夏休みも後半に入り 第一高校も閑散としていた。九校戦も終わり、校内にいるのは自主トレに励む生徒が少数。主に一年生 普段は上級生で溢れている訓練施設が利用しやすくなっているからだ。彼の利用している閉所戦闘練習場でも上級生の姿は見えない。
「はぁ、はぁ・・・」
自主トレをしていた森崎駿 自身のユニホームを見てみると脇腹に赤いペイント弾が付いていた。ペイント弾は此処では綺麗に落とせない。森崎は準備室に移動した。
だが準備室には先客がいた 一年女子 滝川和実
「此処で何してるんだ?」
「私はちょっと内臓CADの部品を分けて貰いにきたのよ」
「ふん・・・在庫管理くらいちゃんとしろよ」
「余った部品を融通し合うのは射撃系クラブじゃ良くあることよ」
森崎は気にせず、ペイントを剥がす事に集中する。
「ねぇ 森崎 アンタ それで何回目? ちょっと無理し過ぎなんじゃない? もう いい加減に上がった方がいいわよ」
「なんだ 心配してくれてるのか?」
「そりゃ 心配にもなるわよ。目の前で知り合いが倒れそうになってるのを黙って見過ごせないわよ。あぁ 言っておくけど、別にアンタに気がある訳じゃないから安心なさい」
「分かってるよ」
「だったら もう 上がりなさい。これ以上やっても何の意味もない事くらいは分かるでしょ」
「ちっ・・・ はぁ~ 分かったよ」
ユニフォームを脱ぎ 制服に着替える。鏡に映った制服 左胸ポケットに刺繍されたエンブレムに目が行く。入学した頃はこのエンブレムが誇らしかった。だが最近はこのエンブレムを見るとどうしようもない苛立ちを覚える事がある。森崎は九校戦で新人戦『モノリス・コード』に出場していたが 対四校戦で事故に遭い入院を余儀なくされた。だが幸いにも魔法治療のおかげで普通は一か月の怪我も一週間で完治した。それでも彼自身 一週間の入院生活で身体が鈍ったと思って 完治して直ぐに自主トレに来ていたのである。最も身体が鈍ったことだけが自主トレに来た理由ではないのだが。
その日は朝から最悪だった。もう少しで校門だと云う処で後ろから声を掛けられる。
「ちょっと そこの君」
振り返って見ると そこにはカメラを持った記者の様な男
「何ですか? あの 失礼ですけど 貴方は・・・」
「あぁ いきなりゴメンね 僕は・・・」
男が差し出した名刺には有名な新聞社の名前
「九校戦の事で記事を書きたくてね 君は何年生?」
「一年ですけど・・・」
「そうか 良かった 他の一年生にも聞いたけど司波達也君って普段はどんな子なんだい? 本人が中々みつからなくてね」
「・・・ッ なんで アイツの・・・(そうか 一校の連中以外 アイツが二科生なのを知らないのか・・・」
「どうかした?」
「すみません。先を急ぎますので・・・」
そう言って森崎は記者から逃げた。そして 次に会ったのは同じ一年の一科生。
「森崎 久しぶりだな もう 身体はいいのか?」
「あぁ 大丈夫だ」
「退院おめでとう」
「あぁ 有難う」
森崎は素直に喜べなかった。それは彼の欲しい言葉では無かったから。彼が欲しかった言葉は『モノリス・コード』・『スピード・シューティング』優勝おめでとうである。だが実際には森崎は『モノリス・コード』を途中棄権 代わりに出場した代役チームが三校の十師族 一条を倒し優勝 だが優勝の立役者はあの司波達也 それに『スピード・シューティング』優勝者の吉祥寺真紅郎も『モノリス・コード』に参加していたのに同じく二科生の吉田幹比古に敗れたのを入院先のベットで見る羽目になった
「はぁ~」
朝の事を思い出してしまった 森崎。
「ダメだ ダメだ こんなんじゃ」
頬を叩き 気合を入れなおすし鏡を見る。
「ひどい顔してるな・・・」
森崎自身にも 自分が焦っていることは分かっていた だが自分ではどうしようも無かった。だから滝川和実に会ったのは森崎にとってラッキーなことだったかもしれない。森崎は気分転換に町に出かけることにした そしてこの気分転換が森崎の考えを改めることになる