達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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九校戦編 前編 其の七

今の達也には友達が少ない。E組で友達と呼べるのは、エリカ・レオ・美月に加え最近仲良くなった幹比古を入れて四人。基本それ以外のクラスメイトとは親交が無い。しかし、今日に限ってやたら声が掛かる。理由は簡単だ。

 

「噂が広まるのは早いね」

 

「噂じゃなくて真実だろ」

 

「午後になるまで分からないけどな」

 

同じクラスから九校戦の代表が出たのが嬉しいのだろう。

 

午後 発足式 舞台裏

 

「なんですか?これ」

 

「九校戦のユニフォームよ」

 

「深雪、お前は?」

 

「私は進行役です」

 

やがて式が始まり順調に進んでいく。次々に代表者の名前が呼ばれる。そんな時、達也の隣から声が掛かる。

 

「緊張するよね」

 

「そんな風には見えませんけど?」

 

声を掛けたのは達也と同じエンジニア枠で代表入りしている、二年の五十里 啓。

 

「(五十里 啓、エリカと同じ百家。五十里の人で、確か二年生の中でも成績はトップクラスの人だよな)」

 

「それでは今一度、我が一校代表選手団に盛大な拍手を」

 

達也がそんな事を思っている間に式は終わりを迎えた。

 

放課後

 

今日はそれぞれの担当選手と担当エンジニアの顔合わせも行われた。

 

「皆さんのCAD調整、及び作戦立案等をサポートする事になりました。司波達也です」

 

「はぁ~エンジニアは女の人が良かったなぁ~」

 

「誰でもいいよ。足さえ引っ張らなきゃ」

 

やはり何処へ行っても達也の第一印象は良くない。 

 

達也の担当選手は、深雪・雫・ほのか・明智瑛美・里見スバル・滝川和実の女子六人。 

 

現時点で達也のエンジニアとしての腕を理解しているのは深雪だけ。雫も、ほのかも 分かっていない。初対面の三人と雫、ほのかを合わせ五人は数日中に達也のエンジニアとしての実力を間の当たりにし、達也に対する意識を変えていくことになる。

 

達也が顔合わせをしていた頃、美月は一人休憩を取っていた。 

 

美月は普段温厚な人だ。余程の事でなければ怒らないし、気にしない。そんな彼女の眼に、

 

「痛ッ・・・今のは?」

 

眼鏡を掛けているにも関わらず見えた光、流石に今のは無視できそうになかった。美月は良く目を凝らし、発生源を探す。

 

「アッチは・・・実技棟?」

 

美月は実技棟に歩き出す。そして美月が立ち止まったのは『薬学実験室』。美月は意を決して扉を開ける。そこにいたのは、

 

「(・・・?精霊。それに・・・吉田君?)」

 

「誰だ?」

 

驚いた美月は目を閉じ。思わずその場にしゃがみ込む。そしてそれと同時に、何かが弾け飛んだ。美月が目を開けるとそこには対峙する二人。

 

「落ち着けよ。お前とやり合うつもりはない」

 

「達也さん!」

 

「!! 済まない。そんなつもりじゃ」

 

「気にしてないよ」

 

「達也さん有難う御座います」

 

「あのなぁ 美月。元々、悪いのは美月の方だぞ。人払いの結界破って、術者の気を乱したんだから」

 

「え!そうなんですか?」

 

「!! どうして、結界の事を?イヤ、それよりも彼女は悪くないよ。僕が未熟だったから・・・有難う達也。君のお陰で柴田さんにケガをさせずに済んだ」

 

「俺が手を出さずとも美月がケガをする事は無かったと思うけど?」

 

「しかし、こんな処で精霊魔法の練習とは」

 

「・・・まぁ、隠す事もないかな。達也の言う通り喚起魔法の練習をしてたんだ」

 

「美月にはどう見えた?俺の眼じゃ霊子の塊があるくらいにしか視えなかったが」

 

「え!私にも青とか水色とか藍色とか、青系統の色調の塊が見えただけですよ」

 

