達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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入学編は後2回で終わると思います


入学編 後編

翌日、二人は真由美を待っていた。

 

「会長。おはよう御座います」

 

「どうしたの二人共?」

 

「昨日の事が」

 

「あぁ、結局、彼らの要求は一科生と二科生の平等な待遇。でもどうするかは生徒会が考えろって」

 

「それで?」

 

「結局、明日の放課後に討論会を開く事になったわ」

 

「随分と急ですね?」

 

「生徒会では何方が討論会に?」

 

真由美は自分の顔を指示す。

 

「会長、お一人ですか?」

 

「時間ないし、一人なら揚げ足取られる事もないでしょう。一番面倒なのは感情論を持ち込まれる事よ」

 

「ロジカルな論争なら負けないと」

 

「それにもし、彼らが私を打ち負かすだけの根拠を持ってくれてればこれからに活かせるから」

 

 

放課後。自称、有志同盟の生徒達は討論会の参加者を募っていた。勿論、声を掛けるのは二科生。そして、それは美月にも。美月は断れずに困っていた。

 

「イエ、あの~私は」

 

そこに達也が通り掛かる。

 

「すみません。風紀委員の者ですが、長時間の拘束は迷惑行為と見なされますので注意して下さい」

 

「達也さん!」

 

「済まなかったね。じゃあ、僕はこれで。柴田さん。返事はまた今度」

 

勧誘していたのは、司 甲。

 

「美月、お前も討論会の勧誘か?」

 

「最初は違いました。先輩も霊視放射光過敏症で困っていて、そのサークルに入らないかって云うお誘いだったんですが、途中からそっちの方向に話が進んで困ってたんです」

 

確かに司 甲は眼鏡を掛けていた。

 

「確かに伊達じゃないみたいだったが・・・(彼も調べた方がいいか?しかし、どうやって)」

 

もう真夜に頼れない。協力を仰ぐなら・・・。

 

二人は夜中に九重寺を訪れる。

 

「もう、お休みになられているのでは?」

 

「それはない。ちゃんとアポも取ったし、何よりお前に何も感じ取れずとも、俺には視えてる。夜分遅くにすみませんね師匠」

 

「いらっしゃい、二人共」

 

声と共に深雪は暗闇に存在を視ることができた。

 

「司 甲。旧姓は鴨野。魔法因子は一般だけど血筋は陰陽道の大家。鴨氏の傍系だね。彼の眼は一種の先祖返りだ」

 

「師匠は俺が司の調査を依頼する事が分かってたんですか?」

 

「イヤ?僕は元々知っていただけ。怪しいのは調べる事にしてるんだ」

 

「俺達の事も?」

 

「勿論。でもあの時は調べられ無かった。流石に君達の情報操作は完璧だ。しかし、君達が僕の教え子になるなんて。でもこの位の事は僕じゃなくて、風間君に頼めば?あっちには藤林のお嬢さんもいるんだから」

 

「頼めたら此処には」

 

「成程、叔母君がいい顔しないか?」

 

「それで先輩とブランシュの関係は?」

 

「彼の義理の兄、司 一。彼がブランシュの日本支部のリーダーだ。表だけじゃなく裏もね」

 

「一つ心配事が」

 

「何だい?」

 

「彼の眼はどこまで視えてるんですか?」

 

「心配しなくていいよ。彼の眼で君は理解出来ない。勿論。君のクラスメイトの女の子もね」

 

「美月の事も知っているんですか?」

 

「コッチは君達の叔母君に頼まれたんだけど」

 

「そうでしたか。有難う御座います」

 

討論会 当日 お昼休み

 

達也は部活連本部に居た。達也はブランシュが関わる可能性をそれとなく伝える事にした

 

「司波、剣道部が何か企てていると云うのは本当か?」

 

「討論会が開かれるのに態々、騒ぎを起こすとは考えにくいのですが」

 

「可能性は高いです。しかも今回は騒ぎが起きれば怪我人だけで済むかどうか」

 

「達也君、それってどう云う事。何か知っているの?」

 

「兎に角。剣道部員の動向に注意して下さい。後は主将の司 甲から眼を離さないでください」

 

そう言って達也はその場を後にする。そして、運命の討論会の幕が上がる。

 

「二科生はあらゆる面で一科生より劣る差別的な扱いを受けている!」

 

