ボート転覆事故からしばらく レオと幹比古が戻ってきた。女子グループは既に海から上がりティータイムを楽しんでいる
「・・・ アレ? 達也と光井は?」
「向こうで ボートに乗ってるみたいだね」
「ホントだ でも 何で?」
「色々あったのよ」
レオの疑問に答えたのはエリカ
「・・・でも、なんかいい雰囲気だね」
「ちょ! アンタ 何言って・・・」
「吉田君 良く冷えたオレンジはいかが?」
背後から聞こえた声に振り返る そこには深雪が立っていた
「・・・」
夕食にはバーベキューが用意されていた 日中の事故も忘れ、夕食を楽しんだ
その後、達也と幹比古は将棋。レオは夕食に満足して一足先に就寝中、女子グループはカードゲームを楽しんだ。美月の負けで決着した時 先に勝ちの決まっていた雫が深雪に話しかけた
「外に出ない?」
「・・・いいわよ」
無言の雫の後に 深雪が続く。
「急にごめんね」
「何か 話があるんでしょう」
「教えて欲しいの」
「何を?」
「深雪は達也さんのこと どう想ってるの?」
「愛しているわ」
「・・・男の人として?」
「フフッ・・・まさか。確かに私は誰よりもお兄様を尊敬してるし 愛してる。 でも この想いは恋愛感情じゃない。私達の間に恋愛感情はあり得ない」
「・・・」
「質問の意図は分かってるつもりよ。先に言っておくけど私は邪魔をするつもりは無いから。 安心してって言っても無理かもしれないけど」
「どうして?」
「何が?」
「どうして そんなに簡単に割り切れるの? 深雪は達也さんの事が好きなのに」
「私達の関係を説明するのは難しいわ。私の想いだってそんなに単純なものでもないし、でも やっぱり「愛してる」って言葉が一番シックリくるのかな?」
「・・・本当の兄妹じゃないの?」
「随分 踏み込んだことまで訊くのね?」
「・・・ゴメン」
「別に 責めてないわよ」
「雫ってホントにほのかの事が大事なのね」
「私は深雪の事も友達だと思ってるよ」
「だから気になるんでしょ? 友達同士が傷つけあわない様に・・・でもいいの?ほのかにそんなに気を使って?貴方自身はどうするの?私は兎も角 雫はほのかと傷つけあう事になるわよ」
「ほのかとは親友だけどライバルだから それに深雪の気持ちを知っておきたかったから」
「ふ~ん・・・話を戻すけど、私とお兄様は実の兄妹よ」
「でも・・・」
「確かに私がお兄様に向けている感情は兄妹の関係を超えていると自分でも思うわ」
深雪は雫に構わず話を続ける。
「私ね ホントなら死んでるの」
「・・・え?」
「でも 私はお兄様に助けられた。私が今ここにいるのはお兄様のおかげ。今の私は お兄様から貰ったもの。だから 今の私は全部 お兄様のものなの」
「・・・」
「私、思うんだけど、恋愛って相手に求めるものじゃない? 私のものになって、求めるのが恋じゃない? でも私がお兄様に求めるものなんて何もないわ。だって 私は私自身をお兄様に貰っているんだもの。私はこれ以上お兄様に何も求めない。でも、やっぱり今の私の気持ちを表す言葉は愛しています 以外ないんじゃないかしら?」
「・・・はぁ~。 深雪って ホントに大物だね」
一方の達也もほのかと共に歩いていた。
「達也さん」
歩き始めて数分 ようやく振り絞ったほのかの声に達也が振り向く。
「どうした ほのか」
「私 達也さんのこと好きです! 達也さんは 私のこと どう思ってますか?」
「・・・」
ほのかの質問に達也の回答は中々得られない。
「・・・ご迷惑ですよね。いきなりこんなこと言われても・・・」
「迷惑じゃないよ。 それに誰かに好意を抱いてもらえるのは嬉しい事だ」
「・・・」
「・・・ほのか 俺は精神に欠陥を抱えた人間なんだよ」
「・・・え?」
「昔 事故に遭って その時からあらゆる物事に対して大きな感情が湧かなくなったんだ」
「それって・・・」
「簡単に言えば 人から悪口を言われても怒ることあっても、絶対にキレることはない。人に好意は持てても恋はできない。 俺はほのかのことは好きだよ。でもそれはあくまで友達としてであって俺にはほのかのことを特別な女性として視る事は出来ない」
しばらくの間 無言が続く そして
「・・・難しいことは分かりませんけど、達也さんの言う事が本当なら、達也さんは私以外の女の子を好きになる事も無いんですよね?」
「まぁ 理論的には そうだけど・・・」
「だったらそれでいいです」
「・・・え?」
「これからも達也さんには恋人ができないんでしょう? それなら私は勝手に達也さんを好きでいることにします」
「(ヤレヤレ 本当に敵わないな・・・)」
次の日 達也とほのか 深雪と雫は何事も無かったかの様に休日を楽しんだ。