Side マドカ
「どうやらあちらは終わったようじゃの」
「そうらしいな。だが、マリアがこれ以上戦うことは不可能だ。それほどに消耗している。」
マリアはセカンド・シフトを果たした更識簪に勝利した。最後の攻撃は以前に教えたものの影響だろうか?あの時はただの遊びだったのだが、役に立ったのならば僥倖だ。
「マリア、よくやった。降りてこい」
「・・・はい」
無月から指示があり、マリアは更識簪を抱えて人質達のいるところへと下がっていった。
「仕方がなかろうて。実際、今のマリアの実力では勝てただけでも幸いじゃ。いつでもフォローできるようにしとったのは、お主じゃろう?」
軽く笑いながら優子は言う。
「・・・まぁな」
優子が近くに来て言う。しかし、肩で息をし始めているあたりやはりこの数の無人機の相手をするのは相当につらい。そしてこちらが思っている以上に相手の数を減らすことができていない。
悠長に話している余裕は残念ながらない。私は優子との話を打ち切り、無人機の一団へと突っ込んでいく。
迫り来る腕を掻い潜り雷切で斬りつける。だが、この攻撃は浅く、無人機を行動不能にするようなダメージを与えるには足りない。
「・・・厄介な相手だ」
思わず毒つく。動きを止めればそこに攻撃が殺到する。動きを止めることはできず、動きながら全てを判断しなければならないのだ。
私が負ったダメージは少ないほうだが、やはりサラとティナからダメージを負い始めている。こればかりは仕方がない。
「サラ、ティナ!ここが正念場だぞ!」
「「はい!マリア様!!」」
2人を励ます。今は耐えるしかない。スコールと無月が参戦できていないのは痛い。実力のある2人が防御に回っている現状では仕方のない展開だが。
『無駄なんだよ、私の前ではね』
「・・・篠ノ之束!!」
無月の最終目標であり、私たちの最後の敵が上空から現れる。私は半ば反射とも言える速度でビット攻撃を放つが、それは見えない壁に阻まれた。あれはマテリアル・ハイか。
「君は前から気に入らなかったんだ。絶望を教えてあげるよ」
「ちぃ!!」
思わず舌打ちをする。なぜなら今までバラバラな攻撃を繰り返してきた無人機たちが突然、連携した攻撃を繰り出してきたからだ。
繰り出された拳をかわし、雷切でカウンターを与えようとするが、2機目が突撃してきたので攻撃をあきらめて回避に専念する。そして回避した先からレーザーが放たれる。
「どうしてこんな連携が取れるんだ?」
レーザーを何とか回避し、周りを見る。無人機たちの急激な変化は私だけではなく、戦いの場所、全てで起きていた。
「まずいぞ・・・無月」
予想を超える無人機の変化。かろうじて優位を保っていた戦況が崩されようとしていた。
◇
Side 空
「・・・あれは!」
突然現れた束様によって暁側の旗色が徐々にだが悪くなってきていた。
「空・・・知っているのか?」
先ほど仲間のフォローに行っていた霧雨無月が私に尋ねる。戻ってきてからの霧雨無月はただ両手を合わせていた。
「はい、あれは束様の単一仕様・『完全なる支配者』です。コア・ネットワークで繋がっているISを全て思いのままに操ることができると言っていました」
まさに脅威ともいえる束様のワン・オフ・アビリティー。先ほど霧雨無月の仲間の1人に倒されたISは操られていたのだろう。そうとしか思えない。
「ですが、操る対象が多ければ多いほど、集中力を使うので、身動きが取れないそうです」
「・・・・・・アーデルハイド。聞いていたか?」
背中越しなので表情を窺い知ることはできないが、姉さんに通信を繋いでいたようだ。
「当然だ!ナターシャ!」
「わかったわ!!」
姉さんは一緒に飛び出した金髪の仲間の放つ弾幕の嵐で無人機たちを強制的に押しのけて凄まじい瞬時加速で束様に迫る。