「あらゆるとはどの様な事を指しているのでしょう」

 

「一科生の比率の高い魔法競技系のクラブは二科生の比率の高い非魔法系のクラブより明らかに手厚く予算の配分がされている。これは一科生の優遇が課外活動においてもまかり通っている証拠です!」

 

「それは各部の実績を反映させた結果です。非魔法系クラブでも優秀な成績を納めれば十分な予算が有り振られます」

 

討論会を黙って聞いていた摩利だったが、

 

「討論会ではなく真由美の演説会じゃないか?それで彼らが何をやるか分からないか?」

 

「流石にそこまでは」

 

「此方から仕掛けられないのは痛いな」

 

「彼らはまだ、何もしてません。それに専守防衛と言っても、この状況じゃ後々 面倒な事になります折角の討論会です話し合いで解決できるのが一番でしょう」

 

「実力行使を前提にするのは止めてください」

 

「わ、分かっている」

 

「一科生と二科生の間に差別意識があるのは否定できません」

 

真由美が一呼吸置いて、

 

「ブルームとウィード」

 

「!!?」

 

真由美の発言に達也も含めその場の全員が絶句する。

 

「禁止している言葉ですが多くの生徒が使用しています。しかし、一科生だけでなく二科生の中にも自らをウィードと蔑み諦めている。そんな悲しい風潮があります。この意識の壁こそが問題なのです! 生徒会にも一科生と二科生を差別するものがあります。現在の制度では生徒会長以外の役員は一科生から指名する事になっています。この規則は生徒総会でのみ改定可能です。私は退任時のこの件を撤廃する事を最後の仕事にするつもりです。勿論、これ以外の事でもできるだけ意識の壁を崩す改善策を取り入れるつもりです」

 

真由美に称賛の拍手が贈られる。しかし、そんな中で爆発音が聞こえた。その衝撃に一部の生徒が騒ぎ出し、一部の生徒が動き出す。

 

「奴等が動きました」

 

「全員、取り押さえろ」

 

風紀委員も動き出す。

 

エガリテに参加している生徒を取り押さえる達也。状況は目まぐるしく変わる。

 

「皆!気を付けて!何か飛んでくる」

 

真由美には視えていた。講堂のガラスが割れて何かが投げ込まれる。

 

「ガス弾?」

 

「煙を吸い込まないように」

 

この事態にいち早く動いたのは服部だ。

 

「(気体の収束と移動の魔法。一瞬で煙ごとガス弾を隔離。先輩はちゃんとした状況判断が下せる人か)」

 

服部により事なきを得たと思った矢先。今度は正面入り口から三人の武装した侵入者が現れる。

 

「次から次に、面倒な奴等だ」

 

彼らは銃機を乱射しようとしたが。

 

「(MITフィールド ガスマスクの内部を窒素で満たしたか)」

 

彼らは意識を失った様だ。

 

「侵入者だと。そっちにもか?」

 

どうやら騒動は終わらない様だ。校内の至る処で戦闘が行われているらしい。

 

「俺は外の応援に行きます」

 

「お兄様!早く行きましょう」

 

「気を付けろよ!」

 

この騒ぎで多くの者が混乱していた。レオもいきなり現れたテロリストに驚いていた 。

 

「一体何事だ?お前等は何なんだ?」

 

レオは状況が掴めないながらも反撃していた。仕方ない。彼らは本気で殺しに掛かって来るのだから。そこに二人が合流する。

 

「う、うわー」

 

レオを囲っていたテロリスト達は深雪に依って吹き飛ばされる。

 

「達也、どうなってるんだ」

 

「レオ、大丈夫?」

 

達也に状況確認しようとした時にエリカがやって来た。エリカはCADを持っていた。

 

「援軍到着?」

 

達也は二人に説明をする。

 

「テロリスト?」

 

「ぶっ飛ばしていい?」

 

「生徒で無ければ問題ない」

 

「お前等、他に怪しい奴等を視なかったか?」

 

「彼らの狙いは図書館よ」

 

達也に声を掛けたのは遥だった。

 

「小野先生?」

 

「此方を襲ったのは陽動ね。主力は既に侵入しています。壬生さんもそっちにいるみたい」

 

「なぜ知ってるんです? 貴方は一体何者です?答えてくれますよね」

 

「却下します。とは言えないわね。その代わりお願いがあるの」

 

