達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

14 / 107
前編が中途半端に為らなければいけど


九校戦編 前編 其の九

バスから降りた深雪は即座に達也に詰め寄る

 

「お兄様!先程は、何故あのようなことを」

 

「深雪の危険を排除するのは俺の使命だからな」

 

「危険?あの事故の事ですか?」

 

「お前、本当に気付いてなかったのか?」

 

「私は何も・・・」

 

「魔法の痕跡があった」

 

「他の方々も私も、不慮の事故だと」

 

「考えても見ろ、魔法も使わずに車が反対車線に飛び上がって向かってくると思うか?」

 

「ッ・・・ そうですね。事故車両はあの一台だけみたいですし。申し訳ありません 私の思慮不足です」

 

「仕方ないさ。使われたのは小規模な魔法。それも最小の質力で瞬間的に行使されていたからな」

 

バスはそれなりの高さのガード壁がある道を通っていた。高さがある故に余程の事がないと反対線に車が飛び上がって向かって来るなんて有り得ない。

 

「魔法は車内から放たれていた」

 

「車内から?・・・まさか?」

 

「そう、魔法の使用者は運転手。つまりは自爆攻撃」

 

「なぜ、その様な事」

 

「さぁな。俺としては運転手の目的が『お前に害を成す事』でないなら 、どうでもいいことだ」

 

「私 、個人を狙う人はいないと思いますよ。だって今の私は一般ですから」

 

「そうだな。簡単に俺らの正体が第三者に知られてもな」

 

「あ!もしかしたら?」

 

深雪は何かを閃いた様だ。

 

「どうした?」

 

「もしかしたら、運転手は会長、もしくは会頭を狙ったのでは?」

 

「・・・イヤ、十師族に喧嘩を売る奴がいるか?二人の実力は知られてるハズだろ」

 

「ですが、お兄様が手を出さなければ危なかったですよ」

 

達也と深雪は他人に簡単に聴かせられない話をしながら宿舎に入る。すると、

 

「久しぶりだね。御両人」

 

宿舎に入った二人に声を掛けたのはエリカ。

 

「エリカ!貴女、なぜ、此処に?」

 

「応援に決まってるじゃん!」

 

「先に行ってるぞ」

 

「お、お兄様!」

 

「挨拶くらいしなさいよ!」

 

「技術スタッフは忙しいのよ」

 

深雪は達也の代わりに理由を話す。

 

「それで、応援に来るのはいいけど、九校戦が始まるには・・・」

 

九校戦が始まるには来るのが早いと言おうとして、

 

「エリカちゃん。これ、部屋の鍵」

 

美月もいた事を知る。

 

「美月?貴女も・・・」

 

貴女もいたの? っと聞きたかったが、深雪の目は美月を見るとある一点に目が行ってしまう。

 

「どうしたんですか?深雪さん」

 

「は、ハデね」

 

「そうですよね。でもエリカちゃんが堅苦しいのは良くないって云うから」

 

「エリカ、貴女ねぇ~」

 

「いいじゃない、似合ってるんだから」

 

「似合ってるのは否定しないけど、取り敢えず、着替えるか、上に何か羽織るか、しなさい。そうじゃないと目に毒よ」

 

エリカ・美月・深雪の三人は入り口の直ぐ傍にいる。当然、多くの生徒が入り口から入る為にどうしても目に入ってしまう。最初に深雪に眼を奪われ、次にエリカ、そして 最後に美月のある一点に目が言ってしまう。

 

「処で、貴女達、此処に泊まるの?」

 

「はい、そうですよ」

 

「関係者じゃないのに?」

 

「そこはコネよ」

 

「成程、流石にこう云う処では千葉の名前は効果的よね」

 

エリカの家は百家の中で『剣の魔法師』と言われる有名な家だ。自己加速・自己加重に重点を措いた白兵戦を得意としている。千葉の門を叩く者は警察や軍の関係者になる事が多い。故にエリカが此処にいられるのだろう。

 

「でもエリカが実家のコネを使うなんて、そう云う事は嫌いなんだと思ってたけど」

 

「嫌いなのは千葉の娘って色眼鏡で視られる事よ。それにコネがあるなら使わないと勿体無いじゃない?」

 

「フフッ・・・でも試合が始まるのは明後日からよ。来るのが早すぎない?」

 

「今晩、懇親会でしょ?」

 

「けど、関係者以外は・・・」

 

「大丈夫。私達も関係者だから」

 

「え?」

 

懇親会前 一高控室

 

「どうでしょう」

 

「少し、脇の当たりが窮屈かな?」

 

「申し訳有りません。お兄様。時間が有れば仕立て直したのですが」

 

「いいよ。時間が無いのは知ってたし、どうせ、これを着るのは期間中だけ、それも少しの間だからな」

 

