IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第55話 終戦

Side マドカ

 

「無月ーーーーっ!!」

 

「がぁっ!」

 

無月は自身を貫いた剣を持つ無人機を両断し、剣を引き抜いた後、私を連れてその場から飛雷神の術で離脱する。

 

「無月!大丈夫なのか!早く治療を・・・」

 

「・・・いい」

 

無月は傷口を掌仙術で塞ぎ始める。

 

「無月・・・お前、その傷だけじゃないだろう!?」

 

見れば無月の体は傷だらけだった。無月が傷らしい傷を負うところはあまり見ない。それだけに今回の戦いの壮絶さがわかる。

 

「無月くん!!」

 

無月が負傷したのを見て、楯無も飛んできた。

 

「ちーちゃんの味わった痛み、じっくりと味わってもらうよ」

 

まだ無人機は半分も減っていない。圧倒的に有利になった状況を見て篠ノ之束は攻撃を止める。

 

「くっ!減らず口を・・・」

 

強がっては見せるが、こちらは満身創痍だ。無月は、私を庇って負傷し、楯無も体のあちこちから血を流している。そして私は腕の骨折。不利なことは明らかだった。

 

「・・・ここまでだな」

 

無月が柄にもないことを口にした。

 

「何を言っている!!私はまだ戦うぞ!たとえ腕が使えなくとも私に武器はある!!」

 

「そうよ!まだ私は諦めていないわ!」

 

珍しく楯無と気があった。元より退路などない。生き残るために戦うだけだ。無月はこちらを向き、口元の血を拭った。

 

「だからこそだよ、マドカ。楯無さん」

 

無月が両手を合わせると同時に足元に術式が現れ、体の自由を縛る結界が発動した。

 

「動けない!?」

 

「無月!早くこの結界を解け!!」

 

私たちは指の1本すら動かせなくなった。私たちの抗議を他所に、無月が口を開く。

 

「悪い・・・ここでさよならだ」

 

 

 

Side 無月

 

「どういうことだ無月!!」

 

「ふざけるのも大概にして!!」

 

2人は揃って結界に対して抗議の声を上げる。だが、今回はそれを叶えてあげることはできない。

 

この2人の覚悟は本物だ。この2人は本気で篠ノ之束を倒すまで戦い続けようとするだろう。それが、自分の命を失うことになったとしても、だ。

 

「言葉通りの意味だよ。このまま2人をミラージュに送る」

 

瞳術を使うまでもなく、2人が限界だということはわかっていた。楯無さんなど立っているのがやっとの状態だろう。マドカも同じだ。骨折の影響か、ひどく呼吸が荒い

 

俺は輪廻眼を発動し、天送の術の印を組み上げていく。時間がない。今でこそ、篠ノ之束の攻撃が止んでいるが、こんな機会は二度とないだろう。

 

「止めろ・・・止めてくれ、無月・・・私はまだ・・・」

 

マドカが泣きそうな声で懇願するが、俺は無視する。2人は俺にとって特別な人間だ。だからこそ死んでほしくはない。

 

「俺は1人だった・・・両親が死んでから復讐のことだけを考えてきた」

 

思い出すのは、白騎士事件。あの日、両親が死んでから俺は篠ノ之束と織村千冬に復讐しようとただ力をつけてきた。その道はずっと1人で孤独だった。それでいいと思っていたし、後悔はしなかった。

 

そんな中、2人がいた。楯無さんは道を同じくはしなかったが、ずっと俺を止めようとしてくれた。マドカは俺と同じ道でずっと近くにいてくれた。

 

「だが、2人に会って、みんなと過ごして、それを楽しいと感じていたんだ」

 

ミラージュでは暁のメンバーと過ごしたことは思い出深い。最初はナターシャさんだった。次はマドカ。そしてスコール、オータムにマリア、サラ、ティナ。そこにアーデルと優子が加わり、そして空がきた。

 

目的こそ復讐だったが、そこにあったのは何気ない日常の数々。それがたまらなく好きだった。

 