「何でしょう?」

 

「カウンセラーとしてお願いします。彼女に機会を与えて欲しいの。彼女は評価のギャップに苦しんでいた。私の力が足らずそこを彼らに だから・・・」

 

「甘いんじゃないんですか?」

 

「ッ・・・」

 

「おい、達也!言い過ぎだろ」

 

「バカが、余計な情けでケガをするのは自分だけじゃないんだぞ!」

 

達也は振り返らない。

 

「おい、達也」

 

追いかけるレオ達。

 

「全く、足止めくらい出来ないのか?」

 

校内は既に乱戦模様。見ると学校側が押されている。

 

「仕方ない。少し手伝うか」

 

だが先に仕掛けたのはレオだった。

 

「おい、レオ?」

 

「パンッツアー」

 

レオがテロリストを殴り倒す。その姿を見たエリカは、

 

「音声認識って、またレアなモノを」

 

「お兄様 今・・・展開と構成が」

 

「遂次展開だな。確か十年前に流行ったんじゃ」

 

「どんだけモノクロよ」

 

レオは相手の攻撃をCADで受け止める。

 

「うわっ、良くあんな使い方で壊れないわね」

 

「CADに硬化魔法を掛けてるな。イヤ、制服にも掛けてるのか。あれなら刺されても問題なさそうだ」

 

「成程ね」

 

「レオ、先に行くぞ」

 

「おう!此処は引き受けた」

 

図書館

 

達也達3人は遥の言う通り図書館にやって来た。

 

「・・・こっちだ」

 

達也達はまず入り口のカウンターに隠れる。

 

「本当に此処にいるのかな?もう出て行ったんじゃ」

 

「待て。今、調べる」

 

「調べるってどうやって?」

 

「心配しなくていいわよエリカ」

 

達也は眼を閉じ、図書館にいる存在を探る。そして、

 

「見つけた!」

 

「ほ、本当に?」

 

「階段の上り口に二人、上りきった処に一人、二階特別閲覧室に壬生先輩を含め四人」

 

「凄いね。達也君には待ち伏せが通じないね・・・実戦では相手にしたくないけど・・・」

 

「特別閲覧室なんかで一体何を?」

 

「恐らく大学が所有する機密文書を盗みだそうとしてるんだろ」

 

「じゃあ、急がなきゃ」

 

「おい、エリカ」

 

テロリストが気配に気付く。

 

「何者だ!」

 

「止まれ!」

 

エリカは攻撃を躱し一撃でテロリストを仕留める。

 

「ぐっあ!」

 

仲間が倒れたのに気が付いたのだろう。また一人敵が現れる。今度は剣道部員だ。

 

「此処は任せて」

 

襲い掛かる剣術部員の攻撃を受け止めたエリカが叫んだ。

 

「分かった」

 

二人は先を急ぐ。

 

校内 図書館棟 二階

 

「(魔法による差別撤廃を目指しているのにどうして、魔法の最新資料がいるの?これが私のしたかった事?)」

 

紗耶香の思考が定まらない。

 

「良し、開いた」

 

「これでこの国の最先端資料にアクセスできる。データを移すぞ。記録用キューブを用意しろ」

 

そんな時、重厚な扉が跡形も無く消えてしまう。

 

「ド、ドアが」

 

「な、何事だ?」

 

「そこまでだ」

 

ドアが消失し、記録キューブもバラバラに、 

 

「これで終わりだ」

 

「司波君!」

 

「クソッ 何しやがる!」

 

テロリストの一人が達也に銃口を向ける。しかし、達也は無傷だ。

 

「私の前で一体、誰に向かってそんなモノを向けているのかしら?」

 

見るとテロリストの腕が凍っている。

 

「う、うわーー」

 

深雪が達也への攻撃を許すはずが無い。

 

「先輩、これが現実です。誰もが等しく優遇される・・・そんなモノ有り得ない。先輩は利用されたんですよ。これが他人から与えられた耳当たりの良い理念の現実です」

 

「どうして、差別を無くそうとするのはいけないこと?貴方だって出来のいい妹と比べられて不当な侮辱を受けていたはずよ」

 

「可哀想な人ですね?」

 

「なんですって?」

 

「貴方には認めてくれる人がいないんですか?魔法だけが貴方を図る全てじゃないでしょう?お兄様は貴方を認めていましたよ。あなたの腕と努力を」

 

