達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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英美、将輝、深雪の話はカットします。


夏休み編 会長選挙 其の一

新学期が始まっても今日も相変わらずの生徒会室。今は夏休の話題で盛り上がっていた。

 

「私達も今月で引退かぁ~」

 

真由美の発言で空気が微妙に変わる。

 

「会長選挙は今月ですよね」

 

「今回は服部君と中条さんの一騎打ちになるでしょう」

 

鈴音が今年の選挙の予想をする。不意に名前が出たあずさは、

 

「私に生徒会長なんて無理です!そもそも、立候補するつもりないですから」

 

「断言するなよ」

 

摩利が呆れる。

 

「・・・じゃあ、次の会長は、はんぞー君か」

 

生徒会室から風紀委員本部に入る。達也はいつもと違う印象を受けた。

 

「今日は随分、賑やかな感じがしますけど、会議の予定ってありましたっけ?」

 

「そんなものはないよ。只、イベントはあるよ」

 

「はぁ・・・」

 

達也には嫌な予感しか無かった。

 

「その何事にも関心が薄い処は治した方がいいぞ」

 

「・・・善処します。それで」

 

「実は部活連枠の3年が一人辞任したんで、今日その補充要員が来るんだよ」

 

「歓迎会?」

 

「そんなことする程の団結力はウチにないよ」

 

「ただ、女子が選ばれるのは珍しいからね」

 

「・・・」

 

「その新人の面倒を君に見て貰いたい」

 

「なぜ、一年の自分が?」

 

「まぁ、君ならアイツも簡単には暴走しな・・・兎に角、君に任せる」

 

「・・・まぁ、今ので、誰が来るのか分かった気がしますけど・・・」

 

と云う事で達也は新風紀委員 二年 千代田花音を任された。

 

「え~摩利さんが教えてくれるんじゃないんですか?」

 

堂々と本人の前で不満を漏らした花音にため息を漏らす達也。

 

「あたしじゃ、参考にはならんよ。後ろめたい奴はあたしを見ると逃げだすから。その点、達也君は事件遭遇率も検挙率もナンバーワンだから」

 

「あぁ、成程」

 

本部を出て達也は花音と共に校内を巡回しながら説明をしていた。

 

「巡回ルートに決まりはありません。校内を隈なく見回ることもありません」

 

「ふーん。司波君はどんなルートなの?」

 

「俺は実習室を重点的に見回っています。教室でのケースは少ないみたいですから」

 

「アレ?体育館やグラウンドは?そっも問題起きそうだけど」

 

「基本アッチは部活連の管轄ですから」

 

花音の要望により二人は体育館周辺を巡回。そして現在、第二小体育館にいる。

どうやら今日は剣術部の練習日の様だ。

 

「・・・お前って、見る度に連れてる女が違うよな」

 

「誤解を招く様な事を言わないで下さい」

 

達也に話しかけたのは桐原だった。 

 

「そうよ、桐原君。千代田さんに失礼よ。千代田さんは許嫁の五十里君、一筋なんだから」

 

「(・・・俺は?)」

 

「委員長から同行を命じられたんですよ・・・」

 

「へぇ~。じゃあ、あの噂は本当なんだな」

 

「噂?」

 

「何で、委員会の司波君が知らないのよ」

 

「ソイツを次の委員長に先輩が根回ししてるって云う噂だよ」

 

「へぇ~、そんな噂が」

 

「俺は正直、あの人が根回しなんてするのかと思ったんだが・・・」

 

「それくらいするでしょ。千代田さんは渡辺先輩が得に可愛がってる後輩なんだから」

 

「ふ~ん。あの人、見かけも中身のもタカラヅカな人か。まぁ、俺は良く解らんが二人だと絵になるのか~」

 

「ちょっと、私の前で摩利さんを侮辱するとは、いい度胸ね。桐原君」

 

「え!ちょっと待て!俺は侮辱なんて・・・」

 

「問答無用!」

 

花音のサイオンが流れ出し始める。

 

「はぁ~」

 

ため息を付きながらも達也は右手を突き出す。するとサイオンの乱舞が止まる。

 

達也が今朝、八雲に教わったばかりの「快感のツボ」を突いた。

 

「ひゃあん!?ちょ!何するのよ司波君」

 

「風紀委員が自分から問題を起こそうとしないで下さい」

 

「だ、だって~」

 

「だってじゃありません!セクハラを受けたなら後で懲罰委員会に訴追すればいいでしょ?」

 

「!?セ、セクハラ?」

 

いきなりの発言に狼狽する桐原。

 

「いいですか。今後はこんなことしないでください」

 

「わ、分かったわよ」

 

しばらくして、状況が収まると紗耶香が話題を変えた。

 

「ねぇ、会長選挙はどうなってるの?今年は服部君と中条さんの一騎打ちでしょ。どっちが有利なの?」

 

