。

 

「第2ラウンドといこうか、篠ノ之束。親友だった織村千冬に葬られろ」

 

「まさか・・・!?」

 

さすがに頭の回転は早い。俺が織斑千冬を操っていると気づいたようだ。

 

「・・・穢土転生。死者をこの世に蘇らせる禁術」

 

「ちーちゃんを・・・お前だけは絶対に許さない!!」

 

改めて明確な敵意を向けてくる篠ノ之束。だが、俺に攻撃する暇は与えない。

 

「感情はもう不要だ。ただの兵器になってもらおう」

 

「た・・・束・・・くそっ!・・・すま、ない」

 

印を結び、織斑千冬から一切の感情を奪う。魂が成仏してしまっては術が解ける。そんな解かれ方をする必要はないのだ。

 

「火遁・豪火球!!」

 

俺は火遁・豪火球の術を使う。大して難易度の高い術ではないが、遣い手次第ではその威力は桁違いのものとなる。巨大な火球が篠ノ之束に向かっていく。

 

「私もいきましょうか」

 

ドドドドドッ!!!

 

北條さんが視界を覆うほどのミサイルを放ち、攻撃を仕掛ける。

 

「こんなものっ!!」

 

それを篠ノ之束はマテリアル・ハイで防ぎつつシルバー・ベルで反撃をする。

 

どちらも広域殲滅型の大規模攻撃。第1アリーナはその攻撃に耐え切れず崩壊していくのだった。

 

 

Side マドカ

 

「こんなところか?」

 

「ジャミングした監視カメラで探っても誰もいないのじゃからこれで全員じゃろうな」

 

私と優子他、戦闘を終えたメンバーは倒した相手を全て回収して1か所にまとめていた。無月の指示はここまでだ。おそらく全員をどこかに運ぶのだろうが、方法までは詳しくは知らないが、何かあるのだろう。

 

「お?マドカ、アーデルハイドが帰ってきたのじゃ」

 

無月に呼ばれたアーデルハイドが戻ってきたようだった。誰かを抱えているようだ。

 

「今、戻ってきた」

 

アーデルハイドはISを解除して私たちの近くに降り立った。抱えられていた人物はアーデルハイドの後ろにさっと隠れてしまった。チラチラと銀髪が見えている。

 

「空。さっき言っていた私の仲間だ。自己紹介をしてみろ」

 

アーデルハイドに促され、空と呼ばれた少女が後ろからひょっこりと姿を現した。

 

「空です・・・よろしくお願いします」

 

名前は空で合っているようだ。そして私の視線はアーデルハイドと空を交互に見る。

 

「似ているな」

 

「似ておるのう」

 

優子も同じ感想を持ったようだ。目を閉じていることと髪形が違うことを除けば、空はアーデルハイドをそのまま小さくしたような印象を受ける。

 

「私の妹のようなものだ。よろしく頼むぞ、2人とも」

 

アーデルハイドが空の頭に手をやりながら言う。その姿はまるで本当の姉妹のように見えた。

 

妹のような存在、か。アーデルハイドの出自は知っている。そのアーデルハイドの妹ということは、つまりそういうことなのだろう。

 

しかし、そういうつまらない詮索はしない。アーデルハイドが妹といったのだ。ならば空はアーデルハイドの妹なのだろう。

 

「私は・・・霧雨マドカだ。よろしく頼むぞ、空」

 

本名とは違うが、いずれこうなる名前だ。遅いか早いかの違いでしかないからいいだろう。

 

「マドカ、お主・・・まぁ、よい。後で訂正しておくからの。わしは工藤優子。お主の姉のアーデルハイドの友人じゃ、よろしくの」

 

優子が横目で私を見ながら自己紹介をする。はて、何のことやら?