「い、色の違いが視えるのかい?」

 

幹比古は美月に近づいて行く。

 

「えっと?あ、あの!」

 

幹比古は余程、美月の眼が気になる様だ。ドンドン距離を詰めていく。

 

「幹比古。それ以上は・・・」

 

「・・・! あっ、ごめ・・・そんなつもりじゃ」

 

「イエ・・・此方こそ、御免なさい」

 

「美月が誤る事じゃないだろ」

 

「本当に済まない」

 

「そんなに美月の眼が珍しいのか?」

 

「柴田さんの眼は水晶眼じゃないかと思って」

 

「水晶眼?なぁ、それって、あぁ、イヤ、教えられない物なら」

 

「イヤ、大丈夫。それ程、秘密って訳じゃないから」

 

幹比古の解説が始まる。

 

「基本的に精霊を使役する術者は精霊を色で見分けている」

 

「見分けるってお前も美月みたいに視えているのか?」

 

「イヤ、そうじゃない。本当の意味では誰も視えてないよ」

 

「・・・つまり元々、視覚で見ようとせず、何か別の視点から視ているのか?」

 

「まぁ、そんな感じかな?詳しくは言えないけど」

 

「それはそうだろ。それに俺は精霊魔法は専門外だから話を聞いても解るものじゃない」

 

「精霊の色と云うのは流派に依っても違うんだ。ウチは水は青、火は赤、と云う風に画一的に頭の中で色を塗っているんだ」

 

「けど術者でもない美月にはそれが視えた」

 

「多分、柴田さんは力量の違い。性質の違いを色調の違いとして視覚できるんじゃないかな?そんな眼の事をウチでは『神を視る事が出来る眼』水晶眼と呼んでるんだ」

 

「お前達にとって美月の眼は喉から手が出る程、欲しい人材と云う事か?」

 

「去年の僕なら兎も角、今の僕はそんな事しようなんて思わないよ。でも他の術者に教える気もないけど」

 

「美月の眼の事は黙っていた方がいいみたいだな」

 

「・・・?」

 

美月には二人が何を言っているのか分からない。

 

七月一日、遂に九校戦会場に出発する日がやって来た。しかし、一校選手団を乗せたバスは未だに出発していない。

 

「遅れてゴメーン!」

 

「遅いぞ!真由美」

 

「これで出発できますね」

 

「ごめんね!達也君。随分、待ったでしょう?」

 

「事情は聞いてますから、家の用事なんでしょう?」

 

「・・・処で達也君」

 

「なんでしょう?」

 

「これ、どうかな?」

 

真由美は制服を着ていない。今日は会場に行くだけなので洋服の規定はないが、それでも私服で来ている生徒は少ない。

 

「お似合いですよ」

 

「もうちょっと、気を効かせてもいいんじゃない?」

 

「ストレスでも貯めてるんですか?」

 

「?」

 

「まぁ、会長は色々と大変でしょうから」

 

「ちょっと、達也君?」

 

「早く出発しましょう。バスの中なら少し位は休めます」

 

「・・・何を勘違いしてるの?」

 

達也は既に聞いていない。

 

「あの子、一体、私を何だと思ってるのよ。折角、席も隣に誘おうと思ったのに」

 

車内で真由美はご立腹だ。その他二名もだが、

 

「適格な判断だと思いますよ」

 

「え!どう云う事?」

 

「隣に座れば会場に着くまで会長に遊ばれ続けることになります。それは精神的に辛いでしょう」

 

「何よ、それ、酷くない?」

 

「会長、御気分が優れないと聞きましたが?」

 

「え!はんぞー君?イヤ、そう云う訳じゃ」

 

「心配を掛けたくないのは分かりますけど、此処で無理をされては・・・」

 

最初は心配そうだった服部の視線は徐々に落ちていた。

 

「何処を見てるんですか」

 

「え!イヤ、あの・・・あ!会長、ブランケットをどうぞ」

 

その後、暫く服部は弄られ続ける事になった。

 




十師族の詳しい説明してない
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