「そんなの上辺だけじゃない!」

 

「当たり前です」

 

「な!」

 

「知り合って間もない人に何を期待してるんです!ですが上辺も先輩自身の事。大事なのは他人にどう見られようと自分がどうあるかでしょう。結局、誰よりも先輩の事をウィードだ劣等生だと蔑んでいたのは先輩御自身なんです」

 

「壬生!話を聞くな。逃げるぞ。指輪を使え」

 

テロリストの一人が煙球を投げつけた。煙が充満し、更に彼らはアンティナイト使ってキャスト・ジャミングを行う。充満する煙と強力なジャミング波が二人を襲う。

 

「お兄様、如何いたしましょう?」

 

キャスト・ジャミングで魔法が使えないと安心したテロリストが達也に襲い掛かる。

 

「ぐっあ!」

 

だがこの程度で達也は怯まない。達也はテロリスト達を返り討ちにした。その隙を衝いて紗耶香は逃げ出す。

 

「深雪 止せ!」

 

紗耶香を拘束しょうとしたのを達也が止める。

 

「宜しいのですか?」

 

深雪は拘束系魔法から気体収束系魔法に切り替える。

 

「不十分な視界で無理をする事もない」

 

「この程度の事で私が動揺するとでも?」

 

「念のためだよ。それにエリカもいる」

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「千葉の名前は伊達じゃないさ」

 

達也と深雪を振り切った紗耶香は階段を下っていた。しかし、そこには達也の言う通りエリカがいた。

 

「あ、貴女。どうしてこんな処に?」

 

大勢の生徒が講堂にいると思っていた紗耶香は驚いた。

 

「初めまして、壬生紗耶香先輩ですよね。一年の千葉エリカです」

 

紗耶香は逃げたかった。だから傍に落ちていた武器を取ってエリカを脅す。

 

「そこを退きなさい!」

 

「残念ながら。退く訳にはいかないんですよ」

 

「後悔しても知らないわよ」

 

「これで正当防衛は成立かな?まぁ、そんな言い訳をするつもりないけど。じゃあ。、真剣勝負を始めましょうか」

 

「(いきなり出てきて何なのよこの子。早く此処から逃げたいのに・・・アレ

こ、この子。全く隙が無い!)」

 

エリカは直ぐに紗耶香の間合いに飛び込んだ。

 

「は、早い」

 

紗耶香は防御だけで精一杯といった処だ。また反撃しても即座に距離を取られる。紗耶香はこの戦法を知っていた。

 

「自己加速術式!渡辺先輩と同じ?」 

 

エリカは再度、突っ込もうとしていたが、

 

「アレは達也君のと違って『アンティナイト』を使った本物の『キャスト・ジャミング』?」

 

今度は紗耶香の反撃が始まる。だがエリカも負ける訳にはいかない。激しい剣戟の奥収。その最中、紗耶香の得物の先端が折れる。

 

「次の得物を拾いなさい! そして貴女の全力を見せなさい。貴女を縛るあのバカの幻影ごと打ち砕いてあげる」

 

紗耶香は指輪を外す。何かに頼りたく無かった。

 

「私はこんなモノに頼らない!私は自分の力でその技を破る。私は知ってる。その技 それは渡辺先輩と同じモノ」

 

「フフッ。貴女はまだ本物を知らない。教えてあげる。本物と偽物の違いを」

 

勝負は一瞬だった。紗耶香は反撃できなかった。

 

「御免なさい。骨が折れてるかも」

 

「ッ・・・ひびは入ってるわね。でもいいわ。加減できなかったんでしょう?」

 

「先輩は誇ってもいいと思いますよ。渡辺摩利が出来なかった。イヤ、これからも一生出来ない。千葉家の娘に本気を出させたんだから」

 

「そっか。貴女、千葉の人なんだ」

 

「そうですよ。因みに渡辺摩利はウチの門下生 剣の腕だけなら私や貴女の方がずっと上」

 

「千葉家の人に認められるなら私もまだまだ捨てたもんじゃないわね」

 

そこで紗耶香は倒れた。

 

「おい、エリカ」

 

「あ!2人共遅いよ」

 

「すまん。それで応援は呼んだか」

 

「まだだよ。それより先輩を運んでよ達也君」

 

「なんで俺が?」

 

