懇親会が始まって、それなりの時間が経つと司会進行役のスタッフから来賓の報告がされる。
「本日は魔法協会理事、九島 列様より激励の言葉を賜りたいと存じます」
会場の明かりが消え前方のステージに注目が集まる。そこからに登場すると思われたがステージにいたのは女性だった。
「ん?」
「どう云う事でしょう?」
「何かのトラブルか?」
突如、現れた女性に辺りは騒然とする。
「何か手違いが?」
「イヤ 違う!」
達也の眼は捉えていた、女性の後ろにいる老人の姿を。
「老師は女性の後ろにいる!精神干渉魔法。会場全体を覆う程の大規模な魔法を発動したんだ」
「私には見えませんが」
「女性は見るな!老師の罠に掛かる」
女性が移動すると、そこには一人の老人が立っていた。その老人は会場全体を見回し達也を見て笑った。
「!!」
「悪ふざけをして済まない。今のは魔法と云うより手品に近いが、種に気が付いたのは 見た処、五人だったな。もし、私が悪者だったら、立ち向かえたのは五人か」
「!!」
列のもしもの話に言葉を失う学生達。
「魔法を学ぶ者達よ。魔法は手段でありそれ自体が目的ではない」
達也はじっと老師を観察している。
「先ほどの魔法は規模は大きいが強度は低い。だが、キミ達は、この弱い魔法に惑わされ私が認識できなかった」
列の指摘はもっともだった。
「魔法力を向上させる為の努力を怠ってはいけない。しかし、それだけでは不十分だと云う事を理解して欲しい。使い方を誤った大魔法は使い方を工夫した小魔法に劣るのだよ。魔法を学ぶ若人諸君!私は君達のそう云う工夫を楽しみにしている」
この列の言葉に多くの生徒が感銘を受ける。
「フフッ、流石にこの国の頂点に立つだけの事はある」
「本当に厄介な人ですね」
「だが来て良かったな」
「そうですね。お兄様」
懇親会 終了後
深雪は宿舎に、達也は作業車に向かった。
現在、深雪はほのかと雫の部屋にいる。九校戦代表選手は二人一組で部屋が割り振られる。因みに深雪のルーム・メイトは滝川和実。
「いよいよ明日からだね。緊張しちゃうな~」
「まだ、早いわよ。私達の新人戦は明日からじゃないでしょ」
「そうだけど」
「ねぇ!雫。明日の競技のオススメは?」
「スピード・シューティングかな?『エルフィンスナイパー』最後の試合は必見」
「エルフィンスナイパー?」
「会長のニックネーム。非公式だけど」
明日の事で盛り上がっていると、部屋のドアがノックされる。
「あたしが出るよ」
「こんばんわ~」
扉を開けると、そこには、エイミィ・スバル・和実がいた。
「どうしたの」
「ねぇ!今から、温泉にいかない?」
「温泉?」
「確か、此処の地下は人工の温泉だったわね」
「でも私達が使っていいの?軍の施設でしょ?」
「大丈夫。十一時までならOKだって」
その言葉を聞いて深雪達は温泉に入ることにした。そして、
「ねぇ、ほのか」
「なに、エイミィー」
エイミィーの視線はほのかの胸に固定されている。
「揉んでいい?」
「ダメに決まってるでしょ!」
「いいじゃない。ほのか、胸、大きいし」
「じゃあ、許可も出たことだし」
「私は出してないよ!」
温泉で騒ぐほのか達。そこに深雪が来る。
「何を騒いでいるのよ」
「!!」
「な!なに?」
「イヤー、遂、見惚れてしまって」
「ダメよ。深雪はノーマルなんだよ」
「何を言ってるのよ」
それから暫く、
「そう云えば、深雪。一色のご令嬢に何、言われてたの?」
「大した事じゃないわ」
「なんか、すっごく、感じ悪かった」
「ナンバースだからって威張り過ぎじゃない」
「あ!ナンバーズと云えば一条の跡取りもいたよね」
「見た。見た。流石にいい男だったね」
「カッコ良かったね~」
「付き合えないかな~」
「でも、彼、深雪の事を熱い眼差しで見てたよ」
「え!そうなんだ」
「もしかして、一目惚れ」
「一条の跡取りが惚れるなんて罪な女だね~深雪は」
「本当は前から知り合いなんじゃ?」
「どうなの?深雪」
「あのねぇ~。どうして一般の私が一条君と知り合いなのよ」
「付き合ってみたいとは思わないの?」
「どうして?」
「どうしてって、あの一条だよ。将来は十師族の仲間入りだよ」
「必ずしも一条が十師族であり続けるとは限らないでしょ」
「でもでも、ナンバーズだよ?」
「どうして?そんなにナンバーズや十師族なんかに拘るの?そんなに価値のあるものかしら?」
「深雪はナンバーズが嫌いなの?」
「そうね、嫌いね」
「じゃあ、会長や会頭の事も嫌いなんだ?」
「そんな事ないわよ」
「でも、嫌いって」
「私が嫌いなのはナンバーズや十師族の考え方よ」
「考え方?」
「自分達が十師族やナンバーズだと云う事に誇りを持つのが悪いとは思わないけど。あの人達は魔法師を道具みたいに考えてるでしょ。そんな人達を好きには成れないわ」
「じゃあ、一条君は嫌いじゃないの?」
「嫌いも何も、私、一条君の人となりを知らないから、好きにもならないし、嫌いにもならないわよ」
「深雪はやっぱりお兄さん見たいなのが好みかい?」
「何を期待してるか知らないけど、私達は兄妹よ。実の兄を恋愛対象として見るなんてお兄様に失礼でしょ」
「じゃあ、どんな人がタイプ?」
「え?それは~」
一方 宿舎裏
深雪達が温泉にいる頃、幹比古は懇親会の片付けを終わらせると一人、喚起魔法の訓練に励んでいた。
「!! これは」
訓練中の幹比古は何かの存在を知覚した。
「人の気配。しかも、普通じゃない?」
幹比古は知覚した存在を詳しく調べる。
「!! 銃を持ってる?コイツ等、いったい?」
幹比古は迷っていた。
「どうしよう? 誰か呼んだ方が?」
吉田 幹比古 古式魔法で有名な名門の一つ 吉田家の次男で『神童』と呼ばれていた実力者。
「(クソッ!去年の事故さえなければこんな事で悩まないのに)」
彼は去年、ある事故を起こした。その事故が無ければ彼は一科生として第一高校に通っていただろう。その後悔に彼は今も苛まれている。
「(・・・イヤ、このままじゃ、ダメだ。達也は僕と同じ二科にいても頑張ってるじゃないか。僕だって!)」
幹比古は行動を開始する。
「(見つけた)」
幹比古は持っていた呪符で魔法を発動し彼らを捕らえようとした。
だが彼らも幹比古の存在に気付き反撃を試みる。最悪な事に彼らの攻撃の方が早い様だ。しかし、彼らの反撃は決まらず幹比古の攻撃に倒れた。
「(いったい、何が?)」
彼らの反撃失敗の理由を考えていた。その時、後方に人の気配を感じた。
「誰だ!」
そこにいたのは・・・
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