達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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書く暇がない


夏休み編 夏の休日 其のニ

雫の提案により別荘に向かった深雪達は途中、嵐に会う事もなく目的地の小笠原諸島 媒島に着く。一行は到着して直ぐにビーチへ。 水着に着替え、各々、自由な時間を過ごす。

 

レオと幹比古は競泳? 女子グループは波打ち際で水遊び 一方の達也は一人ビーチパラソルの下 読書に勤しんでいた。

 

「お~い 達也く~ん 泳がないの~?」

 

「お兄様~ 冷たくて とても 気持ちいいですよ~」

 

中々 パラソルの下から動かない達也にエリカと深雪から声が掛かる。そしていつの間にか近づいていた この旅行の提案者の雫からも声が掛かる。

 

「達也さん もしかして 迷惑だった?」

 

「イヤ そんな事はないよ」

 

「でも・・・」

 

「こんな過ごし方も間違っていないと思うが」

 

雫と話していると深雪達も集まって来た。

 

「ですが お兄様 折角の海ですし」

 

「そうですよ 達也さん パラソルの下にいるだけじゃ勿体無いです」

 

「あ!分かった!」

 

「どうしたのよ エリカ」

 

「達也君 泳げないんでしょ?」

 

「達也さん カナヅチなの?」

 

「イヤ それはない」

 

「え~ホントかな~」

 

疑う様なそぶりを見せるエリカ。 だが、その行動は彼女なりに達也を連れ出そうとしているのだろう。

 

「分かったよ 泳げばいいんだな」

 

「そうだよ。折角 海に来てるんだから泳がなきゃ勿体なー」

 

達也はエリカに乗せられ、着ていたパーカーを脱ぐ。そしてそれと同時にその場の空気が変わった。

 

「あ!・・・」

 

理由には直ぐに気が付いた。しかし 気が付いた処で既に手遅れだ。

 

「達也君 それって・・・」

 

一番最初に口を開いたのはエリカだが、さすがのエリカにも緊張が滲んでいる。達也はエリカの「それ」が何を意味するのか理解した。そして達也の周りにいる女子グループは「それ」に釘づけだ。

 

パーカーの下には鍛え上げられた肉体が隠されていた。だがそれだけで場の空気が変わる様なことはあり得ない 問題は鍛え上げられた肉体に付いた、不必要で尋常な数では無い 無数の傷跡 切り傷 刺し傷 そして所々に火傷の痕。

 

「・・・スマン 見ていて気持ちの良いものじゃないな」

 

達也は急いで脱ぎ捨てたばかりのパーカーを拾おうとするが、

 

「ん? 何処に行った? ・・・あ!」

 

達也のパーカーは既に深雪の胸の中に納まっていた。いくら妹でも女性の胸に手を伸ばす訳にもいかない。パーカーを拾おうとした左手が停止する。だがその手は本人の意志に関係なく強引に動かされた。深雪が左腕を抱き寄せたのだ。

 

「大丈夫です。お兄様。この傷痕の一つ一つはお兄様が強くあろうとした努力の証であり、決して見苦しい物ではありません」

 

その言葉の直後、今度は右腕にも柔らかな衝撃が走る。達也の右腕に抱き着いたのはほのか。

 

「わ、私も気にしません」

 

ほのかなりの場の空気を変える為であろう行動に驚く。 美月と雫。

 

「うわっ!ほのかさん 大胆」

 

「(ほのか 良くやった)」

 

そしてほのかの大胆な行動を見てエリカも緊張がほぐれた様だ。

 

「御免ね 達也君 変な態度取っちゃって」

 

「イヤ 仕方ないだろ 気にするな」

 

「そうは言っても・・・あ!お詫びに私のも見せてあげようか?」

 

「ちょ! エリカちゃん 何を言ってるんですか!」

 

エリカの発言に隣の美月は硬直してしまう。

 

「イヤ ホントに いいから」

 

「あぁ~でも 一度見たから新鮮味がないか?」

 

「え!!」

 