姉さんは身の丈よりも大きなレーザーブレードを構え束様に迫る。身動きの取れない束様は斬られるのだろうと思ったが、その攻撃は防がれた。
「・・・甘いよ。十全たる私が自分の防御を考えないとでも?」
「くっ!なんだこのISは・・・ぐっ!」
「姉さん!!」
姉さんの攻撃を防いだのは通常のISの2倍はあろうかという巨大なISだった。しかし、私はそんなものを見たことがなかった。
姉さんは巨大ISの振るった腕を受けて弾き飛ばされた。ただ、直撃はしていない。レーザーブレードで拳をいなすという離れ業で攻撃を防いだ。
「特別製IS・イージス。神の盾を意味するイージスは通常の無人機の能力の倍はある上回る鉄壁の護衛なんだよ・・・さっきの不完全なISも屠った・・・」
そこで言葉を切った束様だが、こちらから見てもわかるほどの怒りを示す。
「そしてちーちゃんのことは許せない!!霧雨無月・・・お前だけはね!!」
無人機たちの攻撃がこちらに向けて放たれるが、それはことごとく防がれた。この人は知っている。スコール・ミュラー。第3回モンド・グロッソの覇者、現ヴァルキリーだ。
「くっ!私を忘れてもらっては困るわ・・・篠ノ之束。それに私のマテリアル・ハイ。勝手に使わないでもらえるかしら?」
束様のマテリアル・ハイは元々スコール・ミュラーのものだ。自分のワン・オフ・アビリティーを好き勝手使われることに対して怒っているのだろう。
「ふんっ!本当に・・・気に食わないよ・・・不完全な奴らは・・・」
世界でトップクラスの実力を持つ集団であろう暁と数多の無人機を率いて戦う束様の攻防は激化していった。
Side マドカ
「はぁ、はぁ・・・」
篠ノ之束がこの戦場に到着してから私たちの戦況は確実に悪化していた。いくら暁といっても人間だ。当然、疲労は蓄積していく。反対に無人機には疲労などない。
疲労度の違いはあれど、それぞれが消耗してきているのは間違いない。世界最高の頭脳を持つ天災の処理能力は200機を超える無人機を完璧に操って見せている。
「キャ・・・!?」
「ぐぅ!」
「下がれ!サラ!ティナ!!」
無人機5機による攻撃を凌いだ2人だったが、その後にできた一瞬の隙を突かれて篠ノ之束を護衛していたはずのイージスによる体当たりを受けてしまう。
護衛を外した好機に優子とアーデルハイドが突撃するが、無人機が何十機と襲来し壁を作り、優子とアーデルハイドの攻撃は妨害される。
オータムもナターシャもそれぞれ耐えてはいるが、数の暴力の前に体力もエネルギーも削られていく。
「まだか無月?」
「もう少しだ。耐えてくれマドカ!」
無月が答える。数十人の人間を一度に送るには時間がかかるのはわかるが、今はその時間が惜しい。
篠ノ之束が来てから私たちは無人機を落とすペースが確実に悪くなっていた。まだ50機も落とせていないだろう。それほど篠ノ之束の完全なる支配者の影響は脅威だった。
◇
『待たせたなみんな。術の準備は整った』
やっときたか。それぞれ表情はわからないが、安堵したような雰囲気を出す。それほど無人機との戦闘では消耗させられていた。
かくいう私も同様だ。それほど無月とスコールの参戦というものは大きな安心感を与えてくれていた。
『いいか、一瞬でいい。それぞれが最大の攻撃を放ってくれ。その後、集合してくれ。詳しくはそのとき話す』
そんな通信が追加で送られてきた。通信を使えば指示は終わる。なぜ?という疑問が浮かぶが、この状況で無駄なことをするはずがない。
『全員、一斉に行くぞ・・・撃てぇ!!!』
『『『おお!!』』』
私はビットによる一斉射を放ち、ナターシャはシルバー・ベルを連続で放つ。そしてそれぞれが遠距離攻撃の最大技を放ち、合わさったそれは巨大な爆発を引き起こす。
そして指示通り、私たちは無月の元へと集まった。しかし、そこで私たちは思いもよらなかった言葉を聞いた。
「・・・撤退する。ただし、撤退するのは・・・お前たちだ」