 

「よろしくお願いします」

 

ぺこりと頭を下げて空は挨拶をする。

 

「あっはっは。アーデルハイドよりよっぽど礼儀正しいのう!」

 

「なにっ!?マドカも何を頷いているのだ!姉の威厳が保たれないのだぞ!!」

 

それを見て笑いながら優子が言った。アーデルハイドは怒って見せるが、事実なので仕方がない。私も同じ感想だ。空は目を閉じてはいるがまるで見えているかのようにオロオロしていた。

 

やいやいやい、と優子がアーデルハイドと言い合う中、私は空に近づいた。

 

「歓迎するぞ、空。癖のある奴が多いが、悪い奴らではない。退屈はしないぞ?」

 

「はい・・・それと聞きたいことが」

 

空は恐る恐るといった様子で言葉を続ける。

 

「どうした?」

 

「霧雨無月とはどのような人間なのですか?敵であった私を助けたり、束さまと戦ったり、よくわかりません」

 

おそらく空は篠ノ乃束の部下のようなものだったのだろう。何か事情があって無月に助けられたということか。

 

「物好きなやつだ。こんな私を助けたりしたのだからな。ただ―――」

 

「ただ?」

 

「・・・信じていいやつだ」

 

これは素直な思い。確かに無月は掴みどころがない。自分の想いひとつでこの戦争を始めたやつでもある。

 

だが、私は無月に救われた。命もそうだが、それ以上に、気持ちの部分で、だ。

 

何より私に居場所をくれた。今、笑っていられるこの瞬間がとてつもなく愛おしいものなのだ。それは戦場であっても変わらない。

 

私は優子とアーデルハイドの間に入り、アーデルハイドを連れ出した。

 

 

 

「アーデルハイド・・・戦況は?」

 

空の相手を優子に任せ、私はアーデルハイドが見てきた戦況を聞くことにした。

 

「ああ、織斑千冬は倒した。今はあの兎と戦っている。厄介な性能を持ったISだ。まだまだ隠し玉がありそうだが―――」

 

 

 

ピピピピピピッ!!!

 

「何だこの反応は?」

 

敵の接近を知らせるアラームが鳴り響く。もう敵はいないはず。一体どういうことだ?

 

「マドカ!アーデルハイド!上じゃ!!」

 

優子が叫び、上空を見上げると空を覆うばかりの黒い塊が接近してきていた。

 

「馬鹿な!?あれだけの数の無人機だと!?」

 

「なんだと!?」

 

アーデルハイドが黒い塊をヴォーダン・オージェを発動させて声を上げた。

 

「あれは束さまの無人機達です!でもあんな数を作っていたなんて一言も・・・」

 

空も金色に輝く両眼を開いて言う。やはりヴォーダン・オージェを持っているか。いつくづく似ている2人だと思う。

 

「軽く見積もって300機近く。想定外は戦闘にはつき物だが・・・これほどとはな」

 

「・・・全くだ」

 

ISを展開し、飛び立とうとした時、飛雷神の術を使って無月が現れた。

 

「「「無月(くん)!!」」」

 

無月は迫り来る無人機たちにさっと目をやりこちらを向いた。その表情からは何も読み取れない。

 

「手短に指示を出す。3人は無人機をナターシャたちと迎撃してくれ。スコールは捕らえた奴らの防御に回る。空はISがないから避難してもらう」

 

無月からは焦った様子は見られない。頭が揺れては私たちも揺れる。普段と変わらない姿勢が私たちを平常心に戻らせる。

 

「待て、無月。お前はどうする?」

 

「俺は捕らえた奴らをミラージュに転送するための術式を作る。だが、これだけ大勢だと時間が必要になる。そのために迎撃をしてもらう。撤退するのは俺たちも含めて、だ」

 

捕らえた者たちを撤退させる。これはわかるが、なぜ私たちも撤退することが前提なのか?

 

「つまり・・・負けか?」

 

相手を倒すことなく戦場から撤退するとは負けということだ。無月は負けたと暗に言っているのか?

 

「・・・いや」

 

だが、無月はそれを否定する。

 

「こいつらがいても邪魔なだけだろう?」

 

「ははっ!・・・ああ、間違いないな」

 

無月はこちらを見てにやりと笑う。あれだけの数を相手にまだ笑う余裕があるというのか。こちらもつられて笑ってしまった。

 

「そのための準備だ。全員で生き残って勝つぞ、マドカ。アーデル。優子。これが本当の最後の戦いだ」

 

「全員で生き残る・・・その言葉、忘れるな無月!行くぞ、アーデルハイド!優子!」

 

「「おう!!!」」

 

3人でISを展開し、私たちはそれぞれの武器を展開して黒の塊となった無人機たちの群れへと飛び込んでいった。

 

