九校戦 九日目 深雪は本戦『ミラージ・バット』で優勝し 一校の総合優勝を決める。 一方の達也は九校戦期間中に何度も一校選手達に妨害工作を行っていた『無頭竜』が深雪にまで手をだそうとしたので遂に彼等の掃討に乗り出す。
横浜中華街 某ホテルの一室
その部屋にいる者達の動きは慌ただしかった。
「帳簿は全て持ち出せ」
「ここはもうダメだ」
「まさか ジェネレータ-が取り押さえられるとは」
「なぜ あのタイミングで邪魔が入る」
「早くジェネレーターを回収しなければ・・・まずいぞ」
「そんな事より例の餓鬼の始末の方が先だろ」
「あの餓鬼の所為で 今や我々は組織に追われる身だ」
「司波達也 結局 あの餓鬼は何者なんだ」
「ここ数日調べても碌なデータが出てこなかった」
「係累はおろか家族構成すら不明だ」
「そんな事この国で普通ならあり得ない事だ」
「全てのデータが意図的に改ざんされているんだろう」
「そんな事が出来るのは相当な権力者だけだ」
「しかし あんな餓鬼が いったい 誰と繋がっているんだ」
「誰かは知らんが 軍の関係者だろ 出なければ タイミングが良すぎる」
横浜ベイヒルズタワー屋上
彼等が慌ただしく動いている頃 達也は彼等をじっと観察していた。
「部屋に居るのは全部で九人 その内の四人が情報強化で部屋を守ってるみたいですけど・・・それにしても 随分 慌ててますね」
「逃げ出そうとしてるんじゃないかしら」
「あぁ そうだ」
「どうしたの? 達也君」
「結局 アイツ等の目的は何だったんですか?」
「あぁ 私が掴んだ情報では・・・」
響子は達也に工作員から得た情報を話始める。
「彼等は九校戦を利用し賭けをして儲けようとしたらしいわ。それで優勝候補の一校に掛け金が集中したから 一校が優勝出来ないように妨害工作をしていた。一校以外が優勝してくれれば儲かるのは彼等の方だからね。でも達也君の所為で一校が予想以上に得点を伸ばした。そして一校の優勝が決まりそうになるとジェネレーターを使い大会自体を中止に追い込もうとした」
「はぁ~そんな事の為に・・・」
達也は一呼吸置いて シルバー・ホーンを中華街のとあるホテルの一室に向ける
「響子さん そっちの準備は済みましたか?」
「えぇ 何時 始めてくれても構わないわ」
「さて それじゃあ 始めますか」
達也はシルバー・ホーンの引き金を引く
同時刻 横浜中華街 とあるホテルの一室
『無頭竜』の幹部達は身支度を急いで行っていた。しかし 突然 ジェネレーターの一体が苦しみだす。
「どうした 十五号」
突然の異変に幹部の一人が振り向く。だが苦しむジェネレータより先に彼の目の飛び込んだ光景は先ほどまでなかったはずの壁に空いた大きな穴。
「いったい いつの間に?」
驚きはそれで終わらない。 苦しんでいたジェネレーターが消えた。
「いったい 何が・・・」
幹部の一人がそう呟いたその時 部屋の回線に着信を知らせる音が響く。
「幹部専用回線に着信?」
「hello No Head Dragon 東日本支部の諸君」
聞こえて来たのは若い男の声。
「だ 誰だ! 貴様」
「今から消えるお前達に教える義理はないと思うが・・・まぁ アレだ 富士では世話になったな 付いてはその返礼に来た」
その声と共にまたジェネレーターが消え それに伴い部屋全体に掛けられていた情報強化が無効化される。
「何処だ! 何処からだ 14号」
恐らく近くにいるであろう襲撃者を探させる。そして14号が指示した方向に幹部の一人がライフルを構え照準スコープの倍率を最大に上げる そして 何とか襲撃者らしき人物を発見する
スコープに襲撃者の笑った表情が見たとき スコープが砕け目を負傷した。
「14号 16号 ヤレ」
「不可能です」
「届きません」
「口答えするな」
別の幹部がジェネレーターを叱咤したが、返答は回線から聞こえて来た。
「やらせると思うか?」
その声と同時に新たにジェネレーターが消える。
「道具に命令するより自分でした方が早いんじゃないか?」
幹部の一人が外に助けを求めようとするが回線は開かない。
「無駄だ 今その部屋から通信出来るのは俺だけだ」
「バカな! いったい どうやって?」
発言者はその答えを聞く事無く消える。
「どうやって・・・消えるお前達が知る必要はない」
スコープで目が傷ついた幹部が部屋を抜け出そうとするが、彼が部屋を抜け出す事は無かった。
「逃げられるなんて思うなよ」
次々と消えていく仲間。今すぐにでも逃げ出したいが自分達の命が相手に握られてる以上残った彼等の取れる行動は相手の気まぐれに賭けるイチかバチかの交渉。
「待て イヤ 待ってくれ。我々はこれ以上九校戦に手出しするつもりはない」
だがこの程度の事で襲撃者は納得はしていない様だ。
「フフッ 九校戦は明日で終わりだろ」
「九校戦だけではない我々『無頭竜』は日本から手を引く」
「お前達が帰っても別の幹部が来るんだろ」
「そんな事はない」
「なぜ お前にそんな事が言える・・・『ダグラス=黄』」
「ッ・・・ わ 私はボスの側近だ ボスも私の言葉は無視できない」
「側近だと言うのならボスの顔は見た事あるな」
「私は拝謁を許されている」
「ボスの名は何と言う?」
「そ それは・・・」
「俺は命令してるんだ」
そしてまた一人、幹部が消える。
「ジェームズ!?」
「何だ 今のが『ジェームス=朱』か 国際警察には悪い事したな・・・イヤ どの道 消されるなら誰が消しても問題ないよな さぁ 早く答えろ」
「わ 分かった 答える ボスの名は リチャード=孫だ」
「表の名は」
「孫 公明」
その後も 彼はリチャード=孫の情報を提供させられた。
「これが私の知っている情報全てだ」
「ご苦労だったな」
「で では 信じてくれるのか?」
「あぁ お前は間違いなく リチャード=孫の側近らしい」
助かった・・・そう思った『ダグラス=黄』だったが、
「『グレゴリー!?』」
また一人幹部が消され 遂に彼は一人になった。
理不尽だ 自分達はいったい何に手を出したのかと思ったがもう遅い。
「な 何故だ! わ 我々は誰も殺さなかったではないか?」
「フフッ 殺さなかったじゃなくて 殺せなかったの間違いだろ」
「ぐっ・・・」
「それに最初からお前等が何人殺そうが関係無いんだよ。お前達は俺の逆鱗に触れた。だから消される。理不尽だ・・・なんて思うなよ。常に消される側の理由なんて理不尽な物ばかりだろ。少し前まで消す側の人間だったお前なら分かるよな」
そしてまた、この世界から一つの存在が消える。