「いいじゃない。合法的に年頃の女の子に触れられるんだよ」

 

「そんな事で喜ぶ変態じゃない」

 

「達也君って女の子に興味ない?もしかしてそっちの人?」

 

「そっち?」

 

「だから・・・」

 

「違う!!」

 

達也が悲痛な叫びを上げる。深雪は笑っていた。

 

 

一方 第一高校 校門前

 

司 甲は作戦失敗を知り逃げようとしていた。

 

「おい、どこ行くんだよ」

 

「た、辰巳?」

 

「帰るのか?」

 

「こんな騒ぎだ。帰った方が安全だろ」

 

「まぁ、それもそうだな。けどよ、悪りいけど戻ってくんないか?」

 

「どうして?」

 

「全校生徒が無事か確かめる為に点呼を取らなきゃいけないからな」

 

「この状況で校内に留まるのは危ないだろ」

 

「安心しろよ。お仲間は全員捕らえたからな」

 

「仲間?」

 

「ネタは上がってんだよ。お前が奴等を手引きしたことは」

 

「なっ!」

 

「御同行、願います」

 

「ちっ、沢木まで」

 

挟み撃ちにされていた。選んだ逃げ道は沢木の方だ。ただ何の考えも持たずに突っ込んだ訳ではない。キャスト・ジャミングを使い逃げようとしたが。

 

「ぐっあ?」

 

「バーカ、沢木を嘗め過ぎだ。余計な事はするもんじゃねえな」

 

取り敢えず校内の騒ぎは落ち着いた。外では警察とマスコミの押し問答が行われている。

 

校内 保健室

 

紗耶香は既に目を覚まし事の始まりを話していた。

 

「司主将は一年以上前から魔法による差別撤廃を訴えていました。私も思う処があって参加したんだと思います」

 

「何かあったんですか」

 

「去年の剣術部の騒ぎで渡辺先輩の剣技を見てご指導でもって思ったんだけど

あしらわれて。お前じゃ相手にならないから無駄だって自分に見合うレベルの奴を見つけろって。それってきっと私が二科生だから」

 

「うわっ、最低。良くその程度で天狗になれるわね。今もそうだけど去年は今よりも弱かっただろうに。あーあ、こんな人がウチの門下生なんて。ウチの評価が下がっちゃうんですけど。貴女、ウチに恨みでもあるんですか?」

 

「エリカ、そう云うのは後にしろ」

 

「ちょっと待て、私も去年の事は覚えている。だが壬生の言っている事は逆だ!」

 

「え?」

 

「お前じゃ私の相手にならないじゃなくて、私じゃお前の相手にはならないだ!」

 

「どう云う事、摩利?」

 

「私はあの時『私の腕じゃお前の相手は務まらない。だから、お前の腕に見合う奴と稽古しろ』と言ったはずだ。まぁ、去年の一校に男子を含めて壬生の相手を出来るような奴はいたかどうか疑問だが。だから相手が見つからない様ならエリカを紹介しようとも思った。だがその考えを持ったのはその後だったし、その後は関わりがなかったからそのままになっていたが」

 

「え? じゃあ壬生さんが強すぎて自分じゃ相手にならないから断ったの?」

 

「私だって勝ち目のない戦いを自分から挑むほどバカじゃないし相手が自分より強いかは直ぐに解る」

 

「じゃあ、私は下らない勘違いで一年も無駄にしたんだね。バカみたい」

 

「無駄じゃないでしょ?理由はどうあれ、先輩は強くなったんですから」

 

その言葉で紗耶香の感情のダムが決壊する。彼女はエリカの肩を借りて泣いた。

 

「さて、これからどうしましょう?」

 

「どう、と言われても壬生さんは警察に任せる事になると思うけど」

 

「覚悟はできてます」

 

「先輩は被害者でしょう?分かってて、家裁送りにするんですか?」

 

「達也には何か考えでもあるのか?」

 

「ああ、簡単なのが」

 

「どんな?」

 

「奴等を片付けるれば、先輩を家裁送りにする事くらいは免れる」

 

「それって、彼らと一戦交えるって事?」

 

「違いますよ。いい機会ですから潰すんです」

 

「危険だ。学生のやる事じゃない」

 

「私も反対よ。学外の事は警察に任せるべきよ」

 

