IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第6話 襲撃者

Side 無月

 

学園に入学してから2週間ほど。俺は特に今までと変わることのない生活をしていた。そう、目の前にある光景以外は。

 

「楯無さん。あなた生徒会長でしょ?暇なんですか?」

 

「そんなことないわ。いつも頑張ってお仕事してるわよ?」

 

楯無さんが2日に1度は俺の部屋に来る以外は、だ。本当に生徒会長なのか?ここのところ入り浸っている気がするんだが。

 

「まあまあ、いいじゃない。ところで今度のクラス対抗戦。どうしてあなたが出ないの?出れば圧勝じゃない?」

 

今度のクラス対抗戦ではクラス代表同士が戦い学年の優勝者を決める。俺のクラスからは織斑が出る。

 

「言ったでしょ?俺は人付き合いが苦手なんです。人と関わることの多いクラス代表なんてとてもできませんよ」

 

そんな面倒なことをしてわざわざ目立つ必要はない。目立つのは織村だけでいい。俺は織斑を隠れ蓑にしていればたいして目立たないだろうし。

 

「ふうん。まあ、いいわ。そういうことにしといてあげる。あら、もう時間ね。また来るわ」

 

「はいはい。次からお茶菓子持参でお願いしますよ」

 

「任せときなさい」

 

門限が近くなり楯無さんは帰っていった。2日に1回というペースで来るため、俺は修業の計画が立てやすくなった。月読の精神世界で雫と修業する日を楯無さんが来ない日にやればいいからだ。

 

 

 

翌日。クラスの女子が騒いでいた。話から察するに今日転校生が来るらしい。こ時期に転校など滅多にない話だ。つまり転校が認められるほどの実力者か強力なコネを持つ人間だろう。

 

そんな風に考えていると転校生はあちらからやってきた。どうも織斑の関係者らしい。どうにも猫みたいなやつだった。だが、時間切れだ。織斑千冬の出席簿で撃退されていた。

 

 

 

「あんたが2人目の男性操縦者ね。私と戦いなさい!」

 

放課後、教室から出ようとしたら転校生に話しかけられた。というか絡まれた。そしてクラスの時間が止まる。金髪戦以来俺は恐怖の対象となっているらしい。そして自己紹介の事もあり、俺に必要事項以外の事で話しかけてくる奴はいないのだ。

 

「まずお前は誰だ?いきなり勝負しろとかどこのバトルジャンキーだ?」

 

「・・・悪かったわよ。私は鳳鈴音。2組のクラス代表で中国の代表候補生よ」

 

アジア系だと思っていたが、中国の代表候補生か。あの金髪と同じレベルなんだろう。ならば途中で試合を放棄するような輩ばかりだろう。それに戦う理由もない。

 

「そうか。ならそこをどけ。俺は忙しいし、お前と戦う気もないんでな」

 

「あら、負けるのが怖くて逃げるの?」

 

またこういう奴か。安い挑発でこちらを乗せようっていう奴が多くて困る。

 

「ああ、俺はお前に負けるのが怖いから戦わない。話は終わったか?何度も言わせるな。そこをどけ」

 

「っ!!あんたにプライドはないの!?男なんでしょ?」

 

こうして何回も挑発してきたんだろう。たいていの奴はそこまで言われれば乗るだろうが、俺は違う。残念だったな。

 

「安い挑発だ。政府から俺のデータを取るようにとでも言われたか?それから、もうどいてもらうぞ」

 

「な、何を言って―――」

 

俺はチャクラ糸を猫の手足にくっつけ強制的にどかした。

 

「か、体が勝手に!?あ、あんた、一体何したのよ!?」

 

「うるさい奴だ。何もしていない。もう話しかけるな」

 

そう言って俺は廊下を歩きだした。後ろから『待ちなさいよ!』とか聞こえるがもう関わる気もない。俺はその場を立ち去り、自室へと戻っていった。

 

 

 

「遅くなってすまない、雫」

 

俺は自室に戻ると鍵を2重ロックし、結界忍術を張り、月読で雫を精神世界に呼び出した。

 

「いえ、それより今日はどのような訓練を?」

 

「今日はISで模擬戦をしようと思う。機体性能はいつもと同じでいいか。じゃあ、早速始めよう」

 

月読で作り出した世界では全てが俺の思いのままとなる。月読は、相手の意識に直接干渉し「実際に体験していると錯覚させる」術であり、なおかつ時間さえも操れる為、術者は隙を作らずに対象に効果を及ぼすことが可能となる強力な幻術だ。

 

ただ、相手の精神にダメージを与える場合と異なり、今回のように訓練として使用する場合には時間を操ることはない。訓練で得た経験を自分にフィードバックするためには現実世界と同じ時間軸でやらなければ経験値が自分のものとならないからだ。

 