 

 

Side シャルロット

 

「あの数の無人機って一体どいうこと!?」

 

「わからん!だが、この状況で襲われたらひとたまりもないぞ!!」

 

空に蠢く黒い塊を見て僕たちは驚愕した。数百機の無人機が突然現れたのだ。でもISが使用できず、縄で自由を奪われている状態では何もできない。

 

他にも捕まった人は多いが、気絶していて起きているのは僕とラウラをはじめ数人だけのようだ。

 

さっきからラウラも縄を引き千切ろうとして入るが全く効果がない。今、襲われたらなす術もなくやられてしまうのは目に見えている。

 

「・・・一夏」

 

こんなときにいてくれたらどれだけ心強いかと思う。今、彼は無事でいるのだろうか?

 

「まずっ!」

 

無人機が一斉にこちらに向けてレーザーを放つ。抵抗ができない中、僕は目を瞑った。

 

「・・・神羅天征」

 

パアアアンッ!!!

 

何かが弾かれた音がし、恐る恐る目を開けると今回の戦争の首謀者がそこにはいた。

 

「「霧雨無月!?」」

 

彼は振り返ることなく、ISを解除して地面に降り立った。

 

「貴様!嫁をどうした!!それにこの状況はどういうことだ!!」

 

ラウラが声を上げる。確かにこの状況は混沌としていてよくわからない。それに僕たち人質を助ける意味もないはずだ。

 

「答える義理も意味もない―――スコール、防御を頼む」

 

「わかったわ!」

 

スコール・ミュラーも現れ、人質全体に目視できるような巨大なバリアーを張り巡らせた。そして視界の端では先ほど戦っていた霧雨マドカ、ナターシャをはじめとする暁が無人機との戦闘を始めていた。

 

「これは!?」

 

僕が上空に気を取られているとラウラが足元を見て声を上げた。つられて僕も足元を見ると地面には魔法陣のような模様が浮かび光を帯びながら徐々に広がっていた。

 

 

 

Side 無月

 

人質のような形になっている何十人もの人質をミラージュに送るための術式を俺は組み上げていく。逆口寄せのようなこの術は規模の大きさに伴って結ぶ印も複雑なものになっている。輪廻眼の畜生道の力がなければ使用することはできなかっただろう。

 

「ひとついいかしら?」

 

「なんです?」

 

マテリアル・ハイで無人機の攻撃を防いでいるスコールが言う。

 

「第1アリーナで何が起きたの?ここへ来る途中、アリーナを見たわ。跡形もないってどういうこと?」

 

 

 

「それは―――」

 

アリーナでは北条さんが辛うじて戦闘を継続していた。正直、長くは持たないだろう。篠ノ之束のIS・白椿。その性能は規格外だった。

 

あらゆるワン・オフ・アビリティーを使用してきていた。零落白夜の攻撃力にマテリアル・ハイの防御力。さらには絢爛舞踏の回復力。そして穢土転生で蘇った織斑千冬と戦うことで我を失ったは篠ノ之束ただひたすらに刃を振るい続けていた。

 

「全部壊れちゃえ。学園も・・・この世界も・・・」

 

戦いの最中に放った一言と共にあれだけの数の無人機を呼び寄せたのだった。無人機はこの学園にいる全ての者を狙って攻撃を加えてきている。学園を破壊し終えれば本当に世界を壊しに行くのだろう。

 

 

 

「戦況は最悪、ということね。でもその割にあなたは楽しそうよ?」

 

そういわれて内心、自分がこの状況を悲観していないと気づき少し驚く。

 

「なんせお前たちがいるからな。負けるなんて思っていない」

 

俺一人なら負けていたかもしれない。だが、今は信頼できる仲間がいる。圧倒的な数を前にしても絶望はしていないのだ。

 

「ふふふ。そう言われたのなら、なおさら負けるわけにはいかないわね。防護壁は任せて。あなたの最後の想定を覆してあげるわ」

 

「頼むぞ、スコール」

 

暁のほぼ全員が無人機との戦闘をはじめていた。ただ、マリアだけが無人機ではない別の敵と戦っているようだ。おそらくその相手は更識簪。俺はその評価を改めつつ、術式に集中し始めた。

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