そんな事を言っている達也を視る眼は厳しい。達也が着る筈のない一科生の校章付きの制服を着ているからだろう。制服を着ている理由は簡単だ。出席者は懇親会で各学校の制服を着る事になる。一校の代表は一人を除き全員が一科生。二科生の達也の制服は見た目が同じでも校章が入っていない。これでは、彼だけ目立つ事になる。しかし、一人だけ技術スタッフ用の恰好をさせる訳にもいかない。悩んだ末に最終的な答えが達也にも一科生の制服を着せること。しかし、一科生はこの現状が気に喰わない。一時的に二科生と同列になるのだから。

 

「じゃあ、そろそろ、いきますか?」

 

「会長、帰っちゃダメですか?」

 

「何を言ってるんです。お兄様」

 

「ダメよ。貴方も参加しなさい。これは会長命令よ」

 

「はぁ~、面倒だな」

 

懇親会 会場

 

会場は人で溢れていた。仕方がない。各高の代表と言っても、競技種目が六種目。そして本戦・新人戦とに分かれ、さらに男女別で代表がいる為、参加者は100や200で済まない。

 

各校、固まって集まっているが、達也は一校の皆と距離を取っていた。そこにウエイトレスであろう人物から声が掛かる。

 

「お客様、お飲み物は如何ですか?」

 

良く見るとその人物は見知った顔だ。

 

「関係者ってこう云うことか?」

 

そこにエリカが立っていた。

 

「驚いた?」

 

「まぁな・・・それにしても」

 

「なに?」

 

「あら、エリカ。可愛い恰好してるわね」

 

そこに深雪が会話に加わる。

 

「そうでしょ!でも達也君は何も言ってくれないんだよ?」

 

「仕方ないわよ。お兄様だもの」

 

「そうだね」

 

「オイオイ 俺だって可愛いとは思うぞ」

 

「でも達也君はコスプレには興味ないでしょ」

 

「コスプレ?」

 

「ちゃんと支給された物だけど、男の子にはコスプレに見えるみたい」

 

「男の子?西城君の事?西城君、そう云うこと気にするのね」

 

「違うわよ。ミキの方」

 

「ミキ?」

 

「あ!そうか。深雪は知らないよね」

 

それだけ言ってエリカはその場を離れる。

 

「エリカ。どうかしたのかしら」

 

「多分、幹比古を呼びに行ったんだろう?」

 

「幹比古?あぁ、お兄様と同じクラスの吉田家の御方ですね!」

 

エリカが会話から抜け、次に司波兄弟の会話に参加したのは、

 

「深雪、此処にいたの?」

 

「達也さんと一緒だったんだね」

 

エリカの抜けた後に会話に参加したのは、雫とほのか。

 

「そう云う二人も一緒みたいだが」

 

「親友だし、それに別行動する必要もないし」

 

「成程」

 

「他の皆は?」

 

深雪に聞かれたほのかはある一点を指さす。 

 

「あそこだよ」

 

「深雪と話をしたくても達也さんがいるから話かけずらいんだと思う」

 

「なんだその理由。ガキじゃあるまいし、それに俺は番犬じゃないんだぞ。深雪に危害を加えないなら何もしないんだが」

 

「きっと、達也さんにどう接していいか分からないんですよ」

 

「馬鹿馬鹿しい。それも子供じみた理由じゃない」

 

新たに兄妹の会話に加わる者が二人。

 

「同じ一校の仲間でしょう」

 

「分かっていても、ままならないのが人の心と云うものだよ」

 

「それで許されるのは場合によりけりでしょ」

 

「あぁ、千代田先輩。それに、五十里先輩も」

 

「やぁ。少しは楽しんでるかい。司波君」

 

「まぁ、なんとか。先輩の方は?」

 

「僕も、ちゃんと楽しませて貰ってるよ」

 

達也が啓と話していると、

 

「楽しんでるところ悪いが中条が探していたぞ」

 

と声が掛かる。啓に声を掛けたのは摩利だった。

 

「本当ですか?」

 

「早くいってやれ」

 

「分かりました。じゃあ、そう云う事だから僕はこれで。君達は懇親会、楽しんでね」

 

「えー。啓、もう行っちゃうの?」

 

「お前も行けばいいじゃないか?」

 

「あ!そうか。啓、待って私も手伝うー」

 

「やれやれ。じゃあ、私もこれで」

 

そう言って上級生達は去って行った。

 

「深雪、お前も皆の処に行ってこい。チームワークも大事だろ」

 

「イヤです。確かにチーム-ワークは大事ですが、九校戦はあくまで個人戦がメインです。それにチームワークを乱しているのは私達ではなく彼らの方です。それも、また 下らない嫉妬で。そんな連中に態々、此方から歩み依る必要なんてありません」

 

「困った奴だな」

 

結局、深雪は懇親会終了まで達也の傍を離れなかった。

 




余り花音が好きに慣れない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。