IS~ISと忍術と復讐と~   作:狐の面

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第7話 本当の自分

Side 無月

 

また転校生が来るらしい。今回は2人。しかもこのクラスにだ。そしてそのうちの1人は男だった。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

礼儀正しい達振る舞いとと中性的な顔立ち、その姿はどこかの貴公子のようだ。だが、俺には違和感しかなかった。まず線が細い。それに骨格も男のものではない。肩幅はないし、なで肩だ。少なくとも男には見えない。

 

だとすれば男装をしたスパイだろう。貴重な男性操縦者のデータでも取りにきたか?まあ、どちらでも構わない。俺はデータを取らせる気もないし、そもそもそんな真似をしたら突き出してやればいいのだ。

 

まあ、接触する機会があればその時に対処すればいい。

 

2人目は軍人だろう。立ち振る舞いに隙がない。こちらは織斑と因縁があるようだ。会って早々平手打ちとは恐れ入る。

 

「織斑と霧雨はデュノアの面倒を見てやれ。同じ男だろう」

 

有無を言わさず世話役を命じられる。俺はスパイと関わる気はさらさらないので織斑に押しつければいい。

 

俺は2人を無視してさっさと更衣室に向かった。俺は織斑とは違いヤバい奴と思われているので女子に絡まれることもなくスムーズに更衣を終え、授業に向かった。

 

 

 

授業では今日は山田先生が金髪と猫と試合をし、実力を見せつけていた。噂では国家代表まであと1歩の所まで上り詰めたと言われる山田先生だ。2人程度では相手にもならないだろう。

 

その後は専用機持ちごとのグループに分かれての実習となった。俺の班は必要最低限以外の会話はせず、粛々と進んだ。何か聞かれれば答えるが、聞かれたことにしか答えない。

 

疑問に思ったことがなければどんどん先に進めればいいし、わからなければわからないことを聞いて理解すればいい。わからないことをそのままにしておく者など論外だからな。

 

そのまま授業は終了し、放課後には俺が男装と同じ部屋になると伝えられた。思ったよりも早く接触の機会が訪れたようだ。

 

 

 

「よろしく。えーと、霧雨くん?」

 

俺とは一言もしゃべっていないので遠慮がちに男装が言う。

 

「俺は回りくどいのはあまり好きじゃない。早速聞かせてもらうが、お前は女だろう?なぜ男装なんてしている?」

 

「き、急に何を言っているの?僕は男だよ?」

 

しらばっくれるか。まあ、そういうことなら仕方がない。この焦り様からして本当に女なのだろう。

 

「なら、そういうことにしておこう。お前が男装していようと俺は興味がないんでな。例えば・・・所属企業からスパイ行為を命じられていたとしてもな」

 

転校するには本人の技量はもとより、強力なコネがいる。政府や大企業のような。そして検査の過程で女ということがばれないはずがない。つまりこいつの男装はこいつを送り込んだ誰かが描いたものである。

 

男装はさっきの冷静さはどこに行ったのか急に声を張り上げる。

 

「いきなり失礼なことを言わないでよ!」

 

「失礼だったか?それをお前が言うとは滑稽だな。いずれにせよ、俺には関係のないことだ。せいぜいバレないようにすることだ。それと俺は人付き合いが苦手だ。わからないことは織斑に聞け」

 

「・・・僕もそうするよ。君のことは好きになれない」

 

怒りをいっぱいに込めた目で俺を見てくる。こいつは無理矢理させられているのか、望んでやっているのか?よくわからないが、要するに自分というものがないのだろう。

 

「奇遇だな。俺もお前の事が嫌いだ。それにお前は一体誰なんだ?」

 

「・・・シャルル・デュノア」

 

「ならヒントをやろう。今のお前は本当のお前なのか?今ここにいる自分という存在に誇りを持っているか?」

 

「・・・・・・」

 

男装は何も答えなくなった。俺とこれ以上会話をしたくないという思いもあるだろうが、思うところもあるのだろう。

 

「だんまりか。まあ、いいさ。これ以上話すこともない」

 

そして俺はベッドに横になった。同居人ができた以上雫との訓練が難しくなりそうだ。ベッドに横になって寝た体制ではできないだろうか?あれこれ試す案を考えているうちに俺は寝ていた。

 

 

 

Side シャルル・デュノア

 

霧雨無月。世界で2人目の男性操縦者との出会い最悪のものだった。一夏の方は好感が持てる接し方をしてくれたが、彼は真逆だった。

 

それに僕が男装をしているということを見破っていた。だが、そんなことよりもさっき言われた言葉が胸に刺さった。

 

「今のお前は本当のお前なのか?今ここにいる自分という存在に誇りを持っているか?」

 

僕だって好きでやっているわけじゃない。言いたかった。自分はシャルロット・デュノアだって。だが、男性操縦者のデータを取ってくるようにと言われている以上、バレていたとしても正体を明かすわけにはいかなかった。

 

幸い彼は僕の正体をばらそうとは思っていないようだ。それどころか興味すらないといった態度だった。

 

1日見ていただけだったが、彼は異質の存在だった。必要最低限の会話しかしないし、誰とも関わろうとしない。そしてクラスの子から恐れられているようだった。

 

