九校戦が終わり本格的な夏休み。その日の夜、司波家リビングには旅行用の鞄が置いてあった。
「まぁ 明日の準備としてはこれくらいだよな」
「そうですね」
会話の流れから二人は明日から旅行に出かける様だ。そしてこの旅行は極最近決定したもの。だがこの旅行の発案者は達也で無ければ深雪でもない。発案者は雫である。
話は数日前 その日の夜 深雪は雫とほのかとテレビ電話でお喋りしていた。そして その時の雫からの突然の提案がこの旅行の発端である。
「海にいかない?」
「雫 それって もしかして?」
「うん」
「・・・? もしかして?」
「あぁ 深雪は知らないよね」
雫と長い付き合いのほのかは 雫が何を言いたいのか 直ぐに理解した様だが、まだ知り合って間もない深雪には雫の「海に行かない?」の言葉だけで,雫が何を言いたいのかは完全に理解は出来ない。
「ウチの別荘に深雪や達也さんを招待しようと思って」
「!? 雫 貴女の家って プライベート・ビーチを持っているの?」
「うん」
深雪は改めて雫がお嬢様だと実感した。
「え~っと 行くのは構わないけど それで その別荘に行くのは何時にするの?」
「まだ 決めてない。二人の予定も聞いてないし」
「私の方はいつでも大丈夫だけど お兄様の方は・・・」
「御免ね 急に」
「何も謝ることないと思うけど」
「二人を別荘に誘うのは私が二人と遊びたいんじゃなくて 本当はお父さんに合わせる為なの 最近 新しくできた友達に合わせろって 五月蠅くて」
雫の父が会話に出た瞬間ほのかが急に困ったような顔をした。
「・・・そっか 叔父様も来るんだね」
「大丈夫だよ 最近は忙しくしてるから いるのは最初の一時間くらいだから」
ほのかは雫の父 潮が若干 苦手である。 潮はほのかを雫と同じ様に可愛がってくれている。その為 毎回 会う度に少なくない額のお子遣いをくれる。しかし、それがほのかにとっては憂鬱なのだ。
「それで実は一つ 深雪に頼みたい事があるんだけど」
「何かしら?」
「ウチの別荘には深雪と達也さんだけじゃなくて エリカと美月 それに西城君と吉田君も誘いたいんだけど 私達 誰の連絡先も知らないんだよね。九校戦の時は 結局 聞けなかったから 深雪に連絡して貰いたいんだけど」
「・・・そんなことで 遠慮しないで 雫。 エリカと美月には私から連絡しておくから。 ただ 西城君と吉田君の連絡先は私も知らないから 後でお兄様に連絡してもらう事になるわ」
「分かった。有難う 深雪」
その後 三人は他愛ない話で盛り上がった
翌日 司波家 リビング
「・・・そんなことを話していたのか」
「はい それで どうしましょう」
「そうだな いつもの訓練は2~3日休んでも 文句は言われないだろうが FLTの方は俺が今抜けたら牛山さん達が困るだろう」
達也は普通の高校生ではない かなり忙しい人である。特に夏休みの様な長期休暇は予定が詰まっている。特に今年の夏休みは九校戦でシルバーの飛行魔法を使用しその実用性が確認された事で飛行魔法のデバイスの発注が増えてきている。
達也はスケジュールを確認し始めた
「・・・来週の金・土・日が空いてるかな? それ以降は厳しいかな」
「では 雫にその日程で大丈夫か聞いておきます」
「それで海に行くメンバーは俺達と雫とほのかの四人なのか?」
「雫はエリカや美月 それに西城君と吉田君なんかも誘いたい様ですが 連絡先を効いてないそうで・・・それでエリカと美月には私から連絡するように雫には言っておきましたが お手数ではありますが私は西城君と吉田君の連絡先を知らないのでお兄様には二人に連絡を取って貰いたいのですが・・・」
「ふ~ん そうか。分かったよ。レオと幹比古には俺から連絡しておこう」
「ではエリカと美月には私が」
それから雫とほのかに再度連絡を取る それから美月 エリカ 幹比古 レオにも連絡を取った。不思議な事に達也の指定した予定日に都合の悪いメンバーがいなかった。
そんなこともありつつ深雪達は明日から雫の別荘に行く事に。
そして雫が指定した集合場所はなぜかマリーナ てっきり飛行機で行くものだと勘違いしていた達也。指定されたマリーナにはいくつかのクルーザーが停泊していたが ひと目見て他を圧倒するような立派なクルーザーが一つ。
「うわ~ 凄い」
「本当に立派だな」
目の前の光景にはエリカは勿論 普段 ほとんどの事に感想を持たない達也も驚きの声を上げる。クルーザーに驚いていると達也は見た目からして船長らしき人物に声を掛けられる
「君が司波達也君だね」
「!! 貴方は・・・」
「初めまして 私は北山潮だよ」
「初めまして 司波達也です 今日は宜しくお願いします」
「此方こそ宜しく」
声を掛けたのは船長・・・ではなく雫の父 北山潮だった。幸い 達也は潮の顔を知っていたので 驚いたのは一瞬のことだが 握手を求めて来た 潮に対して 失礼のない様に浅く握った達也だが 対する潮の方はガッシリと握られる。
「技術だけじゃない・・・かといって 只、賢いだけの青年ではなさそうだ。頼りがいのありそうな風貌でもありそうだ。 良かった。娘にも人を視る眼がある様だ」
(この人が 雫の父 北山 潮か・・・ やはり 実際に見ると印象が違って見える)
そんな事を思いながら 達也は深雪を呼んだ。
「深雪!コッチに」
いきなり達也に呼ばれた深雪は 一瞬 何事か思ったが 達也の眼の前の人物を見て なんとなく状況を理解した。
「この方が雫の親父さんの北山潮さんだ」
「初めまして 司波達也の妹 司波深雪と申します。本日はお招きいただき有難うございます」
「そんに堅くならないでくれ 私も 君達に逢えて嬉しいよ」
その後 潮の目線は 深雪達の後方にいた エリカ 美月 レオ 幹比古に
「おぉ 君達も 娘の新しい友人だね これからも どうか 娘を宜しく まぁ 私に構わず楽しんでください」
そう言うと 潮は去って行った どうやら ここには 仕事で忙しい中 時間を無理やり空けて来たようだ
「じゃあ そろそろ 出発しょうか? 黒沢さん お願い」
「畏まりました」
どうやら クルーザーを運転するのは その黒沢さんの様だ。
黒沢が全員の乗船を確認すると操舵室に入り その後直ぐにクルーザーが岸を離れた。