九校戦 最終日 本戦『モノリス・コード』決勝は渓谷ステージで行われる事になった
対戦校は一高と三高 観客は見ごたえある激戦を望んでいた。しかし 始まって見れば戦況は圧倒的に一校の・・・イヤ 克人の独壇場。三校選手は地形を生かした攻撃を仕掛けるが克人には効いていない。
「決勝戦だと云うのに此処まで差があるとは」
「十文字先輩が相手ですから仕方ないのでは」
「まぁ それは・・・」
「他に何か可笑しな処でもあるのですか?」
「準決勝までとは明らかに戦い方が違うから」
「・・・それはそうですけど」
一校の戦い方は 基本的に服部がオフェンス 克人が遊撃 綱太郎がディフェンス
先程の準決勝では服部が敵陣に責め 克人は服部を得意の障壁魔法で援護 一方の綱太郎はもしもの為に自陣の『モノリス』の前に立ち敵の攻撃に備えていた。処が現在行われている決勝戦では克人だけが敵陣に攻め込んでいる。服部は綱太郎と共に自陣の『モノリス』の前にいる。
「本来のスタイルと違う事をしていったい何になるんだ?」
「でも流石に凄いです 十文字家の『ファランクス』」
『ファランクス』 『鉄壁』の異名を持つ 十文字家が得意とする魔法
4系統8種 全ての系統種類を不規則な順番で切り替えながら絶え間なく紡ぎ出し防壁を幾重にも作り出す防御魔法。
「脅威なのは絶え間なく障壁を展開し続ける持続力 俺の分解とは相性が悪い。一つ壁を分解してもまた直ぐに次の壁が出てくるし」
「『術式解体』は兎も角 お兄様には『トライデント』もありますし『質量爆散(マテリアル・バースト)』には耐えられないと思いますけど?」
「別に先輩を相手に『分解』がどこまで通用するのか試すつもりはないよ」
「ですが先輩がご協力してくれれば 叔母様達との戦いも有利になると思うんですけど」
「『ファランクス』では叔母上の魔法は防げないよ。アレはどんな魔法を持ってしても防げない。だからこそ 叔母上は世界最強魔法師の一人に数えられている。『夜の女王』の名も伊達じゃない」
「でも 一撃目を躱す壁くらいにはなるのでは?」
「・・・お前なぁ」
克人が障壁を出したまま 自らに移動魔法を掛け 三校選手にぶつかる 相手選手はその衝撃に耐えられず次々と跳ね飛ばされる。そして最後の選手が克人に倒おされ一校の『モノリス・コード』優勝が決まる
全ての競技が終わり 閉会式が始まる まず最初に表彰式
次々に各競技の一位~三位までの名前が呼ばれ表彰台に上がり メダルが授与される
そこには深雪は勿論の事 達也の姿もある。メダルを渡すのは運営委員
各競技の表彰が終わると次は男女別での最優秀選手の表彰が行われた。選ばれたのは深雪と達也
本来 一般出身者が選ばれる事は稀な事だが 十師族の一条を倒し 優れたCAD調整技術を持つ達也と一年生にして本戦『ミラージ・バット』で飛行魔法を使いこなし優勝 そして『氷炎地獄』『ニブル・ヘイム』を成功させた深雪が選ばれるのは当然だった
二人の首にメダルを掛けるのは運営委員ではなく烈だ 首にメダルを掛けると 声を掛けられる
「真夜に宜しく」
不意な事であったが辛うじて動揺しなかった達也 だがそれでも一瞬 動きが止まってしまう。深雪も何とか平静を保っていたが何処か不自然さがあった 只 他の選手達に見えていないのが救いだ。
その後 優勝旗が一校代表の克人に渡されて閉会式は終了した。
閉会式が終われば後は後夜祭。だがそれまで少し時間がある。深雪は真由美から達也を必ず後夜祭に出席させる様に頼まれていた事を理由に達也の部屋を訪れていた。
「申し訳ありません お兄様 あの様な お見苦しい姿を」
「老師にバレてた件か?仕方ないさ 流石にアレは俺も驚いた」
「ですが 老師にバレていると云う事は既に他の家にもバレているのでは」