「服部は出ないぜ」

 

「え? なんで?」

 

「アイツ、十文字先輩に次の部活連会頭に押されてるんだ。本人も乗る気みたいだから選挙には出ないと思うぜ」

 

「ふ~ん。でも考えてみれば妥当よね」

 

委員会のパトロールも終わり、達也はいつものメンバーと喫茶店にいた。会話の内容はまたしても選挙の話。

 

「へぇ~どっちもでないんだね」

 

「服部先輩は兎も角、中条先輩は立候補もしないんですか?」

 

「候補者がいないんなら深雪が立候補すれば?」

 

「ちょっと、冗談キツイわよ」

 

「でも一年が会長になれない訳じゃないでしょ。九校戦の活躍で名も知られてるし」

 

「私じゃ無理よ」

 

「一人じゃ無理でも達也君に補佐して貰えばいいじゃない。会長には任命権があるんだから達也君を副会長にでも任命しなよ」

 

此処で今まで黙っていた幹比古がとんでもない事を口にする。

 

「なら達也が会長になれば?」

 

「それ、いいんじゃねえの」

 

「誰が俺に表を入れるんだ」

 

「私、達也さんが立候補するなら絶対、入れますから」

 

「勿論、私もですよ。お兄様」

 

「(・・・2票じゃ如何にもならんだろ)」

 

新学期が始まって一週間が過ぎた。いよいよ生徒会長選挙が公示され、関心の薄かった者達の話題にも上がり始めた。教室に入った達也は先に来ていた幹比古に声を掛けられた。

 

「おはよう、達也」

 

「おはよう、幹比古」

 

朝の挨拶を済ませた二人。その直後、達也は幹比古からとんでもない事を聞かされる。

 

「ねぇ、選挙に出るって本当?」

 

「・・・は?」

 

「達也が選挙に出るって噂で持ち切りだよ」

 

「誰がそんな噂・・・」

 

「ぼ、僕じゃなからね。昨日、廿楽先生に実習室で言われたんだ。達也が選挙に出るのは本当かって」

 

「そんなデマが広がってるのか?」

 

「・・・やっぱり、デマなんだ。そうだよね、おかしいとは思ったけど」

 

「なんでそんなデマが先生の間で・・・」

 

「さぁ?」

 

「先生だけじゃないぜ」

 

「え?」

 

二人の会話に割り込んだのはレオ。

 

「部下中にも先輩達がぽつぽつ噂してるぜ。しかも中々に好意的だ」

 

その会話にエリカも加わる。

 

「私も聞いたよ。一年の風紀委員が出るって。それって絶対、達也君のことでしょ」

 

更に美月。

 

「私もカウンセリングの時に」

 

「カウンセリング!」

 

そして美月のセリフで達也の行動が決まる。達也が訪ねたのは 小野遥。

 

「まだ一限目の途中でしょ」

 

「課題なら済んでます」

 

「・・・何しに来たの?」

 

「カウンセリングに来たんですよ。悩み事がありまして」

 

「・・・ふ~ん。じゃあ、その悩みお姉さんに聞かせて」

 

「月末の選挙の事です」

 

「あぁ、候補者がいないから妹さんの出馬の説得でも依頼された?」

 

「・・・それも悩ましいですね。でも今日は別件です。ある噂の事で」

 

「噂?」

 

「えぇ、俺が会長選挙に出るって、何か心あたりは?」

 

「昨日、美月にその話をしたらしいですね」

 

「・・・」

 

「まさか、先生が率先して噂をバラまいてー」

 

「イヤねぇ。そんなことしないわよ」

 

「どんな経緯であんなデマが流れてるんですか?」

 

「なんだ、デマなの」

 

「デマです!」

 

「言っておくけど、私も詳しくは知らないわよ」

 

「知っている事だけでも教えてください」

 

「聞いた感じだと、もう、一種の伝言ゲーム状態ね。「服部君が出ない」➡「中条さんも出ない」➡「生徒会が困ってる」➡「司波さんが出れば面白そう」➡「司波さんが出る」➡「司波くんが出る」➡「風紀委員の方」➡「面白そう」・・・みたいな感じ」

 

「なんでそんなデタラメな噂が信じられてるんですか?」

 

「先生方は本気で信じてる人が多いわよ。四月の顛末、職員室は真実を知ってるから」

 

「・・・ブランシュの件ですか」

 

「それ以外ないでしょ。アレを司波君が中心となって解決した事を高く評価してる先生も何人かいるのよ。会長には時に実力行使も求められるから、特に君は頭もいいし、その上でそれだけの力があるなら一年でもいいんじゃないかってね」

 

「・・・」

 

遥の言葉を聞いて達也は焦った。非常にマズい、思いの他、目立ち過ぎていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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