今日、一夏と昼食を取った時にさりげなく聞いてみたが、どうもクラス代表を決める時にイギリス代表候補生のセシリアさんを圧倒しながらも棄権したそうだ。そして自己紹介の時に異様な雰囲気を放っていたらしい。

 

武道を得意としている箒さん曰く殺気を放っていたようだ。それも今まで感じたことがないくらいのものを。同じ男性操縦者の一夏も彼とは話したことは数えるほどしかないらしい。

 

これだけ見ればただの人付き合いの悪い人間で終わるが、とりあえずは様子見しかないのだろう。

 

始まった学園生活が初日からこんな風になるとは思っていなかった。それに今日は精神的に疲れてしまった。もう寝ることにし、明日に備えることにした。

 

 

 

Side 無月

 

「で、楯無さん。俺はどうしてここでお茶してるんでしょうね」

 

「おもてなしよ!いつもは私がお邪魔してるでしょ?だから今回は生徒会室で霧雨くんとお茶しようと思ったのよ」

 

俺は廊下を歩いていると楯無さんに声をかけられてそのまま生徒会室でお茶をしていた。

 

「裏があるから表なし。良い言葉ですよね」

 

この人は何を考えているのか?手合わせ以来、2日に1回は会ってはいるが未だに何を考えているのかわからない。と言っても向こうから押しかけてくるだけだが。

 

「確かにこの部屋には霧雨くんと私しかいないわ。でも変なこと考えちゃだめよ?」

 

「はいはい」

 

こんなやり取りを何回続けたのだろう?会話は楯無さんが話題を出し俺がそれに答えるという形式となっている。この人は手合わせの時以来、学園で好感が持てる唯一の人間であるため、会話が苦にはならない。

 

「じゃあ、もうお暇します。次はケーキでも用意しておきますよ」

 

「あら、だったら私はモンブランでお願いね?近いうちにまた行くわ」

 

「了解しました。では」

 

礼には礼を。これは大切なことだと思う。確か食堂のケーキはおいしいと評判だったはずだ。それを買おうかと考えているうちに部屋に着いた。気配が男装だけではないので誰かいるのだろう。

 

男装のプライベートにまで首を突っ込む気にはなれないので誰が来ようときにはならない。俺に関わってこなければいいだけだ。

 

 

 

中に入ると織斑と男装がいた。男装がもう男装をしていないあたり織斑にバレたのだろう。馬鹿だな。まだ1週間と経っていない。俺に指摘されてもばれているあたりこいつにはスパイが向いていなかったのかもしれない。

 

俺は興味がないのでベッドで本を読んでいた。嫌でも耳に入ってくる身の上話。ただの不幸自慢か。嫌なら断固拒否すればいいだけのこと。こいつはその気概がなく、なるがままにされていただけのようだ。

 

「俺たちも協力する。なあ、霧雨」

 

「なぜ、俺に話を振るんだ?もともとこいつはスパイだったっていう話じゃないか。それに俺は男装には気づいていた。何故そいつをかばう?スパイは潜入がバレた時点で死。そういう決まりだ」

 

織斑が目に見えて激昂した。

 

「どうしてそんなことは言えるんだ!シャルルは望んでやったことじゃないんだぞ!親に強制されたんだ!!」

 

「ならどうして反抗しない?結局お前はいろんな理由をつけて逃げていただけなんだよ。言っただろう?お前は自分に誇りがあるのか、と。織斑。お前は自信を持って自分は織斑一夏だと言えるか?」

 

男装は唇を噛みしめる。織斑は俺の問いの意味がわからなかったようだが、断言した。

 

「言える!俺は世界に1人しかいないし、俺は俺だ」

 

良い答えだ。俺は初めて織斑という人間を評価した。

 

「俺はお前が嫌いだが、その一言は評価しよう。こいつにはそれが出来ない。所詮は負け犬だ。勝手にすればいい。前もこいつには言ったが、俺はそもそも興味がないからな」

 

「シャルルは負け犬なんかじゃない!!撤回しろ!」

 

「する気はないな。そもそもそれはお前の意見だろう?まあ、これ以上の議論は無駄だ。俺はそいつがスパイ行為を働かない限り学園に突き出すことはない。それだけで十分だろう?」

 

もう話をする必要もないだろう。戦う前から気持ちが折れている。そんな奴を相手にする気もない。力が強い以上に心が強くなければならない。でなければ何も変わらないし、変えることはできない。

 

それにそんな馴れ合いをして何になる?相手が戦い気もないのに時に自分が味方だといってもそいつは一生ぬるま湯につかったままだ。結局何も変わらない。織斑は3年間の猶予があると語っていたが、結論の先延ばしでしかない。

 

IS学園が各国から中立だと言ってもやりようはいくらでもあるからだ。甘さと優しさは違う。こんなものは仲良しごっこでしかない。言う気はないがな。

 

俺たちはそれ以上言葉を交すことなく、門限が来たので織斑は帰り、俺はベッドに横になった。男装も俺と同じくベッドに横になり1日が終わった。

 




 
シャルロット好きの方、シャルロットの扱いが酷くなってしまって申し訳ありません。

作者もシャルロットが好きなので胸が痛いです。主人公の理解者になることも考えたのですが、今後もこの路線で行く予定です。
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