「もしかして、これで終わり、だなんて思ってるんですか?本当に揃いも揃って甘ですね。こう云うのは徹底的に潰すのもです」

 

「お前の言いたい事は分かる。だがな司波。相手はテロリストだ。生徒の命を掛けるものじゃない」

 

「勿論。これは俺の個人的意見です」

 

「・・・?司波。お前一人で行く気か?」

 

「そうしたいんですけど」

 

「お供します」

 

「あたしも行くわ」

 

「俺もいくぜ!」

 

「ちょっと待って司波君!私の為なんかに行かないで私は罰を受けるような事をしたんだから」

 

「残念ながら俺は他人の為に何かする程優しくできてません。さっきも言った通り、奴らはこれで終わりじゃない。時間をやれば、また同じ様な事をしてくる。今度は規模もバカにならない。あの程度の屑に二度も関わるのはごめんです」

 

「それに先輩が罰を受けると言うのなら、彼らも罰を受けるべきなんです!もっとも彼らが受けるべき罰は司法モノとは限りませんが」

 

達也と深雪の言葉の威圧に反論する者はいない。

 

「他人の生活区間に土足で入り込んで只で済むわけないでしょう。俺と深雪の今の生活に邪魔な存在と分かった以上、このままなんて選択支はないんです」

 

「しかし、お兄様 私達は彼らの本拠地を知りません。」

 

「あいつ等も同じ場所にいる程バカじゃないだろうから、早く叩かないと逃げられちゃうよ!」

 

「お兄様。先生に聞いてみては」

 

「必要ない。場所は分かってる」

 

「どこ?」

 

「俺が知ってる訳じゃないが」

 

「どう云う事だ」

 

「だから、知ってる人に聴けばいい」

 

達也は保健室のドアを勢い良く開ける。そこには、

 

「小野先生?」

 

「あ、アッハハー。九重先生の弟子から隠れようなんて甘かったかー」

 

「そうやって嘘ばかり付くと自分の本心も解らなくなりますよ」

 

「ご忠告有難う」

 

「それで、先生」

 

「じゃあ、地図を出して」

 

達也の地図に表示されたのは、

 

「放棄された工場か」

 

「奴らにはお似合ね」

 

「だが場所からして車が欲しい処だな」

 

「車はウチで用意しよう」

 

「え!十文字君も行くつもり?」

 

「十師族の者として当然だ。それ以上に一校生として我等を巻き込んだ事を見過ごせん。後輩だけに任せる訳にもいかんしな」

 

「じゃあ、私も」

 

「七草!お前はダメだ」

 

「そうだ!この状況で会長の不在はありえんだろう」

 

「分ったわよ。でも摩利も駄目よ」

 

「何!なぜだ?」

 

「風紀委員長が居なくてどうするの?私一人じゃ廻らないかもしれないし」

 

「なっ、わかったよ。私も残ろう」

 

車は意外に早く調達できた。

 

「会頭。俺も連れて行って下さい」

 

駐車場に一早く着いたのは桐原。

 

「なぜだ?」

 

「一高生として見過ごせないからです」

 

「駄目だ。そんな事で連れていけん」

 

「会頭!」

 

「そんな事で命を懸けるような事をするな」

 

「あいつ等は壬生の剣を汚しました。アイツの剣は俺のと違って純粋に綺麗だったのに、入学以来アイツの剣が汚れていくのが気に喰わなかった。」

 

「まさか。あの騒ぎはその為に?」

 

「アイツに気付かせたくて・・・でもどうしていいか分からずあんな事に」

 

「お前は過ちと言うが壬生の意志じゃ」

 

「違う!ッ・・・イエ、違います。そんな道に行く必要はないんです。アイツがやってるの剣道であって剣術じゃない。人を斬るんじゃないんだから綺麗なままで良かったんです。もし汚れた理由があいつ等にあるなら責任を取らせたい。此れが俺の我儘なのは分かってます。それでも、行きたいんです。お願いします会頭」

 

「準備はできたかお前達」

 

「ええ、じゃあ早速いきましょうか? ほら、桐原先輩も準備ができてるなら早くしてくださいよ」

 

「し、司波?」

 

「急げ、桐原。出発できん」

 

「有難う司波。有難う御座います。会頭」

 

こうして新たに一人仲間を加え現場に急いだ。

 




毎度 長々と書いて御免なさい
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