「それはないだろ 叔母上も何も言って来なかった。 それに十師族は皆 同じじゃない。本来は対等な立場ではあるが・・・十師族に元々 序列はない。 けど それでも序列が付くのは家同士で差があるからだ。だから九島が知っているからといって他が知っているとは限らない。まぁ 一番最初にバレるの七草と思っていたが・・・でも自分から俺達の事を知っていると言ってきたんだから そこまで心配しなくてもいいと思うぞ」
会場に着いた二人は大人に囲まれていた。彼らにとって九校戦で見定めた将来有望な人材をスカウトできる唯一の時間 今大会で注目された深雪と達也を手に入れようと皆が必死だった。
深雪と達也は後夜祭が始まるまで「まだ 将来の事は決めていません」と言い続けた。
深雪は終始不機嫌だった。理由は彼等が達也を商品としてしか見ていないから。
そして解放された後はダンスパーティー。初日とは空気が違う。毎年 少なからずカップルが誕生する事が分かっているからである。
参加者は意中の相手を誘おうと積極的に動いていた。一条将輝もそんな一人。彼の意中の相手の周りには人垣できており ライバルは多い。将輝は彼女を見つけた。ついでに隣に逢いたくない奴も見つけた。そして相変わらず彼女は腕を組んで寄り添っていた 実の兄に。
「二日ぶり だな一条」
一瞬で気まずい雰囲気になる だが達也は気にしない。
「耳は大丈夫か?」
「心配はいらんし される必要もない」
「なぁ 一条」
「な 何だ?」
「暇なら深雪の相手でもしてくれないか?」
「へ?」
「疲れたんだよ 流石にこれ以上は妹の面倒まで見きれない」
達也はその場を離れる。
「もう! お兄様ったら・・・はぁ~どうしますか? 一条さん」
「なら 俺と踊っていただけますか?」
「フフッ 私で良ければ喜んで」
二人はその場を後にする その頃 本当に疲れていたので休もうとしていた達也にも声が掛かる。
「あの 達也さん」
「どうした ほのか」
ほのかはダンス会場を見ている。
「お客様 こう云う時は男性の方からリードいたしませんと」
気が付くとエリカがいた。
「・・・ほのか 俺と踊ってくれないか?」
「はい! 喜んで」
そしてほのかと踊り終えるとそれから次々に誘いが来た。雫 エイミィ 真由美 等 勿論、他校生からのお誘いもあった。
しばらくして達也と深雪は壁際で休んでいた
「お兄様 お飲み物は?」
「じゃあ 頼めるか?」
「此処にあるぞ」
そう言って グラスを差し出したのは 克人だった。
「・・・有難うございます」
「随分 お疲れの様だな」
「まぁ 経験がないもので」
気まずいと思った 二人だが 何の理由も無しに離れる事もできない
「お前達に話がある」
先に動いたのは克人の方だった 彼は防音壁を展開した。イヤな予感がする。しかし、逃げられない。
「お前達は十師族の一員だな?」
「違いますよ。 俺達は一般です」
「なら 十師族の一人として言わせてもらう お前達は十師族になるべきだ」
克人の目線の先には 真由美
「そうだな 七草とかどうだ?」
「・・・は?」
達也は克人が何を言ってるのか分からなかった 一方 理解した深雪はキレた。
「お兄様の結婚相手を勝手に決めないでください! それに私達をつまらない事に巻き込むのは止めて下さい」
「おい 深雪」
他の参加者は深雪がキレているのが見えていたが話の内容が分からないので深雪がキレている理由が分からない 。
「・・・だが十師族の一人を倒した事はお前達が考えている程 軽くないぞ」
克人はそう言って障壁を解き二人から離れた。気が付けばダンスパーティーも終了時刻が迫っていた。
「お兄様 ラストダンスは私と踊っていただけませんか?」
「・・・何もラストダンスを兄妹で踊らなくても」
「お兄様はまだ 他の女性と踊り足りないんですね?」
「・・・イエ 踊らさせていただきます」
これ以上 怒らせたらマズイ そう思って 達也は深雪の手を取った。
アニメのダンスパーティーでは深雪は一度も将輝を見てませんね