Side 無月
「何を言っておるのじゃ!まだわしは戦える!!それになんで無月くんを残して撤退しなければいかんのじゃ!!」
優子が俺の胸倉を掴んで抗議の声を上げる。
「優子の言う通りだ。それにあいつは時折、妹を馬鹿にする発言をする。このままで終われるか!」
アーデルも同調する。他のメンバーも同じように言う。
「・・・時間がない。空、こっちに来てくれ」
俺はその声を無視して空を呼ぶ。空は目を閉じてはいるが、正確な足取りでこちらに向かってきた。
「少し耐えてくれ・・・封邪法印!」
「うっ!」
俺は空の前に立ち、首元に封邪法印を施す。これは邪なチャクラの流れを封じ込める術。これで空にとって邪魔となる目で活性化しているナノマシンの活動を止めることが目的だ。
「目を開けてみろ。ヴォーダン・オージェは封印できたはずだ」
それは恐る恐るといった風に目を開ける。
「・・・元に・・・戻った?」
どうやら成功したようだ。空のヴォーダン・オージェはその活動を抑制され、空の目は施術される前の赤い瞳へと戻った。
「姉さん・・・私・・・見えます」
空は嬉しそうにアーデルへと報告に向かう。そして俺は更に印を結ぶ。
「口寄せの術!」
煙の中から出てきたのは織斑一夏。白が再不斬にしたように俺は織斑一夏を仮死状態にしていた。それでも重症だろうが、すぐに治療をすれば死ぬことは免れるに思われる。だが、助かるかどうかは織斑の運だろう。
俺は続けて穢土転生を解く印を結ぶ。現世に口寄せされた織斑千冬の魂が戻っていくのを感じる。思った役目は果たしてもらった。
「準備は終わった。次はお前たちを送ろう」
しかし、術の行使のために術式の外に出ようとする俺を優子が立ちはだかって止める。その手には2本の剣が握られている。
「行くな、無月!わしらを送ったとしてもお主は戻ってこないんじゃろう?だったら、ここでお主を止める!!」
優子は本気なのだろう。そしてその予測は正しい。俺が起こした戦争。ならば俺自身でけじめをつけなければならない。
これ以上の戦闘は誰かが確実に死ぬだろう。せっかくついてきてくれた仲間が死ぬのは見たくなかった。
「はあっ!」
優子が凄まじい速さで飛び込んでくる。優子は剣術ならば世界でも最高クラスの実力者。しかし、写輪眼の前ではその動きを見切ることは容易だった。
「・・・すまないな、優子」
俺は優子の腕を掴んで動きを止め、目を合わせる。
「くっ・・・写輪眼・・・か」
優子はフラフラになりながらも写輪眼の催眠眼に抗う。さすが生身でも世界最高クラスの達人。だが、写輪眼の催眠眼の前ではその達人すら無力化される。
「・・・む、げつ・・・くん」
気を失った優子を受け止める。閉じられた瞳からは一筋の涙が流れていた。そして優子をナターシャさんに任せる。
「ナターシャさん、スコール。後は任せます・・・アーデル、空にとってお前は大切な姉だ。守ってやれよ」
「・・・卑怯なやつだ。それを言われたら私はお前を止めることができない」
アーデルはだが、と続ける。
「生きて帰ってこい。お前が言った私を守るという約束は果たされていないのだからな」
ああ、と頷き、俺はマドカを見る。暁が結成されてから一番長い時間一緒に過ごしたのはマドカだ。
だが、マドカは俺と目を合わせようとはしなかった。まあ、仕方がない。生きて帰るといったのを反故にするようなものだからな。
「おいおい!無月!てめーはそれでいいのかよ!」
オータムが言う。
「俺が始めたことだ。付き合ってくれただけでも感謝しきれない。後のことはナターシャさんとスコールに伝えてある。頼んだぞ、オータム。それにマリア、サラ、ティナ。それに、マドカもな」
「ちぃ!」
言いたいことは終えた。時間もそうない。俺は術式の外に出て最後の印である虎の印を結ぶ。
「逆口寄せ・天送の術!!」
ボンッ!
