第一高校をテロリストが襲撃すると云う前代未聞の事件から、しばらく立った。5月 達也と深雪は病院を訪れていた。
紗耶香の退院が決まったのだ。エリカに受けた傷の所為ではない。問題は司 一に受けた邪眼だ。念の為の入院。因みに甲も入院していたが紗耶香より先に退院した。
今回の騒ぎで紗耶香と甲は裁かれなかった。全ては司 一の所為になった。
学校にも今まで通り通う事になる。テロリストの襲撃を許し生徒が犯罪者に身を落とす。今回の件は学校側にも責任がある。学校側としては二人を退学に追い込みたかったのだが、達也・真由美・克人が学校側にも落ち度があると二人の退学処置に直談判した。学校側も今回の件で騒がれたくない。管理責任を問われる事になる。真実は隠して置きたかった。なんとか三人の悪知恵で退学は免れたが、司 甲は自主退学を申し出た。学校を辞め京都に行くと云う。
「折角、退学処分を取り消してくれたのに、勝手に京都に行く事を決めて、恩を仇で返すような真似をして済まない」
「先輩ご自身で決めた事でしょう?俺達に謝らなくていいですよ」
「剣道部の事はいいの?」
「俺がいなくても上手くやってくれるだろう」
「じゃあ、そろそろ行くよ。ありがとう、元気でな」
司の去り際の顔は印象的だった。
都内 病院 一階ロビー
「良かった。間に合ったみたいだな」
「二人とも遅いよ」
どうやらエリカは一足早く来ていたらしい。もっとも早く来たのはエリカだけではないが。
「桐原先輩も来てたのか」
「随分、仲が宜しいようで」
「そりゃ、毎日来てればそうなるでしょう」
「へぇ~先輩も以外に律儀だよな」
「そんな事言ってるからサーヤにフラれるのよ」
「俺は先輩に告白した覚えはないぞ」
「サーヤって紗耶香先輩の事?」
「そうだよ」
「随分、仲良くなったな」
「そう云うのは得意だもん!」
「壬生先輩」
「あ、司波君!」
「うっげ!し、司波?」
「退院おめでとう御座います」
深雪が花束を渡す。
「2人とも、態々ありがとう」
紗耶香の退院を喜び談笑する達也に声が掛かる。
「君が司波君か?」
「お父さん?」
声を掛けて来たのは紗耶香の父、壬生勇三。
「娘が世話になった。お礼を言わせてくれ」
「イエ、俺は別に」
「向こうで話さないか?」
「はぁ、分かりました」
達也は押しに負けた。
「改めて、礼を言わせてくれ。本当に有難う。君のおかげで娘は立ち直る事ができた」
「俺は何も・・・先輩が立ち直ったのは先輩自身の努力とあっちにいる桐原先輩や千葉の励ましがあったからで、俺は先輩を突き放しただけで礼を言われる様な事は」
「私は突き放す事すらできなかったよ」
「あ、イヤ・・・その」
達也は言葉に詰まる。
「娘が悩んでいた事は知っていたがこんな事になるとは思ってなかった。君が止めてくれなければどうなっていたか。本当に有難う」
「ですから、俺は何も・・・」
「本当に君は風間に聞いた通りの子だな」
この言葉は久々に照れてどうしようか困っていた達也の冷静さを取り戻すには十分な言葉だった。
「知り合いなんですか?」
「私は退役したがね。彼とは戦友の様なものだ。安心しなさい、君の事は誰にも言わない。私は娘を救ったのが君だと私が知っていると云う事を君に分かっていて欲しかっただけだよ」
それからしばらくして、
「司波君。お父さんと何を話していたの」
「俺の知り合いと付き合いがあるそうで」
「ふーん。そうなんだ」
「ねぇ、どうしてサーヤは桐原先輩と付き合う事にしたの?達也君の事、好きだったんじゃないの?」
「私が司波君に惹かれてたのは、司波君が自分には無い強い意志を持ってると思ったから。でも、それはきっと好意じゃなくて憧れだったと思うの」
「良かったね。桐原先輩」
「千葉。そりゃどう云う意味だ!」
「私は司波君みたいに強くはなれない。でも桐原君なら、ぶつかり合いながらでも私を引っ張ってくれるんじゃないかって」
「は~聞くんじゃなかった。それで桐原先輩の方はいつからサーヤの事が好きだったんですか~」
「う、うるせー。どうでもいいだろ、そんな事!」
「エリカ、いつからなんてどうでもいいだろ。先輩は本気で惚れてるんだから」
「て、てめえまで」
「だって本気で惚れてなきゃ、テロリストのリーダー相手に、あんな事は言わないでしょう」
「なんて言ったの」
「それはプライバシーに関わる事だから」
「オ、俺は別に何も・・・」
「覚えてないんですか?あのセリフ」
「司波!てめえ、人のセリフを勝手に捏造すんなよ!」
「捏造はしませんし、話す事もしませんから」
「いいじゃん、教えてよ」
「千葉。てめえ、コノヤロー」
「やれやれ、さて、用事は済んだから帰ろうか?」
「はい、お兄様」
二人は病院を後にした。
これより先 入学編 前編のように長々と書く事はしません