ミラージュのみんなも北条さんも一緒に戦ってくれた。暁が直接的に戦ってはいたが、サポートをしてくれるミラージュがなければここまで来ることはなかっただろう。

 

ここで、こんなところで、俺の世界を作ってきてくれた2人を失うわけにはいかない。

 

「俺はここで篠ノ之束を倒す。全員が笑ってまた過ごせるように。マドカ・・・楯無さん。だから、ここでさよならだ」

 

ここで撤退して再び挑むという選択肢もあるだろう。だが、その選択はしない。篠ノ之束を逃がせばもう二度と捕捉はできないかもしれない。

 

それどころか必ず世界を壊そうと仕掛けてくるだろう。終わらない戦いの始まりだ。

 

直接戦ってみて篠ノ之束の脅威は思い知った。この機会を逃さないためにもこの場所で篠ノ之束を倒す。それが俺のけじめ。

 

「無月くん・・・あなた、本当に馬鹿ね。その全員の中にあなたもいるのよ」

 

「ははは、痛いところですよ。でもあなたに会えてよかった」

 

全く、楯無さんには敵わないと思う。

 

「埋め合わせはしてもらうわよ?約束は守ってくれるんでしょう?」

 

「これは手厳しいですね」

 

どんな要求をされるか、たまったものではないな。

 

「だからさ、泣くなよ、マドカ」

 

意外だった。マドカが泣いたところを見るのは二度目だ。だが、それも最初の時だけで、それ以来マドカが泣いたところなんて見たことがなかった。

 

誰かが自分のために泣いてくれるなんて、どれほど幸福なのだろう?それが堪らなく嬉しいと思う。

 

「泣いてなどいない!馬鹿無月が!」

 

マドカは強がって見せるが、バレバレだ。

 

「私はお前を信じている・・・だから、さよならなんて言うな!・・・お前のこと、待っている」

 

「ああ・・・またな、マドカ」

 

最後は2人とも笑っていた。

 

またな、か。さよならではない言葉が自然と言えたことが嬉しかった。

 

最後の印を結び、天送の術が発動する。そして2人はこの場からいなくなった。

 

「ふーん・・・2人は逃がしたんだ。でも関係ないよ。どこまで逃げても追い続けるから」

 

こちらの様子を見ながら篠ノ之束が関心なさげに言う。だが、そんなことさせるはずがないだろう?

 

「お前はここで終わらせる!」

 

「それはお前だ!ちーちゃんの仇!!」

 

これが本当の最後だろう。俺は雫を展開した。

 

 

 

              ◇

 

 

 

「悪かったな雫。お前を逃がすことができなかった」

 

無人機の攻撃を退けながら、俺は雫に話しかける。最初に協力してくれるといったのはこの相棒だった。

 

『何を言うのです。無月様。私はあなたと共にあります・・・今までも、これからも』

 

「・・・ありがとう」

 

度重なる戦闘の影響もあり、雫のエネルギーも残り少ない。それに俺自身のチャクラももう多くない。だが、関係ない。最初に突撃してきた無人機を新月で切り捨て、飛んだ。

 

篠ノ之束を倒し、帰る。負けるのではなく勝つために。死ぬためではなく、生きるために。俺は刃を振るい続けた。

 

 

 

Side マドカ

 

「ちょっと!どこへ行くの?」

 

「気になるならお前も来い!」

 

私と楯無は気づけば大広間に飛ばされていた。司令室に全員がいるはずだ。痛む体をなんとか動かし、司令室に向かう。

 

バンッ!と扉を開けると、予想通り、ここには暁の全員が終結していた。不意に意識が遠くなり、足元がふらつくが、気力で踏みとどまる。

 

「大丈夫かマドカ?」

 

私の様子に気づいたアーデルハイドが手を貸そうとするが、今はそれどころではなかった。

 

「アーデルハイド!無月は・・・無月はどうなった!?」

 

「・・・あれだ」

 