そして発動時間が長くなる分、チャクラの消費量が多く、疲労が大きくなる。今では最大で2時間ほどというところだ。ただ、その分効果は大きい。なにせ対戦相手が雫なのだ。

 

雫は戦闘用に作られただけあり、戦闘技術が非常に高い。仮に俺の方が強くても雫にも月読の精神世界の操作権を与えているため、自身を強化すれば常に格上として戦い続けることができる。

 

俺は自身の専用機を、雫はありとあらゆる性能を持ったISで俺と戦う。現実世界で味わうことのできない経験と言う糧を俺は得ることができているのだ。

 

 

 

「やっぱり強いな、雫は」

 

「無月様も相当お強いですよ」

 

今日、雫が使ったのはビット兵器を使った機体だった。金髪と同じような機体だが、ビットの数は10機。それにビットを操りながら新月のような刀で近接戦闘を挑んでくるのだ。

 

ISならではの並列思考を駆使した戦い方であり、封術吸引でエネルギー兵装を無効化しても連続で攻撃にさらされ、なおかつ近接戦闘を挑んでくるのだ。

 

近接戦闘の技術も非常に高いため、気が抜けない。少しでも気を抜くと封術吸引の隙を突かれて撃墜されてしまう。このように、常にあらゆるタイプの戦闘をこなすことで、俺の技術は上がってきたのだ。

 

1の実戦は10の練習に勝るということを思い知った。しかし、かといって日々の鍛錬を怠っていては基本技術が身につかないので、バランスが非常に重要だ。

 

「今日はこれまでですね。お疲れ様です」

 

「ああ、また頼むよ」

 

雫と別れ俺は月読をやめた。どっと疲労感が襲ってくる。このような日はあらかじめ夜ごはんを買っておくので俺は用意しておいた弁当を温めて食べた。

 

永遠の万華鏡写輪眼でなければ使えない訓練法だった。俺は自分の目に感謝した。もし使えなければ復讐なんて夢のまた夢だろう。だが、夢は着実に実現へと近づいている。

 

「・・・焦るな。力をつけるんだ」

 

必ずこの手で。という思いを胸に秘め、俺は今日の経験を思い起こしながらベッドに入った。

 

 

 

トーナメント当日。俺はアリーナにはいなかった。体調不良を理由に屋上に来て中継を見ることにした。織斑の対戦相手はあの猫だそうだ。代表候補生らしいからそれなりにやるのだろう。

 

猫は織斑相手に優勢に戦いを進めている。見えない衝撃砲というのは本当だそうで、写輪眼ならば目視できたが、瞳力を使わないならば空気のちょっとした歪みを見切るしかないのだろう。

 

だが、織斑が瞬時加速で猫を切りつけようとした時、ズドオオンッ!という大きな音とともに全身装甲の灰色っぽいISが現れた。おそらくトーナメントは中止になるだろう。そしてこの来訪者は俺の前にも現れた。

 

「あっちは1体なのにこっちは3体ね。ずいぶんな特別待遇だ。行くぞ、雫!」

 

屋上で戦っては校舎が壊れて面倒なことになる。俺は運動場の方へと飛び、3体を迎撃することにした。

 

 

 

「・・・こいつら本当にISか?」

 

3体の攻撃を捌きながら俺はこいつらが本当にISなのか、ということを考えていた。まず形状がおかしい。3体は右腕が普通のISほど大きい。

 

ISは人が肉体を使うように操縦するものだ。そして通常ISは人間と同じような形をしている。理由は普段と同じように肉体を使った方が効率的だからだ。

 

ヒトの骨格から大きく外れたものでは感覚をつかみきれず動きが悪くなるとされる。相当の熟練が求められることであるし、何よりそんなことに慣れる時間があるならもっと普通のISを上手く使えた方が良いのである。

 

それに動きが機械じみている。まるでプログラムされたような動きを見せる。連携もさっきから数種類のパターンの使い回しだ。

 

「雫。こいつらは本当にISなのか?とても人が乗っているようには思えないぞ」

 

俺は雫を呼び出し聞いてみる。雫はISの展開時に俺と会話が可能なのだ。これは俺が初めて雫に触れたときに声が聞こえたものを応用した技術だ。

 

『ISに間違いありません。しかし、どういうわけか生体反応を感知できません。敵機は無人機である可能性があります』

 

「無人機だと?」

 

最先端の技術を誇るミラージュですらそんな技術は不可能だと言っていた。にも関わらず無人機だということはそれ以上の技術を持つ者の仕業だ。そして情報が全く回らないということは考えられる可能性は1つ。

 

「・・・あいつの仕業か」

 

『ええ。博士の技術力ならば可能であると思われます』

 

やはりIS学園に来たのは正解だったようだ。こんなにも早く向こうから接触してきてくれるとは思ってもみなかった。

 

俺は3機に取り囲まれるが、これは誘いだ。俺は万華鏡写輪眼を発動し、後ろにいた1機に焦点を合わせる。

 

「天照!!」

 

ゴウッ!!!

