一校の新人戦 女子『スピード・シューティング』の結果は十分過ぎるものだった
天幕内は大騒ぎ
「凄いわ! 上位独占なんて」
「快挙だな」
「優勝おめでとう 北山さん」
「有難うございます」
「明智さんも滝川さんも良くやってくれました」
「有難うございます」
「ねぇ 達也さん」
「何だ?」
「有難う 私が優勝できたのは達也さんの御かげだよ」
「俺は何もしてないよ 優勝したのは雫の努力と実力があったからだ」
「でも 司波君がCADの調整しなかったら私 予選を勝ち抜けたかどうか」
「そうだよ 私も司波君が調整してくれなかったら準優勝なんて出来てないと思うし」
「・・・イヤ だから俺は何も」
「照れるな 照れるな」
「別に照れてないですよ」
「そう言えば 先ほど 魔法大学から『能動空中機雷』を『インデックス』に正式に採用したいと」
「それ 本当!」
「凄い事になったな ウチからそんな話が出るのは初めてだよな」
インデックス 正式名称 『国立魔法大学編纂・魔法大全・固有名称インデックス』 魔法の固有名称一覧表である インデックスに採用されると云う事は新魔法として採用されることである 研究者を目指す者にとっては名誉な事だが
「あんな遊び半分で作った物が採用されるんですか?」
「遊び半分って・・・」
「だって実戦で使えなきゃ遊びと同じでしょ」
「辞退するんですか?」
「まぁ 俺が使える魔法じゃないですし」
「使えない? じゃあ 今まで どうやって作動確認してたんだ?」
「正確には発動までに時間が掛かり過ぎるんですけど」
「『インデックス』に名前が載る事はとても名誉なことよ」
「『インデックス』に名を連ねる事だけが名誉とはとても思えないんですけど、 どうしてもと言うなら開発者名は 北山雫で」
「ダメだよ アレは 達也さんのオリジナルでしょ!」
「別に開発者名に最初の使用者の名前が載るのは珍しくない」
「やだよ それじゃ 私が達也さんの成果を奪ったみたいじゃない」
「兎に角 俺は御免だ」
「私だって御免だよ」
いきなりの喧嘩 普段余り感情を表に出さない二人が珍しくヒートアップする
そして 言い争う二人の顔が徐々に近づいていた時 深雪とほのかが戻ってきた
天幕に戻って直ぐに目に入って来た衝撃の光景に言葉が続かない
「あの~会長 雫達はいますか? 記者の方々がインタビューをしたいと・・・」
「・・・ちょ!何してるのよ 雫 ず ずるい!」
「何をしてるんですか? お兄様?」
ここまでの経緯を知らない二人 これ以上ややこしくしない為に 達也は鈴音の持っていた申請書を奪い取り 雫の名前を書いた
「あ! 達也さん ずるい!」
「悪いな雫 諦めろ」
「む~」
「じゃあ 今度 何かおごってやるよ」
「私 お金やモノで釣られる程 安い女じゃないよ!」
深雪とほのかは何がなんだか分からない
「はい! この話はこれでお終い 達也君 他の競技も頼むわよ」
「ほら お前達も 早く インタビューを済ませてこい」
「分かりました」
その頃 九校戦 宿舎内 一室
大会委員会から割り当てられた一室を会議室として三校生が利用していた
その部屋の空気は重い
「まさか 一校に上位を独占されるなんて 先輩達になに言われるか」
「『スピード・シューティング』は 男女共にウチが優勝できたはずだろ」
「折角 男子は吉祥寺が優勝したのに」
「でも 十七夜さんだって優勝は狙えてたわよ」
「けどよ~」
「一校の女子のレベルはそこまで高い訳じゃない」
「優勝した北山選手は兎も角 三位の滝川選手は明らかに十七夜より下だ」
「だから どうして負けるんだ」
「選手は問題じゃない 問題なのはエンジニアだ」
「十七夜さんは作戦 負けしたんだよ」