アーデルハイドの指差した先に映し出されていたのは無人機を相手に新月を振るい続ける無月の姿だった。

 

 

 

              ◇

 

 

 

「・・・・・・」

 

どれほどの時間がたっただろうか?誰も言葉を発しようとしない。理由はひとつしかない。今の無月の姿だ。

 

どれほどのダメージを受けようが、構うことなく篠ノ之束に向かって突進し続ける姿はまさに鬼神だった。

 

回避できないものは神羅天征で弾き、封術吸引で無効化し、須佐能乎の絶対防御で防ぐ。そして空いている片手で印を結び、火遁・風遁・雷遁・水遁・土遁の全てを駆使して戦い続けていた。

 

そんな獅子奮迅の戦闘が終結に向かったのは当然だったのかもしれない。

 

 

 

              ◇

 

 

 

無月が無人機の斬撃を防ぐために展開した須佐能乎が突然消えた。チャクラ切れだった。しかもタイミングが悪かった。

 

須佐能乎が消えたのは無人機の攻撃を防ぐ直前。直後、無月を斬撃が襲った。

 

「「「無月っ!!」」」

 

為す術もなく落ちていく無月。落ちていく無月を待つことなく、無人機たちが一斉に砲撃準備をするためにエネルギーのチャージを始めた。

 

「やめろーーーっ!!!」

 

思わず、叫んだ。届くことはないとわかっていたが、そうせざるにはいられなかった。

 

 

 

ドオオオオオオンッ!!!!

 

 

 

突然の爆発。着弾の爆発かと思ったが、どうやら違うらしい。

 

「この土壇場で・・・」

 

「・・・ははっ」

 

爆煙が晴れた先にいたのは空中に佇む無月だった。無月は絶体絶命の状況下でセカンド・シフトを果たしていた。

 

ただ、普通のセカンド・シフトとは様子が違う。

 

「纏っているのね・・・須佐能乎を」

 

その変化にいち早く気づいたスコールが声を上げる。無月のセカンド・シフトはISの上から羽衣のように須佐能乎を纏っていた。

 

向かってきた無人機2機を一太刀で切り裂く。そのあまりの太刀筋の鋭さに背筋が震えた。私が全快していてもあれを防ぐ自信はない。

 

「これで無月くんは勝てるかのう?」

 

優子が声を出すが、答える者はいない。わからないのだ。勝負の行く末が。

 

「でも彼のセカンド・シフトでは彼自身が回復していない。あれはおそらく雫がエネルギーをチャクラに変換して渡しているか、残りのチャクラの運用を爆発的に効率化したもの。彼自身、相当なダメージを受けていたのよ、どっちにしろ難しいわ」

 

「・・・無月」

 

私たちにはもう祈ることしかできなかった。全員が祈りの姿勢で戦いの行く末を見守る。セカンド・シフトを果たした無月は圧倒的な破壊力を持つ十拳の剣を振るって篠ノ之束を守る無人機を引き剥がしていく。

 

対する篠ノ之束も無人機の数が減り、制御がより細かくできるようになったのか、より複雑で精度の高い連携を仕掛けてくる。

 

どちらも一歩も引かない戦いが続く。

 

 

 

そして遂に篠ノ之束と激突するという瞬間に今までにない巨大な爆発が発生し、映像が途絶えたのだった。

 

 

 

              ◇

 

 

 

こうしてIS登場以来、世界で初めてISが使用され、後の世で『世界IS大戦』と称されることになる戦争は幕を閉じることとなった。

 

ただ、世界大戦といっても国同士の戦いではない。霧雨無月率いる暁が世界を同時に相手にして勝利をもぎ取ったのだった。

 

最後の戦いの舞台となったIS学園は消滅。世界のISパイロットの6割を育てたというその姿は最後に起きた巨大爆発と共に文字通り跡形もなくなくなっていた。

 

この戦争を契機としてISの在り方は大きく変わることになる。

 

この戦争における行方不明者は3名。

 

篠ノ之束、織村千冬、そして霧雨無月。

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