「ちょ!どう云うことですか?お兄様?」

 

エリカの発言に周囲がざわつく。

 

「オイ! エリカ 頼むから 誤解を与えるようなことは・・・」

 

「誤解じゃないでしょ。達也君  見たじゃない」

 

「イヤ だから アレは事故だろ・・・」

 

「見たこと自体は否定なされないんですね お兄様」

 

「あ! イヤ 違うんだ 深雪」

 

その後 達也の必死の弁明が続いた。

 

それからしばらく、ビーチパラソルの下で休憩中の美月以外の女子グループは沖に出てボートで遊び、レオと幹比古は相変わらず一心不乱に泳ぎ続けている。そして達也は海に背を預けて静かに漂っていた。しかしどんな状態であっても達也が気を抜く事はない。危険性の少ない場所でも何が起こるか分からない。だからもしもの為に達也は常に深雪達の位置を把握していた。

 

「きゃ~」

 

突如響いた悲鳴。この悲鳴を聞いた達也は直ぐに救出に動く。達也は救出に向かいながら、この悲鳴が深雪でなくほのかであること、そして悲鳴の原因がボートの転覆である事を即座に理解し、またほのかが泳ぎが苦手である事も思い出していた。

 

達也は救出に向かう際 泳がず 水面を走ることを選んだ。

 

表面張力増幅魔法「水蜘蛛」を お得意の技術「フラッシュ・キャスト」で連続発動した。達也が現場に到着した時にはエリカが雫をボートに押し戻していた。

 

「大丈夫か?」

 

「達也さん ほのかをお願い」

 

深雪も無事の様だ。後はほのかをボートに乗せるだけ。達也は直ぐに行動に移る。しかし なぜかほのかは激しく抵抗し異常な程ボートに乗る事を拒んだ。

 

「ちょ! ちょっと待って下さい」

 

だがパニック状態のほのかをこのままにするのはマズイと思った達也は無理やり ほのかを押し上げ、雫のサポートでほのかをボートに乗せる事に成功したのだが・・・それと同時にほのかが激しく抵抗しボートに乗る事を拒む理由を思い知らされた。

 

「あ!」

 

「え!」

 

達也と雫が同時に言葉に詰まる。助けられたほのかの体は達也の正面を向いている。一件、ほのかには何の変化も無い様に見えたが、ほのかの水着のトップが思いっきり捲れている。元々 ほのかが来ていたのは泳ぎ重視でなくファッション重視の水着だった。ほのかは海に落ちた時に自分の水着が捲れていた事に気が付いたのだろう。だからあれだけボートに乗るのを拒んだのだ・・・と理解した達也だが既に遅い。

 

「きゃ~」

 

もう一度 ほのかの悲鳴が海に木霊する。

 

「(オイオイ 嘘だろ・・・)」

 

達也は現実から逃げる様に海に沈んだ。

 

その後 ほのかは砂浜で本格的に泣き出してしまう。休憩中の美月はほのかが泣いている事情を知らず困惑していた。

 

「ヒック、ヒック、グズン」

 

「あの ほのかさん 大丈夫ですか?」

 

「だから 待ってて言ったのに・・・」

 

「イヤ・・・達也君は助けてくれたんだし・・・」

 

泣きじゃくる今のほのかには エリカの援護も効かない様だ。

 

「ほのか 達也さんが悪くないって分かってるでしょ」

 

何時までも泣き止まないほのかを見て雫が耳打ちする。

 

「予定とは違うけど これもチャンスだよ?」

 

「?」

 

聴力を鍛えている達也もこの時の二人の会話は聞こえなかった。

 

「達也さん 本当に悪かったと思ってますか?」

 

「はい 本当に申し訳ない」

 

「じゃあ・・・・今日一日 私の言う事を聞いて下さい」

 

「え?」

 

「それで許してあげます」

 

「それでほのかが許してくれるなら」

 

この様な状況での経験の少ない達也には頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




気が付いたら お気に入りが300超えてました 有難うございます。今年中に夏休み編を終わらせたい
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