「吉祥寺君がいたら勝てたのにね」
「それは 分からない」
「どうして?」
「試合の映像を見たけど 僕も相手の作戦に引っ掛かってたと思う」
「そんなに頭の切れる奴なのか?」
「技術者としても 一流だよ」
「ジョージは流石に気付いたか?」
「うん 北山選手のCAD アレは汎用型だったね」
「汎用型? だって アレには照準補助が」
「特化型の補助システムを汎用型に繋げるなんて」
「あるんだよ そう云う技術が」
「去年の夏 デュッセルドルフで発表されていた」
「去年の夏? そんなモノがもう実用化されてるのか?」
「でも 発表された物は 単純に繋げただけ。今回の様に特化型に劣らない速度と精度
そして 系統の違う起動式を処理する汎用型の長所を兼ね備えた物じゃなかった。十七夜さんの作戦は北山選手のCADが特化型だっと思って立てた作戦だった。相手のCADが汎用型なら意味がない」
「一校の担当エンジニア 司波達也 彼は間違いなく 天才だ 今後 彼の動きには他校も関係者も注目するだろう」
「天才ねぇ~果たしてそんな言葉で片付けられるか? アレは一種のバケモノだ。彼が担当する競技は今後も苦戦するだろう」
「お前等がそんなに言う程か・・・」
午後 新人戦 女子『バトル・ボード』予選会場
一校代表は最終レースにほのかが出場する 担当エンジニアは あずさ 試合前に達也は深雪と雫を連れほのかに会いに来た
「達也さん 来てくれたんですね」
「あぁ 見に来るって約束だったし」
「私 絶対 勝ちますから」
「大丈夫だよ ほのかなら 作戦もあるし」
達也は会場席に移動した エンジニアのあずさもいる
「あの 司波君 光井さんのCADを調整して思ったんですけど どうして光井さんは光学系の起動式を沢山用意してるんですか?」
「勿論 試合の為です ルール上 他の選手に魔法で干渉する事は禁止されてます
けど水面への干渉は違反じゃないですから」
試合が始まり 選手達は一斉に飛び出そうとしたが
「きゃ~」
開始早々に水面に仕掛けた ほのかの光学系魔法に他校の選手は混乱する
その隙に ほのかが 飛び出す この光景に実況者達は
「水面に光学系魔法を仕掛けたんですね」
「光井選手以外は視界が回復せず 中々 速度がでませんね~」
「素晴らしい 作戦ですね」
その後 ほのかは逃げ切る事ができ 予選突破が確定
「おめでとう ほのか」
「有難うございます 予選突破できたのは達也さんのおかげです」
九校戦 宿舎内 達也の部屋
達也は直ぐ部屋に入る事はしなかった 人の気配を感じたからだ
「コラッ! 何時だと思ってる」
「申し訳ありません ですが お兄様に聞きたい事があります」
「?」
「なぜ『インデックス』に名を連ねる名誉を辞退したのですか」
「別に『インデックス』に名を連ねる事だけが名誉では無いだろ それに 俺は 名誉なんかに興味はないよ」
「・・・嘘 本当は叔母様の事を気にしているのでしょう!」
「・・・分かってるなら聞くなよ そんな事」
「ッ・・・」
「名前が載ると云う事は 色々と調べられると云う事だ 大学の調査は甘くない 正体がバレる・・・と云う事は考え難いが それでも 俺が表に出ないのが一番いい」
「申し訳ありません 私の立場が弱いから お兄様に ご迷惑を 一刻も早く 四葉から自由にして 差し上げたいのですが」
「焦るなよ 今はまだ力が足りない 強がっても 四葉は倒せない。イヤ 四葉真夜は倒せても 他が黙っていない 今はまだ 叔母上の下にいた方がいい」
「私は味方です いつか自由になる日はきます。その時まで イエ その後も私だけはお兄様の味方ですから」
「有難う 深雪」
その後 暫くして 深雪を部屋に送った
次から 真夜が出てきます