大きな音と共にさっきまでいたはずの数十人にもなる人が一瞬でいなくなった。何かを呼び出す口寄せではなく、その反対に何かを送る術。その分チャクラは桁違いに多く使うし、輪廻眼がなければできないものだろう。
マドカたちが放った攻撃の爆炎も晴れてきた。ぎりぎりだったが、何とか間に合ったということだろう。だが、無人機たちの群れは健在。
俺は雫を起動させ、装着する。
「さあ、行くか」
俺1人に対して無人機は250機くらいか。残りのチャクラもそう多くはないが、負ける気は毛頭ない。俺は呼び出した新月にチャクラを込める。
「本当の馬鹿者だ、お前は」
「ええ、こればっかりはあなたに同調するわ」
不意に後ろから声をかけられる。慌てて振り返ると、そこにいたのはマドカと楯無さんだった。
Side スコール
「・・・戻ってきたようね」
私たちは彼の施した天送の術でミラージュへと帰ってきていた。彼は残って戦う気だろう。
「なぜ、最後で私たちを帰したの?」
それだけが心残りだ。確かに彼は私たちのことを信用し、信頼もしていただろう。しかし、最後の最後で1人で戦うことを選んだ。
篠ノ之束率いる無人機の軍団は今までの敵とはわけが違う。何とか攻撃は防いでいたが、ギリギリだったのだ。
帰ってきたものたちの中で戦う余力があるものはわずかだ。あのまま闘うことは困難だった。戦闘を喜ぶオータムですら疲労感を隠せないでいた。
「私たちを死なせないということがあなたの意思。なら、最後まであなたが描いたようにしてみせるわ」
私とナターシャはいくつかの指示を彼から受けていた。ナターシャはもう動き始めているようだ。
「い・・・一夏ーーー!!」
「目を開けてよー!!」
「起きなさいよ、一夏!!」
彼によって重傷を負った織斑一夏が横たわっているところにIS学園の専用機持ちがいた。私はそこに近づいていく。
「そこをどいてくれないかしら?」
「ス、スコール・ミュラー!?」
セシリア・オルコットがこちらに気づいて声を上げるが今はかまっていられない。私は織斑一夏に近づこうとするが、ラウラ・ボーデヴィッヒがそれを邪魔する。
「嫁には近づかせん!!」
「別に近づかせないのはいいけれど、彼・・・このままだと死ぬわよ?」
「・・・くっ!」
これは本当のことだ。本当なら敵を助けるような真似はしない。亡国企業時代ならばありえない行動だ。ただ、白騎士事件の関係者以外は殺さないという彼の意思に寄っている行動に過ぎないのだ。
「なら、一夏を助けてください!」
そんな中、シャルロット・デュノアが頭を下げる。
「シャルロット!やつは敵だぞ!?」
「でも!一夏が助かるならそれが一番でしょ!?」
「だがな・・・」
一夏を助けたいが暁の手に一夏を渡したくない。そんな感情があるのだろう。ただ、これ以上の手間はかけたくなかった。
「ふふふ、話がわかる子は好きよ。織斑一夏は預かるわ。あなたたちは治療の成功でも祈っていることね」
そう言って織斑一夏を受け取り、医療班に預ける。それからはそれぞれのISを回復させる作業に入る。
これは保険だ。彼が破れた時に備えての。
「スコール!マドカがいない!!それに更識楯無もだ!!」
「なんですって!?」
アーデルハイドが駆け込んできた。それに気づいたメンバーも司令室に集まってきていた。
「北条!学園への中継はつなげれる?」
『ええ、先ほどシステムを復旧させました。繋ぎます』
「無月・・・マドカ・・・」
司令室に会ったモニターには無人機の集団と戦う3人が映し出されていた。
天送の術はNARUTOで雲隠れのマブイが使っていますが、それとは別の術です。