 

という音とともに漆黒の炎が1機を包み込む。対象が燃え尽きるまで消えない炎だ。そして全てを焼き尽くす超高温の炎。一気に相手はショートを起こし、制御が不可能となり地面へと落下していく。

 

それが合図だった。残った2機は左右から俺にレーザーを撃つが俺は封術吸引で無効化し、右側にいた1機に向かった。

 

俺は新月を展開し、風遁のチャクラを込める。無人機は右腕の硬度に自身があるらしく右腕で新月を受けようとするが、

 

ズバンッ!!

 

全力の風遁を込めた一撃を抜刀術の要領で振り抜き、腕を切り裂く。無人機は構わず残った左腕で俺を攻撃しようとするが、遅い。俺は返す刃で無人機を袈裟がけに斬り、真っ二つにした。

 

無人機だとまだ攻撃される恐れがある。無人機の行動の中枢を担っているであろう頭を風の刃を飛ばして破壊し、残った1機へ向き直る。

 

おそらくこの無人機は試作機だ。何より攻撃手段がビームと腕をただ振り回すだけの格闘戦しかない。バカの一つ覚えみたいにビームを放ってくるが俺には無意味だ。ビームを無効化しつつ、瞬時加速で一気に接近し、新月を振り上げる。

 

「何が目的か知らないが、俺は嬉しいぞ。篠ノ之束!!」

 

ズバッ!!

 

無人機を縦に真っ二つにした。一気に止めは刺さず、最後に音声を残してやった。これでこちらに興味を持ってこればいつか接触できるだろう。

 

 

 

状況を確認する。地面には天照で燃やされ続けている1機と新月によって分断された2機が転がっているだけだ。再起動する様子もないし、これで終わりだろう。俺は天照の炎を消した後、屋上へと戻り、ISを解除した。

 

たぶんこの後事情聴取をされるな。まあ、正当防衛だ。学園の警備はどうなってるんだと言い募れば終わるだろう。事情聴取するものが織斑千冬でないことを祈るだけだな。

 

なにせ復讐の対象が目の前にいるのだ。自分を抑えるのに一苦労だ。最近は自分を抑えるということを覚えてきた。必死に自分にまだ駄目だと言い聞かせているだけだが。

 

微妙に憂鬱になりつつ、俺は教室へと戻ることにした。

 

 

 

Side 織斑千冬

 

「あのISの解析結果が出ましたよ」

 

「ああ。どうだった?」

 

「はい。あれは―――無人機です」

 

世界中で開発が進むISの、そのまだ完成していない技術。それがこのISに使われていた。この事実はすぐにかん口令が敷かれたが、外部に漏れる恐れがある。それに無人機のコアは登録されていないものであり、この事件の首謀者が一体誰なのかということを暗示している。

 

「コアは無事だったか?」

 

「いいえ、織斑くんの最後の攻撃で機能中枢が焼き切られていました。修復はおそらく無理かと」

 

やはり零落白夜の一撃はコアと言えど耐えられなかったか。

 

「そうか。では霧雨の方は?」

 

「こちらもです。3機のうち2機はコアごと切断されており、残りの1機はコアが半分溶けていました」

 

「・・・なんだと?」

 

どれほどの高温だったらコアが溶けるというのだ?一夏の爆発でも解けることはなかったのだぞ?それに切断したということは零落白夜並の破壊力を持った武器を持っているということだ。

 

「霧雨は何と言っているんだ?」

 

霧雨の事情聴取は先ほど終わった。こちらにもそれが送られてきているはずだ。

 

「はい。それが夢中だったので覚えていないと。3機相手ではそんな余裕はなかったと」

 

それは本当なのだろうか?私は霧雨無月という人間を測りかねていた。学校では必要最低限しか話そうとしないし、模擬戦は決してやろうとしない。

 

「山田先生、霧雨は本当のことを言っていると思いますか?」

 

「うーん、あの無人機を3機相手にしたんですから仕方ないのでは?いくらエネルギーが少なかったとはいえ、鳳さんと織斑くんが2人でかかってようやく1機。むしろ余裕があるのか疑問です。私でも3機を相手に勝てるかどうか」

 

確かにあの無人機を3機同時に相手にし、なおかつ勝利を収めるというのは驚異的だ。鳳は代表候補生であり、一夏も日々の鍛錬で力をつけつつある。エネルギーが減っていたとはいえその2人が倒せたのは1機がやっとだった。

 

「・・・そうですね」

 

確かに山田先生の言うことには一理ある。だが私は霧雨には違和感を感じている。あの年であれほどの殺気を出し、代表候補生をも圧倒する実力。そしてあいつが語った復讐という言葉。

 

「・・・あいつは何を考えている」

 

霧雨無月。一度話してみる必要があるのかもしれない。

 

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